やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回は、ゲストとして、『ダンベル何キロ持てる?』より、ジムのインストラクターの街雄 鳴造がゲスト出演します。

また、声だけですが、もう一人ゲスト出演しています。


87話

 

 

横須賀女子の新入生たちによる入学直後に行われた初めての海洋実習にて起こった学生艦行方不明事件、通称Rat事件から、約一週間後‥‥。

世間ではゴールデンウイーク真っ盛りの中、シュテル、明乃、もえかの三人の姿は、とあるスポーツジムにあった。

何故、この三人がスポーツジムに居るのか?

それは、明乃が先日、ショッピングモールの福引でこのスポーツジムの無料招待券を当てて、Rat事件で、互いに再会の交流を深めることが出来なかったシュテルやもえかと気分転換も含めて、一緒に出掛けようと言うことになった。

それにしても明乃は相変わらず、幸運度が高い女子高生である。

彼女の幸運度を少しでも自艦の副長である不幸体質な女子高生に分けてあげれば、ちょうどいいのかもしれない。

 

 

出掛けた先が、スポーツジムというのが、ややマニアックかもしれないが、折角無料なのだから‥と言うことでこうしてやって来たのだ。

 

「スポーツジム‥初めて来た‥‥」

 

「私も‥‥」

 

「私も初めて‥‥」

 

これまでの人生の中で、三人は初めてスポーツジムと言う場所を訪れた。

 

「シ〇バー〇ンジム?」

 

「なんでも世界的に有名なスポーツジムで、日本以外にも海外の彼方此方にあって、プロのボディービルダーの人たちも通っているらしい‥‥って、パンフレットに書いてあった」

 

シュテルが、シル〇ーマ〇ジムのパンフレットを見ながら、ここがどんなスポーツジムなのかを明乃ともえかに伝える。

 

「へぇ~そうなんだ‥‥」

 

「凄いジムなんだね」

 

シュテルの説明を聞いて、ここが凄いジムなのだろうが、どう凄いのかよく分からない様子の二人だった。

更衣室で運動しやすい服装に着替え、トレーニングルームに来て見ると、パンフレットに書いてある通り、そこには筋肉モリモリマッチョマンのボディービルダーの人たちがトレーニングマシンを使い、トレーニングをしている。

 

「ふんっ!!ふんっ!!ふんっ!!」

 

「うぉりゃぁぁぁぁー!!」

 

「んぐぐぐぐ‥‥」

 

「うぉぉぉぉぉぉー!!」

 

「ふんぐっ!!」

 

「「「‥‥」」」

 

そのマッチョマンたちの熱気に当てられ、目が点になる三人。

そこへ、

 

「ようこそ、〇ルバー〇ンジムへ!!体験の方々ですね?」

 

インストラクターらしきジャージ姿の男性が三人に声をかけてきた。

 

「はい。そうです」

 

「今日はよろしくお願いします」

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく、僕はインストラクターの街雄鳴造です。今日は、トレーニングをしていい汗をかいて、しっかりと筋肉を鍛えよう!!」

 

「「「‥‥」」」

 

街雄は爽やかな笑みを浮かべながら言う。

だが、三人はリアクションに困惑する。

自分たちは決して筋肉モリモリのマッチョウーマンになりに来たわけではないし、そもそも今日は無料招待券で来ただけなのだから‥‥

リアクションに困りつつもシュテルは街雄をジッと見る。

 

(同じ爽やか系イケメンなのに、どうしてこのインストラクターと葉山は違うのだろうか?)

 

葉山の爽やかスマイルは、雪ノ下陽乃の劣化仮面な笑み‥‥人を虜にするも、その内は自分の保身だけで、「みんな仲良く」と言う理想を掲げながらも、自分または自分が所属するグループの為ならば、平気で人を利用し、切り捨てる。

そして、シュテルは知らないが、彼は自らの保身ならば、平気で自分のグループメンバーさえも平気で切り捨てていた。

しかし今、自分の眼前に居るインストラクターの男の笑みは、裏も表もなく、文字通り爽やかな‥‥まるで子供の無邪気な笑みに見えた。

だからと言ってシュテルが彼に一目惚れをしたと言うわけではなかった。

 

それから、三人はインストラクターの指導の下、トレーニングマシンを使って、トレーニングをする。

街雄は流石、ジムのインストラクターなだけあって、教え方は親切丁寧で分かりやすかった。

ただ、問題があるとすれば‥‥

 

「ふんっ!!」

 

ビリっ‥‥

 

説明のたびに、身体に力を入れて、ジャージを破く行為に三人はちょっと驚くというか、引いた。

 

(な、なんだ!?あのインストラクターの体つきは!?)

