やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
ヒンデンブルクにて、蒸留水装置が故障し、晴風では清水タンクに小さな穴が開き、そこから水漏れが起き、それにより両艦とも水不足の事態に陥った。
そんな中、ウルシー環礁にて、遭難した商店街船、新橋を救助することになった。
救助の最中、晴風副長の真白が一時、沈んで行く新橋に一匹の子猫と共に取り残されると言う事態になったが、救助に来たブルーマーメイドに真白も子猫も無事に救助された。
そして、子猫が飼い主である若夫婦よりも真白に懐き、子猫は真白に引き取られた。
こうして、晴風に新たな仲間が増えた。
未だにミーナの乗艦であったシュペーを含めた行方不明になった横須賀女子の学生艦を捜索しているヒンデンブルクと晴風は、水や生活物資、食料の補給を終えるとトラック諸島近海まで進出した。
トラック諸島は西太平洋、カロリン諸島内に位置する島々が集まり、周囲200kmに及ぶ世界最大級の堡礁と多数の環礁群があり、その中に位置する複数の火山島群からなり、248もの島々が存在する。
この島々に人類がやって来た歴史はかなり古く、西暦の紀元前だと考えられている。
史実(前世)では、スペイン、ドイツの植民地の歴史を経て第一次世界大戦後、日本が委任統治領となり、南洋庁の支庁が置かれた。
トラック諸島全域は当初、武装化は全面禁止とされていたが、1933年の国際連盟脱退、1936年のワシントン海軍軍縮条約失効などにより、加速度的に基地の整備が推進され戦略上の要衝となり、第二次世界大戦中は日本海軍の連合艦隊泊地となった。
その中には世界最大の戦艦、大和、武蔵の二艦も停泊していた。
だが、この二艦は周辺海域にて、戦いが行われているにもかかわらず、出撃することなく、泊地で停船する期間が続き、兵士たちからは『大和ホテル』 『武蔵旅館』と揶揄された。
1944年2月17日~翌18日にかけてアメリカ軍はトラック泊地へ大規模な空襲をおこなった。
この空襲で日本軍は多数の艦船、輸送船、航空機を喪失した。
沈没したそれらの艦艇は戦後、トラック諸島を訪れる観光客らのダイビングスポットとなっている。
そして、アメリカ軍はトラック泊地を空襲するも本格的な侵攻はしなかった。
理由として、ただ単に攻略に手間がかかるからだった。
これにより、艦隊、泊地、航空隊が壊滅したにも関わらず、トラック諸島は、敵中で孤立したまま終戦まで日本軍の拠点として残り、日本は敗戦までこのトラック諸島の統治を継続することが出来た。
戦後はアメリカによる国連信託統治を経て、1986年のミクロネシア連邦の独立に至る。
しかし、第二次世界大戦が起きていないこの後世では、多少歴史が異なり、史実(前世)において第一次世界大戦にあたる欧州大戦にて、日本は欧州の動乱には関わらず、ドイツ、オーストリア、オスマン帝国を中心とする同盟軍はイギリス、フランス、ロシア、アメリカを中心とする連合軍と戦い、引き分けまで持ち込み、日本がトラック諸島を植民地化することはなく、ドイツが引き続きトラック諸島を植民地化していたが、動乱の疲弊から、植民の維持が難しくなったことから、史実よりも早くミクロネシア連邦が独立を果たした。
そして現在、史実(前世)同様、このトラック諸島は南洋交通の要所となっている。
「凄い霧だな‥‥」
トラック諸島近海を航行している中、あの機雷の時みたいに霧が立ち込めていた。
シュテルが双眼鏡で前方を見渡しながら呟く。
「レーダーがあるけど、見張りも厳となせ」
