やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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89話

五月初頭のゴールデンウイーク‥‥

横須賀女子所属の晴風副長の宗谷真白が白昼堂々横須賀の市街地で誘拐された。

宗谷家には真白を誘拐したと言う脅迫電話が入り、犯人から要求が来た。

その要求が、真白の身代金5千万を用意する事とレッド・シードラゴンと言う組織の幹部メンバーの釈放‥‥

勿論、誘拐犯お決まりの文句‥警察、治安維持組織であるブルーマーメイド、ホワイトドルフィンに通報すれば、真白の命は無いと釘も刺してきた。

犯人から脅迫電話が宗谷家にかかってきた時、電話に出たのは真冬だった。

当初、真冬はイタズラかと思ったが、最初の電話からすぐに送られてきたFAX‥‥

そこには、拘束された真白の写真が写し出されており、犯人が真白を誘拐したと言うのがイタズラではなく、事実であることが証明された。

真冬は未だに寝ている姉、真霜を叩き起こし、事態の緊急性を伝える。

真霜も当初はてっきり、真冬と真白が自分にドッキリでも仕掛けてきたのかと思ったが、FAX用紙に写し出されている真白の姿を見て、真霜も事の重大性を理解する。

自分たちだけではとても対処できないと判断した二人は母である真雪に電話を入れる。

真雪も何かの間違いではないかと思ったが、残念ながらそれは間違いではなく、真白は誘拐された。

身代金である5千万なんて今日が休日なので、銀行などの金融機関は休み‥‥

コンビニのATMではとても5千万なんて引き下ろせない。

家にある現金も5千万なんて大金が有る訳がない。

そして、もう一つの要求‥‥

レッド・シードラゴンの幹部メンバーの釈放‥‥

 

「犯人からの要求は真白の身代金だけなの?」

 

「いや、レッド・シードラゴンの幹部メンバーの釈放も奴らは要求してきた」

 

「レッド・シードラゴン?それって‥‥」

 

「ああ、この前、アタシが検挙した海上犯罪組織だ」

 

犯人から要求があったレッド・シードラゴンの幹部メンバーの釈放‥‥

レッド・シードラゴン‥‥それは、つい最近、真冬が検挙した海上犯罪組織の名前だった。

 

レッド・シードラゴンは、海賊行為から麻薬、銃器、臓器、売買が禁止されている希少動物や拉致した人身の密売、密輸と言ったありとあらゆる犯罪行為をこなしてきた犯罪組織であり、インターポール、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィンが長年に渡り追ってきた組織であった。

その一大犯罪組織の幹部メンバーの複数を真冬が指揮する強行斑が検挙する事に成功した。

今回、真白を誘拐したのは、宗谷家にかかってきた脅迫電話の要求から、このレッド・シードラゴンのメンバーであることが確定的だ。

 

「それで、どうするの?真白の身代金に幹部メンバーの釈放‥‥」

 

真雪は犯人の要求をどうするべきかと悩む。

犯人は二時間後にもう一度、電話を入れてくる。

それまでに答えを出さなければ、真白は殺される可能性が高い。

身代金もそうだが、公人として、元がつくとは言え、ブルーマーメイド隊員であった真雪としては犯罪組織の幹部メンバーを再び社会へ野放しにはできない。

それは現役のブルーマーメイドである真霜も真冬も同じ考えだろう。

しかし、私人として、真白の家族としては、真白を助けたい。

でも、犯罪組織の幹部メンバーを社会に野放しにすれば、再び犠牲になる人が大勢出る。

 

「やっぱり、警察とブルーマーメイドの保安部隊の出動を‥‥」

 

犯人の要求を無視して警察とブルーマーメイド、ホワイトドルフィンへ連絡するべきではないかと真霜は提案するが、

 

「でも、それだとシロの命がマジでヤバいんじゃないか?」

 

真冬はレッド・シードラゴンの検挙に関わっているだけあって、要求を無視したら、真白の命がヤバいと懸念する。

 

「ど、どうすれば‥‥」

 

真雪はRat事件の報告書どころではなくなってしまった。

 

 

真雪、真霜、真冬が犯人から要求にどう対処すればいいのか困惑している中、誘拐された真白はと言うと恐怖でガタガタと震えていた。

 

「連中、要求を呑みますかね?」

 

「呑まなきゃ、コイツをバラすだけだ」

 