 

(顔と体が全然合ってない‥‥)

 

(合成写真みたい‥‥)

 

顔は爽やか系イケメンなのに、体つきはそれこそトレーニングマシンで今も息を切らしながらトレーニングをしているボディービルダーと寸分たがわぬ体つき‥‥筋肉なモリモリマッチョマンだった。

 

(あのジャージは拘束衣なのか?いや、でもジャージを着ている時と、脱いでいる時、体つきが全く違うし‥‥謎だ‥‥)

 

シュテルが思っている通り、ジャージを着ている時の街雄は爽やか系細マッチョなのに、ジャージを脱ぐと、顔だけ変化はないのに、体つきは筋肉モリモリマッチョマン‥‥どうみても体の比重が合わない。

 

(深く突っ込んだり、考えない方がいいのかな?)

 

シュテルはもう彼のジャージや体つきに深く考えるのを止めた。

 

それから、三人はトレーニングマシンを使ってトレーニングをしていると、シュテルと明乃はランニングマシン、もえかはフィットネスバイクを漕ぎに行った。

 

「「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ‥‥」」

 

シュテルと明乃が一心不乱に走っていると、

 

「あっ、そういえば‥‥ねぇ、シューちゃん」

 

明乃は何か思い出したかのように、シュテルに声をかけてきた。

 

「ん?」

 

「シューちゃん、ヴァイオリンが上手だね」

 

「えっ?」

 

明乃の言葉にシュテルは一瞬、足を止め、転びそうになるが、なんとか態勢を立て直して、走り出す。

 

「私、ミケちゃんにヴァイオリンが弾けたこと、言ったっけ?」

 

シュテルは自分が明乃の前でヴァイオリンが弾けることを言っていないし、ましてや明乃の前でヴァイオリンを弾いて聴かせたこともない。

 

「ううん、この前、間宮の艦長さんからDVDを見せてもらったの」

 

「えっ?DVD‥‥間宮の艦長‥‥ま、まさか‥‥」

 

DVD、間宮の艦長と聞いて、明乃が見たDVDがなんなのか、大体予想がついたシュテル。

 

「それって、ダートマス校の演劇祭のDVD?」

 

恐る恐るシュテルは明乃に何のDVDなのかを聞いてみた。

 

「えっと、よくわからないけど、シューちゃんがタキシードみたいな服を着て、三、四人の人たちと一緒にヴァイオリンを弾いていた」

 

「やっぱり‥‥」

 

やはり、明乃が見たDVDは、シュテルが参加したダートマス校の演劇祭のDVDだった。

 

「あれは、去年の夏休みにイギリスのダートマス校に行った時に参加したイベントだよ。DVD化されていたことは、私も間宮の艦長から聞いていたけど、まさかミケちゃんも見ていたなんて‥‥」

 

明石艦長の珊瑚、ヒンデンブルクのクラスメイトはこのDVDの内容を知っているが、明乃も見ていたのは予想外だった。

 

「夏休みにイギリスの学校に行ったの?」

 

「うん、体験入学でね」

 

「わざわざ、夏休みなのにイギリスの学校に勉強しに行ったの?」

 

「そうだよ」

 

「えぇ~‥‥折角の夏休みなのに‥‥」

 

明乃はユーリと同じく、折角の夏休みなのにわざわざイギリスの学校に行って勉強しに行くなんて、ちょっと信じられないと言った感じだった。

 

「ミケちゃんも、もかちゃんも、勉強を頑張れば行けるんじゃないかな?ミケちゃんは実技じゃあ、奇策を思いつくのが得意だし」

 

「えええーっ!!い、いいよ!!私は!!勉強だって得意じゃないし、英語だって上手く喋れる自信がないもん」

 

明乃は夏休みを潰してまでイギリスの学校に勉強しに行くのはちょっと‥‥と言う感じだ。

そもそも、イギリスの学校なのだから、会話も授業も教科書に書いてある文字も、テストも何もかもが常に英語なので、明乃にはそれについていく自信がなかった。

 

「もかちゃんなら、きっと平気なんだろうけど‥‥」

 

「あぁ~確かに‥‥」

 

