やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~ 作:ステルス兄貴
中間テストのテスト休みが明け、やっと平和な日常が戻った六月の某日‥‥
横須賀女子に所属する大型直接教育艦、駿河‥‥
横須賀女子でも、入学試験で上位の成績を出した者が配属される大型直接教育艦であり、真白の姉二人も学生時代はこの艦の艦長を務めていた。
史実では、ワシントン軍縮条約にて、幻となった日本海軍の八八艦隊計画にて、建造計画された艦であり、本来ならば、紀伊型戦艦となる筈が、紀伊と言う艦名は大和型の四番艦に与えられた為、艦名が繰り上げとなり、この世界では尾張級戦艦に分類されている。
その駿河クラスに所属する三人の女子高生たち‥‥給養員の小林亜依子(通称:アリス) 航海員の吉田親子(通称:チカ) 応急員の角田夏美 (通称:なっち)‥‥
彼女たちは今、共通の悩みを抱いていた。
三人の女子高生たちの視線の先には同じ駿河のクラスメイトであり、駿河艦長の知名もえかの姿があった。
(((最近、艦長があんまりかまってくれない‥‥)))
三人の共通の悩み‥‥
それは、もえかが、自分たち駿河のクラスメイトたちとはあまり交流してくれないと言うモノだった。
あの実習で、事件に巻き込まれ、ヒンデンブルクに救助された後、横須賀に戻ると、クラスメイトたちは検査入院し、退院後はゴールデンウイーク、中間テスト、テスト休みが重なり、駿河クラスの生徒たちは互いに交流の機会がなかなか恵まれなかった。
しかもテスト休みの中、普通の生徒は休日なのに、もえかはわざわざ休みの日なのに学校へと向かい、報告書を書いていた。
しかし、彼女は短い期間で報告書を終えていた。
自分の報告書が終わったにもかかわらず、もえかは、その後も学校へと通い、報告書の作成に悪戦苦闘している明乃を手伝っていた。
そんな、もえかの姿を見せられては、 『晴風の艦長のことなんて放っておいて、私たちとテスト休みを過ごしましょう』 なんて言えない。
そして、ようやくテスト休みが明け、明乃は報告書から解放されたのだから、交流の機会は取れそうなのだが、肝心のもえか本人が、やはり、同じクラスメイトの自分たちよりも明乃やシュテルと一緒に居る時間が多い。
海洋実習中は同じ艦に居るのだから、交流の時間はあるのだろうが、現在、駿河はヒンデンブルクとの戦闘で損傷し、ヒンデンブルク共々ドック入りしている。
それに今学期は新入生たちの海洋実習の予定は入っていない。
座学もあの事件のせいで、遅れが生じている事も影響している。
例え、海に出ていなくても、テストもテスト休みも開けたので、次の行事までの間に何とかクラスメイト同士の交流の機会を設けたかった‥‥
それが三人の共通の思いであり、悩みであった。
「艦長、時間があると、晴風の艦長かドイツ艦の艦長の所に行っちゃうしなぁ~」
「仲いいよねぇ~艦長とあの二人‥‥」
「子供の頃からの付き合いみたいだし‥‥」
「だけど、艦長はウチ等の艦長なんだから、もっと私たちの時間も大切にしてほしいわ!!」
小林は三人の中でも一番、もえかとの交流に飢えているみたいだ。
「こうなったら、こっちから行くわよ!!」
もえかが明乃やシュテルの所に行ってしまうなら、こっちからもえかの下に向かえばいい。
小林がもえかの下へと向かおうとする。
「行ってどうするの?」
角田がもえかを追いかけてどうするのかを訊ねる。
「好きな食べ物とか、将来の夢とか?何か色々話すことあるじゃない!!」
何とかもえかと交流しようと努力する小林。
「もう少し、楽しい話題を用意してから言った方がいいかもね」
角田と吉田は話題を用意してから行こうと言う。
「さて‥‥話している間に見失ってしまったわね」
三人でもえかと話す為の話題を用意している間に肝心のもえかを見失ってしまった。
「どこに行ったのかしら?」
「図書室かな?晴風の艦長とドイツ艦の艦長が、報告書の提出を求められているって艦長が言っていたし‥‥」
