やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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91話

「あぁ~酷い目に遭った‥‥」

 

シュテルは今、MTBを手で押しながら学生寮への帰路についている。

 

五月初頭のゴールデンウイークにて、横須賀の市街地に出かけたシュテルは運悪く?偶然?にも晴風副長の宗谷真白の誘拐現場に遭遇し、彼女を無事に救出することが出来た。

真白を誘拐したのは、かつて真冬が摘発した犯罪組織の一味で、真白を誘拐したその犯罪組織の一味たちも警察に逮捕された。

真白を安全な場所へと連れてきた時、彼女の家族もその場に来ていた。

それは別に構わない。

家族なのだし、再会した時の真白と家族との様子を見れば、真白がいかに家族から愛されているのかが分かる。

母親の真雪は涙を流しながら真白を抱きしめており、二人の姉も真白の無事に歓喜し、目には光るモノがある。

真白本人も誘拐から解放されたことを実感し、母親に抱き着きながら涙を流していた。

家族との再会‥‥ただ、その中に宗谷家の次女‥‥宗谷真冬が居た。

トラック諸島で出会った時、真冬はシュテルの尻と胸を揉むのをユーリとクリスの手によって阻まれたが、今回はこの場にユーリもクリスも居ない。

つまり自分の楽しみを邪魔する輩が居ないのだ。

真冬は真白を助けた礼として、シュテルとのコミュニケーションを図るが、真冬の怪しげな手つきに獣みたいな目と背中から滲み出ているオーラから、一目散にその場から逃げるが、真冬はシュテルを追いかけてきた。

まさしく、目が合うと追いかけてくる獣だ。

しかも足の速さも獣かターミネーター並みに早い。

シュテルと真冬の追いかけっこは真雪と真霜が真冬を一喝するまで続いた。

ギリギリのところでシュテルは自分の尻と胸を死守する事が出来た。

真冬はあの行動で、そして姉の真霜の方は、彼女の声だけで、ちょっと苦手になったシュテルだった。

真冬を一喝している時の真霜の姿があの声と目が据わっている笑みのせいで、シュテルには真霜の姿がそのまんま、陽乃にしか見えなかったからだ。

その後、シュテルと真白は警察からの事情聴取を受けることになり、夕方ごろになって、やっと解放された。

 

「あぁ~もう、こんな時間か‥‥」

 

この時間帯では、他に何処かに行ける時間でもないので、今日はもう帰ろうと思った時、

 

「結局、今日一日のほとんどを警察署で費やしてしまった‥‥」

 

折角の休日を午前中は、真白の誘拐事件、午後を警察署で時間を潰してもう、夕方‥‥

今日の休日、一体何だったのだろうかと言う感じだった。

 

「おや?シュテルじゃないか」

 

「ん?テア?」

 

学生寮に戻る途中、シュテルはテアと出会った。

テアの他にミーナ、レターナの二人も居た。

 

「みんな、今からお出かけ?」

 

夕方なのだが、テアたちの様子を見ると、これから何処かに出かけるみたいだ。

 

「ああ、近くに銭湯なる大きなお風呂があると聞いてな」

 

テアはこれからミーナたちと共に銭湯へ行くと言う。

ミーナは晴風に居た頃、晴風の浴場に入り、任侠映画の他に日本の風呂文化にも関心を持ち、風呂好きになっていた。

当然、ミーナは親友でもあるテアに日本の風呂文化の素晴らしさをぜひとも味わって欲しいと、今日ミーナはテアを銭湯に誘ったのだ。

レターナはミーナが面白そうな所へ行く雰囲気を感じて、二人についてきた。

 

「へぇ~銭湯ですか‥‥実は私も先日、友人二人と行きました。風情のあるいい所でしたよ」

 

シュテルはテアに先日、明乃ともえかと一緒に銭湯へ行ったことをテアに伝える。

 

「むぅ~シュテルは、私以外と銭湯とやらに行ったのだな」

 

シュテルが自分以外の誰かと銭湯なる大浴場へと言った事に面白くないのか、テアはちょっと頬を膨らませてプイっと視線を逸らす。

 