そして、シュテルは双眼鏡から目を離すと、レーダーだけでなく、人の目による見張りも厳しくするように通達する。
「了解」
ヒンデンブルクの一番上の展望デッキでは、普段よりも見張り員の数を増やして、濃霧のトラック諸島近海を航行する。
すると、ヒンデンブルクのCICにて、前方からこちらに向かって接近してくる一隻の大型船の姿を捉えた。
「っ!?艦長!!こちらに大型船が接近中!!」
「所属は分かる?」
「‥‥ダメです!!詳しい所属までは‥‥」
「ビーコンを出していないと言うことはもしかして、民間船舶と言う可能性も‥‥」
「‥‥」
シュテルは判断を下せず、暫し様子を見ることにした。
ヒンデンブルクの先頭を航行する晴風の方でも、接近してくる大型船の事を当然探知していた。
「はっ!?」
それをいち早く見つけたのは、マストの上の見張り台にいるマチコだった。
「正面に艦影!!」
「レーダーでも捕捉しました!!」
マチコの報告に次いで、宇田も艦橋に報告を入れる。
「距離は?」
「距離、13マイル」
「所属、艦影は詳しくわかる?」
明乃はマチコに接近中の大型船の詳しい情報を求める。
「うーん‥‥」
マチコは眼鏡をはずし、目を細めて前方を睨む。
「あっ、あれは‥‥!?」
そして、マチコは接近中の大型船の正体を突き止める。
「‥‥二連装砲主砲‥‥それにあの艦橋の形は‥‥接近中の大型船は金剛型です!!」
「金剛型!?」
「つぐちゃん、ヒンデンブルクにも伝えて」
「りょ、了解」
明乃は八木に接近中の大型船の正体を伝えるように言う。
そして、八木はヒンデンブルクに接近中の大型船の正体が金剛型の学生艦であることを伝える。
「金剛型!?」
「確か行方不明になった横須賀女子の学生艦の中には金剛型の学生艦‥比叡が含まれていた筈‥‥」
「ですが、他の海洋学校にも金剛型はありますし、横須賀女子が他校にも捜索協力をしていましたし‥‥」
「でも、ビーコン切っている辺り、疑った方がいいかも‥‥」
まだ、接近中の大型船が行方不明になっている横須賀女子の比叡の可能性もあるが、真雪が他校にも捜索協力を依頼しており、比叡‥金剛型の姉妹艦である金剛は呉海洋女子、榛名は舞鶴海洋女子、霧島は佐世保海洋女子に所属している。
接近中の大型船が横須賀女子の比叡の可能性もあるが、もしかしたら他校の金剛型の可能性もある。
しかし、シュテルは相手がビーコンを切っていることから、比叡の可能性が高いと踏んでいた。
「金剛型、右30度、方位角70度、針路変わらず」
そうしている間にも金剛型の学生艦はこちらに向かって接近してくる。
すると、霧の中から金剛型の学生艦が姿を見せる。
霧の中から現れた金剛型の学生艦は船体に赤い迷彩模様が施されていた。
「赤い迷彩‥‥間違いない!!アレは横須賀女子の比叡だ!!」
双眼鏡で霧の中から現れた金剛型の学生艦を見て行方不明になっている横須賀女子の比叡であることを確認したシュテル。
学生艦は学校によって、異なる色の迷彩色が施されていた。
横須賀女子は赤、
呉女子は青、
舞鶴女子は黄、
佐世保女子は緑、
この迷彩色でそれぞれの学校の学生艦を分けていた。
そして、今まさに接近してくる金剛型の学生艦には赤い迷彩が施されていることから、間違いなく横須賀女子の比叡だった。
「まさか、こんなところに比叡がいるなんて‥‥」
晴風から連絡を受け、双眼鏡で接近中の比叡を確認して呟くシュテル。
「横須賀女子とブルーマーメイドに連絡」
「了解」
そして、シュテルは急ぎ、横須賀女子とブルーマーメイドに比叡についての情報を送るように伝える。
「比叡の主砲が旋回しています!!」
その最中、比叡の前部にある主砲が動いている。
