やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
赤道を越えたヒンデンブルクと晴風。
それを記念して晴風の機関長、柳原から赤道祭をやろうと提案があり、彼女は実行委員になるまで、赤道祭に積極的に動いた。
しかし、彼女の思いとは裏腹に晴風のクラスメイトたちはその大半が赤道祭には消極的であり、準備もあまりはかどらない。
そんな現状を目にした柳原は等々キレて何処かに走り去っていく。
企画・実行委員の柳原がまさかそんな事態になっているとは知らず、晴風の艦橋では赤道祭に協力的な納沙が出し物である演劇のシナリオを描いていた。
「シロちゃ~ん!この続きは如何したら良いと思います?」
納沙がシナリオの続きの意見を真白に訊ねる。
「如何でも良いと思う‥‥」
反対に真白は赤道祭にはあまり積極的ではないのか、納沙へなげやりな返答をする。
それとも、うっとおしいほど自分に引っ付いてくる納沙にげんなりしているのかもしれない。
「ええぇ~投げやりだなぁ~」
「相変わらずだね、ココちゃん‥‥」
納沙の長所はキャラがブレない所になるのかもしれない。
トイレットペーパーの在庫がなくなり、明乃たちが海上ショッピングモールへ買い出しに行った時も、ジンバブエドルの話から、しりとり、古今東西と、切り替えも早かった。
そんな中、
「艦長!!」
黒木が艦橋に飛び込んできた。
「どうしたの?クロちゃん」
「あっ!いえ‥‥機関長が‥‥」
黒木は慌てて艦橋に飛び込んできたは良いが、なんか気まずそうな様子だ。
「マロンちゃんが如何かした!?」
もしかしたら、柳原が赤道祭の準備中に怪我でもしたのだろうか?
明乃はちょっと心配そうに黒木に柳原の身に何があったのかを問う。
「‥‥それが‥‥その‥‥拗ねました」
黒木は明乃から視線を逸らし、柳原が拗ねたと答えた。
『‥‥えっ?』
黒木の返答を聞いて、艦橋に居たメンバー全員が目を点にして( ゚д゚)ポカーンとした。
「ですから、機関長が拗ねました!!」
「なんで、そんな事態になったんだ?」
そして、真白は何故柳原が拗ねたのか?その原因を黒木に訊ねた。
艦橋で黒木が何故、柳原が拗ねたか、原因を説明している中、晴風の通路にて、和住が木箱を一度バラして何かを組み立てていた。
そこをお手洗いから戻った小笠原が見つけ、
「何作ってんの?」
和住に何を作っているのかを訊ねる。
「できてからのお楽しみ、お楽しみ~」
そう言いながら、和住は木材に釘を打ち込んでいる。
ここでも和住は何を作っているのか秘密にしていた。
小笠原は特に興味はなかったのか、それ以上聞くこともなく、その場から去って行った。
「成程。自分の思うように盛り上がらなくて拗ねたのか‥‥」
柳原が拗ねた理由を聞き、明乃、真白が赤道祭の会場であるヒンデンブルクの後部甲板へと来ると、準備は思いのほか進んでおらず、晴風航海科のクラスメイトたちは赤道祭準備をせず、晴風の甲板でトランプをしていた。
機関科の四人娘たちは流石に柳原への罪悪感を覚えたのか飾りつけをしていた。
「いつもは威勢がいいんですが一旦ヘソを曲げるとテコでも動かなくて‥‥」
「でも、どうするの?実行委員の彼女が、拗ねていては、赤道祭が出来ないんじゃない?」
シュテルが赤道祭を実行できるのだろうかと訊ねる。
「クロちゃん、マロンちゃんと幼馴染だったね。お祭り任せっぱなしにしていた私も悪かったよ」
明乃は、赤道祭の準備全てを柳原に任せっぱなしだった事に関し謝罪する。