(ヤキモチを焼くテアも可愛い~)

 

(拗ねている艦長も可愛いなぁ~)

 

シュテルとミーナは、拗ねているテアを見て、同じことを考えていた。

 

「ねぇ、ヒンデンブルクの艦長さん」

 

「ん?」

 

すると、レターナがシュテルに話しかけてきた。

 

「この後、何か予定ある?」

 

「えっ?この後?いや、もう時間が時間だし、寮に帰ろうかと思っていたところだけど‥‥」

 

「じゃあ、ヒンデンブルクの艦長さんも私たちと一緒に銭湯に行かない?」

 

「えっ?」

 

「なっ!?」

 

レターナの提案を聞いて、シュテルはポカーンとし、ミーナはびっくりする。

 

「そうだな、そうしよう」

 

一方、テアはレターナの提案に賛成な様子。

 

「えっ?いや、しかし‥‥」

 

ミーナはしどろもどろしている。

本音を言うと、ミーナはテアとの時間をシュテルに邪魔されたくはなかったのだが、テアは既にシュテルを連れていく気満々なので、ここでシュテルの参加に反対すれば、テアに嫌われてしまうので、言うに言えない。

 

「うーん‥‥」

 

一方、シュテル自身も明乃ともえかと一緒に銭湯へ行った時と同じ様に自分の身体に残る銃痕をテアに見せたくはなかった。

 

「あの‥‥テア‥実は‥‥」

 

シュテルは銭湯に行く前、テアに自分の身体には銃痕がある事を話した。

 

「えっ!?マジで!?本当に銃痕があるの!?」

 

シュテルの話を聞いて一番喰いついたのが、意外にもレターナだった。

 

「えっ?ええ‥‥」

 

「ねぇ、ちょっと見せて!!」

 

「いや、あまり見てもいいモノじゃないし‥‥」

 

シュテル自身も銃痕を気にしているので、あまりホイホイと他人に見せたくもない。

 

「レターナ、よさないか、失礼だぞ」

 

レターナのグイグイ来る態度にミーナは彼女を嗜める。

 

「しかし、シュテルよ。身体についた傷に関してだが、私は気にしないぞ」

 

シュテルは身体についた銃痕を気にしていたが、テアは気にするなと言う。

 

「えっ?」

 

「話を聞いたが、その傷はシュテルが大切な友を守るために負った傷なのだろう?」

 

「え、ええ‥‥」

 

「であるならば、それは十分に誇るべきだと私はそう思うが?」

 

「‥‥」

 

「私も副長やシュテルが危険な目に遭っていたら、きっと、シュテルと同じことをしていただろう」

 

「艦長‥‥」

 

ミーナもそうであるが、きっとテアも大切な親友や艦の乗員が危険な目に遭えばシュテルと同じ行動をしていただろう。

テアも明乃同様、乗員の事を大切にしている艦長なのだ。

ミーナはテアの話を聞いて感動している。

 

「だから、私はシュテルの身体に傷があっても平気だ」

 

「‥‥」

 

明乃、もえかと同じく、テアもシュテルの傷を受け入れてくれた。

前世であれば、由比ヶ浜あたりならば、

 

「その傷、キモッ!!見せないでよ!!」

 

とか言っていただろし、

 

雪ノ下は、

 

「そんな傷を負っているのに生きているなんてやっぱり、ゾンビね。傷企谷くん」

 

とか、言っていただろう。

あの二人は経緯なんて知りもしないし、興味もない。

ついでに人の話も聞こうとしない。

外見だけしか見てこない。

 

「ありがとね、テア‥‥」

 

テアの優しさにミーナ同様、シュテルも感動する。

 

「それで、一緒に来てくれるか?」

 

「う、うん‥わかった‥‥じゃあ、ちょっと準備するから少し待っていて」

 

「ああ」

 

シュテルは一度、寮へと戻り、着替え、タオル、石鹸、シャンプーなど入浴に必要なモノをカバンに入れ、テアたちと合流した。

 

「ねぇ、ミーナさん」

 

銭湯に行く道のりで、シュテルはミーナに声をかける。

 

「ん?なんじゃ?」

 

