やはり俺の転生生活は間違っていない。~転生先は蒼き人魚の世界~   作:ステルス兄貴

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ついにシュテルが奉仕部メンバーと後世世界にて、初邂逅

真白の小、中学生時代の設定は作者の勝手な妄想ですが、漫画版や本編を見ても真白と同じ中学校出身者が居ない感じなどから本編の様な結論に至りました。


98話

ある日の放課後、シュテルからスキッパーの乗り方を教わった後、真白は寮に戻る。

しかし、真白の中にはモヤモヤした思いが‥‥奥歯に物が挟まるような違和感が益々強まった。

 

自分が抱いている思いは、明乃に対する友人?的な思いとはちょっと違うような気がする‥‥

 

この思いは一体何なのか?

 

自分によく、引っ付いてくる納沙は自分やミーナに抱いている思いも、こんな感じなのだろうか?

 

今では納沙や明乃をはじめとする晴風のクラスメイトとの友人関係を築いている真白であるが、小、中学校の頃は、意外にも交友関係が狭かった。

 

小一の頃に、母の様なブルーマーメイドになる為‥‥横須賀女子に入る為に勉強漬けな小、中学校時代を送った事や不幸体質な事が、周りの同級生たちが真白から距離を取ったのだろう。

 

しかし、将来への明確なビジョンを抱いたので、真白はそれを寂しいとは思わなかった。

 

小、中学校時代を半ばボッチで過ごした真白に友人関係と言う関係は高校になって未知の領分だったのだ。

 

そこで、真白は納沙に、自分やミーナと接する時、自分が抱いている様な違和感を抱いているのだろうか?

 

そう思い、真白は納沙に聞くことにした。

 

「の、納沙さん」

 

「はい?なんですか?」

 

「その‥‥ちょっと、相談と言うか、聞きたいことがあるのだが‥‥」

 

「えっ?シロちゃんが私に!?」

 

真白から相談があると言われ、納沙は目を見開く。

 

「あ、ああ‥‥」

 

「分かりました!!心の友、シロちゃんの頼みとならば、火の中、水の中!!何でも聞いてください!!」

 

真白から頼まれるとテンションが高くなる納沙。

黒木が見たら、きっと納沙に嫉妬していただろう。

 

「じゃあ、納沙さんの部屋で‥‥」

 

「えぇぇぇ~ここはシロちゃんの部屋にしましょうよぉ~」

 

納沙以外には聞かれたくないので、場所は彼女の部屋にしようとしたら、納沙は真白の部屋が良いと言う。

 

「えっ?私の部屋か‥‥?」

 

「はい!!」

 

この場で他のクラスメイトに見られるのもまずいので、真白は渋々自分の部屋にすることを了承した。

 

真白の部屋は晴風の真白の部屋同様、学習机、棚には参考書が沢山収まっていた。

そして、ベッドの周りには沢山のぬいぐるみが置いてある。

 

「へぇ~ここがシロちゃんの部屋ですかぁ~」

 

「あ、あまり、ジロジロ見ないでくれ」

 

そして、互いに椅子へと座り、真白は納沙に相談事を話した。

 

「それで、私に聞きたい事ってなんですか?」

 

「そ、その‥‥納沙さんは、よくミーナさんと一緒にいるじゃないか」

 

「はい。ミーちゃんとは、よく映画の話題で盛り上がっていますからね。つい、先日も一緒に、仁義なきシリーズを一緒にフルマラソンしました」

 

「‥‥その‥納沙さん、ミーナさんと一緒にいる時、ミーナさんに何か違和感と言うか、妙な感覚みたいなモノを抱いた事はないか?」

 

「えっ?ミーちゃんに違和感ですか‥‥?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

「うーん‥‥そんなことはないですねぇ~でも、どうして‥‥ハッ!?もしかして、シロちゃん、ミーちゃんと義兄弟の杯を交わすつもりですか!?」

 