「まぁ、最悪大金さえ手にすれば、コイツには用はないがな」

 

「ハハハハハ、こいつ、震えてやんの~」

 

犯人たちは自分たちの上司ともいえるレッド・シードラゴンの幹部メンバーの釈放よりも宗谷家から真白の身代金をせしめることが主目的だった。

幹部メンバーが減れば次は自分が幹部に昇進できる可能性があるからだ。

 

「うっ‥うぅ~‥‥」

 

(真冬姉さんのせいで私は‥‥)

 

身代金が支払われても自分は殺されるのだと思うと、涙が出てくる。

不幸体質な自分が益々惨めに見えてくる。

自分はまだたった十五歳‥今月の二十七日で十六歳になるのだが、あまりにも短すぎる人生だ。

夢だったブルーマーメイドにだってなっていないのに‥‥

犯人たちの要求を聞いた時、ブルーマーメイドである真冬が摘発した犯罪組織のメンバーみたいで、自分は半ば八つ当たりに近い感じで誘拐された。

そう思うと、悲しみから自分の不幸体質と真冬、そして犯人たちに怒りも湧いてくる。

 

(そうだ、私はこんなところで死ねない!!死んでたまるか!!)

 

商店街船、新橋で多聞丸と共に取り残された時と同じ様に真白は行動に出ることにした。

両手、そして口を封じられているにも関わらず、真白は犯人の一瞬の隙を突き、犯人の一人を自身の身体で突き飛ばし、駆け出す。

海洋学校とは言え、普通の女子高生なのだから、誘拐すれば恐怖で動けないと思い、犯人たちは真白の手と口を封じたが、足は封じなかったので、行動することが出来た。

 

「つぁっ‥‥くそがぁ!!」

 

真白の思わぬ行動に犯人は感情が弾けたのか、懐に手を忍ばせる。

そして黒光りする金属物を取り出す。

その様子をシュテルは物陰から窺っていた。

 

「っ!?」

 

日本ならば、警官、軍人、ブルーマーメイド、ホワイトドルフィンの隊員ぐらいしか見慣れない代物。

このまま飛び出して、映画や漫画・アニメの主人公やヒーロー、正義の味方のように登場‥‥なんてことをすれば、あっという間にあの世行きだ。

人間はあまりにも脆い生き物なのだ。

しかし、幸いなことに真白はこちらに逃げてくる。

シュテルはそのまま自分の脇を駆け抜けようとする真白の身体をキャッチして思いっきり、自分の方へと引きずり込む。

 

「っ!?」

 

その刹那の差で、

 

バキューン!!

 

真白の頭部スレスレの位置を弾丸が掠めた。

 

「ちょっ、まだバラすにしても早すぎまっせ!!」

 

犯人の一人が銃をぶっ放したもう一人の犯人に注意する。

 

「ちっ‥‥」

 

確かにまだ自分たちは真白の身代金を手にしていない。

その間にまだ真白が生きていると言う証拠を宗谷家の人間に送らなければならないので、今真白を殺すのはマズい。

 

「それより、今のを見ましたか‥‥!?」

 

「ああ、どうやらネズミが紛れ込んでいるらしいな‥‥」

 

今の行動でシュテルの存在が犯人にバレてしまった。

 

「‥‥ん、んっ!!」

 

真白はまさか、ここにシュテルが居たなんて予想外で驚いている様子で目を見開いている。

 

「剥がすけど、あまり大きな声を出さないでね」

 

シュテルは真白の口元に貼られているガムテープを剥がす。

 

「い、碇艦長‥‥何で此処に!?」

 

「繁華街に居たら、宗谷さんが連れ去られるのを見てね‥‥」

 

「で、でもなんで‥‥?警察に連絡してくれれば‥‥」

 

真白はわざわざこんな危険な事をしなくても警察に連絡すれば済むのではないかと言うが、

 

「私が居なければ、宗谷さん、さっきの銃弾で頭を撃ち抜かれていたよ」

 

「‥‥」

 

シュテルの言う通り、真白はシュテルが横に引きずり込んだからこそ、今の弾丸を躱すことが出来た。

もし、シュテルが真白を引きずり込まなければ、真白は今頃あのまま頭に銃弾を受け、死んでいただろう。

 

「とにかく、今はこの場から逃げるよ」

 

「でも、この両手じゃあ、上手く動けないですよ」

 

