やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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今回も引き続き、総武高校側の視点になります。

相模が酷い目に遭うわけではありませんが、相模ファンの方々はご注意を‥‥


では、本編をどうぞ‥‥


93話

 

 

前世で八幡と由比ヶ浜のクラスメイトであった川崎沙希の深夜のバイトの解決依頼‥‥

奉仕部メンバーはこの後世でもそれは起きるだろうと予測していた。

その理由は、比企谷八幡という男子高校生は存在しないが、川崎沙希という女子高生が存在していたからだ。

 

前世において、この依頼は川崎の弟、川崎大志が八幡の妹である小町を経由して八幡に頼んできた依頼を雪ノ下が盗み聞きをして、無理矢理に首を突っ込んできた。

それから、調査をした結果、川崎が深夜のバーでアルバイトをしていたことを突き止め、奉仕部はそのバーへと行き、そこで働いていた川崎を説得するが、雪ノ下の説得は、説得と言うよりも上から目線の命令であり、由比ヶ浜は雪ノ下の尻馬に乗る感じで、二人は全然役には立たなかった。

そこで、八幡が彼女らの代わりに川崎の悩みの本質を見抜き、解決策を提示して無事にこの依頼は解決することが出来た。

 

そしてこの後世でも同じことがあるのであれば、八幡が提示した解決案を川崎にそのまま教えれば、彼女の悩みも解決するし、後世奉仕部の実績になると思った。

前世の経験から川崎がどこでバイトしているのか?

何故、バイトしているのかを既に知っているので、調査の時間が大幅に省くことが出来たので、葉山を含めた奉仕部の二人は、ホテル・オオタニの最上階にあるエンジェルラダーと言うバーへと向かうも、そこに川崎の姿はなかった。

それから連日、三人はバーへと赴き、川崎を捜すも、肝心の川崎は一向に現れない。

業を煮やした雪ノ下と由比ヶ浜は等々従業員に川崎を出せと絡む。

静かなバーで雪ノ下と由比ヶ浜のギャーギャーとした金切り声が響く。

すると、警察沙汰となり、警察署へと連行され、調べられると自分たちが未成年であることもバレて、高校退学のピンチとなる。

しかし、そこへ、葉山の父親である葉山弁護士が来ると、なぜかすんなりと三人は釈放された。

警察から学校へ通報されなかったこと、そして厳罰に処されなかったものの、警察の世話になった事で、三人は両親から大目玉をくらう羽目になった。

雪ノ下と由比ヶ浜の不満は積もり募り、その矛先はバーに現れなかった川崎へと向かった。

前世同等、川崎があのバーにいれば、自分たちが警察の世話になることもなかったし、親に怒られることもなかった。

しかし、彼女たちの行動は明らかに川崎に対する八つ当たりだった。

 

 

ある日の放課後、二人は川崎に、『何故自分たちが居る時にあのバーに来なかったのか』と、彼女に絡む騒ぎを起こし、学校の教師に自分たちが深夜のバーに出入りしていることを暴露して自爆する結果となる。

今度は学校から何らかの処分を受けるのかと思いきや、こちらも不思議と二人には何の処分も下されなかった。

確かに二人は学校側から処分はされなかった‥‥。

しかし、二人が川崎に絡んだ場所は昇降口だったので、二人が起こした騒ぎは大勢の生徒らに目撃された。

当然、二人は噂の注目となった。

 

 

昇降口で由比ヶ浜と雪ノ下が川崎に絡んでから数日後‥‥

 

「ちょっと、由比ヶ浜さん。アンタ、この前、昇降口で雪ノ下さんと一緒に騒いだんですって!?」

 

そこで、いの一番に絡んできたのは相模だった。

彼女としては大和の時の様にこれを機に由比ヶ浜を葉山グループから追放しようと画策したのだ。

同じく奉仕部の部員である葉山はその時、運よく?兼部しているサッカー部の方に顔を出していたので、この騒ぎには無関係だった。

その為、葉山が雪ノ下と由比ヶ浜と共に深夜のバーに出入りしていた事実は知られていない。

 

「う、うん‥‥」

 

由比ヶ浜は恐る恐る頷く。

いくら否定しても目撃者が多い為、自分と雪ノ下が昇降口で騒いだことに関しては否定出来なかった。

 

「しかも、何か由比ヶ浜さんには良からぬ噂も聞いたんだけど?」

 

「う、噂って?」

 

「アンタとJ組の雪ノ下さんが夜、売春行為してお金を荒稼ぎしているって噂!!」

 

「えっ?‥‥ええぇぇぇー!!」

 

川崎の深夜のバーでのアルバイトを止める筈が、どう伝わって自分たちが夜に売春行為をしていたなんて噂になるのだろうか?