「いや、ミーナさんじゃない!!」

 

「じゃあ、私とですか!?いいですよ!!シロちゃんとなら、義兄弟でも恋人でも何でもOKですよ!!どうせなら、ミーちゃんも加えて、『我ら生まれた日は違えども 死す時は同じ日同じ時を願わん』と、三人で義兄弟の杯を交わしませんか!?」

 

「いや、そうじゃなくて‥‥まぁ、ミーナさんに何も感じていないのか‥‥」

 

どうやら、納沙がミーナに抱いている感情は自分がシュテルに抱いている感情とは違うようだ。

 

じゃあ、反対にミーナが納沙や自艦の艦長であるテアに抱いている感情は自分が抱いている感情とおなじなのかもしれない。

 

そこで、真白は次に、ミーナに話を聞くことにした。

 

ミーナはロビーにあるテレビで任侠映画のDVDを見ていた。

 

「ミーナさん」

 

「ん?なんじゃ?おっ、晴風の副長じゃないか。どうした?」

 

「その‥ミーナさんに聞きたいことがあるんですが‥‥」

 

「なんじゃ?」

 

「ミーナさんは、ウチの記録係の‥‥」

 

「ココか?」

 

「ええ‥‥納沙さんとシュペーの艦長さんとは、とても親しい間柄みたいなので‥‥」

 

「ココとは、まさに杯を交わした義兄弟のような存在じゃ!!そして、我が艦長、テアはもう、ワシの半身と言っても過言ではない!!」

 

納沙とテアとの関係を力説するミーナ。

 

「ミーナさんは、シュペーの艦長さんに対する思いは分かりました。その時、シュペーの艦長さんに対する思いの中で、違和感みたいなモノを感じたことがありませんか?」

 

「ん?違和感?」

 

「その‥‥同性なのに、なんか違うと言うか、異性に見える違和感なんですが‥‥」

 

「うーん‥‥ワシはココやテアと一緒に居てもその様な違和感は感じたことはないぞ」

 

「そうですか‥‥」

 

ミーナもテアや納沙には自分が抱いている違和感を感じたことはないらしい。

 

「うーん‥‥ここはもう一人‥本命に近いあの人に聞くしかないか‥‥」

 

真白は納沙、ミーナに次ついで、本命とも言えるシュテルに近い人物に聞いてみることにした。

 

「あの、艦長」

 

「ん?なに?シロちゃん」

 

真白は明乃に聞いてみることにした。

 

シュテルと同じヒンデンブルクのクラスメイトたちに聞けばもっと早いのかもしれないが、一個上の先輩と言うことで、どうも聞きにくかった。

 

また、シュペー艦長のテアも真白に似た感情を持っていたのかもしれないが、真白はその事を知らなかったので、真白がテアに聞きに行くことはなかった。

 

ミーナの場合、ヒンデンブルクのクラスメイトたちと同じ一個上の先輩であるが、彼女の場合、晴風に乗り、部屋も同じだったと言うことで、先輩と言うよりも晴風のクラスメイトと似たような感覚があったので、聞いてみたのだ。

 

しかし、ミーナはテアが真白に似た感情を抱いているかもしれないと言う事を真白には伝えていなかった。

 

と、言うよりもその事を忘れていた。

 

「あの、艦長はヒンデンブルクの艦長と親しいですよね?」

 

「シューちゃんと?うん、シューちゃんとは友達だよ」

 

「‥‥艦長、妙な事を聞くかもしれませんが、その‥‥ヒンデンブルクの艦長さんと一緒に居て、何か違和感みたいなモノを感じたことはありませんか?」

 

「えっ?シューちゃんに違和感?」

 

「はい」

 

「違和感って、どんな違和感?」

 

「その‥‥あの人が女性らしくはないって思ったことはありませんか?」

 

「えっ?シューちゃんが女の子らしくない?」

 

「は、はい‥‥」

 

「うーん‥‥」

 