真白はシュテルに手錠を見せる。

 

「あぁ~‥‥銃があれば何とか出来るんだろうけど‥‥」

 

シュテルは真白の手錠を見て、スマホ以外にも拳銃を忘れたことに思わず顔を顰める。

流石に日本では拳銃をおいそれとぶら下げるのはまずいので、シュテルの愛銃はヒンデンブルクの金庫に仕舞われている。

 

「でも、近くにここまで来たボートを止めてある。海へ逃げることが出来れば、何とか出来る」

 

「は、はぁ‥‥」

 

ここから何とか逃げ出してボートで海へ‥‥そして港へ行けば手錠なんてどうにか対処できる。

 

「おい、そこに居るのは誰だ!?お嬢ちゃんの他にも居るんだろう?」

 

「‥‥」

 

(まっ、当然、バレているよな‥‥)

 

さっき、真白を引きずり込む際、自分の姿を犯人に見られていたのだから、当にバレていてもなんら不思議ではない。

 

「おい、ネズ公。俺たちが大人しいうちに出てこないと、気づいた時には死体になっていたってこともありうるぜ」

 

犯人たちは自分たちが優位な立場に居るのだと思っており、二ヤついた笑みを浮かべながら近づいてくる。

 

「ど、どうします?相手は銃を持っていますよ!?」

 

「うーん‥‥どうしよう‥‥」

 

艦に乗っている時は銃もサーベルも持っているのだが、あいにくと今は丸腰。

 

「ちょっと、まさか脱出までのプランを考えてなかったんですか!?」

 

「咄嗟の出来事だったからねぇ~‥‥」

 

あの時、動かなければ真白は死んでいたし、スマホを忘れている状況下では警察にもブルーマーメイドにも通報できないこの状況で、こっそりと潜入し、真白を助け出そうとしたが、真白の行動はまさにイレギュラーであった。

シュテルは目を閉じ、耳を澄ます。

 

「い、碇艦長、こんな時に何故目を!?諦めるんですか!?」

 

足音が少しずつ近づいてくる。

 

(この距離からすると‥‥距離、十メートルってところか‥‥?)

 

「ちょっと、碇艦長!!まさか、死んだふりしてこの場を凌ぐ気ですか!?」

 

「宗谷さん、ちょっと黙っていて‥‥」

 

真白の声で集中力が削がれるので、シュテルは真白に黙っているように言う。

何か考えがあるのかと思い、真白は黙る。

真白が黙り、シュテルは近づいてくる犯人の足音に集中する。

 

(九‥‥八‥‥七‥‥んっ?二手に分かれたか‥‥)

 

足音がブロックを挟んで二手から近づいてくる。

 

(動く足音が四ってことを考えると、一人は七メートルの地点で停止したか‥‥六‥‥五‥‥)

 

「あわわわわ~ち、近づいてくる‥‥」

 

足音に集中しているシュテルと異なり、近づいてくる犯人に再び怯える真白。

 

「奴らの意識が私に流れたら、迷わず走って‥‥近くにボートが止めてある‥‥運転、出来るよね?」

 

「中等乙種海技士があるので、モーターボートくらいなら‥‥」

 

「鍵は刺さったままになっている。ボートの運転ぐらいならその手でも出来るでしょう?」

 

「えっ?」

 

真白に伝えることを伝えると、シュテルは迷うことなく、犯人たちの前に姿を現す。

 

「ちょっ‥‥」

 

「えっ!?」

 

シュテルは身を硬直させる前に犯人の腹部に拳を叩き込む。

前かがみに崩れたところで、首筋を狙い打つ。

 

「あぐ!!」

 

「な、なにぃ!?」

 

まさか、武装している自分たちに丸腰で殴り掛かってくるとは思ってもみなかった犯人たちは驚く。

 

「な、なんだ?コイツ!?」

 

これで犯人たちの注意は真白からシュテルに向けられただろう。

 

「っ!?」

 

真白もシュテルの行動を理解したのか、一目散にボートが止まっている港へと走っていく。

真白自身もきっと、無力を感じただろうが、丸腰でしかも両手が封じられている自分があの場に居てもやれることがない。

むしろ、足手まといになってしまう。

 

「くそっ、コイツは俺が相手になる!!お前たちはアイツを追え!!」

 

「させるか!!」

 