もしかしたら、その噂は相模本人が昇降口で二人が騒いだ事を聞いて流した可能性もある。

 

「そ、そんなっ!?私とゆきのんはそんなことしてないよ!!」

 

「どうかしら?アンタ、その無駄にデカい脂肪の塊で男を誘惑して漁っていたんじゃないの?雪ノ下さんは、まな板だけど、まぁ、顔だけはいいからねぇ~♪」

 

相模はゲスめいた笑みを浮かべる。

 

「だから、そんな事してないって、言ってるじゃん!!」

 

余裕がある相模とは異なり、いわれのない噂を言われ、由比ヶ浜も段々ヒートアップしていく。

 

「でも噂が出回っているってことは、やっぱりやっているんじゃないの?」

 

「だから、やってないって言ってんじゃん!!サガミン、しつこい!!」

 

「兎に角、売春をするようなビッチをグループ内に置いておくとウチや葉山君にも悪影響が出るから、グループから出て行ってくれない!?」

 

相模は敢えて大声を出して由比ヶ浜に言い寄り、噂が事実であるとクラスメイトに印象付けて由比ヶ浜をグループから追放しようとする。

追放後はどうなるか、大和の一件を見ればそれは一目瞭然であり不登校街道まっしぐらだ。

しかもその間はクラスメイトから、集団でいわれのない口撃を受ける。

それに今回の噂‥‥『雪ノ下と由比ヶ浜は売春をしている』‥‥この噂を鵜呑みにした愚か者のせいで、自分の貞操を無理矢理奪われることだってありえる。

 

相模としては、同じグループメンバーである由比ヶ浜をクラス内では一番危惧していた。

その理由は胸が自分より大きい‥‥この一点である。

大きな胸を持つ彼女はいつか葉山のお気に入りになるかもしれないと思っていたのだ。

しかし、由比ヶ浜は葉山の事を友人だと思っており、異性とは見ていない。

葉山本人も由比ヶ浜を異性とは見ていないが、相模本人はその事実を知らない。

元々、葉山の本命は前世でもこの後世でも、雪ノ下一人であるが、彼はその事を決して口にしないので、相模に誤解と不安を与えていた。

自分は葉山の彼女の座に近い存在なのだと‥‥

相模は葉山と由比ヶ浜の気持ちを知る由もなく、由比ヶ浜を危険視していたのだ。

 

「まぁ、まぁ、相模さんも結衣も落ち着いて」

 

そこへ、葉山が珍しく二人の言い合いを止めに入る。

 

「葉山君‥‥」

 

相模は葉山に止められ、シュンとして可愛い子アピールする。

 

「でも、葉山君、由比ヶ浜さんは‥‥」

 

「噂に関しては、根も葉もないことだし、気にすることはないよ。少なくとも俺は結衣が売春をしていたなんて信じないし」

 

「で、でも‥‥う、うん‥‥葉山君が言うなら分かったよ‥‥」

 

相模は証拠がないことでも由比ヶ浜を何とかこのグループから追放したかったが、これ以上葉山に口答えすれば自分がグループから追放されるかもしれないと思い、渋々受け入れた。

 

「みんなも、由比ヶ浜さんの噂だけど、あれはあくまでも噂であって、証拠のない事実だから、みんなもこの噂は鵜呑みにしないようにね」

 

大和の時はあっさりと見捨てた葉山が今回、由比ヶ浜を庇った理由は、彼女が雪ノ下と一番親しい関係にあるからだ。

根も葉もない噂を鵜呑みにしてグループから追放し、大和の時みたいに総スカンすれば、十中八九、由比ヶ浜は雪ノ下に泣きつくだろう。

この時、自分が由比ヶ浜を擁護しなかったと知られたら、雪ノ下から拒絶されるかもしれない。

雪ノ下と婚約するまで、由比ヶ浜は葉山にとってアキレス腱の様な存在なのだ。

葉山本人にとっては面倒ながらも、今回は由比ヶ浜と相模とのいざこざにあえて首を突っ込んだのだ。

 