「‥‥改めてミーナさんがテアを大切にして、好きな理由がわかったよ」

 

「そうじゃろう!?そうじゃろう!?テアは最高じゃろう!?ハハハハハ!!」

 

テアの事を褒められて上機嫌なミーナだった。

 

そして先日、明乃ともえかと共にやって来た同じ銭湯に来た一行‥‥

 

番台で料金を払い、中に入ると、

 

「ん?あれは‥‥」

 

銭湯の休憩スペースに見知った顔があった。

 

「なるほど‥‥そうくるか‥‥」

 

「うぃ‥‥」

 

休憩スペースに居たのは晴風水雷長の西崎と砲術長の立石の二人で、彼女たちは風呂上りに将棋をしているみたいだった。

しかも、西崎はかなり将棋の腕が良いのか、立石は将棋の本片手に将棋を指しており、西崎なりのハンデなのだろう。

 

「だが、しかし‥‥」

 

パチンっ!!

 

「ここが急所なんだなぁ~これでタマの船はただの案山子ですなぁ~」

 

「うぃ~‥‥」

 

将棋の本を見ながら指しても立石は窮地に陥ったみたいで、頭を抱えていた。

 

シュテルたちはこれから入浴なので、声をかけずにそのまま脱衣所へと向かった。

同じく晴風で顔を合わせていた筈のミーナはテアのエスコートに夢中で二人の存在に気付かなかった。

 

テアは身体の傷を受け入れてくれたが、他の利用客の目もあるので、シュテルは手早く服を脱ぐ。

 

「お?それが例の傷?」

 

服を脱いでいたシュテルの傷をレターナが見つけ、食いついてくる。

 

「えっ?ちょ‥‥」

 

「こ、こら、レターナ」

 

シュテルは急ぎバスタオルで身体を覆う。

それから、四人は浴場へと入る。

 

「おぉ~これは‥‥」

 

「凄いなぁ~」

 

「プールみたい!!」

 

「でも、泳いじゃダメだよ。あと、入る前に身体と頭を洗わないとね」

 

シュテルのアドバイスに従い、四人はまず、湯船に入る前に身体と頭を洗う。

テアの髪は洗い慣れているミーナが洗った。

チラッと、髪の毛を洗われているテアを見ると、

 

(テアの肌、白くてやっぱり綺麗だな‥‥)

 

銀髪に小さな身体、そして白い肌‥‥海の妖精の二つ名は伊達ではない。

 

(文字通り、海の妖精だな)

 

今は同性ながらもテアの身体につい見とれてしまうシュテルであった。

 

「それにしてもミーナのおっぱいは相変わらずデカいなぁ~何を食べたら、こんなにでかくなるんだ?」

 

「ひゃっ!?ちょっ、レターナ!!」

 

テアの頭を洗っているミーナの胸をレターナが鷲掴みする。

 

(あぁ~確かに、同じ副長でもミーナさんの胸、デカいよなぁ~‥‥クリスには目の毒だな)

 

レターナに言われて今度はミーナの胸を見ると、ユーリとほぼ同じくらいの大きさはある。

 

「ちょっ、止めんか!!レターナ!!」

 

ミーナは腕を振り、レターナの手を振りほどく。

 

「まったく‥‥」

 

「ごめん、ごめん。でも、中等部の頃はたいして差がなかったのに、たった五年でここまでの差が出ると、ちょっと悔しいのだよ」

 

「だからって人の胸を鷲掴みすることないだろう!?」

 

ミーナとレターナが胸の話をしている中、テアは自分の胸がないことに不満とミーナの胸がデカいことにちょっと面白くない様子だった。

テアの他にも周りの利用者の視線は、ミーナの胸に注目されていた。

「大きい」 「鷲掴み」 と言われたので、どのくらい大きいのか気になったのだろう。

そして、ミーナの胸を見て、テア同様不機嫌になる者、羨ましそうに見る者などリアクションは様々である。

しかし、当の本人は周りの視線には気づいてはいない様子だった。

 

頭を洗い終え、次に身体を洗う。

 

「副長が世話になった晴風の風呂もこのような感じだったのか?」

 

