やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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79話

 

横須賀女子の行方不明になった学生艦の捜索の為、トラック諸島近海まで進出したヒンデンブルクと晴風。

そこで、両艦は行方不明になった横須賀女子の比叡に遭遇した。

邂逅時、いきなり比叡はヒンデンブルクと晴風に対して砲撃をしてきた。

猿島、シュペー、駿河同様、比叡のこの行動から、比叡の乗員も例のウィルスに感染していることが伺えた。

しかも、比叡が現在の針路、速力で航行した場合、三時間後にトラック諸島へ接近することが判明した。

もし、ウィルスに感染した比叡がトラック諸島に入り込んだら、トラックは大混乱となり、そこから世界中にこのウィルスが拡散する恐れがあった。

肝心のブルーマーメイドの到着はどんなに早くてもあと四時間はかかる。

ウィルスをこれ以上広げないため、ブルーマーメイドの到着まで比叡をトラックから遠ざけ、自分たちに釘付けさせる必要があった。

当初、シュテルは駆逐艦である晴風に巡洋戦艦である比叡の対処は危険だと判断し、この海域からの退避を提案した。

しかし、晴風艦長の明乃は自分たちが比叡を引きつける囮役を買って出た。

比叡に対して砲撃し、挑発をすると、比叡は怒ったかのように晴風を追尾し始めた。

その後方からは比叡を見失わないようにまた、晴風の負担を少しでも減らすため、ヒンデンブルクが追尾する。

かくして、三隻の軍艦による追いかけっこが始まったのであった。

 

晴風は、比叡の砲撃を避けながらトラック諸島沖のピケロット島環礁海域に逃げ込む。

艦橋には、砲弾がくる警告音が耳をつんざく様に鳴り響いており、操艦している鈴も泣きながら舵を握り、回避行動を続ける。

「逃げることに関しては得意だから大丈夫」と言って、今回の囮役を明乃と共に買って出た鈴であったが、やはり後ろから攻撃してくる比叡に追いかけまわされるのは怖かったようだ。

 

「『こんなのはチキンレースって言うんだ、知ってるか!?でも、学生艦(軍艦)でやるゲームじゃねぇ!!』 『これは遊びじゃない!!』 『ああそうだろうよ!!』」

 

納沙が珍しくやくざモノの映画ではなく、アメリカの某有名なアクション俳優が出演した映画の吹き替えセリフを言う。

 

「こんな時に何を言っているんだ!?」

 

「こうでもしないと、気が狂いそうなんですよ!!」

 

真白が納沙にツッコミを入れるが、納沙自身も少し現実逃避しなければ、発狂しそうだと言う。

 

「おい、いつまで一杯なんでぇ!!そう長く持たせられねぇよ!!」

 

「油も馬鹿喰いしているんだけど!? 」

 

機関室からは晴風自慢の高出力でも、長時間の全速運転‥しかも、比叡の砲撃から逃れる為、回避行動をしながらでの全速運転では、そう長くは持たないと報告が入る。

 

「もとより航続距離は向こうが上ですし、こちらは無理な動きを続けていますからね」

 

機関室からの報告を聞き、かなり不利な状況であると納沙も感じている。

 

「ココちゃん、例の海域のデータを見せて!!」

 

「はい、どうぞ」

 

納沙は現在、晴風が逃げ回っている海域のデータが記されたページが乗っているタブレットを明乃に差し出す。

 

「すごいねこれ」

 

「データはより多くより新しくがモットーでして。個人的に収集していますから!」

 

「お主やるではないか」

 

「このへんでええとこ見せんともう舞台は回ってきませんけぇ」

 

「間尺に合わん仕事かもしれんなぁ」

 

こんな時でも何故か任侠映画のセリフを吐く納沙とミーナであった。

 

「‥‥」

 

そんな二人のやり取りをスルーしつつ、明乃はジッとタブレットを見ている。

 

「‥‥これなら、いけるかも」

 

明乃は何か作戦を思いついたと思ったら、無線電話の受話器に手を伸ばした。

 

「もしもし、碇艦長」

 

「岬艦長、やはり無茶が過ぎる。今すぐ退避して!!」

 

比叡から攻撃を受ける晴風を見て、シュテルは晴風に退避を促す。

 

「いえ、先程記録係の子からこの海域の海洋データを見て、作戦を立てました」

 

明乃はシュテルに今回の作戦を伝える。

 

