やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

98 / 161
97話

六月の某日‥‥

 

放課後、横須賀女子の校庭にはローザとミーナの姿があった。

二人は制服ではなく、体操服姿だった。

 

「じゃあ、ミーナさん、行きます!!」

 

「おう」

 

ローザは息を整えた後、走りだす。

 

「ハッ‥‥ハッ‥‥ハッ‥‥ハッ‥‥」

 

そして、徐々に加速していく。

加速したローザは踏み込むと、そのまま背面跳びをする。

今、ローザが練習していたのは走り高跳びの練習だったのだが、彼女はバーの上を跳ぶのではなく、バーとマッドの間を器用に横直立のまま跳んだ。

 

「‥‥」

 

「‥‥よしっ!!」

 

「いや、跳んでおらんぞ!!」

 

ローザはマットの上でガッツポーズをするが、ミーナはすかさず彼女にツッコム。

 

「えっ?いや、でも、ちゃんとバーが‥‥」

 

バーが落ちていないので、自分はちゃんと跳べた筈だと勘違いしているローザ。

 

「うむ、ちゃんと言おう‥‥越えておらんぞ!!もう、何べん、言えば分かるんじゃあ!?このままでは日が暮れてしまうぞ!!」

 

「ご、ごめんさない。次はちゃんと頑張りますので‥‥」

 

ローザはミーナに謝り、再び定位置につく。

 

「今度は、もう少し、バーの高さを下げるから、落ち着いて行け。そして、次は教えた通りに跳ぶのじゃぞ」

 

準備が整い、再びローザは走る。

そして、踏み込み跳ぶが、またもや、横直立で跳ぶ。

しかも、先程よりもバーの高さを下げているので、ローザは頭頂部をバーにぶつけた。

 

「‥‥」

 

ミーナはそんなローザの姿に唖然とする。

 

「どうでした!?」

 

しかし、肝心のローザ本人は、頭にバーがぶつかったにも関わらず、ミーナにフォームを聞いてくる。

痛くないのだろうか?

 

「‥‥このドテカボチャが!!何で!?教えたフォームで跳ばん!?ローザ!!お主、ふざけておるのか!?」

 

「い、いえ、決してそんなことは‥‥それに私としても綺麗な背面跳びをしているつもりなんですが‥‥」

 

「綺麗な背面跳びじゃと‥‥?」

 

ローザの言葉にミーナは前髪を手でくしゃっと握る。

 

「お主のフォームはもはや‥‥魚雷じゃあ!!」

 

そして、手を前髪からどかし、ローザのフォームを魚雷だと言い放つミーナ。

 

「っ!?‥‥人間‥‥魚雷‥‥」

 

ミーナの言葉を聞き、ローザは雷に打たれたかの様な衝撃を受ける。

もし、この場にシュテル同様、前世(史実)からの転生者がいれば、ローザの発した『人間魚雷』と言う単語を聞くと、回天を思い浮かべただろう。

しかし、この世界では第二次世界大戦が起きていないため、特攻と言う非人道的な攻撃方法も特攻専門の兵器も作られていないので、かつて別の世界で人間の命を部品の一つにしてしまった死の兵器があったなんて想像すら出来ないことだろう。

 

「い、いや‥そこまでは‥‥いや、もう‥‥そこまでいっているかもしれぬ‥‥」

 

「いえ、いえ、まさか、流石にそこまではいってないでしょう?」

 

「自覚がないのか!?お主は!?‥‥はぁ~‥‥」

 

「す、すみません」

 

深い溜め息をついて、高揚している気分を落ち着かせるミーナ。

そんなミーナの態度を見てすまなそうに謝るローザ。

そもそも、ローザが放課後、走り幅跳びの練習をしている理由は、体育の時間、走り幅跳びの成績が悪かったローザは、放課後走り幅跳びの練習をしていたのをテアとミーナがその姿を見て、テアがミーナに走り幅跳びの練習を見てくれないかと言われ、ミーナはローザの走り幅跳びの練習に付き合っているのだ。

 

「まぁ、お主が納得いくまで付き合おう」

 

「えっ?」

 

「お主も我がアドミラル・シュペーの大事な仲間じゃからな、困っている時はお互い様じゃあ」

 

そう言ってミーナはバーの高さを調節する。

 