ミーナに身体を洗われながら、テアはミーナに晴風の浴室もこの銭湯の様だったのか訊ねる。

 

「いえ、晴風は航洋艦なので、ここまでは大きくはありませんが、それでも十分に素晴らしい風呂でした」

 

「そうか」

 

「ですが、艦長。風呂は必要不可欠なモノだと私は確信しております」

 

「うむ‥‥」

 

「なので、ウチの艦にも是非、大浴室を付けませんか?」

 

ミーナはシュペーにも晴風の様な大浴室を設けないかとテアに提案する。

 

「私の権限でどうにかできる案件ではない」

 

「それはそうですが‥‥」

 

確かにテアはシュペーの艦長であるが、シュペー自体がテアの物ではなく、ドイツのヴィルヘルムスハーフェン校の所有である為、学校の許可なく、艦内に大浴室を設置なんて出来ない。

しかし、今後もシュペーでの遠洋航海はまだあるので、その航海中、風呂に入れないのは風呂好きになったミーナにはいささか辛いものであった。

 

 

「「「「はぁ~‥‥」」」」

 

身体と頭を洗い終えた四人はいよいよ待望の湯船に入る。

湯船に入ると思わず、深い息が出る。

こうして沢山のお湯が満たされた大きな湯船に入ると、一日の疲れが吹っ飛ぶような感覚になる。

 

「テア、湯加減は大丈夫?」

 

「ああ、いい湯だ」

 

湯船に張られたお湯も熱すぎず、ぬるすぎず、丁度いい湯加減だ。

しばらく、湯船に浸かっていると‥‥

 

「‥‥」

 

テアの瞼が段々と下がっていく。

 

「ちょっ、テア。お風呂で寝たらヤバいって!!」

 

お風呂で寝たら、溺れてしまう。

シュテルはテアを慌てて起こした。

 

「ぷはぁ~風呂上りに飲むミルクは普段のと、一味違うなぁ~」

 

レターナは脱衣所の自販機で売っている瓶牛乳を飲んでいる。

ただ‥‥

 

「おい、レターナ。ミルクを飲むのはいいが、せめて、着替え終わってからにしろ」

 

ミーナが呆れる感じでレターナに言う。

今のレターナの格好は、キャミソールにパンツ一丁と女子としては恥ずかしい格好だったのだ。

 

「えっ?別にいいじゃん、男に見られている訳じゃないんだし」

 

レターナは、この場に男は居ないのだから、気にするなという。

 

(一応、心の中は男なんだけどな‥‥)

 

この場に男は居ないと言うが、シュテルは、精神は前世と同じく男な部分も残っている。

だが、下着姿のレターナに欲情することはなかった。

テアとミーナは着替えた後、瓶牛乳を飲んだ。

勿論、テアの着替えとドライヤーは全てミーナが行った。

本音を言うと、シュテルもやりたかったが、髪質を考えて慣れて居ない自分よりも慣れているミーナの方が手早く終わるし、テアの髪をグシャグシャにする事もないからだ。

と言うか、お風呂の中でもそうだが、テアの隣のポジションをミーナが死守していたのだ。

 

「艦長、いかがでしたか?日本のお風呂は?」

 

「うむ、副長の言う通り、なかなか良かった。副長が艦に備えたいと言うのも分かるが、やはり、私の一存では無理がある」

 

「そうですか‥‥」

 

テアも日本の風呂文化に興味を示しはしたが、やはりシュペーに同様の浴室を設置するのは難しいとのことだった。

ミーナはちょっと残念そうだった。

 

それから一行は着替えを終え、脱衣所から出て休憩スペースへ行くと、

 

「よーし、打っちゃうよぉ~取っちゃうよぉ~ソレ」

 

「うぃ~うぃ~」

 

西崎と立石がまだ将棋を指していた。

戦況はやはり、立石が不利みたいで、主力の駒が次々と西崎に取られて行く。

しかし、立石は諦めることなく、自軍の駒を動かすが、

 

「おおっと、また取れちゃうねぇ」

 

「うぃ~」

 

苦し紛れの一手は西崎には通じず、かえって自軍の被害が大きくなる。

 

「これで、タマの仲間はどんどん減って行く~」

 

「うぃ~」

 

立石はもう完全に混乱しており、目をグルグルと回している。

ここまでの戦況を見れば、自分の負けは分かっていたはずなのに立石は徹底抗戦の構えでまだ駒を動かす。

 

「ほほぅ、まだ投了しないか‥‥それなら‥‥」

 

パチっ!!