突き出された腰が入っていない単純な攻撃を躱し、カウンターを打ち込む。

カウンターで叩き込んだアッパーで、犯人の身体は少し浮き、弾け飛ぶ。

シュテルは落ちていた鉄パイプを拾うと、真白を追いかけようとしていた犯人に向かう。

真白と変わらない年代の少女に仲間が二人倒されたことに犯人たちに隙が生じた。

腹部に鉄パイプを叩き込む、もう一人には股間に思いっきり、蹴りを入れた。

悶絶している中、首筋にとどめの一撃を入れ、意識を刈り取る。

まだ他にも仲間が居る可能性もあるので、シュテルは手早く犯人たちの懐をまさぐり、手錠のカギを捜す。

鍵の他に、犯人たちの懐からは拳銃が出てくる。

 

(トカレフにベレッタか‥‥追いかけられたら厄介だしな‥‥)

 

シュテルは指紋がつかないようにハンカチを手に巻いてトカレフとベレッタからマガジンを取り出し、スライドの部分も銃身から取り外した。

 

(ん?コイツはリボルバーか‥‥)

 

犯人の一人の拳銃はトカレフやベレッタの様なオートマチック拳銃ではなく、リボルバーのS&W M10 ミリタリー&ポリスだった。

オートマチックなら、マガジンとスライドを取り外せば銃として使えないが、リボルバーはこの短時間で分解できなかったので、そのまま持っていくことにした。

ついでに犯人の一人の携帯もだ‥‥

犯人は真白のスマホも奪っていたが、シュテルは真白のスマホを知らなかったので、犯人から携帯を拝借したのだ。

 

長居は無用なので、シュテルは真白の後を追った。

仮に真白が此処まで来るのに使用したボートで逃げてもまだ犯人たちが使用したクルーザーがあるので、ここからの脱出には困らない。

ボートが止まっている港まで来ると、真白は危険を承知でシュテルの事を待っていた。

 

「宗谷さん、待っていたの!?」

 

「このまま、私だけ逃げる訳にはいきませんから‥‥」

 

シュテルはボートの運転席に座り、ボートのエンジンを起動させる。

そして、犯人から奪った手錠の鍵を使って真白の手にかけられていた手錠を外しトカレフとベレッタのマガジンを海へと捨てる。

手錠を解除してボートを出す中、シュテルは次に同じく犯人から奪った携帯を真白に渡し、

 

「犯人の携帯だけど、それで警察に連絡をして」

 

「は、はい」

 

真白は急ぎ携帯で警察に電話を入れた。

警察に電話を入れた後、犯人たちが家に脅迫電話をしている事も知っていたので、家族を安心させようと家にも電話を入れた。

 

真白が誘拐されて、犯人たちの要求に対してどう対処すればいいのか、苦悩している時、宗谷家の固定電話が鳴る。

 

プルルルル‥‥ガチャっ!!

 

「はい、宗谷です‥‥」

 

緊張した声で電話に出るのは宗谷家長女の真霜。

 

「あっ、真霜姉さん!?」

 

電話口から真霜の声を聞き、真白は思わず安堵する。

 

「えっ?真白!?貴女、今何処にいるの!?」

 

「横須賀沖の廃棄フロートの近くの海。ヒンデンブルクの碇艦長に助けてもらったところ」

 

「ドイツ艦の艦長ね?大丈夫?何か酷いことをされなかった?」

 

「大丈夫。このまま横須賀の○○埠頭へ行きます」

 

「横須賀の○○埠頭ね?私と真冬もそこに迎えに行くから」

 

真白と真霜が話している時、シュテルは運転席のバックミラーをチラッと見ると、

 

「‥‥宗谷さん、すまないが、ちょっと○○埠頭に行くのは少し遅れるかも‥‥」

 

「えっ?」

 

「後ろ‥‥」

 

シュテルに言われ、真白が後ろを見ると、真白をあの廃棄フロートへと連れていったクルーザーともう一隻別のモーターボートが追いかけてくる。

 

「追手みたい‥‥意外と復活が早かったなぁ‥‥」

 

時間を焦りシュテルは倒した犯人たちの身柄を縄などで拘束していなかった。

犯人たちが意識を取り戻し、追いかけてきた。

 

「えっ?追手?ちょっと、真白、大丈夫なの?」

 