第一主砲は晴風に、第二主砲はヒンデンブルクを狙っている。
そして、比叡は発砲した。
「比叡発砲!!」
晴風は取り舵をきり、左に回避する。
ヒンデンブルクは回避運動をすることなく、そのまま直進し、前方に着弾する。
とっさの発砲で正確な照準をする暇がなかったのだろう。
比叡が撃った砲弾はヒンデンブルクに当たることなく、近くの海に着弾した。
「比叡が発砲してきたと言うことは、比叡の乗員も‥‥」
いきなり発砲してきた比叡を見て、クリスにはある可能性を口にする。
「ああ、例のウィルスに感染しているな‥‥」
伊201は除くとして、晴風から聞いた猿島の件、そしてヒンデンブルクも遭遇したシュペーの件を見て、通信もなく、いきなり発砲してきた比叡の行動から、比叡の乗員もやはり例のウィルスに感染しているものとみて間違いないと判断する。
「艦長、ブルーマーメイドから通信です」
「ん?内容は?」
「近くの部隊が到着するまで、可能な限り比叡を捕捉し続けよ。ただし、晴風、ヒンデンブルクの安全を優先とせよ‥‥です」
「そのブルーマーメイドの到着予想時間は?」
「およそ、四時間です」
「四時間!?」
ブルーマーメイドの到着までの時間を聞いて思わず声が裏返るシュテル。
「それに安全優先って言っても四時間も比叡を捕捉なんて‥‥」
ブルーマーメイドの到着の四時間の間、戦艦であるヒンデンブルクは兎も角、駆逐艦である晴風が捕捉し続けるのは困難である。
比叡の主砲はシュペーの28㎝砲よりも大きい、35.6㎝砲である。
十分晴風には脅威である。
(晴風には荷が重すぎる‥‥)
「晴風には至急、退避するように伝えて!!比叡はこのまま本艦が追尾する!!」
シュテルは一旦、晴風をこの場から遠ざけることにした。
ヒンデンブルクからの通信は晴風にすぐに伝えられる。
「艦長、ヒンデンブルクから、『晴風は至急、現海域より離脱せよ』と通信が入っています」
「‥‥」
ヒンデンブルク‥‥シュテルからの通信を受け、明乃は自身の無力さを感じる。
シュテルに協力を申し込んだにも関わらず、こうして比叡を前にして逃げることしか出来ないなんて‥‥
これでは何のため、協力を頼んだのか分からない。
明乃は親指の爪を噛む。
とは言え、比叡の初弾を取り舵で躱し、晴風は現在、比叡に背を向けている。
シュテルとしてはこのまま晴風にはこの海域を脱出してもらいたかった。
「一度、比叡の横を通り抜け、その後、反転し、比叡を追う。機関全速」
「了解、機関全速」
ヒンデンブルクは一度比叡をやり過ごした後、背後から比叡を追跡することにした。
比叡の右舷側を通り抜ける際も比叡の左舷側の副砲、機銃、高角砲がヒンデンブルクに向かって火を吹くが、ヒンデンブルクも副砲、高角砲、機銃で応戦する。
その後、ヒンデンブルクは旋回して比叡の後方につける。
しかし、その最中、あまり悠長に出来ない事態が起きた。
「艦長、大変です!!」
シュテルの指示通り、この海域から退避するか迷っていた明乃に納沙が、ある事に気づく。
「比叡がこのままの針路、速度で航行すると、三時間後には、トラック諸島に到達します!! 」
「えっ!?」
「なっ!?」
納沙の報告に晴風の艦橋の空気が凍る。
何と比叡が向かう場所には南洋における最大の交通要所、トラック諸島があった。
「トラックって確か‥‥」
「はい、居留人口は一万人を超えます。おまけに海上交通の要所なので一日平均千隻以上の船舶が出入りします」
「そ、そんなところに比叡が入り込んだら‥‥」
「大パニックになるし、トラック、そして出入りする船を介して、ウィルスが世界中に蔓延しちゃう‥‥」