 

西崎は攻勢をさらに強める。

 

「うぃ~」

 

「一度火が着くと、うぁっと言う間にこうなって皆殺しだぁ!!」

 

包囲網を作られ、主力の駒もなく、立石の陣形は崩され、王将は打ち取られた。

 

「王手!!」

 

「うぃ~‥‥」

 

王将が討ち取られ、立石はがっくりと頭を下げる。

立石が西崎に将棋に勝つのはまだまだ先のようだ。

 

「ん?あれは‥‥」

 

ミーナは西崎と立石の存在に気づいた。

そりゃあ、あれだけ大きな声を出せば、気づく。

 

「晴風の砲術長に水雷長じゃないか。二人も風呂に入りに来たのか?」

 

ミーナは西崎と立石に声をかける。

 

「あっ、ミーナさん。ミーナさんもお風呂?」

 

「ああ、我が艦長にも日本の風呂の良さを感じてもらいたいと思ってな‥‥ところでそれはなんじゃ?」

 

ミーナは西崎と立石に将棋について訊ねる。

 

「あっ、これは将棋、まぁ、簡単に言えば、日本版チェスかな?」

 

「ほぅ~チェスか‥‥わしと艦長もチェスにはそれなりの腕があるのだぞ」

 

「それじゃあ、一局打たない?」

 

立石では相手にならなかったのか、西崎はミーナに一局打たないかと聞いてくる。

 

「ふむ、いいだろう。わしのチェスの腕、とくと見るがいい!!」

 

と、勇んで西崎の挑戦に乗るミーナであったが、

 

パチっ

 

「王手!!」

 

「ぐっ‥‥うーむ‥‥」

 

ミーナは渋い顔で盤面を見る。

ミーナのチェスの腕よりも西崎の将棋の腕が一枚上手だったみたいだ。

 

「艦長!!どうか、わしの仇を討ってくんせぇ!!」

 

テアに自分の仇を討ってくれと頼む時も何故か任侠口調になるミーナ。

 

「わかった。副長の仇は私が討とう」

 

テアも将棋に興味を持ったのか、次は自分が西崎の相手になると言うテア。

将棋の駒の動かし方もチェスとあまり変わらないし、ルールに関しても、ミーナと西崎の対局を見て大体理解したテアは西崎との対局に望む。

西崎とテアの対局は時間の経過と共に妙に緊張した空気が盤面の周りを覆う。

それは、まるでプロ同士の対局みたいだ。

二人の対局を見学している立石、ミーナ、シュテルも緊張してくる。

盤面では西崎とテアとの一進一退の攻防が繰り返される。

 

そして、

 

パチっ

 

「チェックメイト」

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

今度は西崎の方が、渋い顔で盤面を見ている。

 

「あ、ありません‥‥詰みです」

 

そして、西崎は投了した。

テアと西崎の将棋勝負はテアの方に軍配が上がった。

 

「副長、約束通り勝ったぞ」

 

「ありがとうございます!!艦長!!」

 

素人同士の将棋なのに、テアは長時間の戦いを終えたように額の汗を拭うと、約束通り、ミーナの仇を討ったことを伝えると、ミーナは思わずテアに抱き着く。

 

「わ、私が‥‥私が負けた‥‥」

 

反対に西崎は自分が負けたことが信じられないのか、真っ白になり、口からはエクトプラズマを吐きだしている。

いくらチェスが得意だと言っても同じチェスが得意だと言うミーナを破ったので、テアの腕も大したことはないと思ったのだが、実際に対局してみると、テアの腕前はミーナ以上だった。

将棋を今日初めて打った‥‥将棋初心者に負けた感じがした西崎だった。

 

「メイ‥‥」

 

「タマ‥‥」

 

そんな西崎に立石が肩にポンと手を置いて、

 