「とはいえ、サボり組を準備に戻さないと、柳原さんの機嫌も直らないし、赤道祭も実行できないな‥‥」
前世の文化祭の準備期間と似たような状況であるが、バラバラになっているサボり組を一致団結させるにはちょっと難しい。
あの時はスローガン決めで、実行委員のメンバーが一堂に集まったが、今回の赤道祭は晴風のクラスメイトたちのやる気を出させなければならない。
「あ、あのさ!!私が個人的に作った物で気分が盛り上がるんじゃないかと‥‥」
そこへ、和住が先程から作っていた物が完成したみたいで、その完成した物を使えば、盛り上がるし、柳原もきっと機嫌を直してくれると確信があるみたいだった。
そこで、シュテル、明乃、真白、黒木は和住が個人的に作った物を見せてもらった。
「これって‥‥」
「これを和住さんが作ったのか?」
「器用だね‥‥」
「確かにこれなら麻侖の機嫌が直りそうね」
和住の言う通り、彼女が個人的に作った物を見て確かに柳原の機嫌が直ると確信した黒木だった。
「これを使うには、少し人手が必要だね」
「手空きの人を呼んでこようか?」
「じゃあ、私は麻侖を呼んでくるわ」
こうして、柳原の機嫌を直す為、天の岩戸の様な作戦が開始された。
そんな中、
「あっ、居た、居た!!すみません!!晴風の副長さん!!」
「えっ?」
真白はクリスに声をかけられた。
「えっと‥‥確かヒンデンブルクの副長さん‥‥な、なんでしょう?」
クリスが自分に一体何の用だろうか?
「貴女が飼っている小さなネコ‥‥えっと、太郎丸くんだっけ?」
「多聞丸です」
「そうそう、その多聞丸くんなんだけど、後でちょっと貸してくれないかな?」
「えっ?多聞丸を‥ですか?」
「うん、ちょっと赤道祭の出し物に使いたいんだけど‥‥」
「ま、まぁ‥いいですけど‥‥」
「ありがとう!!」
クリスは真白から多聞丸を借りる約束をした。
一方、シュテルの方は、
「艦長、ちょっとええか?」
ジークに声をかけられた。
ジークの他に、レヴィ、メイリンも居た。
「ん?何かな?」
「赤道祭の出し物でちょっと、相談があるんだけど‥‥」
ジークたちはシュテルに赤道祭の出し物について相談された。
柳原を捜しに行った黒木は一発で柳原の居場所を突き止めた。
流石、幼馴染なだけあって柳原の性格や行動を熟知しているだけある。
「やっぱり此処に居た」
柳原は晴風の機関制御室で、椅子を並べそこで不貞寝していた。
「よく分かったな‥‥」
「麻侖いつも拗ねると船の下に潜り込んでいたじゃない」
「そう‥だったかな‥‥?」
「ちょっと来て。麻侖が喜ぶ物があるから」
「焼肉?」
「食べ物じゃない!」
「パイナップル缶?」
「それも食べ物じゃない」
「じゃあ、何だよ?」
「来れば分かるから」
「むっ?」
黒木に促され、渋々彼女についていく柳原。
そして、赤道祭の会場であるヒンデンブルクの後部甲板では、
『ワッショイ!!ワッショイ!!』
真白、野間、青木、等松の四人が神輿を担いでいた。
更に神輿の前で万里小路が笛を吹き、松永が太鼓を叩いており、ヒンデンブルクのクラスメイトは神輿が珍しいのか、スマートフォンで写真や動画を撮っている。
ただ、万里小路の笛は音ズレをしており、なんだが気が抜けそうな音色だ。
「何でぇい、何でぇい!如何したんでぇい?」
「副長、もっと威勢よく!」
和住が万里小路の笛の根に負けないようにもっと声を出すように真白に言う。
「むぅ‥‥」
「神輿なんて何処にあったんでぇい?」
晴風に神輿なんて積まれていなかった。
当然、ヒンデンブルクにもだ‥‥
それならば、この神輿は一体何処にあったのだろうか?