そこで、三人は図書室へと向かうが、そこにもえかの姿はなかった。
「いない‥‥」
「書類仕事ならここかと思ったんだけど‥‥」
図書室以外、もえかの居場所に心当たりがない。
そこへ、
「おや?」
三人は後ろから声をかけられた。
ただ、吉田が『おや』と言う単語に反応して、
「親子(おやこ)じゃありません!!親子(ちかこ)です!!」
「うわっ、な、な、何だ!?いきなり!?」
三人に声をかけたのは真白だった。
「あ、貴女は‥‥」
「晴風の副長さん‥‥?」
「ねぇ、晴風の副長さん」
「ん?な、なんでしょう?」
「晴風の艦長さんか、ウチの艦長知らない?」
「図書室に居ると思って来たんだけど、居なくて‥‥」
三人はもえかならば、きっと明乃と一緒に居るだろうと思い、明乃かもえかの居場所を真白に訊ねる。
「書類仕事は先日終わったって聞いたからな‥‥私たちの艦長から、知名艦長には随分と助けられたと言っていた。知名艦長は何でも出来て凄いな」
もえかに真霜の姿を垣間見る真白。
「あぁ~分かります。あの人、完璧超人ですからねー」
仕事を手伝おうとしても‥‥
「あっ、艦長、何か手伝いましょうか?」
「ありがとう。でも、大丈夫だよ。すぐに終わるから」
判断も的確で早い‥‥
「それに‥‥何でも美味しいって言うしね」
「あぁ~そう言えば、あの事件の食事の時、いつも言っていたね。ただの缶詰めだったのに~」
「あれは私たちを励ますために言っていたんじゃあ‥‥」
あの事件の最中、艦橋に立て籠もっている間、もえかたちは、缶詰め、乾パンの保存食を食べていた。
そんな食生活をヒンデンブルクが救助するまで約一週間の間、続けていた。
晴風では同じくあの実習で、水不足となった時、缶詰め、乾パン生活となった時、三日目で、不満が上がった。
しかし、もえかは一週間の間、不満も言わず、むしろ、『美味しい』と言って缶詰め、乾パンの食生活を続けていた。
確かに士気を保つため、吉田の言う通り、励ましの言葉だったのかもしれないが、元々もえかは母子家庭で、小学校時代は施設生活を経験してきたもえかは悪食とは言わないが、食事について基本的に好き嫌いは無く食べる。
「そ、そんな話は置いといて、ウチの艦長がどこにいるのか分かりませんか?多分、晴風の艦長と一緒に居ると思うのですが‥‥?」
「しかし、書類仕事は終わっているから、二人が一緒に居るとは限らないのではないか‥‥?」
真白はいくらあの二人が仲良くても四六時中、ずっと一緒に居るとは限らないのではないかと言うが、
「限らない‥‥? (¬_¬) 」
「本当に? (¬ω¬) 」
小林と吉田がジト目で真白に、本当に明乃ともえかは一緒に居ないのかと真白に訊ねてくると、
「い、いや‥‥あの二人なら、ほぼ確実に‥‥」
小林と吉田のジト目で見られ、自信を無くす真白。
「あっ、そう言えば‥‥」
此処で、真白が何かを思い出した。
「知名艦長から何か相談があるとか言っていたような‥‥」
もえかが明乃に何か相談事があるようだった事を思い出す。
「それだっ!!もう、相談なら、同じ艦の私たちに言ってくれれば良いのに‥‥」
「私たちじゃあ、まだそう言う相手にはなれないのかな‥‥?」
自分たちではまだ、もえかと交流時間が少ないので、信頼関係が出来ていないから、もえかが何かに悩んでいても相談相手に認識されていないのだろうか?
いや、例え明乃と比べると交流時間が短くとも、四人であの過酷な一週間を乗り切ったのだから、信頼関係はもう築かれている筈だ。
「‥‥うちの艦長は、よく、『海の仲間は家族』だと言う。‥‥まるで口調の様に‥‥晴風のみんなは家族だと言っていた‥‥それは昔、知名艦長から教わった言葉だと言っていた。きっと、知名艦長も同じようにクラスメイトたちを家族だと思っている筈なのではないだろうか?」
真白が三人にアドバイスを送る。
しかし、
「じゃあ、家族に言えない相談ってなに?」
実際に三人はもえかから相談事を打ち明けられていない。
艦の仲間が家族であるならば、その家族にも言えない相談事は一体何なのだろうか?