もえかは確かに天才‥‥と言うよりも秀才である。

本人の好きな言葉は『努力に勝る天才無し』であり、記憶力は抜群な上に努力家なので何でもそつなくこなせる。

それにリーダーシップにも富んでいる。

今年の夏にもしかしたら、もえかはダートマス校の体験入学にお呼ばれされるかもしれない。

 

「でも、ミケちゃんも持ち前の幸運で何とかなりそうだけど‥‥?」

 

「うーん‥‥でも、きっと私じゃあ、お呼ばれはされないよ」

 

「そうかな?‥‥あっ、ミケちゃん」

 

「なに?」

 

「DVDの件だけど、あまり他の人には広めないで」

 

「えっ?どうして?」

 

「その‥‥恥ずかしいから‥‥」

 

シュテルは顔をほんのりと赤らめ、俯きながら‥しかも、走りながら明乃にダートマス校の演劇祭に出ていた事を黙ってくれと頼む。

 

「うん、わかったよ。シューちゃん」

 

明乃はシュテルの頼みを快く聞き入れてくれた。

それから、二人は世間話をしながらひたすら走りつづけ、いい具合に汗をかき、ランニングマシンを終える。

 

「ふぅ~汗、びっしょりかいたね」

 

「ちょっと、疲れたかも‥‥」

 

この後は、もえかと合流して、シャワーを浴びて、着替えて帰ろうかと思っていた時、

 

「あっ!あっ!ん!あぁ!」

 

「ん?」

 

シュテルは、もえかの声が聞こえた気がして、耳を澄ませる。

すると、

 

「あっ!!あっ!!ん!!あぁ~!!‥‥いい、いいわ~!!」

 

やはり、もえかの声がした。

しかも何だか艶っぽい声と言うか、喘ぎ声と言うか、何かエロっぽい声だ。

だが、辺りを見回してみても、もえかの姿は見えない。

まさか、もえかがインストラクターか利用者のボディービルダーの男の人といかがわしいことをしているとは思えないが、もえかの声はちゃんと聞こえる。

 

「ねぇ、ミケちゃん」

 

「なに?」

 

「さっき、もかちゃんの声が聞こえた気がしたんだけど‥‥」

 

「えっ?もかちゃんの声?」

 

「うん」

 

シュテルに言われて明乃も耳を澄ませる。

すると、

 

「いい、いいわ~弾ける筋肉‥‥綺麗な大胸筋‥‥あっ!!あっ!!あぁ~!!あ~ん!!」

 

「ホントだ!!もかちゃんの声がする!!」

 

明乃ももえかの声が聞こえたみたいだ。

そして、明乃も辺りを見渡すが、もえかの姿はやはり見えない。

 

「でも、姿が見えないけど‥‥」

 

「やっぱり?」

 

シュテルも、もえかの姿を捜すが、やはり周囲にはもえかの姿は見えない。

だが、

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥はちきれん大胸筋‥‥バランスがとれた三角筋‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥いいわ~‥‥いいわ~‥‥」

 

やはり、もえかのエロい声は聞こえる。

 

「どこかで、ボディービルダーの人たちの事をジッと見ているのかな?」

 

「うーん‥‥そうとしか思えないけど‥‥」

 

しかし、最初にインストラクターの街雄がジャージを破いて、自らの肉体を披露した時、もえかもシュテル、明乃と同じ様に引いていたのだが、もえかが元々筋肉フェチで、それを自分たちに知られたくはないと演技をしていた可能性もある。

 

「‥‥行こうか?ミケちゃん」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「ミケちゃん‥‥人には誰にも言えない秘密が一つや二つはあるものなんだよ」

 

「う、うん‥‥」

 

シュテルはもえかが隠れ筋肉フェチだと判断し、その場を明乃と共に去る。

明乃も時間の経過と共にシュテルが何を言っているのか理解した様子で、シュテルと共にその場から去った。

しかし、もえかの姿はいつの間にか、待ち合わせ場所のトレーニングルームの出入口付近にあり、

 

「あっ、ミケちゃん、シューちゃん」

 

と、手を振りながら声をかけてきた。

 

「えっ?もかちゃん!?」

 

「早いな‥‥もう、先に戻ってきているなんて‥‥」

 

明乃とシュテルはついさっきまでトレーニングをしているボディービルダーたちを見て、エロい声を出していた筈のもえかが自分たちよりも先に出入口に居ることに驚いた。

 

その後、三人はトレーニングでかいた汗を流す為、シャワー室へと向かう。

 

(ふぅ~‥‥よかった、シャワー室がそれぞれ個室で‥‥)

 

