やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
トラック諸島及びアドミラルティ諸島にて、行方不明になった学生艦の目撃情報が入り、トラック諸島には真白の姉であり、ブルーマーメイドの宗谷真冬が向かい、アドミラルティ諸島には、ヒンデンブルク、晴風が向かった。
ただし、この時点ではアドミラルティ諸島で目撃された学生艦がどの学生艦なのか、情報が入ってなかった。
その為、もしかしてアドミラルティ諸島で目撃された学生艦は、未だに行方不明になっているシュペーではないかと言う憶測がシュテル、そしてシュペー副長のミーナにはあった。
ミーナの話と海上でいきなり発砲してきたことから、シュペーの乗員もやはり例のウィルスに感染していることが窺える。
シュテルは、今回の事件で行方不明になっている学生艦の中で、シュペーは一番厄介な相手である。
行方不明になった学生艦は皆、今年は言ったばかりの新入生たちであるが、シュペーのみシュテルと同じ二年生‥‥
その為、大西洋での荒波に揉まれた経験、ドイツから日本までの長距離航海の経験もある。
戦闘力では、もえかの駿河が一番の相手であったが、乗員での質ではシュペーが一番だろう。
アドミラルティ諸島で目撃された学生艦がシュペーであってほしい反面、シュペーでない方が良いと思ってしまう。
だが、もしシュペーだった場合を考慮して、ミーナは一時晴風からヒンデンブルクに来てもらい、戦闘に巻き込まれないように、晴風には後方で待機してもらうようにシュテルは晴風の乗員に伝えた。
そして、アドミラルティ諸島に入ると学生艦の情報が入り、やはりアドミラルティ諸島で目撃された学生艦は、シュペーだった。
「総員戦闘配置!!」
シュペーの存在を確認したシュテルはシュペーとのドンパチは避けられないと判断し、戦闘配置を指示する。
艦内ではけたたましく警報が鳴り響き、乗員たちがそれぞれ、自分たちの部署へと配置につく。
「射撃指揮所!!配置につきました!!」
「機関室!!配置についたで!!いつでも全速だせるで、艦長!!」
「応急員、配置につきました!!」
「医務員、いつでも行けます」
「艦長。各部署、全て配置につきました」
「分かった」
相手があのシュペーと言うことでシュテルは無意識に緊張する。
交換留学の際、ダートマス校との演習試合では仲間であったが、今回は半ば敵対する関係‥‥
しかも自分たちの意志ではなく、あのネズミのせいで‥‥
そう思うとやるせない気持ちになるが、このままシュペーを放置する訳にはいかない。
「ブルーマーメイドへの連絡は?」
「しました。ですが、到着までやはり時間がかかってしまいます」
「そうか‥‥」
ブルーマーメイドはトラック諸島、フィリピン近海へと展開中でアドミラルティ諸島周辺にはヒンデンブルクと晴風ぐらいしか居なかった。
「シュペーの位置は?」
「前方10マイル!」
「見張り員、シュペーの様子はどうか?」
「砲の仰角はかかっていません‥‥」
「確かに、気がついた様子はないが‥‥」
「それも時間の問題だな、向こうは必ず気づくでしょう」
「そりゃあ、この艦がこの大きさだからな‥‥」
シュペーは前方からヒンデンブルク目掛けて航行している。
今の所は主砲を動かしていないことから、シュペーが、ヒンデンブルクの存在に気付いていないのだろうが、シュペーがヒンデンブルクの存在に気づくのは時間の問題である。
なにせ、ヒンデンブルクの大きさが大きさなのだから‥‥
「シュペー、直進してきます!!」
「間もなく、本艦の主砲の射程距離に入ります」
「機関、速力を上げろ!!こちらも堂々と正面から行くぞ!!」
「はっ!?シュペー!主砲旋回中!」
ここでようやくシュペーはヒンデンブルクの存在に気づいたのか、前部の第一主砲の仰角を上げ、砲塔をヒンデンブルクの方向に向ける。
そして、
ドォン!!ドォン!!ドォン!!