恋愛関係だろうか?
それとも、もえかの実家関係だろうか?
秀才のもえかの事だから、少なくとも勉強面、成績面の事ではないだろう。
では、もえかの相談事とは一体何だろうか?
「そ、それは色々あるだろう。私も姉さんたちに言いにくいあれやこれやとか‥‥」
真白自身も家族である姉二人にも言えないことはあるらしい。
「私も小さい頃、食事が魚料理ばっかりだった時、洋食が良いって、ちょっと言いにくかったし‥‥」
「それはつまり、私たち主計科のメニューに不満が!?」
角田が昔の食生活の中で、和食、魚料理は食べ飽きているので、あまり好きではないことを暴露すると、駿河の台所を担当している小林は、自分たち主計科が考えている献立メニューに不満があるのかとツッコミを入れる。
「それで結局、艦長はどこで何をしているのか‥‥?」
話が脱線し、肝心のもえかの居場所が分からない。
その時、
「私がどうかした?」
捜していたもえか本人が明乃と一緒に居た。
「艦長見つけた!!」
小林はもえかを確保するかのように、もえかに抱き着く。
「早速ですけど、好きな食べ物は!?」
「えっ?ハヤシライスかな?」
そして、テンパっていたのか、小林はもえかの好物を訊ね、もえかは素直に自分の好物を答える。
「ほんとうに聞くんだ‥‥」
「会話と言うか、インタビューだね」
まさか、小林が本当にもえかに好きな食べ物を聞くとは思っていなかったのか、吉田と角田は苦笑している。
「それより、ちょうど良かった。みんなに話があったの。今度、クラスのみんなで親睦会を開こうと思っているんだけど‥‥」
「親睦会?」
「うん、本当は最初の海洋実習で、ちょっとしたことでも出来ればって思っていたんだけど、あんなことになっちゃって、ちゃんと打ち解ける機会が失われちゃったじゃない?だから、改めて次の海洋実習前にそう言う機会を設けたくて」
「それで親睦会ですか‥‥?」
「私は良いと思う!!」
「そうね、元々私たちの目的もそうだし」
「目的?」
「私たちも艦長ともっとお話をしようと思って艦長を探していたんです。艦長すぐに晴風の艦長かドイツ艦の艦長の所に行ってしまうので‥‥」
「そうだったの?ごめんね。‥‥それじゃあ、予定や内容について話そうか?ミケちゃん、またね、色々ありがとう」
もえかは明乃に一言声をかけ、三人と共にその場から去る。
「うん、またねー」
明乃も手を振ってもえかを見送った。
「親睦会か‥‥ねぇ、シロちゃん。私たちも親睦会やろうか!?」
もえかたちの話を聞いて、明乃は自分たち晴風クラスでも親睦会をやろうかと提案するが、
「私たちはもういいですよ」
晴風クラスは親睦会を態々開かずとも、晴風クラスは十分に親睦を深めていると思っている真白だった。
シュテルが学校にある食堂のテラス席の近くを歩いていると、
「「「「うーん‥‥」」」」
テーブルにもえか、小林、角田、吉田の四人が何やら悩んでいる様子だった。
「おーい、もかちゃん!!」
「あっ、シューちゃん」
シュテルの声に気づき、もえかはシュテルに手を振る。
「おや?みんなでお茶会?」
シュテルはもえかと同じクラスメイトが集まっているのを見て、お茶会でもしているのかと思った。
そして、シュテルが発した『おや?』と言う言葉に、
「親子(おやこ)じゃありません!!親子(ちかこ)です!!」
と、吉田が過敏に反応した。
「うわっ!?えっ?えっ?な、なに?」
「あぁ~気にしないでください。癖みたいなものなので‥‥」
吉田の大声にビックリしたシュテルに角田がフォローを入れる。
『おや』って単語を聞くだけで、過敏に反応するなんて、彼女はどうも、自分の名前に何らかのコンプレックスを持っているみたいだ。
「は、はぁ‥‥それで、どうしたの?」