シュテルは銃痕が残る身体を二人に見せたくはなかったので、シャワー室が個別だったことに安堵した。

 

なお、余談であるが、この年の七月二十五日‥‥もえかの誕生日に明乃はボディービルダーの写真集を、シュテルはBlu-ray版の『吹き替えの帝王シリーズ』をもえかに送った。

もえかは二人からもらった誕生日プレゼントが何故、このチョイスなのか疑問に思いつつも、親友からのプレゼントだったので、ありがたく頂戴した。

 

 

三人がスポーツジムを出た頃には、もう太陽が西の水平線に沈みかけていた。

 

「夕食どうする?」

 

もえかがシュテルと明乃に今日の夕飯はどうするか?と訊ねる。

 

「私、すき焼き食べたい!!」

 

すると、シュテルが今日の夕飯はすき焼きが食べたいと言う。

 

「えっ?すき焼き?」

 

「うん!!」

 

「でも、この季節に?」

 

「ドイツではなかなか食べられないから」

 

「そうなんだ‥‥」

 

「まぁ、良いんじゃないかな?」

 

ドイツではなかなか食べることのできない日本の鍋料理‥‥

シュテルの事を考慮して今日の夕飯はすき焼きとなった。

その為、スーパーで、すき焼きの材料を買う。

 

「~♪~♪」

 

シュテルはすき焼きのメインである肉をかごに入れていくが、

 

「シューちゃん、それ、結構高いお肉だよ」

 

シュテルがかごに入れていたのは和牛の霜降り肉‥‥

高校生にしては結構高い肉だ。

 

「大丈夫、大丈夫、ここは私が持つから」

 

シュテルは今日の夕食の具材の代金は全部自分が出すと言いながら、肉をかごに入れていく。

 

すき焼きの会場は横須賀女子の明乃の寮の部屋で行われることになった。

明乃が杵崎姉妹、伊良子の下に行き、すき焼き用の鍋とカセットコンロを借りてきた。

すき焼きの準備が進む中、シュテルは一度、寮の自分の部屋に戻り、そして明乃の部屋に再び戻ってきた時、小さめのクーラーボックスを持ってきた。

 

「それなに?」

 

「飲み物を持ってきたんだよ」

 

「えっ?それって、もしかしてマッ缶?」

 

「いや、さすがにすき焼きにマッ缶は似合わないから別のだよ」

 

そして、すき焼きパーティーが始まる。

 

「にゅふふふふ、おいしそう~」

 

シュテルが菜箸で鍋に肉を初めてとする具材を入れる。

グツグツと鍋からはおいしそうな音と匂いがする。

この音と匂いを嗅いでいるだけで、お腹が減ってくる。

 

「そろそろ、出来たみたいだね」

 

「うん」

 

「じゃあ、これ」

 

そう言ってシュテルはクーラーボックスに入っていた飲み物を明乃ともえかに手渡す。

 

「えっ?」

 

「これって‥‥」

 

シュテルが二人に手渡したのはビールの缶だった。

 

「ねぇ、シューちゃん。これってもしかして、ビール?」

 

「そうだよ」

 

シュテルはあっさりと手渡した缶がビールであることを認める。

 

「だ、ダメだよ!!シューちゃん!!お酒なんて!!」

 

「そうだよ、お酒は二十歳を超えてからじゃないと!!」

 

「大丈夫、大丈夫、それ、ノンアルコールだから」

 

「「えっ?」」

 

「ノンアルコールだから、いくら飲んでも酔わないから大丈夫だよ。二人にも大人の気分を疑似的に体験してもらいたいと思って持ってきたの」

 

(精神年齢なら、アラサーだから飲めるんだけどね‥‥)

 

シュテルの場合、ノンアルコールとはいえ、ビールは飲み慣れていたが、明乃ともえかは今回がビール初体験となる。

すると、シュテルはビールの缶を開けると、なんとすき焼き鍋の中に投入する。

 

「ちょっ!!シューちゃん!!」

 

「何をしているの!?」

 

「この方が、コクが出るんだよ」

 

「「‥‥」」

 

((大丈夫かな?))