「‥‥なるほど、それなら比叡を無力化できるし、動きも止められる」

 

「はい。ただ、比叡同様、喫水が深いヒンデンブルクは航行に注意してください」

 

「了解」

 

明乃から作戦内容を聞いたシュテルは、

 

「メイリン」

 

「はい!!」

 

「この海域のデータを見せて」

 

「はい、どうぞ」

 

メイリンからタブレットを受け取り、この海域のデータを見ながら、比叡の動向もうかがうシュテル。

 

「‥副長」

 

「はい」

 

「比叡の動向と牽制射撃の指揮を頼む。私は、操艦の指示と海面データから喫水の調整を機関室に伝える」

 

「分かりました」

 

流石にシュテル一人で、海洋データを見ながら、比叡の動向と牽制射撃、喫水の調整を機関室に指示するのは困難なので、比叡に関しては副長のクリスに任せた。

先程、納沙の言った通り、この航行海域が制限された海域にて、チキンレースみたいな光景が広がった。

 

「此処が勝負どころじゃあ!!」

 

「後がないんじゃ!」

 

納沙とミーナは台詞どころか顔も任侠を意識している。

 

「あ、当たりそう~‥‥」

 

後方から降って来る比叡の砲弾に震えながら舵を握る鈴。

 

「大丈夫、鈴ちゃんの操艦なら絶対に当たらないよ」

 

鈴の不安を拭うかのように微笑みを浮かべながら鈴を励ます明乃。

 

「岬さん‥‥うん、頑張る!!」

 

目に涙を浮かべながらも鈴は決意した表情で舵をギュッと力強く握る。

 

 

「比叡、第一ポイントへの誘導へ乗りました!」

 

「ここで座礁させれば沈めずに足を止められる!」

 

明乃が立てた作戦は、この狭水道に比叡を座礁させて、比叡の動きを止めるというモノだった。

 

「撃て!!」

 

比叡の後方から追いかけるヒンデンブルクは比叡に牽制射撃をしながら、比叡を座礁ポイントにて、座礁させようとするも、比叡はヒンデンブルクからの砲撃を気にせず、晴風を追いかけて行く。

 

「外した!?」

 

「比叡、第二ポイント通過確認!」

 

「機関室、バラストちょい上げ!!」

 

「りょ、了解。しかし、艦長、バラストを上げ過ぎると、艦の安定が崩れるから、バラストを上げ過ぎたら、もう主砲は撃てへんよ!!」

 

「分かっている」

 

主砲の衝撃は凄く、バラストを上げ過ぎた状態で主砲を撃てば、そのまま横転してしまう。

だが、バラストを上げて喫水を上げなければ、この狭水道を航行できずに比叡を座礁させる前にこちらが座礁してしまう。

牽制射撃に関しては主砲ではなく、副砲だけでもいい。

砲が撃てるまでに何とか比叡を座礁させる必要があった。

 

「取り舵十五度」

 

「取り舵十五!!」

 

シュテルがタブレットと海図を見ながら、レヴィに指示を出す。

ヒンデンブルクが比叡を追いかけている間にも、その比叡は晴風に発砲し続けている。

 

「右舷に着弾!」

 

「と~りか~じ!」

 

明乃は艦橋の天井にあるハッチを開け、身を乗り出して鈴に指示を出す。

なお、猿島の時と同じ様に真白が明乃を肩車している。

 

「もど~せ~!」

 

「もど~せ~!」

 

明乃の指示を真白が復唱して、鈴に伝える。

比叡の砲弾は晴風の右舷後方に着弾し水柱を上げる。

 

「タマちゃん、メイちゃん、砲撃と雷撃の指示。お願い!」

 

「了解!!」

 

「うぃ」

 

「戦闘、右、雷撃。発射雷数2、目標、比叡左舷」

 

「でも、あくまでも目的は比叡を座礁させることだから、当てないようにね、それと比叡の後ろにはヒンデンブルクもいるから」

 

「なかなか、難しいなぁ~」

 

比叡、ヒンデンブルクに当てないように魚雷を撃つことに困難さを感じつつ、西崎は魚雷発射管の調整をする。

 

「タマちゃん、こちらの砲では装甲を抜けないから、当てるつもりで撃っていい。ただし、左舷よりに着弾させて少しでも右に誘導して!」

 

「うぃ」

 

「攻撃始め~!」

 