「実は今度、私たちのクラスで親睦会をやろうと思っているんだけど、なかなかその内容が決まらなくて‥‥」
「へぇ~親睦会か‥‥」
(私らの場合は、交換留学でヴイルヘルムスハーフェン校に行った時の交流会が、ある意味では親睦会になったなぁ~‥‥)
ヒンデンブルクの場合、交換留学でヴイルヘルムスハーフェン校に行き、そこで行われたダートマス校との親善試合後の交流会がヒンデンブルクの親睦会になった。
「それで、どんな感じにしたいの?」
シュテルはもえかのクラスの親睦会のビジョンを訊ねる。
「うーん‥‥折角だから、クラスみんなで出来ることがいいかな?」
「ついでに、食事の機会も設けたいです‥‥」
「ほうほう、なるほど‥‥うーん‥‥」
もえかのクラスでの親睦会の内容を一緒に考えるシュテル。
「あっ、そう言えば、もかちゃんって確か出身が長野だったよね?」
「うん、そうだよ」
「だったら、蕎麦打ちって出来る?」
長野は日本でも有数の蕎麦の生産地であり、地元民は大抵蕎麦打ちを家や学校で習っている。
「えっ?蕎麦打ち?うん、出来るよ。長野に居た時は、学校や町内のイベントでよくやっていたし‥‥」
長野生まれで、施設時代を除いて長野で育ったもえかも蕎麦打ちは出来るらしい。
「蕎麦打ちなら、みんなで出来るし、打った蕎麦をみんなで食べることも出来るから、どうかな?分からない所は、もかちゃんがレクチャーしてあげれば、自然とクラスメイトとの交流や会話も増えるだろうし‥‥」
その為、シュテルは、もえかたちのクラスの親睦会に蕎麦打ちをしてはどうかと提案した。
「おぉ、なるほど!!蕎麦打ちか‥‥その手があったね!!お蕎麦の材料や必要な道具は長野の家に言えば、すぐに送ってくれるだろうし、みんなはどうかな?」
「いいですね!!」
「やってみましょう!!」
「蕎麦打ちは主計科としてもいい経験になりますしね」
もえかは、シュテルの提案である蕎麦打ちで親睦を深めようと言うことになった。
シュテルがもえかのクラスの親睦会について相談を受けている時、食堂の中では‥‥
「レターナ、なんじゃ?その真っ赤な揚げ物は?」
食堂の一席にはテア、ミーナ、レターナの三人が居た。
そして、レターナは中身が真っ赤なコロッケを食べていた。
「ん?これ?食堂で売っていた『爆熱ゴッド激辛コロッケ』ってヤツだ。ミーナもどうだ?」
レターナはミーナに激辛コロッケを勧めてくる。
「い、いや、ワシはいらん‥‥それにしても相変わらず、お主は辛い物が好きだな」
高校に入ってから、初めての航海でヴイルヘルムスハーフェン校が所有する海上フロート基地での航海にて、レターナはミーナに激辛ブルストを勧め、二人で食べたのだが、その後ミーナはお腹を壊した。
しかし、激辛ブルストをミーナに勧めてきたレターナ本人はお腹を壊すこともなく平然としていた。
だが、ここでお腹を壊すことで、ミーナはヴイルヘルムスハーフェン校校長の無茶苦茶な課題を知ることが出来た。
「艦長もどうです?」
すると、レターナはテアに激辛コロッケを勧めた。
「おい、レターナ、艦長になんてものを勧めるんだ!?」
「うーむ、私は辛いのはちょっと‥‥」
テアは辛い物はちょっと‥‥と、遠慮している。
「でも、鷹の爪もふんだんに使われているみたいですよ」
「鷹の爪?」
「なんか、珍しい調味料みたいですよ」
「そ、そうなのか‥‥じゃ、じゃあ、一口だけ‥‥」
日本に来て風呂文化や寿司など、これまでドイツでは未体験なモノが日本には溢れており、どれも素晴らしいものだった。
なので、鷹の爪と呼ばれる調味料もきっと美味しいものに違いない。
テアはそう思って、レターナからコロッケを食べさせてもらう。
「じゃあ、艦長、あーん」
「パクッ‥‥モグモグ‥‥っ!?」