もし、ウィルス感染した比叡がトラック諸島に入ると、そこにいる民間船舶に対して無差別に砲撃し、トラック諸島は大混乱となる。
さらに感染力が早いあのウィルスが感染している比叡の乗員を媒介に、トラック諸島に住んでいる住人、さらにトラック諸島を出入りしている船舶の乗員がウィルス感染し、そこから世界中にこのウィルスが広がる危険‥‥パンデミックの危険があった。
しかし、切り札であるブルーマーメイドがこの海域に到着するのは四時間後‥‥一時間の差で比叡はトラック諸島に到達してしまう。
もし、トラック諸島から世界中にこのウィルスが広がったりしたら、シュテルが予見した通り、人々は理性を失い凶暴化し、暴力が世界を支配する覇王が存在する世紀末世界に似た光景が広がるだろう。
比叡がトラック諸島に到達する前に比叡をここで止める必要性が出てきた。
「‥‥ヒンデンブルクの碇艦長に通信!!」
明乃はある決断をし、ヒンデンブルクに通信を入れる。
「比叡がトラックに!?」
晴風からの通信を受け、比叡がトラック諸島に向かっていることを知り、晴風の艦橋同様、ヒンデンブルクの艦橋も空気が凍る。
「まずいよ、シュテルン」
「ああ、限りなくマズい‥‥」
「艦長、晴風から追加の通信です」
「ん?」
晴風からの通信文を通信員から手渡され、その内容に目を通す。
「むっ‥‥うーん‥‥」
しかし、その電文を見て、シュテルは顔を歪める。
「どうしたの?シュテルン」
「晴風からは何と?」
「‥‥ブルーマーメイドの到着まで晴風が囮となり、比叡をトラックから引き剥がすと‥‥」
「そんなっ!?」
「それは危険じゃあ‥‥」
「‥‥晴風に無線電話を繋いでくれ」
「は、はい」
シュテルは無線電話で明乃と直接話すことにした。
「ミケ‥あっ、いや、岬艦長、貴女の作戦は聞きました。ですが、賛同しかねます」
「何故ですか!?碇艦長」
「あまりにも危険すぎます!!囮として引き付けると言うことは、晴風は比叡の攻撃を一方的に受けるってことですよ!!晴風にとって比叡の35.6㎝砲はシュペー以上に脅威なんですよ!!」
「わかっています。しかし、ブルーマーメイドの到着まで比叡を引きつけなければ、比叡がトラック諸島に到達し、そこからウィルスが世界中に広がってしまいます!!多少の危険は覚悟の上です!!」
「し、しかし、晴風乗員、全員を危険に晒すわけには‥‥」
「大丈夫です!!鈴ちゃん‥‥うちの航海長は逃げることに関しては天下一ですから、ねぇ、鈴ちゃん」
「えっ?わ、私っ!?」
突然、会話を振られてビクッとする鈴。
「碇艦長、悠長に会話をしている暇はありません!!」
「うっ、うーん‥‥」
確かに明乃の言う通り、この場で悠長に会話している暇はない。
こうしている間にも比叡はトラック諸島を目指している。
「‥‥わ、わかりました‥‥ですが、決して無茶はしないでください」
「はい!!」
こうして晴風は比叡をトラックから引き離すための囮行動をとることになった。
「比叡をトラックから引き離すとして、具体的にどうする?」
真白が明乃に内容を訊ねる。
「比叡にちょっかいをかけて、このまま比叡を晴風にひきつけ、晴風自身をトラックから遠ざかる」
明乃は作戦指示を下す。
「追尾と比べると被弾の危険性が格段に上がりますが、それでもやりますか?」
「それでもやるしかないよ!!足はこっちの方が早い、そこに鈴ちゃんの操艦が加われば、十分に可能だよ」
「‥‥大丈夫か?航海長」
「う、うん!!逃げるなら任せて!!」
「鈴ちゃん、蛇行しながら航行して!!後部、二番、三番砲塔、射撃用意!!比叡を挑発して!!」
比叡を引きつける為、晴風は後部の二番、三番砲塔を比叡に向けて発射して、比叡を挑発する。