晴風の後方の主砲が比叡に向けて撃つ。

晴風から放たれた砲弾は左舷ギリギリに着弾し水柱を上げる。

比叡の方も負けじと晴風に向けて撃つ。

 

「既定のコースを進んでください。海底に障害物は、ありません」

 

納沙がタブレットを見ながら、鈴に指示を出す。

 

「う、うん」

 

相変わらず、目に涙を浮かべながらも明乃と納沙の指示通りに舵を切る鈴。

 

「勝負どころじゃあ‥‥狙うもんより狙われるもんの方が強いけぇ‥‥」

 

「後がないんじゃあ!!」

 

晴風とヒンデンブルクが挑発、そして座礁を誘発させるように比叡に砲撃するが、比叡は座礁ポイントを抜けた。

 

(ウィルスに感染しているとはいえ、やはり、横須賀女子の駿河に次ぐ優秀な生徒が乗艦しているだけあって、なかなか上手くはいかないな‥‥)

 

座礁ポイントを躱した比叡を追いかけながらシュテルは苦虫を嚙み潰したように顔を歪める。

 

(早く仕留めないと、晴風の負担も大きくなる‥‥)

 

(でも、ここで焦るわけにはいかない)

 

(くっ、ミケちゃん‥‥晴風、もう少し頑張ってくれ‥‥)

 

比叡の攻撃を受けながら航行する晴風を見ながら、手に力が入るシュテルだった。

 

「撃ってきた!と~りか~じ!」

 

「と~りか~じ!」

 

比叡の砲弾は晴風の左舷後方の付近に着弾。

至近弾だったため、着弾の衝撃波が晴風に襲い艦橋にいる全員がよろける。

 

「至近弾!左舷後方に着弾!」

 

「損害は!?もう少しだけ頑張って!」

 

すると、機関室では。至近弾の影響でバルブが破損し、破損箇所から蒸気が吹き出す。

機関科メンバーは破損したバルブから急いで離れる。

 

「蒸気バルブ破損!!」

 

「ヤバイって!これじゃ速力維持出来ないよ!」

 

「わ~てる!まだか艦長!」

 

「マロンちゃん!!あと、十分!!十分だけ持たせて!!」

 

「分かったけどよぉ!!本当に十分で片を点けねぇと、エンジンがぶっ壊れるぞ!!」

 

晴風の機関は限界が近いようだ。

元々、試験的に導入された高出力の蒸気エンジンで、スピードが出る分、メンテナンスの手間はかかるし、機嫌を損ねて故障することも多々あった。

初日の航海で故障して、集合場所に遅刻したのも、機関が原因でもあった。

それに今の衝撃で蒸気バルブが破損したので、エンジンはもとより、機関室にいる機関科のクラスメイトたちも早く片をつけて、エンジンを停めなければ、全員が脱水症状を起こして倒れてしまう。

 

「艦長!座礁させるポイントを今度も抜けてこられたらどうする!?」

 

「まだだよ!!まだ終わってない!!」

 

「しかし、艦長!もう‥‥!」

 

「越えられない嵐はないんだよ!!」

 

「‥‥」

 

真白は、明乃の言葉に何かを感じたのか、黙ってしまう。

今の明乃はこれまで真白が見てきたのほほんとした明乃ではなく、自分の姉たちの様に鬼気迫るモノ‥その片鱗を感じた。

晴風、比叡、ヒンデンブルクの追いかけっこが始まって一体どれだけの時間が過ぎただろうか?

比叡は前を逃げる晴風に対してバカスカ主砲を撃ってくるが、未だに被弾はない。

明乃が言う通り、鈴の操艦は学生ながらも天下一品だ。

すると、真白は一度比叡に避けられた座礁ポイントに戻ってきていることに気づく。

晴風、比叡、ヒンデンブルクは同じコースをグルっと一周してきたのだ。

このことから、比叡は完全に晴風の術中に嵌まっており、ヒンデンブルクに追いかけられているにもかかわらず、比叡はこの海域から逃亡しようとはせず、晴風を沈めるまで追いかけるつもりなのだろうか?

