やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
ですが、ここでも奉仕部メンバーの知る前世とは流れが異なる展開に‥‥
ここで視点は、南洋で行方不明になった横須賀女子の学生艦を捜しているヒンデンブルクと晴風から、千葉県の総武高校に移る。
前世の戸塚の依頼‥‥テニス部の強化と言う依頼は、前世と異なる事態に‥‥三浦が一年の頃から、テニス部のマネージャーであったと言う前世との違いから、後世奉仕部にとって、初めての依頼であったのだが、黒星からのスタートとなった。
いや、正確に依頼さえされていない何とも苦い結果となった。
テニス場での騒ぎは、葉山隼人と言うカリスマ的存在が中心に居たせいもあって、奉仕部メンバー及び、乱入してきた相模南はしばらくの間、噂の中心人物となった。
しかも、良い噂ではなく、悪い噂での‥‥
しかし、その噂の中心人物は、葉山ではなく、主に相模と雪ノ下の二人であり、葉山は紆余曲折から、どちらかと言うと、巻き込まれた被害者と言う立ち位置であった。
雪ノ下は二学年の首席で、総武高校内でも有名であり、その他にも去年の文化祭実行委員で、まさに毒舌と独裁、そして、シミュレーションでも同じクラスメイトに対しても平然と毒を吐き、横柄な態度を取り続けているので、生徒内でも元々評判が悪い。
だが、成績や上辺でしか見ていない教師の間では、雪ノ下の評判はいい‥‥
それに対して嫉妬していた生徒も多かったので、噂には尾ひれがつく結果となった。
そして相模の方は、葉山グループに所属していることから、クラスでも女王様気取り‥‥
それは、前世の三浦以上の尊大な態度を取っていた為、クラスの女子からの評判が悪く、この二人が葉山に我儘を言ってテニス場での騒動に巻き込んだと言う噂になっていた。
雪ノ下の方は、根も葉もない噂に関して、「くだらない」と言う態度で、肯定も否定もせず、噂が沈静化するまで沈黙を保った。
それに前世での虐めの経験の他に、学校中の生徒が雪ノ下の実家がこの千葉では大きな権力を持っていることを知っているので、彼女に暴力を振るえば、両親に迷惑をかけ、自分たちが千葉に住むことができないと思い込み、遠巻きから、ヒソヒソと陰口を叩くぐらいしか出来なかった。
相模の方は、真っ向から噂を否定し、葉山に弁護を頼む。
葉山本人としては問題をこれ以上大きくしたくない事と、自分に火の粉が被らないようにと保身の為ながらも自分にとって、今は重要な女避けの為、曖昧な立場ながらも、『相模さんは悪くないよ』みたいな態度をとった。
政治や芸能界のスキャンダルの様に、少しの間はこの噂が学校中で持ち切りになるが、次第に沈静化していき、忘れ去れる。
それに、二学年では、ゴールデンウイーク後には職場見学を控えており、二学年の学生たちはその職場見学の班決めや、どこに行くかの方が、興味があった。
とは言え、ほとんどの学生は女子ならブルーマーメイド、男子ならホワイトドルフィンで占められていた。
「ゴールデンウイーク明けに、職場見学がある。班の人数は、三人で一グループのメンバーでの見学となっている。よって、希望見学先に行けない場合もあるから、班のメンバーを決める時は、その点も考慮するように」
ホームルームにて、担任が調査用紙を配りながら、職場見学における注意点を伝える。
そして、ホームルームが終わり、学生たちは自宅に帰宅する者、塾へ行く者、部活動に行く者とそれぞれの行動に分かれる。
由比ヶ浜は奉仕部の部室がある特別棟へと向かい、葉山はサッカー部に顔を出す為、部室棟へと向かう。
