やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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86話

赤道を越えた事を記念として、赤道祭が行われた。

当初は、企画・実行委員である晴風機関長の柳原が、同じ艦のクラスメイトたちが一部を除き、赤道祭に関して消極的な態度だったことに不貞腐れ、赤道祭の準備が滞ってしまうトラブルが起きた。

しかし、晴風応急員の和住が個人的に制作した神輿によって、柳原の機嫌は直り、神輿を担ぐ同級生たちの姿、鼻眼鏡をかけて愉快に踊る明乃を見て、消極的だった晴風のクラスメイトたちは赤道祭に興味を持ち、赤道祭の準備にも協力的になった結果、準備は進み、赤道祭は予定日に開催することが出来た。

日中は会場であるヒンデンブルクの後部甲板にて、開催の儀、航海の安全を祈願するお祓いの儀式が執り行われ、神輿を担ぎながら練り歩き、各々が出店をした色んな屋台を出した。

野間がマストで一本綱の曲芸を披露したり、松永と万里小路が笛や太鼓を奏で踊ったりした。

そして、日が傾きかけた時、赤道祭の第二部として、ヒンデンブルクの大教室内で各々が考えた出し物が披露された。

一番最初の晴風砲術科のモノマネは分かりにくく、マニアックなモノマネだったので、一部のクラスメイトたちにしか分からず、全体的にはやや滑った感があった。

次に晴風航海科の航海ラップは砲術科と異なり、受けは良かった。

西崎と立石の漫才も即興な出来にしてはこれも受けは良かった。

西崎と立石の漫才の次に行われた晴風艦橋メンバーによる寸劇、『仁義なき晴風』は、シナリオ担当が納沙なだけあって、その演劇内容は納沙が好んで見ている任侠映画モノだった。

ただ、その寸劇に参加した鈴が普段のなよなよしていた様子とは異なり、セリフも噛まずに、はきはきした様子で、寸劇をしていた。

鈴には役者としての才能があるのかもしれない。

真白は、最初緊張しているのか顔が引きつっていたが、劇が進むにつれ、緊張がほぐれたのか、表情も劇のシチュエーションによって、それに相応し表情をするようになった。

納沙は自分が好きな任侠映画だったので、最初からノリノリな様子だった。

そして、次はいよいよシュテルたちの番となった。

明乃たちがまだ舞台で寸劇をしている中、舞台袖では、明乃たちの次の番であるシュテルたちが居たのだが、

 

「ほ、本当にこの衣装を着るの?」

 

シュテルは舞台袖に備えられた更衣室にて、手渡された衣装を見て、顔を引き攣らせながら、ジークたちに訊ねる。

なお、西崎と立石もこの更衣室を使ってあの衣装を着ていた。

そして今、シュテルが手にしている衣装はチアガールの衣装を意識した作りの衣装でさらに追加でフリフリのレースやリボンが着いている。

その衣装を着て、これから舞台で歌と踊りを披露しようというのだから、シュテルには予想外の事だった。

赤道祭の準備期間の時、シュテルはジーク、レヴィ、メイリンに赤道祭の出し物の相談で、一緒にカルテットを組んで歌と踊りを披露しようと言うことになり、それを了承した。

この時、シュテルは舞台で歌と踊りを披露する時は制服姿でやるかと思っていたのだが、レヴィたちは舞台衣装をどこからか調達してきた。

そして、この衣装を着て、舞台に出るという。

というか、シュテルを除く、三人は元々その予定だったみたいで、シュテルにはギリギリまで内緒にしていた。

理由として、あまりにも早くに衣装を着て、舞台に出ることを教えるとシュテルは自分たちと舞台に立つことを拒否するだろうと思っていたからだ。

自らの望みで女性としてこの後世に生を受け、下着、トイレ、お風呂など、慣れない生活も時間の経過とともに慣れてきたかと思ったのだが、アイドルの衣装を着て、大勢の人に見られるのはやはり恥ずかしかったのだ。

 