そのしつこさはもう、世界的に有名な三世の泥棒を追いかけるICPOの警部みたいだ。

 

「さっきと同じ所に戻ってきている。此処じゃ比叡は座礁しなかったぞ!」

 

真白が比叡を座礁させる為の第一ポイントに来たが、最初にこのポイントに来た時、比叡は座礁せずに晴風を追いかけてきた。

またこの座礁ポイントに来ても比叡は座礁しないのではないかと真白は声をあげる。

 

「ひめちゃん、今!!」

 

しかし、明乃は真白の声を無視して、和住に晴風のバラスト水の排水を指示する。

 

「了解!!バラスト排水!!」

 

和住は明乃から指示が来たので、バラストタンクを排水するバルブを思いっきり、回す。

すると、バラストタンクから水が排水されて晴風の喫水が上がる。

 

「艦長、バラストを排水したら安定性が‥‥!?」

 

バラスト水を捨て、喫水を上げると、艦の安定が不安定となり、比叡の攻撃の直撃弾を受けなくてもその衝撃でバランスを崩して転覆するかもしれない。

その他にも高速で動き回ると、ドリフトを失敗して、横転する可能性もある。

 

「鈴ちゃん!!速度一杯で!!」

 

それでも、明乃は速度を落とすことはしなかった。

 

「は、はい!!」

 

「比叡、先程と同じコースに入りました!!」

 

「晴風もバラスト水を捨てたみたいです!!」

 

「副砲発射!!比叡を追い込め!!」

 

ヒンデンブルクもバラスト水を捨てており、バランスが万全と言うわけではないので、衝撃が強い主砲ではなく、両舷の副砲で比叡に対して、牽制射撃を行う。

さらに主砲で牽制射撃をしていた時と比べ、かなりの至近距離に着弾するように修正射撃を行う。

先程よりも射撃の距離が縮まったことを察した比叡は咄嗟に左に舵をとる。

そのまま晴風を追いかけようとする比叡であったが、比叡の船体が急に傾いた。

 

ズサーッ‥‥ガガガガ‥‥

 

同時に海中では物凄い鈍く、不協な音が響く。

先程避けた座礁ポイントに比叡は座礁し、停止した。

 

「比叡座礁!!航行不能になったもよう!!」

 

比叡は座礁したが、砲はまだ生きており、浮き砲台状態となってもまだ晴風に対して砲撃をしている。

 

「バラスト戻せ!!比叡の真横に着け!!」

 

ヒンデンブルクはバラストを戻し、比叡の真横に来ると、

 

「主砲斉射!!撃て!!」

 

模擬弾で、比叡を砲撃し、完全に比叡を無力化させる。

比叡が完全に無力化したことを確認した晴風はようやく機関を止める。

 

「機関停止!!」

 

「機関停止」

 

機関が止まり、破損した蒸気バルブから蒸気の噴出も止める。

 

「ふぇ~‥‥やっと、終わった‥‥」

 

「あっつ!!機関室、蒸し風呂じゃん‥‥!!」

 

「早くお風呂に入りたい~」

 

高温の蒸気が先程まで噴出していた為、晴風の機関室はまさにサウナ状態だった。

柳原たち、機関科のクラスメイトたちは全員が汗まみれになっていた。

 

「風呂もいいが、先にぶっ壊れたパイプの修理とエンジンの総チェックをしちまうぞ」

 

「「「「うぇーい‥‥」」」」

 

柳原が風呂に入る前に破損した蒸気パイプと無理して稼働させたエンジンのチェックを行うことにする。

機関科のクラスメイトたちは汗まみれのまま、もう一仕事することになった。

本音としては、さっさとお風呂に入って汗を流したいところだが、蒸気バルブが破損したままでは、今後も航行にも支障が出るし、常に機関室がサウナ状態となるので、蒸気バルブの修理は早急にやる必要があった。

 

「でも、何故比叡は座礁したんだ?最初にあそこを通った時、比叡は座礁しなかったのに‥‥」

 

座礁した比叡を見ながら、真白が呟く。

 

「それは、潮の満ち引きだよ」

 

「潮の満ち引き?」

 

「そう、ココちゃんのお陰だよ。オンラインの海図だったから水深の変化はリアルタイムで分かったし」

 

「なるほど、前に通った時より潮が引いて。水位が下がっていると」

 

「そこまで想定していたのか‥‥」

 

比叡を座礁させるにしてもヒンデンブルクの砲撃で追い込む方法の他に明乃は潮流を利用して、浅瀬になった場所に比叡を誘い込ませるまたはヒンデンブルクの砲撃で追い込み座礁させる二重の罠を画策していた。