シュペーの第一主砲が火を吹いた。
「シュペー発砲!!」
「面舵一杯!!第一、第二主砲、砲撃用意!!」
「砲身仰角上げろ!!傾斜角入力!!」
ユーリが射撃指揮へ指示を出す。
その間にシュペーから放たれた砲弾がやってくると、ヒンデンブルクの周りに三つの水柱が立つ。
「主砲撃て!!」
ドォン!!ドォン!!
ドォン!!ドォン!!
ヒンデンブルクの第一、第二主砲がお返しと言わんばかりに放たれる。
すると、シュペーの周りに四つの水柱が立つ。
「シュペー、右に旋回」
シュペーは取り舵をきり、ヒンデンブルクから見ると、右に旋回する。
そして、両艦は平行戦の形となる。
旋回したシュペーは後部の第二主砲を撃ってくる。
その内の一発がヒンデンブルクの後部に命中する。
被弾の衝撃は艦橋にも伝わる。
「後部被弾!!」
「被害報告!!」
「被害、微少!!第一装甲板で防ぎました!!」
「流石、シュペーだ。僅か、二斉射でこちらに命中弾を与えるとは‥‥」
シュテルは不敵な笑みを浮かべる。
しかし、シュペーが放ったのは第二主砲だけではなく、
ドォン!!
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
「くっ‥‥な、なんだ!?」
「左舷船体部に魚雷が命中!!」
「なっ‥‥」
「まさか、魚雷まで撃っていたのか‥‥やられた‥‥やはり、テアは敵にすると厄介な相手だ」
「うむ、流石テアじゃ‥‥」
「ちょっと、二人とも感心している場合じゃないでしょう!!」
シュテルとミーナがテアの手腕を褒めていると、メイリンが突っ込む。
「分かっている。第三、第四主砲撃て!!応急員は至急現場に急行!!応急修理急げ!!」
ヒンデンブルクの後部にある第三、第四主砲が火を吹くと、シュペーの前部、後部にそれぞれ一発の命中弾を与える。
魚雷が命中した区画に応急員が向かうと、
「うわぁ、浸水している!!」
「応急修理急ぐぞ!!防水シートと当て木を早く持ってきて!!」
応急員たちは、ずぶ濡れになりながらも浸水箇所の応急修理に取り掛かった。
ドイツ艦同士が激しくドンパチをしている間、晴風は流れ弾に巻き込まれないように遠距離の後方で待機していたが、両艦の砲撃音は晴風まで余裕で届いていた。
「いいなぁ~‥‥あんなにドンパチ出来て~私だって撃ちたかったなぁ~」
「うぃ‥‥」
晴風の艦橋で、備え付けの双眼鏡を見ながら西崎と立石が砲撃戦をしているヒンデンブルクを羨ましそうに呟く。
西崎や立石の他に内田や山下も双眼鏡でドイツ艦同士のドンパチの行方を窺っている。
晴風の艦橋員の乗員以外にも気になった者は艦首に集まって双眼鏡で前方の海を見ている。
「わ、私はあそこに行かなくて良かったと思っているよぉ~」
舵輪を握りながら、涙目と涙声で鈴はあの激しいドンパチが行われている戦場の現場に行かなくてホッとしている。
ここまで激しい砲撃音が聞こえるくらいなのだから、きっとあの現場は激しい砲撃戦となっており、それはまさに戦争並みの光景になっているのだろう。