由比ヶ浜が奉仕部の扉を開けると、奉仕部部長の雪ノ下が既に部室に来ており、紅茶を飲んでいた。
雪ノ下は由比ヶ浜が来たことに気づくと、彼女の為に紅茶を淹れる。
紅茶の入ったカップを受け取り、一口飲んだ後、由比ヶ浜は今日のホームルームで話題に上がった職場見学の事を雪ノ下に話す。
「今日、職場見学の紙を貰ったんだけど、ゆきのんは貰った?」
「ええ、受け取ったわ」
雪ノ下のクラスでも由比ヶ浜のクラス同様、今日のホームルームで職場見学の調査用紙が配られたみたいだ。
「それで、ゆきのんはどこに行くの?やっぱり、ブルーマーメイド?」
「そうね。まぁ、クラスの大半はブルーマーメイドかホワイトドルフィンでしょうからね」
「私のクラスも多分同じ」
雪ノ下はクラスでも浮いている為、班決めで彼女と同じ班になるクラスメイトは、班決めにあぶれた者と組むことになるだろうが、見学先はおそらくブルーマーメイドになるだろうから、見学先で別れれば、雪ノ下の毒舌を受けることもないだろうし、雪ノ下自身もそれを理解していた。
雪ノ下自身も友人でもないクラスメイトと職場見学なんて、正直に言って苦痛でしかない。
「あっ、職場見学と言えば‥‥」
由比ヶ浜は何かを思い出すかのように声を上げる。
「ん?どうしたの?」
「ほら、前の世界だと、職場見学の少し前に葉山君が依頼してきたじゃん」
「ああ、チェーンメールの件ね‥‥」
「うん、あのチェーンメール、多分この世界でも起きるんじゃないかな?」
「そうね‥‥でも、大丈夫でしょう。遺憾ながらも、前世であのゴミクズが、葉山君に解決策を提示していたから、この世界じゃあ、葉山君自身が自分で解決するでしょう」
「そうだね」
前世においてもこの時期に職場見学はあった。
そして、由比ヶ浜、葉山、八幡のクラスで、葉山グループに属する、戸部、大岡、大和の三人を誹謗するチェーンメールが出回った。
八幡は、他のクラスメイトとメールアドレスの交換をしていなかったので、彼にはチェーンメールが来ることはなかった。
奉仕部の部室で屯している時、由比ヶ浜はそのチェーンメールを受信した。
それを知った雪ノ下は、そのチェーンメールは八幡が回したモノだと証拠も確証もなしにいきなり犯人だと決めつけた。
だが、由比ヶ浜はそれをあっさりと否定した。
何故ならば、由比ヶ浜は八幡にメールアドレスを教えていないし、八幡も由比ヶ浜のメールアドレスを知らない。
八幡の疑いはあっさりと晴れたが、雪ノ下は一方的に八幡を犯人だと決めつけたにもかかわらず、彼に謝ることはなかった。
いくら冗談だとしても、証拠もなくいきなり犯人扱いをしたにもかかわらず、謝罪の一つもない行為は人としてどうなのだろうか?
自分は選ばれた人間なのだから、格下の人間に頭を下げる必要はないと思っていたのだろうか?
それとも、彼には何を言っても反論することも、怒ることもないので、何を言っても平気だと思っていたのだろうか?
いや、それとも雪ノ下の観点では、彼は部員でもなければ、人間でもない奉仕部の備品なので、部員でも、人間でもない物に謝る必要はないとさえ思っていたのだろうか?
そんな中、葉山がやってきて、このチェーンメールを何とかしてと依頼をしてきた。
このチェーンメールのせいでクラス中の空気が悪くなったと葉山は言うが、悪くなっていたのはあくまでも葉山グループの中だけで、クラス中の空気が悪くなったわけではない。
葉山はただ大げさに言っただけなのか?
それとも葉山グループ=クラスであり、2-Fは自分を中心に回っていると思い込んでいたのだろうか?