表面上の顔と言動から、カリスマ性だけはあり、クラス内は、『葉山君の言うことなら‥‥』 と、言うことで、雪ノ下と由比ヶ浜が売春していたと言う噂はすぐに鎮静化した。

 

相模は由比ヶ浜をグループから追放する絶好の機会を失い内心とても悔しがっていた。

 

 

そして、やってきた総武高校の職場見学‥‥。

 

大半が予想通り、女子はブルーマーメイド、男子はホワイトドルフィンが見学先となった。

あまりにも見学人数が多い為、職場見学は一度に全てではなく、クラスを幾つかに分けて、数日にわたってのローテーションで行われた。

 

 

由比ヶ浜たちのクラスが職場見学の日となり、由比ヶ浜のクラスの他に二クラス程の生徒が一緒に日本ブルーマーメイドの本部である横須賀のブルーマーメイド庁舎にやって来る。

 

「総武高校の皆さん。ようこそ、ブルーマーメイドへ!!本日、皆さんのガイドを務めさせていただく、平賀倫子です。よろしくお願いします!!」

 

総武高校の生徒たちを出迎えたのは、ブルーマーメイド隊員の平賀だった。

ブルーマーメイドの庁舎と言うことで、総武高校の職場見学に来た生徒は、女子であるが、その女子たちも平賀の姿を見て、ギョッとする。

 

主に彼女の胸部を見て‥‥

 

「では、早速案内しますね!!」

 

平賀はバスガイドの様に、小さな旗を手に持って総武高校の生徒たちを案内する。

これまで総武高校以外の高校や小、中学校、幼稚園などのガイド役もやっていたのだろう、彼女は慣れた様子で総武高校の生徒たちを案内していく。

働いている隊員たちの邪魔にならないようにオフィスを案内し、職場見学用に用意されたブルーマーメイドの歴史と活動を記録したPV映像を視聴したり、ビルの一室に設けられたブルーマーメイドの制服や装備品などが展示されている展示スペースも案内された。

その後、ブルーマーメイドの使用艦艇の内部も見学した。

総武高校の生徒らは、興味深そうに見ていた。

ただ、この場に居るのは平賀と同じ同性‥‥女子高生だったのだが、もし、この場に男子高校生が居れば、平賀の説明よりも、主に彼女の胸ばかりに目が行って、きっと平賀の説明は印象に残らなかっただろう。

 

そして、最後に、

 

「では、最後にレクリエーションで、ビンゴ大会をやりま~す!!」

 

オフィスの大きめな一室にて、総武高校の生徒たちはビンゴ大会をすることになった。

勿論、ビンゴ大会をオフィス内の一室でやるので、他の隊員の邪魔にならないようビンゴ大会が行われる部屋の壁が防音仕様になっている。

総武高校の生徒たちにはビンゴ用の数字が書かれた紙が配られる。

 

「もちろん、景品もちゃんと用意してありますよ!!」

 

用紙が生徒たちに配られると、平賀はビンゴの景品を見せる。

 

「ジャジャーン!!最初にビンゴになった方には今度のブルーマーメイドフェスタのペアチケットをプレゼントします!!」

 

『おおおおぉぉぉぉぉ~!!』

 

ブルーマーメイドフェイスのペアチケットを見て、ざわめく総武高校の生徒たち。

 

プレゼントの景品となっているブルーマーメイドフェスタはブルーマーメイドが主催の一大イベントであり、招待チケットはなかなか手に入らないチケットだった。

つまり、ブルーマーメイドフェスタはそれほどの人気イベントなのである。

 

(ペアチケット‥‥ペアなら、葉山君と一緒にデート出来るじゃん‥‥!!)

 

(その日は確か、部活は休みだから‥‥さ、彩加とデート‥‥)

 

(カナカナ誘ったら来てくれるかな?)