そして、晴風自身は蛇行をしながら比叡の砲弾を回避する。
晴風を攻撃する比叡の後ろからはヒンデンブルクが追いかけてくる。
比叡は後ろから迫ってくるヒンデンブルクに対して三番、四番砲塔で攻撃してくる。
「比叡発砲!!」
「大丈夫だ。ヒンデンブルクの装甲なら、35.6㎝砲の砲弾では致命傷は与えられない!!第一、第二主砲、撃て!!目標、比叡第三、第四砲塔!!任意の目標を潰した後は、比叡を逃がさぬよう、威嚇射撃を続けろ!!」
「了解」
お返しとばかりにヒンデンブルクの第一、第二主砲が比叡に向けて火を吹く。
戦艦というモノは自艦が搭載されている大砲と同じ口径の砲弾をくらってもなかなか沈まないように設計されている。
故にシュテルたちは比叡から砲撃されても慌てることなく対処できたのだ。
トラック諸島近海で晴風、比叡、ヒンデンブルクの追いかけっこが始まった頃、日本、神奈川県、横須賀にある横須賀女子海洋学校の校長室では‥‥
コン、コン
校長室の扉がノックされる。
「どうぞ」
「失礼します」
校長室に入ってきたのは真霜だった。
真雪と真霜、親子であるが、この場では横須賀女子海洋学校校長、ブルーマーメイド一等監察官として居る。
真霜が入ると真雪は、美波とウルスラが纏めた例のマウスの件をまとめた資料に目を通していた。
真霜が来て、真雪は、話を聞こうと応接用のソファーへと促し、自らも執務机からソファーへと向かい、真霜と対面する。
「貴方が此処に来るという事は、余程の事ね」
「ええ」
真霜は、カバンの中からあるルートより手に入れたとある研究の資料を真雪に提出する。
「これは?」
真雪は提出された資料に目を通す。
「ん?」
資料に目を通した真雪の顔が険しくなる。
「実験艦が深度1500mまで沈降‥‥制御不能‥‥サルベージは、不可能‥‥」
「‥‥の筈が、海底火山の活動で押し上げられて、浮上してしまった」
「西ノ島新島!?此処は、今年の新入生たちの海洋実習の集合地点よ‥‥っ!?そう言えば、教官艦、猿島に海洋研究開発機構の研究員を乗せる手配をしたわ‥‥確か西ノ島新島付近で海洋生物の生態を研究したいという依頼があって‥‥」
真雪は入学式の少し前、国立海洋研究開発機構から、所属する研究員たちを教官艦に同乗させてくれと言う依頼が来たことを思い出す。
名目は集合地点である西ノ島新島付近で海洋生物の生態を研究したいという依頼であったが、この資料を見る限り、海洋生物の研究ではなく、西ノ島新島付近に浮上してしまった実験艦からのデータ回収とその実験艦を今度こそ、海底に自沈させることを目的としていた様だ。
しかし、その実験データの回収の際、実験艦の中で飼育されていた例のマウスのウィルスに研究員が感染、それから古庄をはじめとする猿島の乗員に二次感染し、猿島から、集結していた学生艦の乗員に三次感染した。
これが今回の事件の発端となった猿島発砲事件と学生艦行方不明事件の全容だった。
あの場に居なかった駿河、シュペーに関しては、西ノ島新島到着前に感染した恐れがある。
「‥‥急いで殺鼠業者を呼んだ方が良さそうね」
真雪は駿河とシュペーは横須賀女子に停泊中に原因となったマウスを乗せてしまったかもしれないことから、校舎全体をくまなく捜索して、これ以上の被害を出さないようにしなければならなかった。
「ええ、そうした方がいいですね。で、連中の目的は、実験艦からデータを回収して。その後、自沈させる為のチームだったみたいです」
「それで、このネズミの正体は?」
「研究員たちの間では『RAT(ラット)』と呼ばれていた生物です」
「RAT?」