シュテルの『追手』と言う言葉が聞こえたらしく、真霜の焦った声がする。

 

「うわっ、しかも物騒な花火まで取り出してきた!!」

 

犯人たちはバズーカを取り出してきた。

 

「宗谷さん、ちょっと運転代わって」

 

「えっ?えっ?ご、ごめん、姉さん。また後でかけるから!!」

 

「ちょっと、真白‥‥」

 

ボートの運転を代わるため、真白は電話を切った。

 

(犯人から銃を奪ってきて正解だったな‥‥)

 

シュテルはボートに備え付けられていた信号拳銃を取り出し、信号弾を装填する。

すると、犯人たちはバズーカを撃ってきた。

シュテルはタイミングを見計らって信号弾を打つ。

すると、バズーカの弾は信号弾の熱源に反応して、二人が乗っているボートではなく、信号弾へと向かって行く。

犯人は時間差を置いて、再びバズーカを撃ってくる。

その間にシュテルは信号拳銃に信号弾を装填する。

そして、装填が終わると、再び空に向かって信号弾を打つ。

バズーカの弾はまた信号弾の熱源を探知してそちらに向かい爆発するが爆炎の中からまたバズーカの弾が飛んでくる。

信号弾はもう無い。

 

「うわっ‥くっ‥‥」

 

シュテルは信号拳銃を捨てると、犯人から奪ったS&W M10 ミリタリー&ポリスを取り出し、バズーカ弾へと発砲する。

S&W M10 ミリタリー&ポリスの弾丸はバズーカの弾に当たり爆発する。

 

(ユーリだったら、数発で撃破できたところだけど、一発を撃ち落すのに六発も使ってしまった‥‥)

 

「碇艦長、拳銃の扱いなんてどこで‥‥?それにその拳銃はどうしたんですか?」

 

「ハワイで親父に‥‥じゃなくて、ドイツでは銃を使ってのカリキュラムもあるからね。その時にはよく撃っているんだよ‥‥で、この拳銃は犯人から奪ってきた。でも、ちょっと、マズいかも‥‥」

 

「どうしたんですか?」

 

「使い慣れていないリボルバー拳銃だから、弾の消費が‥‥連射されたら、かなりヤバいかも!!ウチの砲雷長ならもっとうまく出来たんだろうけど‥‥」

 

「じゃあ、オートマチックを奪って来れば良かったんじゃないんですか?」

 

「私も今、そう思っている‥‥」

 

冷静に事を運んだと思っていたシュテルも実際にはテンパっていた。

リボルバーならば、分解不可能だから弾だけを抜いておけば良かったのだ。

リボルバーの弾を抜いて、その場に置いてきて、逆にオートマチックのトカレフやベレッタのマガジンやスライドをバラさらずに、トカレフとベレッタを持って来れば良かったのだ。

 

「それで、弾はあと何発残っているんですか?」

 

「あと六発‥‥次に全弾使用したら、弾切れ」

 

「どうするんですか?」

 

「‥‥一気に勝負をかけよう」

 

「えっ?」

 

「宗谷さん、これから指示を出すからその通りに運転して」

 

「は、はい」

 

シュテルは片手で手すりをギュッと握り、ジッと犯人の動きを見ながら真白に指示を出す。

 

「速度、全速から巡航に‥‥取り舵、二十」

 

「速度、巡航に、取り舵二十」

 

真白は復唱し、指示通りの速度にして舵を切る。

その間、犯人はバズーカを撃ってくる。

 

「舵中央、速度を全速に」

 

「舵中央、速度、全速!!」

 

「面舵一杯!!」

 

「面舵一杯!!」

 

モーターボートはバズーカの弾をスレスレで回避して、犯人たちのクルーザーとモーターボートの正面の位置に来る。

 

「な、なんで当たらねぇ!?」

 

バズーカを撃つ犯人は何故、高校生が乗るボート一隻沈めることが出来ないのかを不思議に思った。

 

「碇艦長。相手の真正面ですよ!!」

 

「このまま真っ直ぐ!!相手の船の間を通過する!!」

 

「は、はい」

 

二人が乗ったモーターボートは犯人たちのクルーザーとモータ―ボートの間を通過していく。

そして、通過する際、シュテルは犯人たちのクルーザーとモーターボートのエンジンに向けてそれぞれ三発ずつ銃弾を撃ち込む。

すると、犯人たちのクルーザーとモーターボートからは黒い煙がでて行き足が止まる。

 