一口食べた瞬間、テアの舌に燃えるような感覚とビリビリするような刺激が襲う。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
食堂にテアの悲鳴が木霊した。
テラス席でもえかのクラスの親睦会の内容の相談を受けていたシュテル。
親睦会の内容が決まったみたいなので、移動しようとした時、
「くぁwせdrftgyふじこlp!!」
「えっ?今のテアの悲鳴?」
食堂の中から、テアの悲鳴が聞こえた。
急いで食堂に行ってみると、テアが口元を抑えながら悶えていた。
「い、一体何があったの!?」
ミーナに何故、テアが悶えているのかを聞くと、
「そ、それが激辛コロッケを食べてしまって‥‥」
話を聞くと、辛い物が苦手なのに、激辛コロッケを食べて悶えているのだと言う。
「と、とりあえず、水をもらってくるから!!」
シュテルは急ぎ冷水機から水をコップに入れて、水をテアに飲ませる。
「ゴクッ‥‥ゴクッ‥‥はぁ~‥‥死ぬかと思った」
「まったく、お主は何て物を艦長に食べさせるんだ!?」
ミーナはテアに激辛コロッケを食べさせたレターナを叱る。
すると、
「ヒック‥‥ヒック‥‥あれ?」
「テア、しゃっくりが出ている」
「ヒック‥‥ヒック‥‥」
「きっと、辛い物を食べたせいかも‥‥」
「そ、そうなのか?ヒック‥‥ヒック‥‥ど、どうしよ‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥」
「とりあえず、水を大量に飲んでみるとか?」
しゃっくりの治し方の定番、『水を沢山飲む』を試してみた。
「ゴクッ‥‥ゴクッ‥‥ゴクッ‥‥ゴクッ‥‥」
「どう?」
「治った?」
「んー‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥」
「ダメか‥‥」
「そう言えば、しゃっくりを100回すると死ぬって聞いたことがあるな‥‥」
「なにっ!?それは本当か!?」
レターナが聞いたことのある噂に過剰に反応するミーナ。
「いやいや、それはないから」
しかし、シュテルはそれを否定する。
「だが‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥このままと言う訳にも‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥いかない‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥」
噂の真相はどうあれ、しゃっくりをしたままでは気が散るし、テア本人もストレスが溜まる。
「ヒック‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥しゃっくりを治す方法を‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥他に知らないか?ヒック‥‥ヒック‥‥」
テアは水を飲む以外にしゃっくりを治す方法は無いかと訊ねる。
「柿の蔕を煎じたモノを飲めば治るって聞いたことはあるけど‥‥」
「カキ?Austerか?」
ミーナは同じ『カキ』でも牡蠣の方かと思った。
「いや、そっちじゃなくて、Persimoneの方」
「でも、そんなの無いよ」
柿は日本では秋の果実で、今の時期はまだ六月‥‥季節外れであり、レターナは柿なんてないと言う。
「じゃあ、息を止める」
「‥‥プハっ!!」
「「「短っ!!」」」
テアの息を止める時間があまりにも短いことに思わずツッコム三人。
「舌を引っ張る‥‥」
ミーナがテアの舌を引っ張る。
((舌も短っ!!))