「私が作ったんだ」
なんと、この神輿を作ったのは和住だった。
しかも彼女一人で作ったみたいだ。
「個人的に作っていた物ってのはこれだったのか‥‥」
「私、両親が神田の生まれで、祭りって聞くとつい血が騒いじゃうんだ」
「生粋の江戸っ子!」
柳原はキラキラした目で和住を見つめる。
「はっはっはっはっはっ!いやーめでたい!めでたい!俺の人生、今、サイコー!!」
ヒンデンブルクの第四砲塔の上には鼻眼鏡を付けた明乃が踊りを披露していた。
「艦長!何やってんでい!?」
普段の明乃からは信じられない彼女の光景を見て柳原は、驚いていた。
「浮かれてんのよ、お祭りだから」
「何か面白そーだね!」
「水鉄砲大会より良いかも!」
この光景を見た晴風のクラスメイトたちは、ようやく赤道祭に興味と関心を持ち始めた。
「折角のお祭りだから、目一杯楽しんでいこう!!」
「艦長‥‥よーし!盛り上がっていくかー!!」
『オオォー!!』
こうして、最初は赤道祭に対して白けていた晴風のクラスメイトたちは、やる気を出し、不貞腐れた柳原の機嫌も直り、赤道祭の準備は進み、予定日にちゃんと行えた。
そして赤道祭、当日‥‥
祭りの開始はまず、大きな板で作った赤い扉の前に海の神、ポセイドンを意識したコスプレをした等松と女神を意識したのか、トーガを纏った伊勢、クリス、レヴィが赤道を通過するカギを各艦の艦長に手渡すイベントから始まった。
「これが、赤道を渡る鍵であるぞー!」
明乃、シュテル、そして飛び入り参加となった珊瑚、藤田がカギを受け取る。
「拍手~!!」
パチパチパチパチ‥‥
赤道祭の開催が行われ、参加者が拍手をする。
「じゃあ、お次は航海の無事を祈るんでぇい!」
次は巫女衣装姿で手に大麻を手にした鈴と八木、二人のお手伝いとして、同じく巫女衣装に身を包んだ万里小路と宇田が鈴と八木の後ろに控えている。
八木と鈴は大麻を振り航海の安全を祈願するお祓いをした。
巫女や日本の神事もドイツ人にとっては珍しいのか、この時もヒンデンブルクのクラスメイトたちは写真や動画を撮影していた。
「御二人のご実家は、神社だったんですね」
万里小路はここで初めて鈴と八木の実家が神社であることをしった。
「そうなの。お諏訪さま」
八木と宇田は昔からの幼馴染であった為、知っていたが、鈴との出会いも受験の年の八木の神社であった。
この時、八木は鈴とは初対面であったが、晴風でこうして再会したのだが、あの時の事を忘れているみたいだ。
宇田の方は、受験生の時、鈴が神社の関係者であることを既に知っていたが、何故か彼女は黙っている。
そもそも、あの時、宇田の余計な一言で、鈴は八木の神社の仕事を手伝う羽目になったのだ。
「あの‥‥」
『ん?』
艦長たちのお祓いが終わった時に真白が八木と鈴に声を掛ける。
「副長?」
「どうしました?」
「何しろ運が悪いもので、いっぱい祓って貰えるだろうか?」
自分の不幸体質は何かに取りつかれているのかもしれないということで、念のため除霊を依頼する真白だった。
『ワッショイ!!ワッショイ!!』
甲板にて、柳原を先頭に和住が作った神輿を担いでヒンデンブルクを一周していた。
そんな中、後部マストで野間がロープ一本で何かをしようとしていた。
「はぁぁ!!」
野間はロープ一本で見事なバランス芸を披露した。
『おおおお‥‥』
「マッチ凄ーい!」
「マジかっこいい!!」
「ええい!!こっちも負けてらんねぇぜ!!」
野間に負けていられず、柳原は大きな団扇を思いっきり振りかざす。
『きゃぁぁー!!』
すると、その影響で強風が舞い、神輿を担いでいた生徒達は片手でスカートを押さえた。