しかも、犯人を突き止めるのではなく、丸く収める‥‥つまりは有耶無耶にしてほしいと言う。
チェーンメールに書かれているメンバーが、自分のグループメンバーだったので、自分に火の粉が被る前にこの事態を何とか収めたかった。
しかし、自分のグループの問題にもかかわらず、自分が動き下手に波風を立てなくないという自らの保身のみを考えている葉山は、この問題を第三者である奉仕部に丸投げしてきた。
この依頼が、葉山が奉仕部を‥‥八幡を利用するきっかけとなった。
この時の葉山の依頼はどう考えても、奉仕部に丸投げする依頼で、奉仕部の理念とは異なっていた。
八幡たち奉仕部のメンバーが、それに気づき、彼の依頼を断るまたは今後は彼の依頼を受け付けない、それかその場で即決せずに依頼の内容を奉仕部のメンバーで吟味してから決めることにすれば、修学旅行‥そしてその後の悲劇は起きなかったのかもしれない。
雪ノ下は当初、葉山の依頼とは異なり、犯人を確定すると言い出した。
確かにこの時は、雪ノ下の意見は正しかったのかもしれない。
しかし、犯人を突き止めたら、葉山に伝え、その犯人をどうするかは葉山に任せるという形で、彼は渋々ながらもその条件をのみ、この依頼は受けることになった。
犯人の動機について、珍しく由比ヶ浜が冴え、職場見学で葉山と同じ班になる為、グループメンバーの誰か一人を蹴落とそうとしていると推測した。
八幡同様、ボッチの雪ノ下には予想もできないことだ。
そこで、雪ノ下は葉山にチェーンメールに書かれている三人のグループメンバーについて訊ねる。
まず、同じサッカー部に所属する戸部に関して、葉山は『グループ内のムードメーカー』と言うが、雪ノ下はその言葉を『騒ぐことしか能のないお調子し者』と解釈した。
次に大和に関して、葉山は『冷静で人の話をよく聞いてくれる。ゆったりとしたマイペースさで、寡黙で冷静ないい奴』と評するが、雪ノ下は『反応が鈍く優柔不断』とバッサリと切り捨てる。
三人目の大岡に関して、葉山は『人懐っこくいつも誰かの味方をしてくれる。人の上下関係にも気を配れるいい奴』と言うが、雪ノ下は『人の顔色を伺う風見鶏』と、会ったこともない男たちを酷評した。
チェーンメール以外に目の前で雪ノ下に堂々とグループメンバーが酷評されても葉山はそれを否定したり、反論することはなかった。
惚れている雪ノ下に口答えするのが嫌だったのか?
それとも雪ノ下の言う通りなのか?
真相は不明である。
兎に角、人物評価だけでは三人の内、誰が犯人なのか分からず、三人とも怪しく見える。
由比ヶ浜は同じグループに所属するくせに分からないという。
八幡はクラス内ではボッチで雪ノ下はクラスが異なる。
そこで、人間観察を得意とする八幡が三人の様子を見ることになった。
その結果、三人は葉山の友達の友達‥‥つまり、同じグループに居ても友人や仲間とは程遠く、赤の他人に近い関係と言うことから、彼は葉山に解決策として、『職場見学ではあの三人と違うメンバーで職場見学に行くと言え』と伝える。
葉山がそれを実行するとチェーンメールはピタッと止まった。
その事から、やはりあの三人の中に犯人が居たのは明白であった。
しかし、葉山としてはこれ以上の調査は不要とし、この依頼は片付いた。
そして、この後世でも職場見学があり、葉山グループのメンバーの男子は前世と同じく四人のメンバーであることから、この後世でもあのチェーンメール騒動は起きるだろうと由比ヶ浜は予測した。
しかし、葉山は前世の記憶を引き継いでいるので、チェーンメール騒動は簡単に終わるだろうと雪ノ下も由比ヶ浜‥‥いや、この場には居ないが、葉山本人もそう思っていた。
この時までは‥‥
それから、翌日、やはり例のチェーンメールが2-Fのクラス内で出回った。
『戸部はカラーギャングの仲間とゲーセンで西校狩り』
『大和は三股している最低の屑野郎』