 

ビールが入ったすき焼きに不安を感じる明乃ともえか。

だが、メインであるお肉は和牛の霜降り‥‥

食べてみたいと言う気持ちがあった。

むしろ、食べないと言う選択肢はなかった。

 

「さて、これですき焼きの準備は整った‥‥」

 

菜箸を置き、シュテルは真剣な表情で二人を見る。

 

「そして、これより此処は戦場となる」

 

「「戦場?」」

 

「そう‥‥すき焼きのメインである肉は数が限られている‥‥弱い者はその肉を食べれず、しらたきしか食べられない‥‥」

 

「「っ!?」」

 

シュテルの言葉を理解した二人。

視線を下げると美味しそうに煮えているすき焼き‥‥和牛の霜降り肉‥‥

 

「それじゃあ‥‥始めようか?」

 

「う、うん‥‥」

 

「そうだね」

 

シュテル同様、明乃も、もえかも、真剣な顔で箸を手による。

 

「では‥‥」

 

明乃ともえかの喉がゴクッと鳴る。

 

「「「いただきます!!」」」

 

三人のすき焼きパーティーが始まった。

 

三人は一斉に肉へと箸を伸ばす。

そんな中、

 

「ん?」

 

「むっ?」

 

シュテルと明乃が同じ肉を掴む。

 

「シューちゃん、これは私のお肉だよ」

 

「いや、ミケちゃん、これは私の肉だよ」

 

「最初に掴んだのは私だよ!!」

 

「肉の面積を多く掴んでいるのは私、だからこの肉は私のだよ!!」

 

「んぐぐぐぐぐぐぐ‥‥」

 

「ぎぎぎぎぎぎぎぎ‥‥」

 

シュテルと明乃が肉を取り合っている中、もえかは、

 

(他にもお肉は沢山あるのに‥‥あっ、でも二人が取り合っているならその隙に‥‥)

 

ドッサリ

 

「~♪~♪」

 

漁夫の利で、肉をドッサリと皿に取る。

 

「もかちゃん!!お肉取り過ぎ!!!」

 

「ネギも食べなさいよ!!日本人でしょう!?」

 

互いに肉を取り合いながらも、自分たちが肉を取り合っている間に漁夫の利を得たもえかに対してシュテルと明乃は抗議する。

そんな感じに姦しくも楽しい夕食の時間が過ぎている。

 

「ん?具材が無くなってきたな‥‥そろそろ、〆に入るか‥‥」

 

具材が無くなってきたので、そろそろ、〆に入ることにした。

鍋にうどん玉を入れ、ついでに切り餅も入れる。

当初、ノンアルコールとは言え、ビールはビールだったので、飲むのを躊躇していたもえかと明乃であったが、食事が進むにつれ、ビールの缶に口をつけると、二人の手は自然とすき焼き、ビールと互いに口をつけ、シュテルが持ってきたビールはあっという間に無くなった。

将来、二人が飲兵衛にならないか少し心配である。

 

「はぁ~‥‥お腹いっぱい」

 

「うん、美味しかった」

 

「お肉もビールも美味しかった」

 

空っぽの鍋、ビールの空き缶を前に、三人は満足そうな表情をし、お腹をさすっている。

 

「そう言えば、ゴールデンウイークが終わったら、中間か‥‥」

 

「うぅ~‥‥私、テスト苦手なのに~‥‥」

 

「それなら、一緒にテスト勉強する?」

 

三人の会話は、ゴールデンウイークの後に待つ、中間テストの話になる。

 

「まぁ、中間テストが終わっても私たちは色々大変だろうけどね‥‥」

 

シュテルは食後のお茶を湯のみに入れながら、中間テスト後のテスト休みも忙しいことがあると言う。

 

「えっ?シューちゃん、テスト休みないの?」

 

「ん?いや、私だけでなく、ミケちゃんも多分忙しいんじゃないかな?」

 

「えっ?私も?」

 

「うん‥‥学校側から、多分、『Rat事件の報告書を提出しろ』って言われるんじゃないかな?」

 

「‥‥えっ?報告書?」

 

「今回の事件は海洋安全整備局にもブルーマーメイドにも衝撃的な事件だったからね。今後の対策の為にも事件の関係者には報告を求めてくると思うからね‥‥ん?どうしたの?ミケちゃん?顔色が少し悪いよ」

 

「食べ過ぎて気分が悪くなったの?」

 

「わ、私、書類仕事苦手なのに~‥‥」

 

テストが終わった後に、折角の休みなのに其処にはRat事件の報告書と言う苦手行事が控えていることに明乃はこの世の終わりみたいな顔をする。

 

「だ、大丈夫だよ。航海日誌とかを参考にすればすぐに終わるって」

 

「私も手伝うから、ねっ?」

 

シュテルともえかは明乃をフォローする。

食後のお茶も飲み終わり、鍋や食器も洗い終わった頃、

 