時間は経ち、太陽が水平線に沈み始めた頃、ヒンデンブルクの後部甲板では、各々が出した屋台から良い匂いが立ち始める。
「ハグ、ハグ、ハグ‥‥」
「さぁー、らっしゃい!らっしゃい!美味しいたこ焼きだよ!!」
伊良子と若狭がたこ焼き屋の屋台を開き、その横では多聞丸はたこ焼きをたべている。
「これは、Krake(クラーケ)?」
「日本の方は変わった方法でタコを食べるんですね」
「スシにもしていました」
基本、タコを食べないドイツ人、ヒンデンブルクのクラスメイトたちはタコ焼きを半分興味、半分不安な表情で見ていた。
「お祭りの匂いぞな!!」
「何食べよう」
晴風、ヒンデンブルク、明石、間宮のクラスメイトたちは各々が出した屋台を回る。
「あっ、コラ!!五十六!!」
「カマクラ待ちなさい!❗」
そんな中、五十六とカマクラはフランクフルトやソーセージを掠め取っていく。
元々、カマクラはドイツ艦の飼い猫だったので、ソーセージは食べ慣れているが、五十六はシュペーで食べたソーセージが余程美味しかったのかソーセージが大好きになっていた。
杵崎姉妹、ヒンデンブルクの厨房員は柳原に横須賀っぽい料理と言われたので、ハンバーガーやスイーツを出した。
「これ梅干し?」
「横須賀名物チェリーチーズケーキなの。レモン絞って食べても美味しいよ」
食べ物以外にも輪投げやダーツと言った屋台もあり、武田と日置は射的の屋台を開いたのだが、
「よっしゃー!!」
「うぃ」
「ぬーん‥‥」
西崎、立石、そしてユーリが景品を根こそぎ持っていってしまった。
「ガツンと当てすぎ!!」
「砲雷科は、出入り禁止だね」
「じゃあ、最後に‥‥」
そう言ってユーリは、武田と日置の二人にコルク銃を向ける。
「えっ?」
「ちょっ、私たちは景品じゃないよ!!」
砲雷科は出禁となったが、ユーリは一体何を考えていたのだろうか?
万里小路、松永、八木の三人が笛と太鼓で演奏をして、野間が踊りを披露する。
やはり、万里小路の笛は音がズレていた。
野間の踊りを見て、等松はスマホで彼女の姿を激写していた。
祭りも最高潮になった時、
「皆の衆!七時からは教室で出し物をやるぜぃ!」
「盛りあがっていくからな!」
『おおおー!!』
夜間の第二部へ突入する。
会場となったヒンデンブルクの大教室にも舞台が設置されており、室内も飾りつけもされていた。
また、机や椅子に関しても、一人でも大勢入れるように別の場所へ移動してある。
「本日の司会を務めさせていただきます機関科の広田空と‥‥」
「若狭麗緒でーす!!」
MCは、広田と若狭の二人が司会を務め、出し物が始まる。
「まずは晴風砲雷科メンバーよるモノマネです」
「それでは小笠原やります。ずぼーん」
まず、小笠原が何かのモノマネをする。
「何のものまね?」
鈴も一体何のモノマネなのか全く理解出来ない様子。
「あぁ~コアラの鳴き声じゃないですかねぇ~」
納沙は全然興味がない様子で雑なコメントをする。
確かに鈴や納沙の様に一体何のモノマネなのか、分からないとつまらないかもしれない。
せめて、前振りがあれば分かるのだが、『ずぼーん』の一言では分からない。
「今のは、イージス艦5インチ砲のまねでした」
小笠原が何のモノマネをしたのかを言うが、やはり分かりにくい。
「おぁー似ている」
「うま~」
小笠原のモノマネは、西崎と立石には理解出来た様子。
「「「えっ?」」」
一部の生徒には分かり、もう一部の生徒にはやはり分かっていない。
「武田やります。どぅん」
「長10cm砲長10cm砲!」
「うぃ」
武田のモノマネもやはり大砲の砲撃音のモノマネで、西崎と立石は直ぐに分かったのだがやはり他のクラスメイト達にはまだ分からない様子。