明乃は真白に言われたことを振り返るようにシュテルとこれまで一緒に居た時の事を思い出す。

 

「シロちゃんが思っている事とは違うとは思うけど、シューちゃんと居ると、もかちゃんと違って、安心できると言うか、頼もしいと言うか‥‥そんな感じはするかな?」

 

まだシュテルと再会して二ヶ月ぐらいしか立っていないが、明乃は真白とはちょっと異なる違和感みたいなモノを抱いている様な感じはあったが、もえかと言うしっかりした友人をもっているから、シュテルも別のベクトルでしっかりした友人と言う認識だった。

 

「安心‥‥頼もしい‥‥」

 

(それが、女性と違う雰囲気じゃないのだろうか?)

 

そう思いつつも、真白は明乃もシュテルに対して似たような違和感みたいなモノを抱いている事を確信した。

 

しかし、明乃の場合、あくまでもシュテルは友人と言う認識だったみたいだ。

 

シュテル本人に聞けば、自分が抱いているモヤモヤの正体が分かるかもしれないが、真白にそこまでの勇気がなかった。

 

彼女の悩みはまだまだ引きずることになりそうだ‥‥

 

 

真白が自分に対して悶々とした思いを抱いていることを知る由もないシュテルの下に一本の電話が入ってきた。

 

Piririririr‥‥

 

ディスプレイを見ると、そこには 『渚カナデ』 と表示されていた。

 

「ん?カナデから?」

 

ピッ‥

 

「もしもし?」

 

「あっ、シュテル?久しぶり」

 

「ああ、久しぶり。それで、どうした?」

 

「シュテル、確か今は日本に居るんだよね?」

 

カナデは確認するように訊ねる。

きっと、シュテルの父方の祖父母からでも聞いたのだろう。

 

「ああ‥あっ、そう言えば日本に来てから、バタバタしていたからお前さんに伝えるのを忘れていたわ‥‥すまん」

 

Rat事件、その後にあったゴールデンウイークでは真白の誘拐事件、中間テスト、テスト休みもRat事件の報告書の作成などがあり、カナデに日本へ来ている連絡をするのをすっかり忘れていた。

 

実際にこうしてカナデから連絡が来て思い出すくらいだ。

 

「あっ、いや、別に気にしてはいないけど‥‥」

 

(嘘つけ)

 

カナデは気にしていないと言うが、その口調は何だか拗ねているように聞こえた。

 

「それで、どうした?」

 

「あっ、うん‥折角日本に来ているなら、今度の休みの日に会えないかな?」

 

「ん?今度の休日に?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

「まぁ、いいけど‥‥」

 

「ホント!?じゃあ‥‥」

 

と、今度の休日は、カナデと出かけることになったシュテル。

 

詳しい事は前日に決めることになり、この日は電話を切った。

 

しかし、これは傍から見ればどう見てもデートのお誘いに見えたのだが、シュテルはカナデをあくまでも同い年の親戚と言う認識だったので、デートとは思わなかった。

 

 

そして、前日シュテルはカナデと待ち合わせ場所や時間などを決めて出かけることにした。

待ち合わせ場所‥‥シュテルは神奈川の横須賀から、千葉の南船橋にあるららぽーとに来た。

 

「‥‥ったく、カナデの奴、いつまで待たせるんだ?」

 

基本、待ち合わせ時間集合一五分前行動をしていたシュテルはまだ待ち合わせ時間ではないが、ちょっとイラついていた。

 

「あっ、シュテル」

 

そこへ、待ち人であるカナデがやってきた。

 

「遅いぞ」

 

「『遅い』って‥まだ待ち合わせ時間じゃないよ」

 

「十五分前行動は基本だろう」

 

「それは、シュテルの様な特殊な人たちだと思うけど‥‥」

 

「それにわざわざ、ヴァイオリンも持ってきてくれだなんて‥‥」

 

シュテルの手には自身が愛用しているヴァイオリンが入ったヴァイオリンケースが握られていた。

 