 

景品を聞いて、相模、三浦、由比ヶ浜は、このペアチケットをゲットして、ブルーマーメイドフェスタ当日にデートしたいと思った。

他の生徒たちも友人か彼氏と行きたいと似たような思いを抱いていた。

しかし、相模は兎も角、由比ヶ浜については、一方的に好意を寄せているだけであって、カナデは、彼氏でもなければ友人でもない、赤の他人な関係であった。

 

「ビンゴの用紙は手元に行きましたか?では、ビンゴ大会を始めます!!最初の番号は‥‥」

 

こうして、様々な思いを秘めたまま、ビンゴ大会は始まった。

 

「そろそろ、ビンゴが出てきてもいいですねぇ~」

 

ビンゴ大会はつつがなく進み、そろそろ誰かがビンゴになってもいい頃合いになった。

 

「では次の番号は‥‥」

 

平賀がビンゴマシンを起動させ、出てきたビンゴの番号を告げる。

 

すると、

 

「やった!!ビンゴだし!!」

 

最初にビンゴを勝ち取ったのは三浦だった。

 

「ファースト・ビンゴ、おめでとうございます!!」

 

三浦が平賀の下へと行き、ちゃんとビンゴであることを確認してもらい、

 

「では、景品である今度のブルーマーメイドフェスタのペアチケットです」

 

「ありがとうございます!!」

 

(やった!!これで彩加とデートが出来る!!)

 

こうしてペアチケットをゲットし、しかもその日は部活がないので、ブルーマーメイドフェスタで彼氏である戸塚とデートできると三浦は歓喜していた。

ブルーマーメイドフェスタのペアチケットをゲットした三浦を周囲は羨んでいた。

特に相模は、三浦を穴が開くほどジッと見ていた。

 

「では、ビンゴ大会の続きを始めますよぉ~!!」

 

その後もビンゴ大会は続いた。

景品はブルーマーメイドフェスタのペアチケットの他にブルーマーメイドのマスコットキャラクターのぬいぐるみ、キーホルダー、ストラップ、貯金箱、ボールペン&シャープペンシルの文房具セット、Tシャツ、パーカー、金曜カレーのレトルトパックの詰め合わせなど、ブルーマーメイドフェスタの時のみに販売されるブルーマーメイド限定の景品ばかりなので、ペアチケットほどではないが、ある意味価値のある景品ではあった。

 

 

ビンゴ大会も終わり、この日の総武高校の職場見学は終了した。

現地解散なのだが、横須賀から千葉に戻る為、ほとんどの生徒が同じ水上バスで千葉へと向かう。

千葉港の水上バス降車場にて、

 

「ねぇ、三浦さん」

 

「ん?」

 

三浦は後ろから呼び止められる。

彼女が振り返ると、そこにはニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた相模が居た。

 

「何?」

 

三浦は警戒しながら相模を見る。

 

「ねぇ、三浦さん。三浦さんって、確かテニス部のマネージャーだよね?」

 

「ん?それがなんだし?」

 

「テニス部ってさぁ~総武高校運動部の中でも最弱の部活で、朝も昼も放課後も練習ばっかりしているよねぇ~?」

 

自分がマネージャーを務めている部活動をバカにされて、ちょっとムッとする三浦。

 

「確か、土日祝とかもテニス場で必死にボール追いかけているよねぇ~?それだけやって弱小とかマジ受けるぅ~」

 

「相模‥アンタ、喧嘩売ってんの?」

 

「違う、違う、まぁ、今回はそれが幸いしたんだけど‥‥」

 

「あぁ~まどろっこしい!!言いたいことがあるならさっさと言ったら!?」

 

三浦は相模がのらりくらりと本題を引き延ばしている態度にイラッと来たので、声を荒げ、さっさと要件を言えと言う。

 

「もう、三浦さんったら、短気だねぇ~」

 

イライラしている三浦とは裏腹に相模は相変わらずニヤニヤといやらしい笑みを浮かべたままの余裕な態度‥‥

 

「それじゃあ、言うけどぉ~‥‥ねぇ、三浦さん‥‥」

 

相模は要件を三浦に言い放つ。

 

「さっきのビンゴ大会で当てたブルーマーメイドフェスタのペアチケット、ウチに譲って」

 

「はぁっ!?」

 

三浦は一瞬、耳を疑い、( ゚д゚)ポカーンとする。

 

「あれ?聞こえなかったの?だから、『ブルーマーメイドフェスタのペアチケット譲って』って、言ったの!?」

 

やはり、聞き間違えではなく、相模はビンゴ大会で三浦が貰ったブルーマーメイドフェスタのペアチケットを寄こせと言っている。

 

「はぁ?なんで、あーしが貰ったチケットをアンタにあげないといけないの?」

 

「弱小の部活動なんだし、フェスタ当日だってどうせ、部活動やっているんでしょう?だったら、そのチケット無駄になっちゃうから、ウチが有効活用してあげるって言ってんの~」