「はい。海中プラントで偶然生まれた生物で、この生物が媒介するウィルスは、生体電流に影響を及ぼします。その為、感染者同士は、一つの意思に従い行動する」
「一つの意思?まるで軍隊ね。アリやミツバチみたいな」
「だから記憶が在るのに、行動の理由が説明できない。付近の電子機器が狂う原因もこの生物の生体電流の影響です」
「こんなモノを作って一体何をしようとしていたのかしら?」
「そこまではまだ、掴めていませんが、おそらくは軍事目的ではないかと‥‥さらにまずいのが、このウィルスには、抗体がないことです」
「ああ、それなら心配は要らないわ」
「えっ?」
「先程、晴風から報告書が届いたわ。この生物が媒介するウィルスあり。試作した抗体を送るので増産されたし、と」
真雪は、晴風の美波から提出された報告書と試作した抗体の存在を真霜に伝える。
「未知のウィルスなのに学生が抗体を作ったんですか?」
「晴風には鏑木美波が乗っているのよ。それにヒンデンブルクの医務長さんもなかなか優秀な方みたい」
「えっ?鏑木美波って、あの海洋医大始まって以来の天才って言われたあの鏑木美波?」
「ええ、飛び級でまだ海洋実習をしてなかったから、『今年済ませたい』と言われて」
「変わり者とは聞いていたけど、でも今回はそれが幸いしたみたいね」
「そうね‥‥感染後の経過時間が短ければ海水がウィルスに対し有効と推測される。しかし、時間経過と共にウィルスが全身に行き渡った場合、抗体の投与のみが効果的と思われる。更なる時間経過後は現在の試作ワクチンでも効力があるが不明‥‥」
「‥‥一刻も早く、行方不明になった学生艦を見つけないといけないわね」
海水が効く時間が限られていると書かれていることから、美波とウルスラが作ったワクチンも時間の経過と共に効力を発揮しない可能性がある。
ウィルスは感染から人の体内で変化を繰り返す。
その変化においてまずは海水に耐性が付き、次いでワクチンにも耐性がついてもおかしくはない。
あまりにも長時間、ウィルスに感染していると、ワクチンも聞かず、その人本来の自我を失い、精神を病んでしまうことだって考えられる。
今回の学生艦行方不明事件‥‥あまり時間をかける訳にはいかない様だ。
真雪と真霜が話し合いをしていると、
「校長!!」
そこに教頭が血相を変えて校長室に入ってきた。
「どうしましたか?教頭先生」
「た、只今、ヒンデンブルク、晴風から電文が‥‥トラック諸島近海で我が校の比叡を捕捉し、現在追跡中とのことです」
「トラック諸島?」
「そんなところに比叡が‥‥」
「ただ、事態は最悪かもしれません」
「どういうこと?」
「電文ですと‥‥」
教頭は真雪と真霜に比叡がトラック諸島に向かっていたこと、比叡のトラック諸島到着前にブルーマーメイドの到着が難しいことを伝える。
「‥‥一番近いブルーマーメイドの部隊は?」
「弁天を旗艦とする部隊です」
「あの子の部隊ね」
「ええ‥‥当然、あの子にもこの件は伝わって全速で向かっていると思うけど‥‥」
「信じるしかないってことね‥‥はぁ~‥‥こんな肝心な時に何もできないなんて‥‥」
「「‥‥」」
真雪の呟きに真霜も教頭もただ黙っていた。
二人も真雪と同じ心境だったからだった‥‥
遅ればせながら、比企谷八幡のCVは、江口拓也さんが行っておりますが、はいふり世界に転生した八幡の容姿は、その名前の通り、なのはシリーズの星光の殲滅者こと、シュテルであり、高校生である現時点の容姿は、魔法少女リリカルなのはINNOCENTS 2巻で登場した大人版シュテルなので、今の八幡(シュテル)の声は、あの方の声をイメージして書いています。