「久しぶりに会えたから、セッションもしたいなぁと思って‥‥」

 

「まぁ、別にいいけど、ピアノコンクール優勝者さんの腕と釣り合うかは、保証は出来ないがな」

 

「そんなことないって、シュテルのヴァイオリンの腕だって上手い方だよ。むしろ、なんでコンクールに出ないのか不思議なくらいだよ」

 

「目立つのは嫌いなんだよ。それに私はヴァイオリストモドキだからな、そんなモドキがコンクールに出るなんて、真面目にヴァイオリンをしている人にとって、おこがましい行為だからな」

 

そう言って二人は歩きだす。

ららぽーとには誰でも自由に弾けるピアノが設置されているので、カナデはそれを弾くつもりだった。

 

「それにしても、シュテルはほとんどズボンだね」

 

カナデはシュテルの格好を見て、ポツリと呟く。

 

「ん?」

 

今日、シュテルはカーゴパンツにTシャツ、その上からGジャンにキャスケット帽を被っており、女の子らしい格好ではなく、ボーイッシュな格好だ。

 

「スカートは、ヒラヒラしていて、落ち着かないし、足元がスース―するから苦手なんだよ」

 

シュテルは制服もスカートではなく、ズボンを選択しそれを着用している。

 

「なんだ?私のスカート姿、見たかったのか?」

 

二マッとからかうような笑みを浮かべて、カナデに問う。

 

「えっ?‥そ、それは‥見せてくれるなら、見たいかも‥‥」

 

カナデは正直に答える。

 

「まぁ、気が向いたらな」

 

とりあえず、その場はのらりくらりと答えを濁すシュテルだった。

 

シュテルの答えにカナデは残念そうな顔をしていたが、時間の経過とともにそれは薄くなっていく。

ららぽーとに来て、いきなりストリートミュージシャンの様にピアノを弾くわけではなく、折角こうして、ららぽーとに来たわけなので、二人はテナントを回り、ショッピングを楽しんだ。

 

「以前、シュテルから、貰った万年筆とボールペン、今でも大事に使わせてもらっているよ」

 

「まぁ、学生の本文は勉学だし、ピアノをやっているなら、作曲もするだろうと思ったからな‥あっ、今はパソコンでも出来るんだっけ?」

 

会話をしながら、眼鏡屋の前を通ると、

 

「カナデって、イケメンだし、眼鏡も似合うんじゃないかな?」

 

そう言って、カナデの手を取り、眼鏡屋に行き、伊達眼鏡をカナデにかける。

 

「おぉ、似合う、似合う。有名人になって変装しても、別の意味で有名になっちまうかもな」

 

「シュテルの方も似合うんじゃないかな?」

 

「ん?そうか?」

 

カナデに言われ、シュテルも伊達眼鏡をかけてみる。

 

「シュテルもよく似合うよ。知的度が更に増す感じだ」

 

 

その後、二人はペットショップで犬や猫を愛でていた。

 

 

この日、由比ヶ浜も愛犬サブレのトリミングをする為、ららぽーとのペットショップに来ていた。

 

「ん?あれって‥‥」

 

由比ヶ浜は、ペットショップの犬、猫を見ているカナデに気づいた。

 

「やっぱり、カナカナだ!!こんなところで会うなんて、やっぱり、私とカナカナは運命で結ばれているんだ!!」

 

由比ヶ浜はここ最近、学業が忙しく、カナデの追っかけ(ストーキング)が出来ずにいた。

 

一般学業については、転生特典で何とかなっている‥とはいえ、最近は特典があるから大丈夫だと高を括って、下がり始めているが、前世よりは成績がいいレベルであるが、この世界で、由比ヶ浜は普通科ではなく、海洋科に所属しており、一般学業の他に専門の海洋学も含まれている。

 