「‥‥」

 

「とりあえず、ゆっくり跨ぐ感じからやれ」

 

ミーナの言葉を聞いて、ローザは潤む目を袖で拭いて、もう一度定位置につく。

 

(私は昔からどうも、とろくさい、ドジなところがあった‥‥)

 

(こんな私がブルーマーメイドになれるのか?と言う疑問はあった‥‥)

 

(でも、そんな私をミーナさんは助けてくれたことが何回もあった‥‥)

 

(シュペーのみんなといると、どんな困難でも乗り切れる気がしていた‥‥)

 

(私自身、変わらなくちゃいけない‥‥変わらなければ、何も始まらない‥‥)

 

ローザは勇んで駆け出す。

 

(無駄な努力だっていい‥‥)

 

(結果が出なくたっていい‥‥)

 

(ここまで練習につきあってくれたミーナさんの為にも‥‥)

 

(私の為にも‥‥)

 

(諦めない!!)

 

(ここで諦めたら、どんくさい私のままなんだ‥‥)

 

(諦めるなら‥‥)

 

(ボロボロになってでも、やるだけやって、諦めてやる!!)

 

「うおりゃぁぁぁぁぁー!!」

 

ローザは思いっきり踏み込む。

そして、バーの方へと跳んでいくのかと思いきや、

 

「うりゃぁぁぁぁー!!」

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁ~‥‥」

 

バーの近くに居たミーナ目掛けて跳び、ローザの頭頂部がミーナの鳩尾にヒットする。

先日、テアのしゃっくりが止まらない騒動の際、テアのしゃっくりはどうにか治まったが、代わりに今度は自分が、しゃっくりが止まらなくなり、テアに試した方法を受けることになり、その中に鳩尾に腹パンがあり、レターナから腹パンをくらったミーナ。

日本に来て、短期間の間に二度も鳩尾に強い衝撃を受けることになったミーナ。

頭突きをしたローザとそれをくらったミーナは校庭に倒れる。

 

「あ、あれ?」

 

ミーナより、先に起き上がったローザは、何故、自分はマットではなく、全然違う方向に倒れているのか、首を傾げる。

しかもミーナに背を向けている為、自分がミーナの鳩尾に頭突きした事さえも気づいていない。

先程、バーにぶつけたことと言い、ローザは頭頂部が痛くはないのだろうか?

 

「っ!?」

 

その間にミーナも起き上がる。

彼女の顔はかなり怒っている様子で、

 

「おらぁぁぁぁぁー!!」

 

さっきのお返しと言わんばかりにローザの背中目掛けて頭突きをする。

 

「おわぁぁぁぁー!!」

 

突然、背中からミーナの頭突きをくらい、低い悲鳴を上げ、ローザの身体を浮かび、そのままバーを越えてそのままマットに沈む。

 

「「‥‥」」

 

しかし、ローザもミーナもしばらくの間、起き上がることはなかった。

 

これが後にシュペーで語り継がれる『ローザの魚雷跳び』となった。

 

 

 

 

放課後、ミーナがローザから、魚雷跳びによる頭突きをくらった時間から少し時間を過去にさかのぼり、時間はこの日の朝のHRと一限目の講義前の小休止まで遡る。

一限目の講義の用意をしていた明乃は、

 

「「艦長~」」

 

「ん?」

 

自分のクラスの水雷科である姫路と松永に声をかけられた。

 

「りっちゃん、かよちゃん、どうしたの?」

 

「艦長って確かスキッパーの免許持っていたよね?」

 

「スキッパーの免許?うん、持っているよ」

 

「じゃあさ、放課後、ちょっとスキッパーについて色々教えて欲しいんだけど‥‥」

 

「あれ?でも、りっちゃんも確かスキッパーの免許は持っていたよね?」

 

姫路はスキッパーの免許を持っていなかったが、松永はスキッパーの免許を持っている。

スキッパーについて聞きたいことがあるなら、松永に聞けばいいのでは?と思った明乃。

 

「うん、持っているけど、色んな人の意見を聞きたいから‥‥ダメかな?」

 

「ううん、分かった。そういう事ならいいよ」

 

明乃は放課後、水雷科の姫路にスキッパーのレクチャーをすることになった。

 

(スキッパーか‥‥)

 

