National Socialism again 作:YJSN
有りもしない栄光を渇望する少年は悟る。
そういうことなんだと。
ぼくがベルリン郊外の町で捨てられて、拾われて、黒に居場所を見つけて、一人に忠誠を誓った時以来、それは約束されたものなんだと知った。
ぼくがこうやって死にゆくところは、必然であり、総統のためなら右手と左足も、片目も、腹から鉛によって引きちぎられた内臓であっても、それらは捧げねばならないものなんだと。
けど、今はここには総統はいない。
この真っ暗な暗室には。ここがなんなのかは知らない。新しい迎えなのだろうか。
ベルリン戦で散ったはずと思ったけど。
我らは歓呼とともにそれらを迎え入れる___________
それは大いなる誇りと栄光を持った偉大なる帝国
ドイツ第三帝国なのだ__________________
いつの日かそんな言葉を耳にした記憶がある
古めかしい記憶だった。
けれど、その記憶をこの暗黒の中で起き上がらせた時
急に周りに気配が増えた。
自分以外に誰かいる
目は開けられない けれど、何か安心するような安堵感
彼らと共にいると全てが終えれる
そう思えるほどぼくはそれに多大なる信頼を寄せていた
やがて暗黒の中でも目が見えるようになった
自分の体を見てみた
手を見た 足を見た 顔を触った 指を見た
なんら人間と同じ
......に見えるように偽装された ギミック 偽り 仮面 ただの皮膚
そうとしか思えないほどに自分の体は 総統のために被験体として捧げるまでの時と比べ、大幅な変化を遂げていた
それは外見には出ない 中身のドロドロした真っ黒のもの
再び 国家社会主義を取り戻す
そう約束したんだ
逃げ出したヒムラーに代わって長官を務め始めた時からぼくは、親衛隊と共に全ての同志に誓ったはずだ
_________全ては我らの生存のために Sieg Heil _______________
そう強く願った時、目の前の黒い霧が晴れ、急に明るくなった。
ぼくの目がその明るさを受け付けないように顔をかばうように自然に手を前に出す
して、しばらく目を慣らしていくと、ここがどこなのか、はっきりと網膜に映る
なにもない草原だった
ぼくは訳がわからなかった いつも通り東部戦線で弾をばらまくだけの仕事はどこへと疑問に思った。
が、ぼくは察した。ぼくが国家社会主義の立ち上がりを強く望んだから、今があるんだと。
ぼくがこの世界に必要であり、ぼくはこの世界が必要なんだと。
ここが新たに同志を募っていく場所なのだと思うと、無性に祖国が恋しくなる。
ザッ
そう背後から聞き慣れた軍靴の音が聞こえた
振り返ると、そこには38名の数少ない生き残った歴戦の戦友同志諸君らがぼくに向かって右手を高く掲げて敬礼をしていた
「...。」
けれど、彼らは無言だ 目を見てみると、光の無い真っ赤な眼光がぼくを射抜くのみ
なにも言わない
なにも思わない
あぁ、そうか
彼らはもう戦うことを放棄したんだと
そう気づいてしまった
自ら闘争することへの逃走 逃避
ただただ命令に従う 従事する 機械に成り下がってしまったのかと
「...ぅ...っぅ...。」
そう思うと、無性に泣き出してしまった
みっともない そう思えても、ぼくは同志を失ったような感覚になって、居た堪れなかった
そう泣いていると、
ズンッ
ズンッ
そう地響きするほどの大きな物体が近づいてきていることに気づいた。
振り返ると、そこには素っ裸の大男がいた。
「...?」
ぼくは頭の上にハテナマークを浮かべると
ズシャァァァ
いきなりぼくのことを手で掴んできた。
けれど、後ろの親衛隊員同志諸君らは何もしない。
いや、この程度で死ぬとなどとは判断できないのだろう。
命令される機械 所詮同志諸君らの亡骸のようなもの
「...なら、ちょっとぐらい好きに生きてもいいよね...。」
そう小さな声で呟いた。
その瞬間
ガッ
ガッガッ
ぼくを掴んだ巨体の男がぼくを引っ張り上げようとするが、ぼくは地面に直立している。
ガッ
ガッ
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ついに巨体の男がキレだしたのか、手ではなく足でぼくを地面から引き離そうとするが、ぼくはビクとも動かない。
「君は...ぼくらの生存を邪魔する...敵...?」
そう問うても答えは帰って来ず
よほど知能指数の低いゴミみたいな劣等人種なんだなと思い、ぼくはその生物兵器としての役割を再起させる
ぼくの身体中から黒いナニカが 空間の歪みを作りながら巨体にまとわりつく。
巨体の大男はまだぼくを引っ張り上げようとしたり、歯で噛んだくるけど、ぼくは痒いくらいだった。
それに、巨体の口の中は唾液とこいつに以前食われた奴の血液とでぐちゃぐちゃであり、ぼくの制服が汚れたのが1番気に食わないところだった。
そして、黒いナニカが巨体を覆うと、徐々に巨体の動きは緩やかになり、止まった。
ガタッ
ガタガタッ
そして不意に震えだした
グキィッ
ガギギギギ
そう耳が痛くなりそうな音を出しながら、巨体の体は四方八方にぐちゃぐちゃに曲がり出した。
めちゃくちゃな方向に骨が曲がり、なんとか修復を試みようとする生命力の巨体だが、強制的な骨の湾曲により、不可能であった。
巨体の男は暴れるようにその黒いナニカを引き離そうと必死にするが、まとわりついたままだ。
巨体の男はそのまま倒れこみ、暴れ出す。苦しむ様子が見受けられた。
ぼくはそれを記憶していく。この人種はぼくの呪詛で脳の視神経を刺激して視覚的な痛み つまるとこ幻覚を見せれること。
そして肉体は常に修復可能な状態であること。
ぼくは彼が苦しむところをニンマリ笑いながら見て、数分が経った頃
「...そろそろ飽きたし、いいや。」
そう子供が飽きたおもちゃを捨てるようにぼくは黒いナニカを彼の体の中に無理やり押し込んだ。
彼は一瞬その巨体でたじろぎした
だがそれっきり、またぼくの方に歯をガチガチと鳴らしながら迫ってくる
そしてぼくの体を嚙みちぎりろうとする直前
バァァンッ
そう大きな音響が鳴り響く
横を見据えると、そこには体がバラバラに弾け飛び、その赤い体液をまき散らした劣等人種の原型も留まれないほどの亡骸があった。
「さすがにこの状態から修復はしないの...へぇ...。ま、いいや。んっ、みんないこ?」
そう興味深くぼくは観察しながら親衛隊員と共に革命の旅を始めるのだった。
主人公の顔などは想像に任せます