上鳴の上位互換TSキャラがヒーローになる話 作:レベルアッパー
「いっけぇぇえええええええ!!!!!」
響き渡るは戦艦の砲撃を彷彿とさせる轟音。空に伸びるのは一条の光。
最高最大出力の一撃を受けて、大型のゼロポイント
『試験、シューリョー!!』
試験監督であるプレゼントマイクの声がまるで狙ったかのように響き渡り、他の受験者はその光景に驚愕し、一撃を放った少女は落下した。
彼女の名前は
これはそんな少女が立派なヒーローに至る話。
早いものでもう高校受験だ。ついこの前まで小学生だった気がする。
そんなことを考えながら、ほう、と電車に揺られながら電子は息を吐く。
電子が受ける学校、それは天下の雄英高校だ。
雄英高校
倍率300倍、偏差値79という超難関校。ナンバーワンヒーローオールマイトを始めとしたプロヒーロー、エンデヴァーやベストジー二ストなどの出身校であり、トップヒーローになるための条件は雄英高校出身であるかと言われるほどでもある。
なぜ雄英か。それは電子も例に漏れずオールマイトの人々を救う姿に憧れたからだ。故に将来の夢もオールマイトのようなヒーローになると小さい頃から決まっており未だに揺らいだことは一度もない。
幸い、というべきか電子は生まれつき勉強ができるタイプの人間だ。稀にいる、単語帳とか一度で大方覚えてしまうような、そういうタイプの人間だったのだ。
なので、模試では基本A判定だった。その為、みんなが勉強でひーこら言ってている間に個性を鍛えて鍛え続けた。
昨日も夜の10時には寝たし、朝ごはんもバッチリ食べた。文句なしの最高のコンディションだ。
気がつけば、雄英高校の正門の前に立っていた。
「必ず受かってやる」
ライバルたちがひしめき合う戦場へ足を踏み出した。
雄英高校、その入試試験ともなれば、日本中から受験生が集まるため、筆記テストや実技テストの説明もそれに見合った場所で行われる。受験生はちょうど筆記テストが終了し、実技テストの説明を受けるために雄英が誇る大きな講堂に集められていた。
「今日は俺のライブにようこそー!エヴィバディセイヘイ!」
プロヒーローであるプレゼントマイクの声が大きな講堂に響き渡る。
余談だが、この学校の何がすごいかというと、なんといってもこの学校は教師が全員プロヒーローだということだ。現場で経験を積んだプロからの教えがあることは、他の学校と比べ、ヒーローを育成するにあたって大きなアドバンテージとなる。
何百という受験生が一同に集められたわけだが、これから人生が決まるといっても過言ではない試験が始まる前でそんなノリについていける人などいるはずもなく、なんとも言えない空気が流れる。
しかしそんなことも気にせずプレゼントマイクはそのままのテンションで実技テストの説明を始めた。
まとめると、試験内容は
こんなの聞けばわかるだろうにどこかの男子生徒がわざわざプレゼントマイクに質問したり、緑髪の生徒に注意したりとまぁ色々あったが、特に気にすることでもない。
「俺からは以上だ!最後にリスナーへ我が校『校訓』をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った、「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!“Plus Ultra”!それでは皆、良い受難を!!」
ブルリと体が震える。きっとこれは武者震いなんだろう。恐怖なんて感じないし、むしろワクワクとドキドキを足したような気分だ。
絶対に受かってやる。私の未来のためにも!
バスでそれぞれ割り振られた試験会場に向かう。
到着したのは一つの街といっても差し支えないほど広大なフィールドだった。ビル群に公園など、よくこんなものを用意したなと感心する。
更衣室でジャージに着替えて、念のためポケットに行きつけのゲームセンターのコインを数枚入れておく。
屈伸や前屈などあらかた準備が終わったところで周りを見回す。
電子より準備運動を重ねて備える者、緊張した面持ちでカチコチになっている者、目をギラギラさせて興奮している者。様々な生徒がいた。態度だけではなく、その姿も十人十色だった。自分の個性が引き出せるようにそれぞれが工夫していることが目に入った。
(さて、そろそろ始まると思うんだけどなぁ)
そんなことを考えていると
『ハイ、スタート!』
プレゼントマイクのアナウンスと同時に集合地点から飛び出した。
受験期にトレーニングして鍛えた反射神経のおかげで誰よりも早く駆け出すことができた。
電気を身体中の隅々まで纏う。電流によって生み出された力場と鍛えた肉体により常人では不可能な速度で街中を走る。
ふと後ろを振り返って見ると、みんなぼけっとしており、電子が駆け出したのに気がつくと遅れて彼らも走り出した。
『ヒーロー!ブッコロス!』
「あっぶな!?」