二年生に進級し、海洋学の講義内容はいよいよ本格化するが、由比ヶ浜はこの海洋学の成績が壊滅的に悪い。

 

モールス信号の講義でも教官が打つモールス信号を読み取れないし、自分がモールス信号を打つことになっても満足に打つことも出来ない。

手旗信号も同じだ。

 

航海学の座標計算も滅茶苦茶‥‥

 

頼りにしている雪ノ下とは異なるクラスなので、出される宿題の内容も異なるので、放課後、奉仕部の部室で雪ノ下に宿題を教わる由比ヶ浜の姿があった。

 

葉山はそんな由比ヶ浜の姿を見て、

 

(雪乃ちゃんに迷惑をかけるアホ女)

 

と言う認識を持っていたが、彼自身、由比ヶ浜に教えることはないし、由比ヶ浜も何故か葉山から教わることはなかった。

 

どうも、葉山と由比ヶ浜は波長が合わないみたいだ。

 

それに今年は横須賀女子のRat事件の影響でカリキュラムが当初の予定より乱れているので、講義内容も逼迫している。

 

中間テストも海洋学は赤点ギリギリな成績だったので、両親から、『勉強しろ!!』ときつく言われているので、カナデの追っかけ(ストーキング)も満足に出来ていない。

 

そんな、由比ヶ浜が偶然とはいえ、カナデに会うことが出来たのだから、彼女は運命の導きを信じられずにはいられなかった。

 

カナデとは愛犬、サブレの件で運命的な出会いをしているし、その後も彼の演奏会や出場しているコンクールにはほとんど、顔を出している為、自分とカナデは全くの他人と言うわけではない。

 

由比ヶ浜がカナデに声をかけようとした時、

 

「由比ヶ浜サブレちゃんのトリミングでお待ちの由比ヶ浜様!!」

 

サブレのトリミングが終わったみたいで、ペットショップの店員が由比ヶ浜を呼び出す。

しかも、タイミング悪く、カナデはペットショップを出て行く。

 

「チィッ」

 

このまま無視したいところだが、店員と由比ヶ浜は顔見知りで目が合ってしまっていた。

由比ヶ浜は舌打ちをし、店員の下に向かい、

 

「すみません、ちょっと用事を思い出したので、少しの間、サブレを預かってもらえますか!?」

 

「えっ?ちょっと!!お客様!!」

 

由比ヶ浜はこのままカナデを追いかけるにしてもサブレは足手まといだと判断し、ペットショップの店員にサブレを押し付け、自らはカナデの後を追った。

 

彼女の後ろから、慌てるように由比ヶ浜に声をかけるペットショップの店員。

しかし、由比ヶ浜は店員を無視してカナデを追いかけた。

 

「えっと、カナカナは‥‥」

 

由比ヶ浜は、ららぽーとの通路に出て、カナデの姿を探す。

すると、カナデはもう一人、誰かと一緒に歩いていることに気づく。

 

(えっ?誰あの人!?‥‥まさか、カナカナの彼女!?)

 

(でも、格好を見ると、なんか女の子っぽくないし‥‥)

 

(カナカナの男友達かな?)

 

由比ヶ浜が見ているのは、カナデとシュテルの後ろ姿であり、シュテルは女性っぽい服装ではなく、男っぽい服装だったので、由比ヶ浜はシュテルが女だと気づかず、シュテルをカナデの男友達だと思いつつ、二人の後をつけ、声をかけるタイミングを窺っていた。

 

すると、カナデとシュテルの二人はレディースモノの洋服店が並んでいるテナント通路へとやってきた。

 

(カナカナ、なんで女の人の服屋の所に行くのかな?)