三人の話を聞いて、真白はあの航海で、明乃をはじめとするスキッパーに乗れるクラスメイトの姿を見て、

 

(スキッパーは今後も使用頻度が上がるだろうし、学生の内に‥‥早めに取っておいた方がいいだろうな‥‥)

 

真白はまだスキッパーの免許を持っていなかった。

その為、今後必要頻度が高くなるであろうスキッパーの免許は早めに取得しておいた方が今後も役に立つと思い、

 

「艦長」

 

「ん?何?シロちゃん」

 

「その‥わ、私もスキッパーに興味があるので、私も教わっていいでしょうか?」

 

「えっ?うん、勿論だよ!!」

 

こうして、真白は放課後、明乃からスキッパーのレクチャーを受けることになった。

 

その日の昼休み、

 

留学生組のクラスがある棟に明乃は来ていた。

 

「えっと‥‥」

 

留学生組は明乃よりも一個年上なので、留学生以外にいる横須賀女子の生徒は、当然明乃よりも一個上の生徒だ。

シュペーとヒンデンブルクのクラスメイトとはあの航海で交流を深めたので、平気なのだが、横須賀女子の一個上の先輩とは交流をしたことがない明乃はやや緊張した面持ちで廊下を歩く。

そして、やっとお目当てのヒンデンブルクの教室にやってきた。

 

「すみません」

 

「あら?何かしら?」

 

「あの、ヒンデンブルク艦長の碇艦長はいますか?」

 

「えっ?艦長?ちょっと待ってね、艦長!!」

 

ヒンデンブルクのクラスメイトは明乃の要件を聞いて、教室に居るシュテルを呼ぶ。

 

「ん?」

 

「艦長にお客さん!!晴風の艦長さんです!!」

 

「えっ?ミケちゃん?」

 

明乃に呼ばれ、シュテルは彼女の下に行く。

ただ、明乃の名前を聞き、教室内でビクッと反応する者が少なからず居た。

 

「どうしたの?ミケちゃん」

 

「実はね‥‥」

 

明乃はシュテルに放課後、自分のクラスメイトがスキッパーの運転で色々教えてもらいたいと頼まれ、それを手伝って欲しいと頼む。

 

「いいよ。今日の放課後は特に予定もないし‥‥」

 

「ありがとう!!シューちゃん!!」

 

今日の放課後は誰からのお誘いもなく、補習等もないので、シュテルは明乃からの頼みを了承した。

 

 

そして、放課後‥‥

 

学校内にあるスキッパーレースの練習場に向かう途中、明乃、シュテル、姫路、松永、真白のメンバーが集まった。

ただ、真白はシュテルの姿を見て、驚き、僅かに頬を赤らめ、シュテルから視線を逸らす。

 

「ん?どうしたの?シロちゃん」

 

「い、いえ、何でもありません」

 

真白の様子に気づいた明乃が声をかけるが、真白は照れ隠しの様な態度を取った。

 

 

「ふんふふふ~♪」

 

これからスキッパーの練習をしようとしていたメンバーのその近くを西崎が鼻歌を歌いながら通りかかる。

 

「おっ?」

 

西崎は明乃たちの姿に気づいた。

 

「珍しい組み合わせ‥‥何しているんだろう?」

 

真白は兎も角、明乃と松永、姫路は確かに同じクラスメイトであるが、部署がことなるせいか、自分とは交流があるが、二人とはあまり交流がない。

プライベートでも松永と姫路はよく一緒に居るが、こうして明乃と一緒に居るのは珍しいことだ。

西崎は気になって、声をかける。

 

「おーい、なーにしてんの?」

 

「あっ、メイちゃん」

 

「西崎さん」

 

「あっ、水雷長だ」

 

「水雷長~」

 

声をかけられ、明乃たちも西崎に気づく。

 

「我らが水雷長~!!」

 

「そう、私が水雷長!!」

 

西崎、松永、姫路はポージングをして、自己アピールする。

 

「なに?この寸劇‥‥?」

 

シュテルは思わず晴風水雷科の自己アピールにツッコム。

 

「そんな水雷長に問題です」

 

「おっ?なに?急に?」

 

「私たち五人をある条件で二組に分けることが出来ます。それはどんな組み合わせでしょう?」

 

姫路は西崎にここに集まったメンバーの組分けを問題形式で西崎に訊ねる。

 