「日置やります!ぼー」
「今のは、52口径11インチ砲ぞな!」
すると、日置のモノマネは勝田も分かった様子。
「‥‥ユーリ、分かった?」
同じ砲雷科のユーリにクリスは訊ねる。
「ぬー‥‥ニュアンスは何となく」
同じ砲雷科のユーリでも、晴風砲雷科のモノマネは分かりにくかった。
「そ、それでは次に参りましょう」
砲雷科のモノマネはあまりにもマニアック過ぎてちょっと滑った感があった。
「次は航海科です」
砲雷科に続いて次は晴風航海科の番となった。
「航海科! 航海ラップをやります!!」
山下、勝田、内田、八木、宇田の五人がリズムに乗ってラップを歌い始める。
『私、航海、後悔、公開中!あなたの後悔なんですか!?』
まず歌っているメンバーが同じメンバーの内田を指さすと、
「私の後悔知ってるかい?ついついしちゃった日焼けだよ!!」
内田が後悔した事を公開する。
元々色黒な内田が日焼けしたと言っても正直全然わからない。
むしろ、日焼けしているのかと聞きたい。
しかし、航海科の後悔ラップは砲雷科の出し物よりは盛り上がっている。
『そりゃするね!後悔するね!しちゃうよね!私、航海!後悔!公開中! あなたの後悔なんですか!?』
すると次は観客席に居た伊良子が指名される。
「えっ?私!?えっとねぇ‥‥見たいドラマの録画をね。忘れてきちゃったことかしら?」
『あなたの後悔なんですか!?』
続いてシュテルが聞かれると、
「私?うーん‥‥航海前にマッ缶を補充し忘れたこと」
「シュテルン、あの甘いコーヒー好きだもんねぇ~」
『あなたの後悔なんですか!?』
次はあかねの後悔を聞く航海科。
「えっと‥‥航海中に425g体重が増えたこと!あぁ言っちゃった~!!」
あかねは航海中に体重が増えた事を暴露する。
『おっと後悔二倍だね~あなたの後悔なんですか!?』
あかねに聞いたので次に次に双子の姉妹であるほまれに訊ねる航海科。
「実習に来る前幼馴染に告られたんだけど返事せずに逃げちゃったこと…」
『えええええぇぇぇ!!』
ほまれの後悔の告白は衝撃的だった。
「聞いてない、聞いてない!」
「誰? 誰?」
伊良子とあかねがほまれに詰め寄る。
やはり、年頃の乙女、伊良子やあかね以外にも興味がある様子。
「ちょっと今しなよ!!」
「そうでぇい、そうでぇい」
ラップを歌っている航海科のメンバーは、
『してみな、してみな、やってみな』
と告られた幼馴染に聞いてみろと煽る。
そして、ほまれがメールを送り暫くして‥‥
「‥‥ということでメールしたら返事が来ました」
『返事は?返事は?何なのよ?』
「ごめん‥‥他に好きな子ができたって‥‥」
『えええええぇぇぇ!!』
ほまれの返答にまたもや衝撃が走る。
彼女の目には薄っすら涙が見える。
振られた現場を大勢の同期生やドイツの先輩たちに目撃されたのだから、ほまれにとっては黒歴史だろう。
(うわぁ~、これは確かにグサッとくるわ‥‥)
前世で、中学時代に罰ゲームで告白され、振られ、苛めに発展した経験を持つシュテルとしては、今のほまれの気持ちは痛いほど分かる。
「うわぁ~‥‥」
「ご、ごめん」
「私たちが後悔しているよぉ~」
まさか、失恋現場を大勢の同級生たちに教える原因を作ってしまい、
『私たち、航海、後悔、公開中~』
歌いながらほまれに謝る航海科だった。
「次は砲術長・水雷長による漫才です」
「どうぞ!」
舞台袖から立石と西崎が黒いドレスに頭に奇抜な被りものと胸に何かしらの詰め物をして出てきた。
黙っていたら、一体誰なのか分からない衣装だ。
「えぇーはじめましてメイタマでーす」
「す」
早速、コンビ名で挨拶を行い、