そんな現場に行かずに済んだのだから、鈴としては結果オーライだった。
真白もシュペーの乗員を救いたいと言う気持ちはあるが、やはり大口径の主砲弾が飛び交う現場へ、無理に首を突っ込み、艦、そして乗員を危険な目に遭わせることは避けたく、シュテルの提案には賛同する部分があった。
それに、駿河、比叡の時は、両艦を所有する横須賀女子にシュテルが許可を得てドンパチを行い、駿河、比叡の船体を少なからず傷つけた。
だが、これは横須賀女子の許可があり、合法的な行為だった。
しかし、シュペーを所有しているのは横須賀女子ではなく、ドイツのヴィルヘルムスハーフェン校である。
所属校どころか、所有している国までが異なる。
しかも、シュペーとの戦闘の許可はシュペーの母校であるヴィルヘルムスハーフェン校に貰っていない。
今からヴィルヘルムスハーフェン校に連絡を取るにしてもあまりにも時間がない。
日本の晴風がシュペーの船体を傷つけ、万が一にも乗員を死傷なんてすれば、それこそ、国際問題に発展しかねない。
自艦の防衛の為と言えば、やむを得ない行為として合法化できるだろうが、それでもこちら側も少なからずのダメージを負うことになる。
しかも相手はポケットがつくが、戦艦‥‥ダメージは深刻なものになるのは明白である。
それならば、同じドイツ所属の艦がシュペーの対処にあたってくれた方が、日本にとっても晴風にとってもダメージはない。
何だか責任をヒンデンブルクに押し付けた様な感じで、正直あまり良い気分ではないが、まだ高校生になりたての真白にとってはどうしようもないことだった。
しかし、明乃に関しては、こうして自分はただ見ているだけしかできないのか?
本当に自分にはなにか出来ることはないのか?
と、モヤモヤする気持ちだった。
駿河の時も遭難した新橋で真白が取り残された時も同じ気持ちを抱いていた。
(確か、駿河の時、シューちゃんは艦を接舷させて強襲していた‥‥それならシュペーの時も同じ方法をするかもしれない)
「美波さん、あのワクチンって晴風にもある?」
明乃は医務室に内線電話をかけ、例のウィルスに対抗できるワクチンが晴風に残っているか訊ねる。
「ああ、在庫は確保してある」
美波からの返信では、晴風の医務室にワクチンは有るみたいだ。
「艦長、ワクチンの在庫の有無を聞いてどうするんです?‥‥まさか、あの現場に行くつもりですか!?」
真白が明乃に今からあのドンパチしている海域へ乗り込もうと言うのかと訊ねる。
「行くにしても、まだ‥‥ヒンデンブルクがシュペーに接舷してから、こちらも援軍としてシュペーに人員を送るつもり‥‥つぐちゃん」
「はい」
「ヒンデンブルクとシュペーの戦闘が終わったら、ヒンデンブルクに通信を入れて」
「了解」
明乃は八木にヒンデンブルクとシュペーの戦闘が終わり、ヒンデンブルクがシュペーに接舷、もしくは、強襲のための人員をシュペーに送る時、援軍として晴風からも人員を送る旨の通信を出すように指示を出す。
(なんだか、漁夫の利を狙っているみたいだが、大丈夫だろうか?)