「答えはCMのあとで!!」

 

「Webで~」

 

「って!CM明けでも答えを教えないんかい!!」

 

姫路と松永はあくまでも答えを教えるつもりはないようで、その態度に西崎はツッコム。

 

「それで、正解は?おせーて」

 

「おぉ~水雷長考える気ゼロだねぇ~甲斐がないなぁ~」

 

考えることもなく、正解を求める西崎。

 

「じゃあ、我らが艦長から正解発表~どうぞー」

 

姫路が明乃に正解を求める。

 

「えっと‥‥正解は、スキッパーの免許を持っている人と‥‥持っていない人」

 

明乃は正解を回答する。

そして、持っていない人の時、またもや姫路と西崎はポージングをしていた。

 

「せーいかぁーい!!流石艦長~」

 

「物知り~」

 

「いや、物知りとかじゃなくない?」

 

「最初から答えを知っているでしょう」

 

西崎とシュテルは冷静にツッコム。

 

「それで、みんなはスキッパーの何かで集まっているの?」

 

「うん、そんなところかな」

 

「私は今後の事を考え、スキッパーの免許を取ろうかと思って」

 

「私も同じ~」

 

「ほうほう、なるほど。まぁ副長は、いつかは取るだろうなって思ったけど、かよちゃんは?」

 

「りっちゃんが意外と運転荒くて心配なんだよ~だから代わりに運転できるようになろうかと思って」

 

実際にあの航海で、機雷掃討の時、松永が運転するスキッパーが機雷と接触して海上に投げ出されたことがあったので、姫路の言っている事が間違っているとは言い切れない。

 

「自覚はないんだけどねぇ~」

 

「あはは‥‥スキッパーはノリでそう言う人が結構多いかも」

 

「あぁ~私の周りの人もそうだったなぁ~ミーナさんもシュペーに搭載されたスキッパーの試運転の時、クラスメイト相手にレースをしていたし」

 

「それで、実際に免許を取るかどうか決める前にとりあえず一回乗ってみようと思って艦長に頼んだの~」

 

「へぇー‥‥って、免許ないのに乗れんの?」

 

「うん、学校にも許可はもらってあるから大丈夫」

 

「許可が出て、学校の敷地内なら、免許がなくても乗れるよ」

 

明乃とシュテルが補足として免許がなくても学校の敷地内なら、許可があれば乗ることが出来ると説明する。

 

「ほうほう。スキッパーか‥‥私も行っていい?」

 

「いいよ」

 

西崎も話を聞いて、少しスキッパーに興味を持ったのか、一緒に行くことになった。

 

「へぇ~ここがスキッパーの練習場なんだぁ~‥‥初めて来た」

 

「今の時間帯は誰も使っていないみたいだから、思いっきり練習が出来るよ」

 

横須賀女子に在籍している生徒は中学生の時、ほとんどが中等部乙種海技士の資格を持っており、モーターボートの操船は出来るが、スキッパーの免許については個人の自由であり、学校のカリキュラムの中にスキッパーの項目は含まれていない。

よって、スキッパーの免許を持っていない者、持っている者と分かれ、免許を持っていない西崎は今回、初めて学校内にあるスキッパー練習場に来た。

 

「宗谷さんはスキッパーの免許を取ることは確定なんだよね?」

 

「は、はい」

 

シュテルは真白に訊ねる。

姫路と西崎はスキッパーの免許を取るのかは今回の練習の成果を見てから決めるが、真白は今年中にスキッパーの免許を取るつもりでいた。

 

「じゃあ、宗谷さんは私が見てあげる」

 

「えっ?」

 

「ミケちゃんと水雷科のえっと‥‥松永さんは、二人にレクチャーしてあげて」

 

「はーい」

 

「OK」

 

「えっ?えっ?」

 

免許を持っているのが三人、持っていないのが三人と言うことで、一対一での練習が始まる。

ペアに関して、免許を持っていないメンバーの中でシュテルが唯一僅かながらも交流があるのが、真白だったので、シュテルは真白をレクチャーすることになった。

 

「じゃあ‥‥とりあえず、乗ってみようか?」

 

「ええぇぇー!?いきなり!?操作方法とか全然分からないんだけど!?」

 