『51音マンボウ!』
漫才が始まる。
「ビックリのア行」
「あっ、こんな所にケーキが食べちゃお。ムシャムシャ‥‥」
「それ腐っているよ」
「い!」
「お腹壊すよ、それ」
「う!」
「トイレ一杯だったよ」
「え!」
「間に合わないかもね」
「お~」
以外にも西崎と立石の漫才は受けていた。
西崎と立石の漫才が進む中、
「艦長!?」
「ん?」
「「いよいよ次、自分達の番ですね!!」
「うん、そうだね」
西崎と立石の漫才の次は明乃たちの出し物になる。
その為、明乃たちはそっと観客席から舞台袖に移動する。
更にその次は、シュテルたちの番だったので、
「さて、艦長、私たちも準備しましょう」
「うっ‥‥やっぱりやるの?」
「今更何を言っているんですか?さあ、行きますよ」
何だか出し物に関して消極的なシュテルであったが、レヴィに舞台袖に連れていかれた。
そして、舞台では西崎と立石の漫才が終わり、明乃たちの番となる。
「それでは、次は艦橋メンバーによる劇!!」
「仁義ある晴風です!」
納沙が書いたシナリオだけに出し物も演劇で、しかも内容は任侠系だった。
「くっくっくっ、これで晴風もワシらのシマだ!」
紅い羽織を着た鈴はヤクザの組長役なのか、彼女にしては珍しい自信顔でセリフを言う。
「上手くいきましたね、親分」
鈴の隣で膝を付きながら彼女の部下役をしている明乃が居た。
晴風はこのまま知床組に支配されてしまうのか?
其処に、
「待てや!」
「待てや‥‥」
知床組の横暴を阻止すべく、緑の羽織を纏った納沙と手下役の真白が勇んで舞台に上がってきた。
「おぉ~?何だ?晴風のイモか?」
(知床さん、なんかノリノリだな‥‥)
普段の鈴とは思えない表情をしていたので、彼女の意外性を感じる。
(もしかして、知床さんは舞台女優とか芸能面の才能があるんじゃないだろうか?)
思えば、漫才をしていた立石も普段の様子とは違って見えた。
鈴がセリフを言っている中、ヒンデンブルクのクラスメイトたちは、
((((あの子の声、砲雷長にそっくり!!)))
鈴とユーリがそっくりだと思っていた。
「晴風乗員はイモかもしれんがのぅ‥‥相手の風下に立った事は一度もないんじゃあ!!」
「ないんじゃあ!!」
鈴や納沙とは違い、真白は緊張した感じでセリフを言う。
「ほぉ~来るならこいやー!!」
「こいやー!!」
「根性注入しちゃる!!」
鈴は腰に差していた小道具の刀で納沙に斬りかかろうとした。
「頭!!」
バサー!!
「ぐわぁ!!」
納沙を庇って真白が鈴に斬られる。
「シロ坊しっかりせんかい!!」
「頭‥頼むけん‥‥仇討ってくっせぇ‥‥」
真白は納沙の腕の中で息を引きとる。
「おんどりゃあ!!覚悟せい!!」
納沙が真白の仇と言わんばかりに腰に差していた小道具の刀を抜き、鈴と明乃に斬りかかった。
舞台で明乃たちの劇が繰り広げられている中、観客席では、
「クロちゃん。さっきクロちゃんが探しに来てくれて嬉しかったよ。晴風に乗ってからずっと『宗谷さん、宗谷さん』だったからな」
「麻侖‥‥」
柳原が黒木の隣に座り、これまでの晴風の生活をポツリと振り返る。
「だから今のクロちゃんの気持ちよくわかる!そこでクロちゃんがスカーっとするような事考えたんでぃ!」
「えっ?それって‥‥」
「まぁ、後で分かるから楽しみにしてくれよ」
「ええ、楽しみしているわ」
柳原が黒木の為にある企画も用意していたみたいであるが、今は教室での出し物を楽しむことにした。
赤道祭の時、晴風の両舷には明石、間宮も停泊し補修・補給をしていたので、両艦の生徒たちは何故、赤道祭に参加しなかったのか疑問に思う所です。
次回は、ドイツ組の出し物です。