真白は、戦闘が終わった後、人員を送るやり方がなんだか晴風が漁夫の利を狙っているかのように見えた。
その間も、ヒンデンブルクとシュペーの戦いは続いていた。
平行戦になり、互いに殴り合うかのように砲撃をするヒンデンブルクとシュペーの両艦。
主砲を一発撃った後、次弾が給弾される間は副砲、高角砲で撃ち合う。
「副砲、高射砲戦闘用意!!」
「各砲塔を九時の方向へ!!急げ!!」
「距離8マイル、俯角15、弾種、徹甲榴弾!!」
「直接照準で各個射撃、任意の目標を狙え!!」
「射撃用意よし!!」
「撃て!!」
主砲よりも数が多い副砲、高射砲群の同士の撃ち合いも、当然戦争の様な有様だった。
「艦橋下部に被弾!!」
「医務員は至急現場へ急行!!負傷者の救助に当たれ!!」
「損害確認!!」
「三番高射砲被弾!!」
「六番高射砲、発射不能!!」
「二番副砲、よく狙え!!」
シュペーは晴風に左舷側のスクリューを潰されており、速力が半減し、ヒンデンブルクと比べると、攻撃力、防御力は、シュペーは劣る。
しかし、操艦が見事で、なかなか致命的な命中弾を与えることが出来ない。
「くっ、なかなか当たらない‥‥あのちびっ子艦長めぇ~‥‥」
なかなか命中弾を与えることが出来ないことにユーリがイラつく。
ユーリの他にシュテルも内心焦っていた。
「魚雷用意!!シュペーのもう一基のスクリューを潰す!!」
「了解」
これ以上、時間をかける訳にはいかないので、シュテルは魚雷によってもう一基のスクリューを潰し、シュペーの足を止めることにした。
「魚雷撃て!!」
ヒンデンブルクの左舷側にある魚雷発射管から魚雷を放つ。
「いけぇー!!」
魚雷は勢いよくシュペーへと向かって行く。
そして、シュペーの艦尾で大きな水柱が立つ。
魚雷がシュペーの残る右舷側のスクリューに命中したみたいだ。
「魚雷、シュペーに命中!!」
「シュペー、漂流を始めました!!」
スクリューが撃ち抜かれ、迷走し始めるシュペー。
しかし、スクリューが破損した為、やがてシュペーの行き足が止まる。
「シュペー、行き足止まりました!!」
「ふぅ~‥‥」
ひとまず、第一段階はなんとか終わった。
次の段階は、強襲接舷してテアたちシュペーの乗員にワクチンを投与する。
シュテルたちは、強襲接舷の準備を行う。
そんな中、晴風から通信が来る。
「艦長、晴風から通信です」
「ん?内容は?」
「はい、シュペー強襲の折、晴風からも人員を援軍として寄こすと言っていますが、どうしますか?」
「‥‥」
シュテルは一時、考え込むが、
「晴風に返信、『許可する‥‥速やかにシュペーへ、援軍を送られたし』と‥‥」
「了解です」
通信員は早速、晴風にシュテルからの返信を送った。
「ヒンデンブルクから返信です」
「ヒンデンブルクからは何て?」
「援軍を許可するとのことです」
ヒンデンブルクから‥シュテルから、援軍の許可が出たことに明乃はホッとした。
「これより、ヒンデンブルクの乗員と共にシュペーへの強襲を行う!!突入員は至急、甲板に集合!!」
艦内放送で明乃はシュペーに突入するメンバーを集めた。
シュペーに突入する晴風のメンバーは、野間、美波、等松、万里小路、青木が行くことになった。
ヒンデンブルクがシュペーに接舷し、晴風メンバーはスキッパーから、ワイヤを伸ばして、シュペーの甲板に乗り込む。
「うわぁ、あのヒンデンブルクがボロボロ‥‥」
スキッパーから見たヒンデンブルクを見た明乃が呟く。
左舷の副砲、高射砲群はシュペーの主砲、副砲、高角砲と撃ち合い、被弾しボロボロの状態だった。
シュペーに乗り込んだ野間を待ち受けていたのは、ウィルスに感染したシュペー乗員のエルフリーデ、エリーザ、マリーア、アレクサンドラの四人だった。