 

由比ヶ浜は何故、男二人が女モノ服屋に行くのか不思議がっていた。

 

 

「な、なぁ、カナデ‥‥」

 

「ん?なに?」

 

「‥‥さっき、私の服装について話しただろう?」

 

「えっ?あ、ああ‥‥そうだね」

 

「‥‥そ、そんなに私のスカート姿‥見たいか?」

 

「えっ?まぁ‥そりゃあ、見てみたいけど‥‥」

 

「‥‥じゃ、じゃあ、見せてやる」

 

「えっ?ホント!?」

 

「あ、ああ‥‥日本に来ているのに、連絡し忘れた詫びだ」

 

カナデに対して、クラスメイトや明乃、もえか、テアたちと比べると、ドライな対応に見えるが、根が比企谷八幡だけあって、なんだかんだ言って、親しい者からの頼まれごとは無下に出来なかった。

 

そこで、二人はレディースの服が売っている店が多いテナント通路へとやって来た。

二人は、とある一軒のレディース服の店に入ると、色々と見て回る。

 

「じゃあ、ちょっと、待っていて」

 

「ああ」

 

シュテルはレディースの服を選び、その服を持って、試着室の中に入る。

カナデは、シュテルが出て来るのを楽しみに待った。

 

「お、おまたせ‥‥」

 

試着室のカーテンがゆっくりと開けられると、そこには、黒のミニスカートに、水色の縞模様が入ったTシャツを着て、上には白のレディースジャケットを羽織っているシュテルが居た。

 

「‥‥」

 

「ど、どうかな?」

 

シュテルは、少し頬を赤く染め、チラチラとカナデの反応を訊ねる。

 

「すごく!!似合っているよ!!シュテル!!」

 

レディース服に身を包んだシュテルを褒めるカナデ。

 

「そ、そうか‥あ、ありがとう‥‥」

 

(は、恥ずかしいが、今回は仕方がない‥‥)

 

カナデに褒められ、礼を言うシュテル。

二人の様子は、まさに戸塚や三浦のように、初々しいカップルの様だった。

しかし、そんな平和なひと時を金切り声がそれをぶち壊した。

 

「カナカナ!!その女は誰だし!!」

 

金切り声を上げたのは、二人の後をつけてきた由比ヶ浜だった。

 

(由比ヶ浜っ!?)

 

由比ヶ浜の姿を見てシュテルは目を大きく見開く。

 

この世界に総武高校があることは知っており、総武高校があるなら、当然、雪ノ下、由比ヶ浜が存在しているだろうと思っていたが、こうして由比ヶ浜の姿を見ると、前世の奉仕部での嫌な思い出が脳裏にフラッシュバックしてくる。

 

「あんた!!カナカナの何だし!?」

 

すると、由比ヶ浜はシュテルに絡んでくる。

 

「カナカナは私の運命の人なんだし!!アンタみたいな女、カナカナに相応しくないし!!」

 

ヒステリックに叫ぶ由比ヶ浜。

 

もし、目の前に居る由比ヶ浜がこの世界の由比ヶ浜であるならば、彼女もこの世界の総武高校に通っている筈だと思ったが、由比ヶ浜はどうもカナデと知り合いみたいだ。

 

しかし、カナデが通っている高校は総武高校ではない。

 

そこで、シュテルはカナデに聞いてみた。

 

「なぁ、カナデ、こいつは知り合いか?」

 

「い、いや、知らない人だ‥‥」

 

(あれ?この人‥‥)

 

カナデは口では『知らない』と言うが、由比ヶ浜の顔をまじまじと見てみると、彼女はよく自分のコンサートやコンクールに来る人に似ている様な気がした。

 

「えっ!?」

 

カナデから、「知らない」と言われ、今度は由比ヶ浜が目を見開く。

 

「そ、そんな‥‥な、何言っているの?カナカナは私の運命の人なんだよ!!あの時、サブレを助けてくれたじゃない!!」

 

(この世界ではカナデがコイツの犬を助けたのか‥‥ん?でも、コイツが入院したなんて話は聞いてないし‥‥この世界のあの事故はそこまで、被害は大きくなかったのか?)