振り下ろされたロボットアームを上半身をそらすことで回避する。その間に前髪からパチッと電気を弾けさせるとそのまま敵ロボットを電撃で貫いた。
「まずは一点!」
電気を扱う上で発生する電磁波で、レーダーと同じ要領で周囲を索敵する。
動作するために電流が流れているロボット、そして角ばった形という条件で当てはまるモノ、反応36。
確認するかのように周りを自分の目で見回す。いつのまにか大きい十字交差点に居たらしく、四方からロボットが『ヒーローブッコロス』とか『ヒネリツブセ』とか言いながらじりじりと距離を詰めて来ていた。
先ほどと同じようにレーダーを使う。
周囲に人間及び他の動物の反応なし。
「安全確認よし、くらえ!」
髪から飛ばした電撃とは比べものにならない程の電気を両手を中心に纏う。スバチィと一際大きく火花を散らさせたところでその手を地面に叩きつけた。
高電圧の電撃の波は、電子を中心に円状に広がっていき、電子を狙っていたロボットの回路やシステムをズタズタに破壊し、一掃した。
その後、後発組も追いつき、十字交差点ほどの大規模な戦闘はなく、サーチアンドデストロイを繰り返していた。
調子を落とすことなく街中を走る。
自分以外にも雄英に受かるためにと必死に戦っている人々が見受けられた。しかし、まだまだ中学生。戦闘に離れていないようで、たどたどしいところが見受けられた。
その中に、細長い管のようなものが耳たぶから伸びている少女が目に付いた。耳たぶから伸びた管は音を聞いたりできる《個性》なのかはわからないが、そのせいで後ろから接近しているロボットに気がついていないようだった。
「危ない!」
足に纏った電気を弾けさせて、電子は耳たぶ少女に迫るロボットに飛び蹴りを喰らわせ、同時に電撃もお見舞いする。
「大丈夫!?」
「気づかなかった……ありがとう!」
「人助けもヒーローのお仕事でしょ!試験、頑張りましょう!」
そういうと再び走り出す。
数えるのも面倒くさくなるほどロボットを倒した電子。その間も他の受験生を助けたりして街中を駆け回った。
(そろそろおしまいだと思うんだけど……)
そんなことを思っていたその時。
ズドォォオオン
ビル群をかき分けるかのように巨大な影が顔を出した。
角ばったデザインにセンサー類がいくつも取り付けられた頭部、大きい図体を動かすためにこれでもかと盛り込まれたモーターやアクチュエータ、それらは内側だけでは足りなかったのか外側まではみ出していた。
「0ポイント
「にげろぉぉお!!」
「キャァア!!」
入試会場は阿鼻叫喚の地獄絵図とかした。本当のヒーローならば、こんな状態でも立ち向かうものなのだろうが、彼らはまだまだ中学生の子供。事前にこういったものがあると伝えられていても、いざ直面してしまうと背を向けてしまう。
だが、こういうところでこそだ。
ある
『考えるよりも先に体が動いていた』
その時の電子の頭の中は真っ白だった。いくら他の受験生とは違って訓練を積んだとはいえ、電子もただの女の子だ。
逃げなくちゃ
もちろんそう考えた。でも、この後のことを少し考えてしまったのだ。
その拳で何十人もを同時に葬れるほどの巨体が街へ解き放たれたら、一体どれほどの犠牲者が出てしまうのか、と。
もう何も考えられなくなっていた。
逃げるために巨大ロボットから反対側に逃げる受験生に背を向け、全速力で走る。
自分の力だけではあの巨体に距離的にも時間的にも間に合わない。
そこで電子はふと昔読んだものを思い出した。
昔読んだ『電磁カタパルト』の理論。電子はそれを土壇場でやろうとしているのだ。
電気が発生すると同時に発生する磁力の力を合わせて電信柱を二本引っこ抜く。
「ふんっ!」
二本の電信柱のそれぞれの片方を地面に突き刺し、そのまま平行に並ぶように道に留まっていたトラックの荷台に立てかける。
固定されていることを確認すると、電子は電信柱に挟まれるような形で電信柱の間に立つ。
今の自分にできる最大出力の電気を纏い、同じく最大出力の磁界を発生させる。
左右の電信柱に伝わる電気量を直感で調節して
高速で打ち出された。
ジェットコースターなんて目じゃないほどの速度の恐怖に屈して目を瞑ってしまいそうになるのをこらえる。
だんだんと速度がゆっくりになってきた。
ロボットとの距離、それはもう30メートルほどになっていた。
「射程、距離内!!」
ピンっとコインを弾く。全身から発していた電気を右腕に収束させる。
「いっけぇぇえええええええ!!!!!」
空に舞うコインが描く放物線。コインが自分と目標を繋いだ線上に落ちて来たところを狙って、纏った電気を使ってレールガンの要領でコインを撃ち出す。
一条の光に撃ち抜かれてロボットは機能を停止。
『試験、シューリョー!!』
巨大な0ポイントロボットが崩れ落ちると同時にプレゼントマイクのアナウンスが響きわたった。