「ねぇ、この後、みんなで銭湯に行かない?」

 

明乃が銭湯に行かないか?と提案してくる。

ビールを飲んだとはいえ、ノンアルコールだったので、この後お風呂に入っても問題はなかった。

 

「えっ?銭湯?」

 

しかし、シュテルは銭湯と聞き、ドキッとする。

 

「うん、私の艦の水雷長‥メイちゃんって言うんだけど、寮の近くにいい銭湯があるって聞いたの」

 

「いいわね。みんなで背中とか洗いっこしよう」

 

もえかと明乃は銭湯に行くつもりだ。

しかし、シュテルは、

 

「わ、私はいいよ。ジムでシャワーを浴びたし‥‥」

 

シュテルとしては、銃痕が残っている身体を後輩でもあり、親友である彼女たちに見せたくはなかった。

しかし、そんなシュテルの事情を二人は知るはずもなく、

 

「ええーっ、行こうよ~」

 

「そうだよ。ジムのシャワーだけじゃあ、完全に綺麗に洗い落とせていないでしょう?」

 

「ちょっ、二人とも!?」

 

明乃ともえかがシュテルの両脇をがっちりとロックして、引きずるようにして、シュテルを連行していく。

しかも、いつの間にかタオルや石鹸を用意している周到さ‥‥

最初から、三人で銭湯に行く予定でもしていたのだろう。

 

寮から銭湯まで両腕をがっちりと明乃ともえかにホールドされたシュテルは周りの人から変な目で見られた。

そして、到着した銭湯‥‥

番台で入浴料金を払い、脱衣所にて、

 

「うぅ~‥‥」

 

シュテルはなるべく身体に残る銃痕を見せたくないので、明乃、もえかの二人の以外にも他の利用者の視線を気にしている為、なかなか服を脱げない。

 

「あれ?シューちゃん、どうしたの?」

 

「早く行こうよ」

 

「あっ、いや‥その‥‥」

 

二人の前で、着替えることは出来ない。

せめて、二人が先にお風呂に行き、手早く服を脱ぎ、バスタオルで身体を隠せば何とかなるだろうが、二人は何故かこの場を離れない。

 

「もう、ほら早く」

 

「ちょっ‥‥」

 

業を煮やした明乃ともえかは強引にシュテルの服を脱がし始める。

そして、

 

「「えっ?」」

 

シュテルの身体に残る銃痕を見てしまう。

 

「シューちゃん‥‥これ‥‥」

 

「何の痕?」

 

「‥‥うぅ~‥‥だから、嫌だったのに‥‥」

 

「ど、どうしたの?これ‥‥?」

 

「‥‥その‥中学時代にイタリアでマフィアに銃で撃たれた。こっちは、去年イギリスで切り裂き魔に撃たれた」

 

「マフィア‥‥」

 

「切り裂き魔って‥‥」

 

シュテルはやむを得ず、二人に傷痕のことを教えた。

 

「その‥‥ごめん」

 

「まさか、こんな事情があるなんて、知らなくて‥‥」

 

「いいよ。言わなかった私が悪かったし‥‥」

 

シュテルはなるべく傷痕が見えないようにバスタオルを身体に巻く。

 

「折角、来たんだ。暗い顔しないで行こう」

 

「「う、うん‥‥」」

 

なんか空気が重くなってしまったが、三人は浴室へと向かった。

 

湯船に入る前に髪、身体を洗ってから入るのがマナーである。

その為、三人はチョコンとバスチェアに座る。

シュテルは二人をチラッと見ると、こうして服を着ないままの姿を見ると、

 

(二人とも、成長したなぁ~‥‥)

 

と、改めて二人の成長を実感する。

 

「ミケちゃん、もかちゃん、髪の毛、私が洗ってあげよう」

 

「えっ?」

 

「でも‥‥」

 

「いいから~いいから~、まずはミケちゃんからね」

 

そう言って、明乃の髪の毛を洗い、次にもえかの髪の毛を洗う。

 

「じゃあ、私がシューちゃんの髪の毛洗ってあげる」

 

「私は背中」

 

もえかがシュテルの髪を洗い、明乃がシュテルの背中を流す。

この時には脱衣所での暗い空気は既に吹っ飛んでいた。

 

「「「ふぅ~‥‥」」」

 

髪の毛、身体をあらい、三人は湯船の中に入る。

 

(色々あったけど、いい休日になったな‥‥)

 

今日一日で様々な事があったが、三人にとって心休まる休日となった。

 

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