 

「嫌に決まってんじゃん!!」

 

三浦は相模の要求は突っぱねた。

 

「何?三浦さん、もしかしてチケットを転売して小遣い稼ごうってつもり?せこっ!!」

 

「違うし!!フェスタの日は部活が休みだから、普通に行くつもりだし!!」

 

「えっ?だって、ペアチケットだよ!?三浦さん、誰か一緒に行く相手いるの?」

 

「そ、それは‥これから、聞いてみるとこだし‥‥」

 

「じゃあ、頂戴よ!!そのチケット!!」

 

「嫌だって言ってんじゃん!!大体、そう言うアンタは?一緒に行く相手は居る訳?」

 

「はぁ?居るに決まってんじゃん!!」

 

「へぇ~誰?」

 

「誰?って、勿論、葉山君に決まってんじゃん!!ウチと葉山君はもう友達以上の関係なんだから」

 

「‥‥(¬_¬)ジトー」

 

相模はドヤ顔で胸を張って、自分はまだ葉山の彼女ではないが、彼女一歩手前の関係まで進展していると言う。

前世の三浦が聞いたらブチ切れる内容だろう。

しかし、この後世世界の三浦には戸塚と言う彼氏が居たので、葉山には何の魅力も感じていない。

それどころか、以前昼練の邪魔をしに来た失礼な輩と言う認識をしている。

ただ、これが前世の間柄で、チケットを当てたのが由比ヶ浜だった場合、三浦は今の相模と同じ行動をしていたかもしれない。

 

「アンタが葉山の事をどう思っていようが、別にいいけど、チケットは渡せないから。じゃあね」

 

これ以上、相模と関わるのは時間の無駄だと思った三浦はその場を後にしようとする。

 

「いいの!?葉山君に言いつけるけど!?」

 

すると、相模は葉山にチケットを譲ってくれなかったことをチクると言う。

 

「あっそう、好きにしたら?」

 

例え、葉山に言ったところで、どうにかなるものでもあるまい‥‥と、三浦は思ったが、最近立て続けに起こった事を思い出して、相模に釘を刺す。

 

「言っておくけど、葉山に 『あーしがチケットを奪った』 とか言って、泣きついても無駄だし」

 

「そんなこと言ってみないとわかんないじゃん!!」

 

「はぁ~やっぱり、そんな風に言うつもりだったんだ‥‥」

 

三浦は溜め息をつき、相模を憐れんだ目で見ながら言う。

ここ最近の出来事‥‥職場見学の少し前にクラス内で出回ったチェーンメール、そして先日、相模が由比ヶ浜に対して絡みギャーギャー騒いでいたのを三浦は当然知っている。

大和一人をクラスメイトの半数以上で吊し上げていれば一目瞭然であるし、由比ヶ浜の時だって、HR前に教室であれだけの大声でギャーギャー騒げば嫌でも目に入る。

なお、三浦と戸塚は大和の吊し上げには参加していない少数派のクラスメイトであった。

しかし、彼が吊し上げられ最終的に不登校の後、退学、精神病院送りとなってしまった事態に、彼の為に何もしてあげられなかったことに二人は少なからず罪悪感を覚えていた。

大和、そして先日の由比ヶ浜に絡んでいた様子から、三浦は相模が、葉山に泣きつき、

 

本当は自分(相模)が貰ったペアチケットを三浦が奪った。

 

と、言って葉山に泣きつき、その嘘をクラス内に広め、今度は自分(三浦)を吊るし上げるつもりなのだろうと思った。

そして、その予想は当たっており、相模は今すぐここで、ペアチケットを自分に寄こさなければ、それを明日にでも実行するつもりだった。

そんなことをすれば、大和の二の舞いになるのは目に見えていた。

葉山はきっと三浦よりも同じグループメンバーである相模の言うことを信じるだろう。

そして、葉山が信じた方が正義であり、言った事が真実である‥‥それが今のクラスの真理であった。

 

大和の場合、葉山は彼を弁護しなかった結果、彼はクラスメイトたちから吊し上げを受け、クラスから追放された。

反対に由比ヶ浜の場合は、葉山が味方したおかげで、彼女はクラスメイトから吊し上げにされることはなかった。

三浦も大和の様にしてやると、相模はそう画策したが、三浦は平然としている。

明日にはクラスメイトたちから吊し上げにされるかもしれないのに‥‥

 