「私を倒せると思うなよ」
自分の周りを囲む四人のシュペー乗員に対し、怯む様子もなく、手にした水鉄砲を構える野間。
「ああ、もうマッチが戦っている!?マッチ!!」
野間に遅れて青木も梯子を登って単独で戦うマチコに加勢しようとした。
だが、野間は四人の攻撃を両手に持っていたライフル式水鉄砲で振り払いながら水鉄砲でまずエリーザ、マリーアを攻撃した。
海水を受けたエリーザ、マリーアはその場で意識を失い倒れる。
続いて、残るエルフリーデ、アレクサンドラが背後から攻撃してきたが、野間は、またも同じ様に振り払い、残る二人も水鉄砲で攻撃し倒した。
「‥‥見事だ」
野間の鮮やかな動きにミーナは思わずドイツ語で一言呟く。
「我々も負けてはられないぞ。駿河の時の様に、艦の主要部分を抑える!!」
シュテルもホルスターから、ルガーP08を抜いて、ミーナの案内の下、シュペーの艦橋を目指す。
テアはきっと、艦橋に居るだろうとミーナが言ったのだ。
ヒンデンブルクの乗員たちはシュペーの主要部分を奪還するために機関室、主砲制御室、CIC、操舵室へと分散していく。
一方、艦橋を目指すミーナ、シュテル、野間、万里小路、青木、等松、美波、そして五十六とカマクラは甲板の制圧が完了し、艦内へと入り、次々とウィルスに感染したシュペーの乗員を倒していた。
倒したシュペーの乗員には、美波が一人一人、ワクチンを注射する。
「こっちじゃ!」
やはり、自分が副長を務めることだけあって、ミーナは迷いなく、シュテルたちを艦橋へと案内する。
すると、前方からウィルスに感染したレターナ、ロミルダ、アウレリアの三人が立ちはだかった。
ミーナは、足を止めた。
シュテルがルガーを構えると、万里小路が前に出る。
彼女は手に持っていた長い棒状の物を包んでいる布袋を取る。
布袋の中身は、薙刀の練習に使用する木薙刀が入っていた。
万里小路は木薙刀を構えると、
「万里小路流薙刀術‥‥」
『うがああっ!!!』
レターナ、ロミルダ、アウレリアの三人が先頭の万里小路に襲い掛かる。
「‥‥当たると‥‥痛いですよ!!」
しかし、万里小路は三人を素早い薙刀捌きで倒す。
「うぉっ!凄いッス‥‥」
三人を一瞬に倒した事に青木は、驚きながら感想を呟いた。
「うん、本当にすごい‥‥それに、痛そう‥‥」
シュテルも同じく感想を口にする。
万里小路が言うように、防具なしで薙刀の技をくらったレターナ、ロミルダ、アウレリアの三人を見て、痛そうだと同情した。
ウィルスのおかげ?で、理性が落ちているので、痛感も鈍っているかもしれない。
意識を取り戻した時、少しでも痛みが引いていることを祈るばかりだ。
「兵は敵に因りて勝ちを制す」
美波はことわざを言いながら、床に倒れている三人にワクチンを注射する。
すると、レターナのポケットから例のマウスが出てきた。
「ぬぉ~!」
「ニャー!!」
マウスは五十六とカマクラの姿を見て、逃げ出す。
すると、五十六とカマクラは逃げていくマウスを追いかけて行く。
「あっ、カマクラ!!」
「五十六!!待つッス!!」
青木が五十六とカマクラを追いかけて行く。
ウィルスの原因であるマウスは五十六とカマクラに任せれば大丈夫だろう。
その後もミーナの案内でシュテルたちは艦橋を目指す。
そして、艦橋と目と鼻の先まで来た。
「此処を上がれば艦橋じゃ!」
ミーナを先頭にシュテル、万里小路、野間、美波、等松が艦橋に続く階段を登ろうとした時に後ろからウィルスに感染した生徒三人が迫ってきた。
それに気づいた等松は、
「此処は行かせない!マッチは私が守る!」
そう言って、三人の前に両手を広げ通せんぼする。
しかし、よく見ると、等松に迫ってくるのは三人だけでなく、その後ろからはウィルスに感染したシュペーの乗員がまだまだ追加でやってくる。