『大岡はラフプレーで相手校のエース潰し』
内容も前世と同じである。
「葉山君。やっぱり、チェーンメールが出回ったね」
由比ヶ浜は予想通り、前世と同じタイミング、同じ内容でチェーンメールが出回った事に関して葉山に声をかける。
「ああ‥‥でも、大丈夫だよ。解決策はちゃんと分かっているから」
と、葉山は前世の経験から、この三人とは違うメンバーで職場見学を行くと言えば、このチェーンメール騒動は終わると思っていた。
しかし、葉山が宣言する前、このチェーンメールを送った犯人は、あまりにもチェーンメールをクラスにばら撒き過ぎた。
そして、チェーンメールを受け取ったクラスメイトの一人が、
「ねぇ、大和君って、三股かけられる程、モテると思う?」
と言う疑問をクラスに投げかけた。
その小さな疑問はあっという間にクラス中に広がった。
そこから、チェーンメールの文面を鵜呑みにした者たちが現れた。
真っ先に反応したのは同じグループメンバーの相模だった。
「ああ、それ分かる!!あんな、ぬぼーっとしたゴリラがモテる筈がないよね!!彼女が一人いるって言うだけでも、その人のセンスを疑うわ!!ブサ面専門のキチガイか飼育員か調教師志望の女ぐらいじゃない?それか、自分だけ疑われるのがマズいと思ったから、自分のも書いたとか?」
と、同じグループメンバーなのに、相模は大和を守るどころか、貶めると言うか、犯人と決めつけるかのような発言をした。
元々、葉山以外のグループメンバーを疎ましく思っていた相模はこの機会にまずは大和にこのチェーンメールを送った犯人と言う罪を着せてグループから追放することにした。
そして、同じグループメンバーが此処まで言うのだから、大和はチェーンメールの犯人ではないかと疑われた。
葉山はほんの僅か、動くのが遅すぎた。
彼が調査用紙を受け取った時点で三人に『俺は君たちとは別の人と班を組む』と言えばチェーンメール騒動自体起きなかっただろう。
大和は相模をはじめとするクラスメイト数人に口撃される。
「で?どうなの?」
「本当にアンタがこのチェーンメールを送った犯人なの?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
彼は事態を理解できずに動揺した。
「俺は、そんなメールは知らない!!大体、俺が送ったなんて証拠はないじゃないか!!」
クラスメイトからチェーンメールの犯人だと疑われたというよりも決めつけられた大和は当然、自らの潔白を訴える。
「は、隼人君、助けてくれよぉ~俺は本当にやっていない!!隼人君は信じてくれるよな!?なぁ!?」
そして、葉山からの弁護を期待した。
テニス場での騒動の時、有耶無耶ながらも彼は相模を弁護した。
それは、同じグループメンバーである仲間だからであり、きっと自分も弁護してこの疑いを晴らしてくれると思っていた。
「‥‥」
だが、大和の思いとは裏腹に、葉山は日和見主義で、厄介な問題には首を突っ込みたくない、関わりたくない、出来るなら、誰かに責任も含めて丸投げしたい、そんな男なので、大和の弁護をすることなく、彼からの悲願の目線に対して、曖昧な態度どころか、無視を決め込んだ。
葉山自身、あのチェーンメールの内容と前世の経験から、薄々チェーンメールの犯人は大和ではないかと思っていたからだ。
前世と同じく有耶無耶に出来る時期であれば、有耶無耶にしていたかもしれないが、今回はタイミングが悪い。
自分が解決する前にここまでクラスメイトたちがチェーンメールの犯人が大和であると決めつけている中、自分一人が大和を弁護すると、自分も非難を浴びる可能性がある。
自らの保身を第一とする日和見主義の葉山がそんな火中の栗を拾う行為をする訳がない。
それに葉山グループに所属する男は大和の他にあと二人いる‥‥
男の駒が一つ消えても葉山にとってなんら問題はなかった。