 

シュテルが八幡だった頃、由比ヶ浜の愛犬を助けた際、足の骨を折り、入院した。

 

しかし、由比ヶ浜の話を聞く限り、この世界ではカナデが由比ヶ浜の愛犬を助けたみたいだが、カナデが入院したと言う話は聞いていない。

 

よって、この世界では、入院するほどの大きな事故ではなかったみたいだ。

 

シュテルはまさか、この由比ヶ浜が自分と同じ転生者とは知る由もなかった。

 

反対に由比ヶ浜自身も目の前の茶髪で蒼眼の少女が八幡であることも当然知らない。

 

眼前の由比ヶ浜が、前世からの転生者であることは、当然知らないが、シュテルの中では、由比ヶ浜は由比ヶ浜なので、自分の身内が由比ヶ浜と関わることには我慢できない。

 

(こんな自分勝手な奴とカナデを関わらせてたまるか!!)

 

(コイツは愛犬を助けたカナデに恋しているみたいだが、本質は違う‥‥コイツは、恋に浮かれている自分に恋しているナルシストだ‥‥)

 

まぁ、前世の自分とカナデを比べると、その理論も怪しいが、前世での経験から、シュテルは由比ヶ浜が恋をしているのは恋に浮かれている由比ヶ浜自身であり、決して相手の事を配慮している訳ではない。

 

「アンタ、何言ってんだ!?カナデは知らないって言っているだろう!?ガキじゃあるまいし、ギャーギャー騒いで、もう少し周りの人の迷惑を考えたらどうだ!?」

 

シュテルが由比ヶ浜に一喝する。

 

「大体、アンタは何なんだ?カナデの友人でもなければ、彼女でもないのに!?」

 

「なんだし!!アンタ!?カナカナと一緒だからって調子に乗るなし!!」

 

また由比ヶ浜がヒステリックに叫んだ。

 

すると、

 

「お客様、あまり騒がれますと、他のお客様のご迷惑になりますので‥‥」

 

服屋の店員が由比ヶ浜を嗜めるも、

 

「うるさい!!部外者は黙っているし!!」

 

なんて、言う始末なので、

 

「では、仕方がありませんね‥‥」

 

店員がそう言ったので、由比ヶ浜は店員が諦めたのかと思ったら、自分の両手がガシッと掴まれる。

 

「ちょっ、何するし!!離すし!!」

 

由比ヶ浜は警備員に連れていかれた。

 

「ご迷惑をかけてすみません」

 

シュテルは店員に謝罪し、

 

「あっ、お騒がせしてすみません。それと、この服買います」

 

シュテルは服屋にお詫びとして試着した服を購入した。

 

「なんか、ごめんね。シュテル‥‥変な人に絡ませちゃって」

 

カナデはすまなそうに謝る。

 

「いや、お前さんが悪い訳じゃない。アイツが、変な妄想を抱いているのが、悪いんだよ。さて、そろそろ行くか?」

 

「あ、ああ、そうだね」

 

二人は気を取り直し、ピアノが置いてあるロビーへと向かう。

 

「何弾こうかな?‥‥あっ、西〇敏行の『もしもピアノが弾けたなら』でも弾こうかな?」

 

「いや、あの歌の歌詞からお前さんが弾くと嫌味にしか聞こえないから、やめておけ」

 

そんな会話をしながらロビーにて、カナデはピアノを‥‥シュテルはヴァイオリンを弾く。

 

二人の演奏は周りの人々を魅了したのか、ロビーには沢山の人たちが集まっていた。

 

演奏を終えた二人は集まっていた人々に驚くも、拍手を受け、照れくさそうにその場を後にした。

 

なお、警備室に連れていかれ、厳重注意を受けた由比ヶ浜は不機嫌なまま、ららぽーとを後にするが、家に戻った時、ららぽーとのペットショップから電話が入り、「いつになったら、犬を迎えに来るのか?」 と、言われ、二度手間をする羽目になった。

 

転生者組がそれぞれ転生者だと気づく 気づかない

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