「犯人たちの船のエンジンを撃ち抜いた‥‥これで、連中はもう追ってこれない‥‥このまま○○埠頭に行こう」

 

「はい」

 

その後、犯人たちは海上で立ち往生している所を真白が呼んだ神奈川県警水上警察隊の手によって逮捕された。

 

○○埠頭に戻ると、其処には不機嫌そうな顔の黒木と柳原が居た。

 

「おっ?帰ってきたみてぇだな」

 

「それで、ちゃんと説明を‥‥って、宗谷さん!?ちょっと、なんで宗谷さんと一緒なのよ!?」

 

真白と一緒に居たことに黒木はシュテルに詰め寄る。

 

「分かった、分かった、説明するから‥‥」

 

「黒木さん、これには訳があるんだ」

 

真白は黒木に事の顛末を説明する。

 

「「誘拐!?」」

 

真白がついさっきまで誘拐されていた事実に驚愕する柳原と黒木。

 

「ちょっと、貴女!!なんで私も連れていかなかったのよ!?宗谷さんを誘拐した不埒なクズどもに、この世に生まれてきたことを後悔させるチャンスだったのに‥‥!!」

 

黒木は真白を誘拐した犯人たちをボコボコにしたかったと悔しがっていた。

そこへ、真白の家族が到着した。

 

「「真白!!」」

 

「シロ!!」

 

「お母さん、真霜姉さん、真冬姉さん」

 

真冬、真雪とはトラック諸島、学校で出会っていたが、長女の真霜とは今回が初邂逅のシュテル。

真雪は真白の無事を確認するかのように彼女を抱きしめる。

それを見た後、真霜がシュテルに声をかける。

 

「貴女が、ドイツからの留学生の碇艦長ね?」

 

「えっ?」

 

シュテルは真霜の声を聞いてビクッとする。

 

(ゆ、雪ノ下さん!?い、いや、そんな訳ないか‥‥でも、この人の声、マジで似ているわ!!)

 

真霜の声が前世で苦手とした雪ノ下の姉、雪ノ下陽乃と瓜二つだった。

 

「私は真白の姉の宗谷真霜‥‥ん?どうしたの?」

 

真霜はシュテルに自己紹介をしたが、シュテルが唖然とした表情で自分を見ていたことに気づき理由を聞いてくる。

 

「あっ、いえ、宗谷さんの声‥‥」

 

「私の声?」

 

「は、はい。宗谷さんの声がちょっと苦手にしている人の声と似ていたので、びっくりして‥‥」

 

「へぇ~そうなんだぁ~‥‥いい事、聞いちゃったなぁ~」

 

ちょっと、ニヤッとした笑みを浮かべる真霜。

 

(あっ、やばっ、何かを企んでいる時の雪ノ下さんと同じ顔だ‥‥)

 

「わ、私はドイツ、キール校所属のシュテル・H(八幡)・ラングレー・碇です」

 

話題を変える為、シュテルは真霜に自己紹介をする。

 

「今回の真白の事‥‥娘の事、ありがとうございました」

 

真雪は深々とシュテルに頭を下げる。

 

「私からもお礼を言うわ‥‥ありがとう」

 

真霜もシュテルに深々と頭を下げて礼を言う。

 

「い、いえ‥‥そんな‥‥」

 

「アタシからも礼をするぜ!!」

 

真冬は何故か礼をすると言うが、何故か手をワキワキさせながら近づいてきた。

 

「あ、あの‥‥その手は?」

 

「気にするな、アタシからの礼だ!!」

 

「いえいえ、気にしますから‥‥」

 

ジリジリと近づいてくる真冬に後退るシュテル。

真冬としてはトラックの時、シュテルの胸や尻を揉みたかったが、クリスとユーリの手によってあの時は揉めなかったので、この機会にぜひともシュテルの胸と尻を揉みたかったのだ。

 

「遠慮するなって!!」

 

「遠慮します!!」

 

とうとうシュテルはその場から逃げ出す。

 

「ほら、遠慮するなって!!」

 

「ヒエェェェェー!!」

 

『ハハハハハ‥‥!!』

 

シュテルと真冬の鬼ごっこを見て、その場に居たみんなは思わず笑ってしまう。

こうして、宗谷真白誘拐事件は解決することが出来た。

 

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