「へ、へぇ~随分と強気じゃん。いいの?明日にはあの変態ゴリラみたいに吊し上げになるかもしれないのに‥‥」

 

そこで、相模は三浦が平然としている様子に若干の焦りを覚える。

 

「好きにしたらいいじゃん」

 

「ほ、本当にいいの!?今なら、ウチにチケットを渡せば、穏便に済むのに‥‥」

 

「だから、好きにすればいいじゃん。でも、アンタが言っている事をすれば、逆にアンタが恥をかくことになるかもね」

 

「はぁ?何言ってんの!?ウチが恥をかく訳ないじゃん!!きっと葉山君だって、ウチの味方になってくれるし!!」

 

「はぁ~‥‥ヘ(-′д`-)ゝ」

 

三浦はもう、可哀想なモノ見る目で相模を見る。

 

「ちょっと、何よその目は!?アンタ、自分の立場分かってんの!?アンタは明日にはもう、終わりなのよ!!」

 

「あのね、あーしがこんなにも余裕な訳、本当に分かんないの?」

 

「強がっているだけじゃない!!」

 

「そんな訳ないでしょう。ちゃんと証拠があるからに決まってんじゃん」

 

「はぁっ!?証拠!?証拠なんて有る訳ないじゃん!!何言ってんの!?」

 

(あっ、ま、まさか、コイツ、今の会話を録音・録画しているんじゃあ‥‥)

 

相模は三浦がここまで余裕な態度でいられるのは、三浦が今、この会話を録音・録画しているのかと思ったが、彼女の手にはスマホが握られておらず、また隠し撮りしている様子もないので、少なくともこの会話を録音・録画している様子はない。

 

「見たところ、この会話を録音・録画しているみたいじゃないけど、証拠なんてどこにあるの?」

 

「アンタ、引率の先生の事、見ていなかったの?」

 

「はぁ?引率の先生?」

 

「そっ、先生、引率の他に記録係として、今日の職場見学の様子をビデオカメラで撮っていたんだよ。勿論、あのビンゴ大会の様子もね」

 

「えっ?‥‥それって‥‥」

 

「そう、あーしがビンゴで一番になって、ペアチケットを貰った映像もちゃんと残っているってこと‥‥アンタがつまらないデマを流すなら、あーしも先生に頼んで、今日の職場見学の映像を提供してもらうし」

 

引率の教師が一番後ろから、ビデオカメラを回していることに気づかなかった相模。

 

「くっ‥‥」

 

映像が残っている以上、相模がいくら『三浦にペアチケットを盗られた』と騒いだところでそれが嘘であることがバレてしまう。

三浦が言うようにそんなデマを広げた後、それがデマだとバレたら三浦ではなく逆に自分がクラスメイトから吊し上げにあってしまう。

相模は悔しそうに顔を歪め、その場から逃げるように去って行った。

 

 

その日の夜、三浦は彼氏である戸塚に電話を入れる。

 

「あっ、彩加?」

 

「三浦さん、どうしたの?」

 

「あ、あの‥‥その‥‥きょ、今日の職場見学、そっちはどうだった?」

 

三浦は本題を言う前に戸塚に今日の職場見学の事を訊ねた。

いくら男の娘とは言え、戸塚は男なので、今日の職場見学は三浦と別の場所へと職場見学へ行ったのだ。

 

「うん、楽しかったよ!!色々参考になったし!!三浦さんの方はどうだった?」

 

「あ、あーし!?」

 

突然、話題を振られ、思わず声が裏返る三浦。

 

「う、うん‥あーしの方も楽しかったし‥‥そ、その‥それでさ‥‥彩加」

 

「ん?なに?」

 

三浦はゴクッと生唾を飲み、

 

「その‥‥今日の職場見学でさぁ、その‥‥ぶ、ブルーマーメイドフェスタのペアチケットを貰ったんだけど、一緒に行かない!?」

 

「えっ?ブルーマーメイドフェスタ?」

 

「う、うん‥‥ちょうどその日は部活も休みだしさぁ‥‥ど、どうかな?」

 

三浦は戸塚をブルーマーメイドフェスタに誘う。

この時の三浦の心臓はバクバクになっていた。

 

「うん、いいよ」

 

「ほ、ホント!?」

 

こうして戸塚を無事に誘うことが出来た三浦は頬を赤く染め、まるで花が咲くような笑みを浮かべた。

 

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