「ね、ねぇ、やっぱり制服でやらない?」

 

このフリフリの衣装を着ることにやはり躊躇いがあるのか、シュテルは舞台に立つ時は制服でやらないかという。

なお、艦が赤道直下の気候にいる為、シュテルはコートや上着を脱ぎ、ワイシャツにネクタイ、ズボンを身に纏っている。

士官であるジーク、レヴィ、メイリンも似たような格好であり、歌って踊るにしてもそんなに支障はない服装だ。

 

「何言っているのさ、折角衣装を用意したのに」

 

「そもそも、この衣装、どこで調達してきたの?」

 

シュテルはこの衣装の出所を訊ねる。

こんなフリフリの衣装、普段の航海生活で着ることはないだろうし、四人分を用意するにしても赤道祭の準備期間中では四人分の衣装を縫う時間なんて足りなかった筈だ。

にも、関わらず、ジークたちは四人分の衣装をどこからか調達してきた。

 

「明石の乗員の人が個人的に色んな衣装を持っている人で、その人に貸してもらったの」

 

レヴィは衣装の出所をシュテルに教える。

 

(なんで、その人は自分の艦にこんな衣装を持ちこんでいるんだよ!?)

 

シュテルはレヴィの話を聞いて、この衣装を貸した明石の乗員に思わず心の中でツッコミをいれる。

 

(そもそも、こんな衣装を航海中に使う機会があるのか‥‥?あっ、今使うんだっけ?)

 

少し現実を逃避しつつも衣装を見つめるシュテル。

 

「ほら、シュテル。さっさと着替えて」

 

「そうやで、シュテルン、ほら、時間がないんやし」

 

「折角、あれだけ練習してきたんですから」

 

既に衣装を着ているジークとメイリンも、もう時間がないのだから急いで着替えろという。

それに準備期間中、今日の為、練習をしてきたのだからそれを無駄には出来ない。

短時間で包囲網が作られ、じわじわと狭められる。

 

「うぅ~‥‥」

 

(ええい、こうなれば自棄だ!!)

 

シュテルは覚悟を決めて着ていた制服を脱いで、衣装に袖を通した。

 

「おぉ~なかなか似合うやないの」

 

「艦長、可愛いですよ」

 

「やっぱり、誘って間違いなかったよ」

 

「‥‥」

 

三人は衣装に着替えたシュテルを見て、褒めてくるが、本人は羞恥で恥ずかしく、

 

(むしろ、三人はなんで恥ずかしくないんだ?)

 

と、色違いであるが、デザインは同じ衣装を着ているにも関わらず、三人は恥ずかしくないのか?と、疑問に思った。

シュテルが着替え終わる頃、明乃たちの劇が終わった。

 

「次は、ドイツ艦、ヒンデンブルク艦橋メンバーです」

 

「どうぞ」

 

広田と若狭から促され、シュテルたちは舞台に出る。

 

「どうも!!ヒンデンブルク航海長、レヴィ・ラッセルでーす!!」

 

「機関長のジークリンデ・エレミアや!!」

 

「記録係のメイリン・ホークです」

 

「「「そして‥‥」」」

 

「か、艦長のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇‥です」

 

三人とは一足遅く、舞台の上にたつシュテル。

 

『おおおぉぉぉー!!』

 

普段のシュテルは、あまり女の子らしい衣装を着ていないので、フリフリの衣装を着て、顔を赤らめている姿を見て、ヒンデンブルクのクラスメイトたちは何だか興奮しているみたいに見えた。

そして、四人は舞台で踊りながら歌を披露した。

この世界にもプ〇キュア ら〇☆〇た 涼〇ハ〇ヒの憂鬱などの漫画・アニメがあり、四人は、初代プ〇キュアのエンディング 〇き☆す〇のオープニング 涼宮〇ル〇の憂鬱のエンディング等を歌い踊った。

日本のアニメであるが、ヒンデンブルクでもシュテル、ユーリ、クリス経由でこうした日本の漫画・アニメはヒンデンブルクのクラスでも浸透していた。

 