比叡が最初、あのポイントを通り抜けたのは、当初まだ水深が座礁するほど、浅くなっておらず、逃げ回っている最中に潮の満ち引きで、この海域の水深は徐々に浅くなっており、晴風とヒンデンブルクはバラスト水を徐々に捨てたことで喫水を浅くして、座礁を防いでいた。

ウィルスに感染した比叡の乗員は、理性が落ちた為、潮の満ち引きまでには注意がいかなかったみたいだ。

 

「私達が助けたんだよね?」

 

「トラック諸島と比叡と、両方とも」

 

「うちの艦長って、結構いけるくちなのかな?」

 

「その褒め方おかしいから」

 

晴風の後方で座礁し、沈黙している比叡を見て、呟く晴風のクラスメイトたち。

トラック、ひいては世界中をあのウィルスの感染から救ったことにまだ実感がわかず、呆然としている。

だが、時間の経過とともに実感が段々と湧き上がると、あちこちで歓声が上がり始める。

 

「私‥今、艦長‥だったかな?」

 

「うん、今の岬さんは立派な艦長に見えるよ!!」

 

鈴は比叡を相手にしていた時の明乃はまさに艦長であったと言う。

 

「宗谷さんもそう思うでしょう?」

 

「ええ‥まぁ‥‥らしかったです‥‥幾分ですけど‥‥」

 

真白は渋々であるが、明乃を艦長として認めた。

 

比叡を座礁・無力化させ、あとはブルーマーメイドの到着を待つだけとなった。

そこへ、

 

「ん?艦長、インディペンデンス級戦闘艦が此方に向かってきます」

 

ヒンデンブルクのCICがこちらに接近するインディペンデンス級を探知する。

 

「インディペンデンス級?‥ってことはブルーマーメイドのご到着か‥‥」

 

やがて、一隻のインディペンデンス級がこの海域に到着した。

 

「黒いインディペンデンス級‥‥ま、まさか‥‥」

 

真白はこちらに接近してくるインディペンデンス級が黒いインディペンデンス級と言うことを聞いて、顔色を悪くする。

晴風、ヒンデンブルクの近くに黒いインディペンデンス級が到着する。

艦尾には「べんてん」と書かれていた。

すると、べんてんの甲板から黒いブルーマーメイドの制服に黒のマントを纏った女性が飛び乗ってきた。

 

「結構な高さがあったのに、痺れている様子がない‥‥」

 

べんてんと晴風の甲板はそれなりの高さに差があったのに、飛び降りてきた女性は痺れた様子もなく、平然としている。

 

「ブルーマーメイドの宗谷真冬だ。後は任せろ‥‥おっ?そこに居るのはシロじゃねぇか!」

 

(やっぱり、真冬姉さんか‥‥)

 

黒服のブルーマーメイドの隊員は、宗谷家の次女で、真白の姉であり、ブルーマーメイド強制執行課 保安即応艦隊二等保安監督官、べんてん艦長の宗谷真冬は自己紹介したと思ったら、真白を見つけて、彼女に近づく。

そして、真白の肩に手を伸ばし、抱き寄せる。

 

「シロ!!久しぶりだな、おい!!」

 

「ちょ、やめてよ!!姉さん!!」

 

「なるほど、名字が同じですしね」

 

納沙は真白と真冬の名字が同じであり、真冬と真白の目元や雰囲気が似ていることから、二人が姉妹であることに納得する。

 

「二人とも仲がいいなぁ~」

 

明乃は真冬と真白の二人の様子を見て、仲のいい姉妹であると感想を述べる。

 

「縮こまりやがって、お姉さんが根性を注入してやろうか?」

 

「根性‥注入?」

 

真冬の『根性注入』と言う言葉に明乃が反応する。

 

「いらないわよ!!根性注入なんて!!」

 

「お願いしてもいいですか?」

 

真白は拒否するが、明乃は真冬の言う『根性注入』に興味があるのか、自分にやってくれと言う。

 

「ば、バカやめ‥‥」

 

真白は真冬の『根性注入』がなんなのか当然知っているので、明乃にやめるように言うが、

 

「おう!任せとけ!」

 

真冬は既にやる気満々の様子。

しかも、何故か拳を鳴らしている。

頬をビンタでもするつもりなのだろうか?