「上には上が居る」

 

「ガハッ!!」

 

慰めるのではなく、傷に塩を塗った。

立石自身、今日は西崎に連敗に次ぐ連敗だったので、もしかしたら、彼女も西崎が負けたことで、スカッとした部分があったのかもしれない。

 

魂が抜けたように真っ白になった西崎を立石に任せて、シュテルたちは銭湯を後にした。

 

「彼女、大丈夫だろうか?」

 

テアが西崎の事を案じる。

 

「うーん、プロの将棋試験や大会って訳じゃないし、時間が経てば戻ると思うけど‥‥」

 

素人同士の将棋なのだからそこまで気にするとは思えないので、多分大丈夫だろうと言うシュテル。

 

 

同じ頃、シュテルと共に警察の事情聴取から解放された真白は家族と共に自宅への帰路についていた。

 

「でも、真白が無事で本当に良かったわ」

 

真雪は車を運転しながら後部座席に座る真白に声をかける。

 

「まさか、アイツらの一味がこんな事をするなんてなぁ‥‥アタシもまだまだ甘いってことか‥‥あの時、完全にアイツらを殲滅していれば、こんな事にはならなかったからなぁ~‥‥シロには怖い目に遭わせちまって、ホントにすまなかった」

 

真冬にしては珍しく、真白に頭を下げて謝る。

それほど、今回の真白の誘拐事件は宗谷家にとって大きな事件だったのだ。

真白自身もあの真冬が自分に頭を下げて謝る姿を見るなんてあまりにも意外だった。

 

「そうですよ、真冬姉さん。私は姉さんのとばっちりを受けた訳なんですから」

 

「うっ‥‥返す言葉がねぇ‥‥」

 

「でも、本当に真白が無事でよかったわ。あのドイツ艦の艦長さんには改めてお礼をしないと」

 

真霜もホッとした表情で真白の頭を撫でながら後日、正式にシュテルに礼をしなければならないと言う。

 

(碇艦長か‥‥)

 

真白は誘拐された自分を助け出してくれたシュテルの事を思い浮かべる。

彼女は警察でもなければ、ブルーマーメイドでもない。

一つ年上とは言え、彼女も自分と同じ女子高生‥‥

それにも関わらず、危険を承知で自分を助け出してくれた。

誘拐犯相手に格闘する姿、拳銃でバズーカの弾を撃つ姿、

それらの姿を思い浮かべているだけで、自然と体温が上がってくる。

 

「あら?真白、顔が少し赤いけど、大丈夫?」

 

「えっ?」

 

真霜が自分の顔を覗き込んでくる。

 

「う、うん。大丈夫」

 

「でもあんなことがあったらね、今日は早めに休んだ方が良いわよ」

 

運転席から真雪が真白の身体の事を気遣い、今日は早めに休むように促す。

 

「う、うん‥そうする‥‥」

 

自宅に戻り、お風呂に入ってもベッドに入っても真白の脳裏には誘拐されたことよりも、シュテルによって助け出されたことが強く印象に残る。

 

(わ、私に同性愛の気概はない!!)

 

真白は決して同性愛者ではないと自分に言い聞かせる。

 

(しかし‥‥なんなんだ?この胸のうずきは‥‥)

 

シュテルに対する悶々とする思いを抱きながら、真白はベッドの中で悶えることになった。

 




OVAで西崎と立石が銭湯にて、将棋を指して立石に連勝した事の他に設定で西崎の趣味・特技で将棋とありました。

そして、ミーナとテアの趣味・特技でチェスとあり、チェスと将棋は駒の動きもほぼ同じなので、今回はテアと西崎に将棋対決をしてもらいました。

軍配はテアに上がりましたが、彼女は日本に来る前、地中海でタラント校の生徒であるアンネッタとチェス対決をしていました。

彼女は海洋学校の生徒としてはポンコツですが、チェスプレイヤーとしては世界大会の上位者であり、そんな彼女と何度かのチェス対決をしたテアの方がおそらく西崎よりも腕は上なのだろうと言う理由です。



そして、真白に吊り橋効果で、フラグが立ったかな?
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