「むぅ~‥‥シュテルンったら、レヴィたちと‥‥」

 

「まぁ、まぁ、落ち着いて、ユーリ。元々、向こうが先約だったみたいだし‥‥それにこれは予想外だけど、いい写真が撮れているんじゃない?」

 

「ま、まぁ、そうだけど‥‥」

 

舞台袖では、レヴィ、ジーク、メイリンと歌い踊っているシュテルを見ながら頬を膨らませるユーリが居た。

クリスとユーリの二人が誘う前に既にシュテルは、ジークたちとカルテットを組むことが決まっていた。

しかし、クリスとユーリの二人にとってそんなことは些細な事なのだが、やはりシュテルが自分以外のクラスメイトたちと歌って踊っていることに嫉妬心を抱くユーリだった。

シュテルたちの舞台は大いに盛り上がった。

それはアンコールもリクエストされるくらいに‥‥

シュテルたちの舞台を見ている中、明乃は、

 

(シューちゃん、キラキラしている‥‥)

 

舞台で半ば、やけくそになって歌い、踊っているシュテルの姿は明乃にとって輝いて見えた。

 

(私も、シューちゃん、もかちゃん、シロちゃんと一緒に出来ないかな?)

 

明乃は機会があれば、自分、もえか、シュテル、そして真白と共に今回、シュテルたちの様にフリフリの衣装を着て、歌って踊ってみたいと言う希望を抱いた。

一方、明乃がそんなことを考えているとは知る由もなく、真白は舞台を見ていた。

 

(碇艦長、少し顔が引き攣っていたなぁ‥‥あの人も色々と苦労しているんだろうなぁ~‥‥)

 

真白はシュテルに自分に似た苦労人体質を垣間見た。

 

そして、ようやくシュテルにとって羞恥の時間が終わった。

 

「いやぁ~盛り上がったねぇ~」

 

「はい、楽しかったです」

 

「たまにはこんなのもええなぁ~」

 

「‥‥」

 

シュテル以外のメンバーはあの舞台を楽しんだみたいだった。

 

「さあて、次は私たちの番だね」

 

「そうだね‥‥じゃあ、行こうか?」

 

シュテルたちの出し物が終わり、次はクリスとユーリの番となった。

 

「次は同じくドイツ艦、ヒンデンブルクの副長と砲雷長です」

 

「どうぞ!!」

 

広田と若狭に紹介され、クリスとユーリは舞台にあがる。

 

「「イッツ、ショータイームッ!!」」

 

舞台に上がったクリスは手には白手袋をはめて、ステッキを持ち、頭にはシルクハットを被り、黒い燕尾服を身に纏い、ユーリは、バニーガールの衣装を着ていた。

 

「今宵はこの私、クリスが皆さまを不思議な世界へご招待いたしましょう」

 

どうやら、クリスはマジックを披露するみたいで、ユーリはそのアシスタント役みたいだ。

クリスはまず、定番のカードマジックを披露するが、カードを出す為、ユーリにステッキを手渡し、無手になった手からカードを取り出した。

ユーリはアシスタント役としてタネや仕掛けがないことを確認させるため、カードを観客席に持っていき、観客席の生徒らに確認してもらった後、様々なカードマジックを披露した。。

その他に、ステッキを造花に変えたりもした。

そして、クリスが真白に多聞丸を借りた理由も判明した。

流石にマジックの定番であるウサギやハトは用意できなかったので、それらの動物の代わりに多聞丸を使ったのだ。

五十六やカマクラは成猫なので、マジックに使うには体が大きすぎたので、まだ子猫である多聞丸は丁度いい大きさだったのだ。

何も入っていない筈のシルクハットから、野菜や工具、文房具が出てきて、もう何もないと言って頭に被りなおすと、クリスの頭部から多聞丸の鳴き声がした。

 

「にゃー」

 

「おや?まだ‥‥」

 

クリスはもう一度、シルクハットを脱ぐと、

 