やはり、艦橋に近いから、乗員の人数も多いのだろう。
シュテルはまず先頭の三人をルガーP08で撃つ。
「これ、使って」
「えっ?」
シュテルは等松にルガーP08を手渡す。
拳銃を渡された等松は唖然とする。
「模擬弾だから、当たっても死なないから大丈夫。でも、当てる場合は頭部じゃなくて、身体を狙って、使い方は‥‥」
時間がないので、シュテルは等松にルガーP08の使い方と替えのマガジンも手渡す。
困惑する等松であるが、眼前にはウィルスに感染したシュペーの乗員が迫ってくる。
「くっ、やるしかない!!マッチの為に!!」
野間の為、等松は銃口を迫りくるシュペーの乗員に向ける。
この場を等松に任せ、艦橋を目指す。
そして、艦橋に着いたミーナたちは、辺りを見る。
射撃指揮所の外部には、ミーナと同じヴィルヘルムスハーフェン校の士官服を着てコートを纏った一人の生徒が立っていた。
「テア!!」
「艦長!!」
シュテルはその女生徒の名前を、そしてミーナは彼女の役職を叫ぶ。
その女生徒こそ、シュペー艦長のテア・クロイツェルだ。
テアは振り向いた時、彼女は無表情で目もこれまで倒してきたウィルスに感染した生徒と同じ目をしていた。
恐らくあの時、ミーナがテアから退艦するよう言われた時に彼女は既にウィルスに感染していたのだろう。
だからこそ、テアは自身が艦長だと言う理由以外でシュペーからは脱出せず、まだ感染していなかったミーナだけをシュペーから退艦させたのだろう。
「やはり、テアもウィルスに感染していたか‥‥」
「艦長‥‥」
「‥‥ミーナさん、ワクチンは持っている?」
「あ、ああ‥‥ハルトマン医師から受け取っている」
「‥‥私がテアを抑えるから、その隙にミーナさんはテアにワクチンを‥‥」
シュテルはサーベルをベルトから取り、コートも脱ぎながらミーナにそう言って先頭に立つ。
テアは目の前に居るのがシュテル、ミーナだと認識していない様子で、
「うぅぅ~いやー!」
唸りながら、容赦なく回し蹴りをしてくる。
「‥‥」
シュテルはテアの回し蹴りを手でガードして払いのける。
蹴りがガードされ、テアは悔しそうに顔を歪める。
やはり、身体が小さいテアの蹴りの威力はあまりなかった。
シュテルはダっとテアに向かって駆け出す。
すると、テアもシュテルを迎え撃つ。
二人は拳と蹴りのラッシュを繰り返す。
テアはシュテルの蹴りをジャンプで躱し、ドロップキックをしてくる。
シュテルは後ろに跳び、テアの蹴りを躱し、再びテアとの距離を縮める。
二人のキャットファイトはシュテルがテアを背後から羽交い絞めにしてようやく終結した。
「今だ!!ワクチンを!!」
「あ、ああ」
ミーナがテアの上着をめくり、腕にワクチンが入った注射器を突き刺し、ワクチンをテアに投与する。
ワクチンを投与されたばかり時、テアはまだ暴れていたが、次第にワクチンが効いてきたのか、大人しくなり、やがて、眠った。
「ふぅ~‥‥」
「遅れてごめんなさい」
意識を失ったテアにミーナは助けに来るのが遅れたことを謝る。
「それでも、ミーナさんはこうしてテアとの約束を守ったのだから、きっと許してくれるさ」
眠るテアを見ながらシュテルはそう呟いた。
やがて、シュペーのマストに白旗が掲げられ、制圧が完全に終わったことを晴風に伝える。
「ぬぅ」
「ニャー」
五十六とカマクラはシュペーに居たあのマウスを捕まえ青木の前に戦果を見せるように置く。
「これで、十‥いや、十一匹目‥‥お手柄ッスねぇ~‥‥」
艦内に居たRATを全て捕まえた五十六とカマクラを青きは、大いに褒めたたえた。
駿河、比叡に続き、シュペーもこれでウィルスから解放されたのであった。