相模を助けたことに関して、相模はこの後世で三浦に代わる女避けだったので、雪ノ下と婚約するまで彼女にはまだ利用価値があったからだ。
だからこそ、彼は日和見主義を貫いて、利用価値がなくなった大和を見捨てた。
もし、この世界に八幡が存在して、此処までの事態になっていたら、葉山は前世の修学旅行の時の様に、個人的に彼にこの事態の収拾を依頼して、八幡の自己犠牲精神を利用して、彼に『俺が大和に罪を着せる為にチェーンメールを送った』と、言わせ、クラスメイトに冤罪を着せた奴隷(八幡)を処断し、濡れ衣を着せられたクラスメイトを救った英雄‥‥と言うシナリオを描いてそれを実行に移しただろう。
だが、その肝心の八幡がこの世界では存在しない。
奉仕部に依頼して、雪ノ下に迷惑をかける訳にもいかないので、葉山は大和に奉仕部も紹介しなかった。
「こんなチェーンメールを送くるなんて最低!!大和、アンタはもう、グループには不必要なゴミなの!!金輪際、私たちに近づかないで!!それと話しかけないで!!」
葉山から見捨てられた大和は、グループ内で孤立し、葉山に代わり相模が彼に引導を渡し、大和をグループから追放した。
トップカーストから追放され、身分が上流貴族から奴隷に格下げされた者の末路なんてだいたい決まっている。
「大和!!テメェ!!よくも根も葉もないデマをクラス中に垂れ流してくれたなぁ!!」
「それな」
「テメェが流したデマのせいで、俺も大岡も部活仲間からも白い目で見られたんだぞ!!」
「だな」
「ち、違う‥俺は何も‥‥」
「此処まで言われてまだ白を切るか!?」
大和は泣きながら必死に無実を訴えるも効果なく、かつてのグループメンバーからも激しく口撃をうける。
由比ヶ浜でさえも、彼を信じることなく、逆に周りの空気を読んで、
「大和君サイテー!!マジ、キモイ!!」
と、言って同じグループメンバーだった筈なのに、周りのクラスメイトに同調し、彼を弁護するどころか、大和に罵声を浴びせた。
「‥‥」
グループメンバーの中でただ一人、海老名だけは彼を責めることなく、また彼を弁護することもなく、我関さずの姿勢を貫いていた。
「大和。テメェ、モテないからって、あんな内容のチェーンメールを送るなんて、よっぽど女に飢えているんじゃねぇ?」
「毎晩、クラスの女子の裸や一緒にヤッテいるところでも想像してヌイているんじゃねぇの?」
「いやだ!!私、毎晩コイツの脳内で犯されているの!?」
「この変態!!」
「近づかないで!!妊娠しちゃう!!」
「こんな変態ゴリラの子供を身籠るなんて想像するだけでもおぞましいわ!!」
グループメンバーからも犯人だと決めつけられ、追放された大和はクラス内で完全に孤立し、日に日に彼を囲み罵声を浴びせる人数が増えていく。
それは部活動にも影響し、
「大和、テメェはもう部活には来るな!!」
「そうだ!!そうだ!!」
「テメェが俺らと同じ部活に居るってだけで、俺たちも周りから変な目で見られるんだよ!!」
「正直いい迷惑だ!!」
と、部活仲間からも見捨てられ大和は退部を要求される。
「先生、俺どうすれば‥‥」
「大和、お前にも何か問題があるんじゃないか?それに社会に出れば、こんな理不尽なことは日常茶飯事だぞ。今回の件は、今から社会の理不尽に耐えるいい機会じゃないか。自分で何とかするのも自らの成長につながるいい機会だ」
「そ、そんなっ!?」
と、教師に相談しても虐め問題と言う厄介ごとは御免だという感じで、まともに取り合ってくれない。
教師、グループメンバー、部活仲間、そして頼りにしていた葉山からも見捨てられた大和はついに心が折れた。
「うわぁぁぁぁぁー!!」
ある日、クラスメイトから口撃を受ける中、等々大和は泣きながらその場を逃げ出した。
そして、彼は翌日から学校に姿を見せなくなった。
大和の不登校以降、チェーンメールがピタッと止まる。
その事から、やはり彼がチェーンメールの犯人だと判断された。