「入っていたみたいですね」

 

クリスの頭の上には多聞丸がちょこんと座っていた。

 

そして、次はユーリが小さな箱を舞台の上に持ってくる。

 

「では、次のマジックはこの多聞丸くんに協力してもらいます!!名付けて『シュレディンガーの猫』!!」

 

クリスはマジックの名前を伝え、自分の頭の上に居る多聞丸を抱きかかえ、舞台上の箱の中に多聞丸を入れて、蓋を閉める。

そして、次にクリスは沢山のKAR98の銃剣を取り出す。

念のため、この銃剣が本物の銃剣であることを観客席に居る生徒たちに確認してもらう。

銃剣を手にして、触ってみると、それは確かに本物の銃剣だった。

銃剣が舞台に戻ると、クリスは銃剣を手に取り、多聞丸が入っている箱に銃剣を躊躇なく突き刺す。

 

「うわぁぁぁー!!多聞丸!!」

 

それを見て、真白が叫ぶ。

 

「ちょっ、副長!!」

 

「大丈夫だよ、これマジックなんだから」

 

真白の隣に居る西崎と明乃は、クリスがしているのはマジックなのだから多聞丸は大丈夫だと言って宥める。

その後も、クリスは多聞丸が入った箱に次々と銃剣を突き刺していく。

 

「あわわわ‥‥」

 

箱に銃剣が突き刺される度、真白は冷や汗をかき、身体を震わせる。

やがて、箱は銃剣まみれになる。

 

「さあ、箱の中の多聞丸くんは無事なのでしょうか?では、剣を抜いて確かめてみましょう」

 

クリスは箱に刺した銃剣を一本、一本抜いていく。

もし箱の中の多聞丸を刺したのであれば、銃剣に血がついているだろう。

しかし、これはマジックなのだから大丈夫だと真白は自分に言い聞かせる。

そして、最後の銃剣を抜いた時、その銃剣には赤い何かがベットリと着いていた。

 

「あっ‥‥」

 

クリスが赤い何かが着いた銃剣を見た時、「やってしまった‥‥」という顔になる。

 

「うわああああああー!!多聞丸、多聞丸!!」

 

真白はマジックが失敗して、クリスが多聞丸を串刺しにしてしまったのかと思い、叫びながらクリスに掴みかかろうとする。

そんな真白を明乃と西崎が慌てて取り押さえる。

MCの若狭と広田も顔色が青い。

二人もクリスがマジックを失敗したのかと思ったのだ。

しかし、クリスが手に持っていた銃剣で箱を軽く小突くと箱がバラバラとなり、その中に多聞丸はおろか、多聞丸の死体もなかった。

それどころか、箱の内部には血もついていなかった。

そもそも、あれだけ沢山の銃剣を刺して、多聞丸の悲鳴も聞こえず、最後の一本だけ血がついているなんてあまりにも不自然だ。

あの血が着いた銃剣はクリスの演出なのだろうが、心臓に悪い演出だった。

 

「おや?多聞丸くんが消えてしまったみたいです‥‥消えた多聞丸くんはどこにいったのかな?」

 

そう言いながら頭に被ったシルクハットを脱ぐと、

 

「にゃあ~」

 

最初に現れた時と同じ様にシルクハットの下から無傷の多聞丸が姿を現した。

 

「おや?またここに居たみたいですね」

 

「多聞丸!!」

 

真白は多聞丸が無事だったことに歓喜する。

クリスは自分の頭部に居る多聞丸を抱いて、真白に多聞丸を返す。

 

「あぁぁ~多聞丸、無事でよかったにゃ~」

 

「だから、マジックなんだから大丈夫だって‥‥って、副長、また猫語になっているし‥‥」

 

「あははは‥‥」

 

多聞丸を泣きながら抱いている真白に対して、西崎は冷静にツッコミを入れ、明乃は乾いた笑みを浮かべる。

 

「それにしても、どんなタネなんだろう?」

 