「大丈夫、大丈夫、乗っちゃえば何となく操作の仕方は頭に入ってくるよぉ~」

 

「そんな訳ないでしょう!?」

 

「操作自体は簡単だからやってみよう」

 

明乃らは西崎と姫路をいきなりスキッパーに乗せて、レクチャーを始める。

 

シュテルの方は、優等生らしく、一からのレクチャーとなる。

まず、止まっているスキッパーに真白を乗せ、スキッパーの計器の見方、ブレーキ、アクセル、ギアの場所や操作方法を教える。

姉である真冬もスキッパーの免許を持っており、これまでの人生の中で彼女が運転するスキッパーの後ろに乗せてもらった事があるので、ある程度の事は真白も理解していたが、見ているのと実際に自分が運転席に着くのとでは感覚が異なって感じる。

そして、何よりシュテルが自分の間近でレクチャーをしていることが真白にとって、妙に心拍数を増加させる。

 

「じゃあ、実際に動かしてみようか?」

 

「えっ?あっ、は、はい」

 

「あっ、でも、動かす前に‥‥念のため、これを着けて」

 

シュテルは真白に救命胴衣を渡す。

 

「練習場とはいえ、周りは水で、水深もそれなりにある。万が一、スキッパーから落ちて溺れたりしたら大変だから」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

真白はシュテルから渡された救命胴衣を着て、スキッパーの運転席に座り、実際にスキッパーのエンジンを起動させる。

 

「じゃあ、ゆっくりでいいから」

 

「は、はい」

 

真白と同じく救命胴衣を着たシュテルが後ろの座席に乗り、真白の運転をレクチャーする。

 

時間の経過と共に姫路も真白もスキッパーの操作には慣れてきた。

 

「メイちゃんはもう少し速度をあげてもいいかも」

 

「いや、私は安全第一で乗っているだけだから!!」

 

西崎も操作には慣れているのだが、速度はノロノロ運転だった。

真白は西崎ほどのノロノロ運転ではないが、飛ばし過ぎと言う訳でもなく、可もなく不可もなくな安全運転だった。

 

「こうして見ると運転の時と普段の性格って結構違うモノなんだねぇ~」

 

運転している姫路、西崎、真白を見ながら呟く松永。

 

「うん、ちょっとおもしろいね」

 

「ん~‥‥やっぱり、私の運転って荒いのかな?」

 

「気にしているの?」

 

「うーん‥‥だってほら、そのせいで実際に事故っちゃったし」

 

松永はあの実習時の機雷掃海時での事故を気にしているみたいだ。

あの時は、二人ともかすり傷程度で助かったが、もしかしたら、松永か姫路のどちらかが死んでいたかもしれない。

いや、二人とも死んでいたかもしれない。

そう思うと、松永は自分のスキッパーの運転に自信を無くすのも無理もない。

 

「あー‥‥うん。でも‥‥一人で乗っている時の運転はそこまで荒くはなかったよ」

 

しかし、明乃はそんな松永をフォローする。

 

「そう?」

 

「多分、かよちゃんを乗せた時は少し舞い上がっちゃっただけじゃないかな?張り切っていつもよりスピード出しちゃったり?」

 

「そうなのかな~?うぅ~‥‥だとしたらなんか恥ずかしい」

 

「あはは私も気持ちはわかるよーまぁ、これからは気をつければ大丈夫じゃないかな?試しに今から練習してみたらどうかな?」

 

「うーん‥‥おっけ~ちょっと行ってくる!!」

 

「頑張ってー!!」

 

「かよちゃ~ん。ちょっと後ろに乗って~」

 

「あまりスピード出さないでよ~」

 

明乃のフォローを受け、松永は姫路の下に向かった。

そんな二人の様子を見ていた明乃であったが、

 

「青春だなぁ~」

 

先程まで松永が居た場所には西崎がいつの間にか居た。

しかも彼女はびしょ濡れだった。

 

「わっ!?メイちゃんどうしたの!?」

 

「落ちた」

 

どうやら、彼女は足を滑らせてスキッパーから落ちたみたいだ。

 

「シャワー室に行く?洗濯機に乾燥機もあるよ」

 

「うん‥‥」

 

入学式の日、海に落ちた真白が使用したシャワー室へと向かう西崎だった。

 

西崎がシャワーを浴びに行き、松永が姫路を乗せている中、真白とシュテルと言うと‥‥

 