テアの舌も短かった。
「‥‥眼球を圧迫する」
ぎゅゅぅぅぅぅぅ~‥‥
「痛い、痛い、痛い‥‥」
次にミーナがテアの眼球を圧迫する。
眼球を圧迫され、痛がるテア。
「どう?止まった?」
「うーん‥‥ヒック‥‥ヒック‥‥」
テアのしゃっくりは止まらなかった。
「頑固なしゃっくりだな‥‥」
「しゃっくりって、確かどこかが痙攣しているって聞いたけど‥‥」
レターナがしゃっくりの原因はどこかが痙攣している事により発生して事は知っていたが、どこが痙攣しているのかは知らなかった。
「横隔膜だよ」
「それって、何処にあるの?」
「えっと‥‥確か、肺の上辺りかな?」
「肺の上って言うと‥‥此処かな?」
ドスっ
「はぅ!!」
レターナは、テアの横隔膜に衝撃を与えれば、しゃっくりは止まるかと思ったのだ。
その為、彼女はテアのお腹に腹パンをした。
「ちょっ、レターナ、お前!!艦長に何をしとるんじゃあ!!」
「えっ?いや、横隔膜に衝撃を与えれば、艦長のしゃっくりが止まるかと思って‥‥」
「そこは横隔膜じゃなくて、鳩尾!!人体急所の一つだぞ!!」
「えっ?そうなの?ごめん艦長」
テアに腹パンをくらわせたレターナは横隔膜だと思って殴ったところが横隔膜ではなく人体急所の一つである鳩尾を殴ってしまった事を謝る。
「テア、しゃっくり止まった?」
一応、腹部に衝撃を受けたので、しゃっくりが止まったかもしれないので、聞いてみた。
すると、
「ヒック‥‥ヒック‥‥いっつぅ~‥‥」
蹲りながらもテアはしゃっくりをした。
ミーナは心配そうにテアの介抱をしている。
「碇艦長、他にはないの?」
レターナがミーナの代わりにしゃっくりの治療方法聞いてくる。
「えっと‥‥人にうつす?」
「いきなり、胡散臭くなったな!?」
確かにこれまでの方法からすると、風邪じゃないのに、『しゃっくりを人にうつす』なんて胡散臭い。
「‥‥」
しかし、試してみようかと思ったのか?テアは、ジッとミーナの事を見つめる。
「か、艦長、何故、ワシの事をジッと見るんです?」
しゃっくりの原因も腹パンしたのもミーナではなく、レターナの筈なのに‥‥
「あまり治らないなら最終手段で、病院に行って診てもらった方がいいかもしれない」
「病院?」
「どこを見てもらうのだ?」
「‥‥脳とか?」
「「「脳!?」」」
シュテルの『脳』発言に三人は思わず驚愕する。
「ほ、本当に艦長は‥‥テアは脳が病気なのか!?」
「シュテル、私は病気なのか?」
「え、えっと‥‥」
ミーナとテアの二人がシュテルに詰め寄ってくる。
「あれ?でも、艦長、しゃっくりが止まったんじゃねぇ?」
レターナがテアのしゃっくりが止まっている事に気づく。
「むっ?確かに‥‥治ったみたいだ」
もしかして、自分のしゃっくりの原因が脳にあるのかもしれないと言うことに驚愕したテア‥‥
驚愕したショックでテアのしゃっくりは治った様子。
「本当ですか!?いやぁ~良かった!!」
ミーナはテアのしゃっくりが止まったことに喜んでいる。
すると、
「ヒック‥‥あ、あれ?ヒック‥‥ヒック‥‥」
今度はミーナの口からしゃっくりが出てきた。
「あれ?今度はミーナか?」
「本当にしゃっくりって人にうつるんだ‥‥」
ミーナの現状を見て、しゃっくりって人にうつるんだ‥‥と意外に思っているシュテル、レターナ、テアの三人。
「副長のしゃっくりも治さねばならんな」
「えっと‥何、やったっけ?」
「水を一気飲み、息を止める。舌を引っ張る、眼球を圧迫、鳩尾に腹パンだっけ?」
「じゃあ、まず水を一気飲みからだな」
「ちょっ、レターナ!!」
「副長、しゃっくりを治すためだ」
今度はミーナのしゃっくりを止める為、レターナとテアはついさっき、試したしゃっくりの治療法を行うのであった。
劇場版のネタバレとなってしまいますが、武蔵乗員の三人娘たち、劇場版では未登場だった気がする‥‥
テレビ版ではウィルス感染から逃れ、OVAでも登場したのに、最新作である劇場版に未登場となってしまった‥‥所属がバラバラだったので、仕方ないのかな?
代わりに名前は不明でしたが、武蔵の航海長が劇場版では登場。
はいふり二期があれば、武蔵の航海長も名前が与えられるのかもしれませんね。