鈴はクリスの見せたマジックの種が気になる様子だった。

クリスが箱に銃剣を刺している時、彼女はシルクハットを一度も脱がなかった。

箱の中の多聞丸をシルクハットの中に入れる隙なんてなかった。

一体どうやって箱の中の多聞丸をシルクハットの中に入れたのか、分からなかった。

 

「では、次にイリュージョンマジックをします!!」

 

ユーリは次にカーテンらしき布が付いたフラフープを取り出した。

 

「ではシュテルン、協力して」

 

「えっ?私?」

 

クリスは観客席に居たシュテルに協力を求めてきた。

 

「さあ、シュテルン、早く、早く」

 

「えっ?ちょっ‥‥」

 

アシスタントのユーリがシュテルを観客席まで迎えに行き、舞台へと連れてくる。

 

「えっと‥‥協力っていったい何を‥‥?」

 

「とりあえず、シュテルン、これを着けて」

 

「えっ?」

 

困惑しているシュテルにユーリは、目隠しをする。

 

「シュテルン、確認するけど、見えていないよね?」

 

「う、うん」

 

「じゃあ、シュテルン一歩前に出て」

 

ユーリがシュテルに一歩前に出るように促し、シュテルは一歩前に出る。

シュテルの足元には先程、ユーリが用意したフラフープカーテンがある。

 

「では、いきまーす!」

 

「ふぇっ!?」

 

クリスの合図とともに、謎のドラムロールが鳴り響き、ユーリがフラフープカーテンを持ちあげ、シュテルの首から下を隠す。

 

(っ!? あ、あれ!? 今、何か……体に妙な違和感が……!?)

 

「ドライ……ツヴァイ……アインス……!! はいっ!!」

 

シュテルは身体に変な違和感を感じていたが、目隠しの為、自分の身体の違和感の正体を確認することが出来ない。

シュテルの違和感など知る由もなく、カウントダウンをして合図を出すと、ユーリはフラフープカーテンを降ろす。

 

「ジャジャ――――ンッ!!」

 

『オオオォォ――――ッ!!』

 

「えっ?えっ?」

 

観客席からは歓声が沸き上がったが、シュテルは目隠しの所為で何があったのか状況が呑み込めず困惑していた。

 

「い、一体何が‥‥?」

 

「艦長、艦長の服が士官制服から横須賀女子のセーラー服になっています!!」

 

「えっ!? ええっ!?」

 

観客席からヒンデンブルクのクラスメイトの一人がシュテルの身に何があったのか教えてくれた。

クリスが披露したイリュージョンマジックは、シュテルの服装を一瞬で変えるものだった。

シュテルの服装をフラフープのカーテンで隠し、それを一瞬の間に別の服装に変える早着替えマジックで、一同の度肝を抜いた。

だが、肝心のシュテルは目隠しの所為で自分の変化を見ることが出来なかった。

 

「じゃあ、シュテルン、確認してみて」

 

ユーリがシュテルの目隠しを取ると、確かに自分の服装はいつの間にか、先程まで自分が来ていた制服から、明乃たちと同じ横須賀女子のセーラー服に代わっていた。

 

「す、スゴッ!!本当に変わっている!?」

 

「えっ?シュテル、分からへんかったの?」

 

ジークがシュテルに服が変わったことに気付かなかったのかと訊ねると、

 

「う、うん、目隠しで何をされているのか分からなかった‥‥一応、違和感は感じていたけど、こんなことが起きていたなんて‥‥」

 

「多聞丸のマジックも凄かったけど、あんな短時間でこんな早業をするなんてやっぱり凄い‥‥」

 

「一体、どうやったんだ?」

 

クリスのマジックのタネが全く分からない。

 

(まぁ、まさか魔法でやっているなんて言えないわ‥‥)

 

クリスのマジックは魔法によるもので、タネなんて最初からなかった。

アシスタントのユーリもクリスのマジックの真相は知らなかった。

 

「まだまだ続くよ~!では、次っ、いってみよう~!!」

 