「うん、だいぶ慣れたみたいだね」

 

「は、はい。色々教えていただきありがとうございました」

 

西崎は海に落ちたが、真白は今回、海に落ちることなくスキッパーを運転することが出来た。

そんな中、真白は姫路を後ろに乗せスキッパーを運転している松永の姿が目に入った。

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?」

 

「その‥‥今度は、碇艦長の運転を見せてもらってもいいでしょうか?」

 

「えっ?私の‥‥?」

 

「は、はい」

 

「まぁ、いいけど‥‥」

 

シュテルは真白の頼みを聞いて、シュテルは真白を後ろに乗せてスキッパーを運転する。

 

(碇艦長の背中‥‥)

 

真白はスキッパーを運転しているシュテルの背中をジッと見つめる。

 

(同性なのに、碇艦長からは男の人の気配みたいなモノを感じる‥‥)

 

真白はシュテルの中にある比企谷八幡の気配を感じ取っていた。

 

「宗谷さんはどうしてスキッパーの免許を取ろうと思ったの?」

 

シュテルはスキッパーを運転しながら、後部座席に居る真白にスキッパーの免許を取得する理由を訊ねる。

 

「その‥‥あの航海で色々体験して、スキッパーの免許は今後も何かと必要だと思いまして‥‥」

 

「なるほど、確かにスキッパーの免許はあっても損ではないからね。でもね、宗谷さん」

 

「はい?」

 

「スキッパーの免許は車の免許と同じで、乗れる機会があるなら、それを逃さずに経験を積んでおかないとね。ペーパーになって、いざ乗るって時だと、感覚が鈍って事故るかもしれないから、腕は常に使える状態にしておかないとね」

 

「は、はい」

 

シュテルからの忠告を聞きながら、シュテルの背中をジッと見つめる真白だった。

 

しかし不意に‥‥

 

ポスっ‥‥

 

「ん?」

 

「‥‥」

 

真白はシュテルの背中に両腕を回し、顔を埋めた。

 

「宗谷さん?」

 

「す、すみません‥‥ただ、少しだけ‥‥少しだけ、こうさせてください」

 

「えっ?あっ、うん‥‥」

 

真白が何を考えてこのような行動を取ったのか分からないが、そこまで気にすることではないので、シュテルは真白の好きにさせた。

 

 

それから、西崎がシャワーを浴び終え、服も洗濯と乾燥が終わり、戻ってくる。

 

「以上で講習を終わりにしまーす!」

 

「「いえーい!」」

 

「これ、講習だったの?」

 

「まぁ、講習と言うよりも事前練習ってところかな?」

 

「かよちゃん、どうだった?免許取りたくなった?」

 

明乃は姫路にスキッパーの免許取得について訊ねる。

 

「うーん‥‥楽しかったけど‥‥さっき乗った感じ、りっちゃんの運転ももう、大丈夫そうだし、免許取得は保留で~」

 

姫路は松永の運転が多少、マシになったので、今回はスキッパーの免許をとることを保留すると言う。

 

「いえーい、お墨付き~」

 

後ろに乗せた姫路から運転が改められたと言われ喜ぶ松永。

 

「メイちゃんは?」

 

次に明乃は西崎にスキッパーの免許を取るかを訊ねる。

 

「私は取ってもいいかなー自分のスキッパーを買って、武装したい!!」

 

西崎は姫路と異なり、真白同様、スキッパーの免許を取っても良いと言い、さらに自分でスキッパーを購入し、そのスキッパーに武装を施したいと言う。

 

「あの~市販のスキッパーに武装は出来ないよ」

 

シュテルは西崎に市販のスキッパーに武装をすることは出来ないことを伝える。

そりゃあ、民間人が武装したスキッパーに乗れる筈もなく、施すことも不可能だ。

 

「できないの!?じゃあ、要らない」

 

西崎はスキッパーに武装が施せないと知ると、スキッパーの免許は要らないとあっさりと免許の取得を放棄したのだった。

それを見て、シュテルは、

 

(この子、トリガーハッピーなのか?)

 

と、ちょっと西崎の将来に不安を感じたのだった。

 




映画公開直前に販売された漫画版はいふり6巻のラストの話が、まさか映画版の伏線になるとは‥‥
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。