もしかしたら、本当に大和が犯人だったのかもしれないし、彼に罪を着せようとした別の誰かが、大和の不登校をきっかけにチェーンメールの送信を止めたのかもしれない。
そもそも、チェーンメールを送り続けた犯人の目的が職場見学で葉山と同じ班メンバーになることであり、大和が抜けたことで、葉山を入れてちょうど三人となるわけなのだから‥‥
しかし、今となっては、真相は闇の中だ‥‥
だが、もし本当に彼が犯人だとすれば、他のグループメンバーを蹴落とすつもりが、自分が蹴落され、葉山との班の椅子を蹴落とそうとしていたグループメンバーに譲ると言う何とも皮肉な結果になった。
息子が突然不登校になったことに大和の両親は、当然学校に問い合わす。
すると、学校側は、生徒間の噂を鵜呑みにし、大和の親に対して、
「息子さん、実はクラス内で、クラスメイトたちにチェーンメールを送っていたみたいで、しかもその内容が他のクラスメイトにも補導歴が尽きそうな悪質な内容でして‥‥」
と、大和の両親に彼がチェーンメールの犯人であることを伝えた。
「おい!!先生に聞いたぞ!!お前、他のクラスメイトに随分と迷惑をかけたみたいじゃないか!!」
「ち、違う‥俺は‥‥」
「言い訳はするな!!見苦しいぞ!!」
教師が言うのであれば、それが事実なのだろうと思った両親は息子の話も満足に聞かずに、息子を責めた。
その結果、彼は精神を病み、部屋に引きこもるようになったが、それからすぐに両親が強制的に精神病院へと押し込んだ。
後世では葉山の望む形とは多少異なるが、チェーンメール騒動はこうして幕を下ろした。
それからしばらく間、不登校になった大和をネタに盛り上がっているクラスメイトの姿がそこにはあった。
しかし、その大半が事実を確認せず、ノリで大和を吊るし上げていた野次馬根性の連中で、しかも自分たちは正義の行いをしたと勘違いをしている者ばかりであった。
その人数は約二十名‥‥つまりクラスの過半数である。
集団心理とは、実に恐ろしいモノであるであるが、葉山本人はその集団心理の攻撃が自分に向かなければそれでいいと思っていた。
だが、彼らは気づいていなかった。
今回は、大和が標的となったが、次は我が身になるかもしれないという事を‥‥
狂気に満ちた集団心理の前に、証拠の有り無しなんて関係ない。
多数派の意見‥それが証拠となり、それが真実であり正義となることを‥‥。
「で、やっぱり、あのチェーンメールの犯人は大和君だったみたい」
チェーンメール騒動の後、由比ヶ浜は奉仕部の部室で、雪ノ下にこの後世で起きたチェーンメール騒動の顛末を伝える。
「そう‥‥葉山君にしては珍しく、今回は犯人を突き止めたのね」
「ううん、犯人を見つけたのは葉山君じゃなくて、クラスの皆って感じだった」
「葉山君は何か言ったり、止めなかったの?」
「うーん‥‥特にそんなそぶりはなかったかな?でも、犯人を見つけたことで、クラスの皆の絆と言うか、団結力は上がったんじゃないかな?」
「そう‥‥」
雪ノ下は今回の騒動の顛末に対して、特に興味なさそうに紅茶が入ったカップに口をつけた。
元々別のクラスの出来事であり、チェーンメールも自分に実害があった訳ではないので、本当に興味も関心もなかったのだろう。
そもそも、雪ノ下は前世も含めて奉仕部に持ち込まれた依頼自体、あまり積極的だったとは言えなかった。
それは、この後世でも同じことが言えた。
かつて、雪ノ下陽乃が言ったように、バラバラだった人たちの団結力を上げる方法‥‥それは、共通の敵を作ること‥‥
奇しくも2-Fのクラスメイトは同じクラスメイトを一人生贄にして、そのほとんどが団結した。
ただし、団結と言ってもそれは決して固いものではなく、ノリと悪ふざけだけと言う仮初で出来た脆いもので、次の獲物が現れれば次はそのクラスメイトが狩られると言う脆く、醜い結束だった。