これで終わりではないようで、クリスはまだ続くと宣言すると、ユーリが再びシュテルの目を目隠しで覆う。

 

「まだ、続くんだ‥‥」

 

まだまだ他の服装に変えるつもりみたいであり、一同は興味津々に見つめていた。

反対にシュテルとしてはややげんなりとした声を出す。

そして、先程と同じ様にユーリがシュテルの首下までフラフープカーテンを上げる。

再びドラムロールが鳴り響き、イリュージョンタイムが始まった。

 

「続いては、同じく横須賀女子の士官制服!!」

 

『おおっ!!』

 

次はもえかと同じ白い詰襟にスカート姿になるシュテル。

 

「お次は‥‥ダートマス校!!」

 

三番目はイギリス、ダートマス校の制服、

 

「お次は‥‥ヴィルヘルムスハーフェン校の士官制服!!」

 

四番目はミーナ、テアたちと同じ、ヴィルヘルムスハーフェン校の士官制服、

 

「お次は‥‥イタリア、タラント校!!」

 

五番目は地中海で会ったアンネッタたち、イタリア、タラント校の制服となる。

 

「では、次は‥‥呉海洋学校の制服!!」

 

六番目は広島、呉にある呉海洋学校の白い燕尾タイプの士官制服となる。

 

「次は‥‥舞鶴海洋学校の制服!!」

 

七番目は京都、舞鶴にある舞鶴海洋の制服。

 

「次は‥‥佐世保海洋学校の制服!!」

 

八番目は長崎、佐世保にある海洋学校の制服となる。

 

「お次は‥‥ブルーマーメイドの制服!!」

 

九番目は真霜や平賀、福内らが着ていた制服‥‥ブルーマーメイドの制服だった。

ブルーマーメイドの制服を着たシュテルを羨ましそうに見る観客席も居た。

 

「く、クリス、本当にどうやっているの?それにこんなに沢山の制服、どこで用意したの!?」

 

「方法については秘密、衣装については明石の乗員の人から借りたの」

 

(また、明石の乗員!?)

 

さっきの舞台衣装と言い、このあちこちの海洋学校やブルーマーメイドの制服と言い、これらの衣装を用意した明石の乗員っていったい何者なのだろうか?

 

(ま、まさか『ヨーソロー』が口癖なあの人か‥‥?)

 

アイドル衣装と制服と言う共通点から、シュテルは前世で思い当たる人物が居た。

 

(いや、でも、あの人が居たのは沼津だし、そもそもあの人は架空の人物だし‥‥)

 

しかし、思い当たる人物は架空の人物であり、『ヨーソロー』なんて、航海用語だし、制服収集、コスプレの趣味がある人なんてこの世に沢山いるだろうから、きっと思い違いだとシュテルはそう思いながら現実逃避していた。

 

「そして、最後に………」

 

『っ!!』

 

クリスが最後のイリュージョンを披露しようとした。

フラフープカーテンが上がると、今まで一番長くドラムロールが流れ続けた。

一同の視線がシュテルに一点集中され、最後はどのような姿になるのか待ち遠しく見守っていた。

 

「――――……はいっ!!」

 

そして、ついにカーテンが下ろされた。

 

「横須賀女子のスクール水着!!」

 

「なっ!?」

 

『おおおおーっ!!』

 

最後は横須賀女子のスクール水着となる。

 

「ちょっ、クリス!!」

 

水着姿にされたシュテルはクリスに声を荒げる。

 

「はいはい、元に戻すよ」

 

クリスはユーリにアイコンタクトを送り、ユーリはフラフープカーテンでシュテルの身体を隠し、フラフープカーテンを降ろすと、シュテルは元の制服姿に戻っていた。

 

「「では、これで私たちの舞台は以上でーす!!」」

 

クリスとユーリは一礼して、二人の舞台は終わった。

しかし、もう少し、クリスのマジックを見てみたいのか、観客席からはやや不満そうな声もした。

 