 

「覚悟はいいな?」

 

「はい!!お願いします!!」

 

周囲のクラスメイトたちは緊張した面持ちで、事の成り行きを見ている。

 

「よ~し!!まずは回れ右だ!!」

 

真冬は明乃に背を向けさせる。

 

(あれ?)

 

ビンタをするにしても背中を向かせるなんて妙だ。

一体、真冬の『根性注入』とは一体何なのだろう?

 

「行くぜ‥‥」

 

真白は何やら気合を入れて構えると、

 

「根性‥‥注入―――!!」

 

真冬は明乃のお尻目掛けて両手を前に出す。

すると、お尻を揉み出す。

お尻を揉み出す真冬を見て晴風のクラス全員がドン引きする。

だが、それは明乃のお尻ではない。

 

「根性、根性、根性‥‥ってあれ?何で?シロが?」

 

妹の真白は当然、姉である真冬の『根性注入』がなんであるか知っている。

真白は、明乃をかばい代わりに犠牲になった。

 

「こんな辱しめは、身内で留めておかないと‥‥」

 

「ふ~ん、お前がいいなら構わねぇが~‥‥船乗りは尻が命だからな!!」

 

「ちょ、やめて!!」

 

「おお!?ちょっと柔になってね~か?この尻!」

 

「やめて!!姉さん!!」

 

「こんな、尻じゃシケる海を越えられねぇぞ!おらおら、根性!根性!」

 

本来の目的である明乃へ根性を注入する筈が、妹の真白に代わってしまったが、それでも真冬は止めず、

 

「おらおら、根性!根性!」

 

「止めて!!」

 

「もう一根性だ!!」

 

結局、真白は真冬に尻を揉みくちゃにされた。

 

「‥‥一体何をしているんだ?」

 

シュテルがクリス、ユーリを連れて、晴風に来てみると、お尻を手で抑えて悶絶している真白と顔を赤らめている晴風のクラスメイトたち‥‥

この場で一体何があったのか、シュテルたちには知る由もなかった。

 

「ん?お前らはあのドイツ艦の連中か?」

 

制服が異なるシュテルたちを見て、三人がヒンデンブルクの乗員であることに気づいた真冬。

 

「はい。ドイツ・キール校所属、ヒンデンブルク艦長のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇です」

 

「同じく、ヒンデンブルク副長のクリス・フォン・エブナーです」

 

「ヒンデンブルク砲雷長、ユーリ・エーベルバッハ」

 

「おう、真霜姉さんから聞いている。晴風を守ってくれてありがとな」

 

「いえ、彼女たちは大切な後輩ですから‥‥それで、比叡の方は?」

 

「今、ウチの臨検員が比叡の乗員にワクチンを打っている。それが終わったら、こっちで比叡は横須賀に曳航する」

 

「分かりました。比叡の事、よろしくお願いします。では、我々は引き続き、行方不明になっている学生艦の捜索に戻ります」

 

シュテルが真冬に報告した後、彼女に背を向けると、

 

(へぇ~あのドイツっ娘、中々の尻じゃねぇか‥‥胸も服の上から見ても中々の形だし‥‥揉み心地は良さそうだ‥‥)

 

真冬はシュテルの胸と尻を見て、触りたくなり、ゆっくりとシュテルに近づき、一気にシュテルの尻を揉もうとすると、

 

ガチャっ×2

 

「っ!?」

 

「「‥‥」」

 

真冬の蟀谷に金属質なモノが押し付けられる。

その様子を見て、晴風のクラスメイトたちは、今度は顔を青ざめる。

なんと、クリスとユーリが、ルガーP08を真冬に突きつけていたのだ。

 

「今、ウチの艦長に何をしようとしたのかな?‥かな?」

 

「いっぺん‥‥死んでみる?」

 

「ちょ、二人とも何をしているの!?」

 

シュテルが振り返ると、クリスとユーリが真冬に銃を突き付けていたので、慌てて二人に銃を仕舞う様に言う。

 

「す、すみません!!私のクラスメイトが‥‥」

 

「い、いや、こっちも非があった」

 

「?」

 

真冬の言う『非』について、シュテルは首を傾げた。

 

(コイツ等、本当に高校生か?)

 

そして、真冬はクリスとユーリの素早い動きを見て、この二人が本当に高校生なのか疑問に感じた。

あの時、クリスとユーリからは冷たい殺気を感じたからだ。

真冬の他に、晴風のクラスメイトたちもクリスとユーリの二人を怒らせてはならないと心に刻んだ。

 

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