その後も各艦の生徒たちの出し物が行われた。

 

そして、赤道祭最後のトリは‥‥

 

ヒンデンブルクの後部甲板にて、

 

 

「最後は、相撲大会で決めるんでぇい!」

 

柳原は黒木の為に晴風生徒たちによる相撲大会をした。

甲板には、マットで作られた土俵が設置され、その上で相撲をする。

そして、柳原が行司役となる。

 

「東~まりこうまる~」

 

右側には体操服とジャッジを着てその上から黒いまわしを付けた万里小路が立ち。

 

「西~くろのふじ~」

 

左側には万里小路と同じ様に体操着の上にまわしをつけた黒木が立つ。

 

「はっきよ~い‥‥のこった!!」

 

柳原が号令をかけ、黒木と万里小路の両者がぶつかり合う。

万里小路はシュペーで見せた薙刀の腕前から他にも武術を学んでいる可能性もあり、この勝負、万里小路が勝つと思っていたのだが、予想とは裏腹に黒木は万里小路のまわしを掴み投げ飛ばした。

 

「くろのふじの勝ち~!!」

 

「おおさかてん!?凄い技使うな~」

 

松永は黒木が披露した技名を言いながら驚愕する。

彼女は意外と格闘技観戦が好きなのだろうか?

その後、黒木は勝利し続け、遂に決勝まで駒を進める。

そして、決勝の相手は晴風艦長の明乃となった。

明乃が決勝まで進んだ訳には柳原が対戦相手に細工して、明乃でも勝てそうな面子ばかりぶつかるように細工していた。

そして始まった決勝では、明乃は黒木に瞬殺された。

 

「優勝!くろのふじ!!」

 

投げ飛ばされた明乃は、土俵の上で目を回していたが、黒木が近づいて明乃に手を差し伸べた。

 

「ふむ、よーし! じゃあこれで終了!!」

 

柳原が赤道祭の終了を告げると、美波がやや不満そうな顔で手を上げる。

 

「私だけまだ、何もやってない‥‥」

 

教室での出し物で美波は何も芸を披露していなかった。

このまま何もせず終わりたくはなく、彼女もなにかやりたそうだった。

 

「えーと‥‥美波さん何かする気?」

 

「ちゅ、注射とか?」

 

ウルスラ同様、マッドな部分がある美波が一体何をするのか?

晴風のクラスメイトたちは警戒する。

しかし、美波のやりたいことは意外にも、

 

「最後に皆で歌いたい‥‥我は海の子」

 

皆で歌を歌いたいというモノだった。

更に此処で美波が十二歳であると言う事実が本人から語られ、その年齢を聞いて驚愕する晴風クラス。

 

(いや、確かにテアも小さかったけど、普通は分かるんじゃないかな?)

 

美波の身長を見たら、普通は年下を疑いそうなのだが、晴風クラスは何故か美波を年上だと思っていた。

そして、赤道祭最後の出し物として、美波の希望通り、皆で『我は海の子』を歌い、今度こそ、赤道祭は幕を下ろした。

 

 

翌日、横須賀女子より、行方不明になっている学生艦すべてがブルーマーメイドに保護されたと言う連絡を受け、『パーシアス作戦』は終了。

二週間の予定だった新入生の海洋実習は終わりを告げ、ヒンデンブルク、晴風の航海も終わり、ヒンデンブルク、晴風、明石、間宮の四艦は横須賀への帰路についたのだった。

 

 

なお、この時の赤道祭で、アイドル衣装、クリスがイリュージョンマジックで着替えさせた制服&スク水姿のシュテルの写真は、ヒンデンブルクの艦内で本人が知らぬ間に取引されていた。

 




この作品の世界のもかちゃんは、武蔵ではなく、既に救助されており、戦闘をあまり経験していない晴風は沈没していないので、TV版の対武蔵戦、OVA編はなかったことになりますが、その分、俺ガイル場面、漫画編、オリジナル編で、映画版まで繋いでいきたいと思います。
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