National Socialism again 作:YJSN
ウォールマリア中部にて、党員と撤退中のぼくは最悪の知らせを聞いた。
ぼくらが撤退した後、シガンシナ区だけでなく、ウォールマリアの壁すらも破られたと。
それも筋肉が肥大化した大型巨人によって、だ。
我々は後退を強いられた。我が民族にはまだ闘争を行うほどの力はない。
後退を、後退を後退をと強いられた。
それも王国の内側 上流階級 ウォールローゼへと。
必然的に我々や避難民は嫌悪される、タダ飯喰らいとして認識され、見向きもされなくなった。
「...まさかここまで酷いとは...仕方ないか...。」
我が生存のみを思うが故に、貴様は残された食料を食い潰すシロアリだと言いたいばかりに街の人間は白い目を向ける。
今僕は食料庫にいる。案の定食料配給の時間には長蛇の列に。
「お、お前!!ちゃんと並べ!!」
「うっせぇ、こっちは昨日から何も食べてねぇんだ!!」
そしてそこにおける小さな小さな愚かなる闘争も見受けられた。
我ら同志同士における闘争。
生憎と我が党では自給経済を掲げており、
既に回し作業や職を手配しており、他の区からの輸入や輸出など経済的自立により立ち直りつつある。
それにこの避難民らよりかは市民感情や信頼性は高い方だと自負している。
党の支持率は徐々に伸びてるし、今では国内の二割ほどにまで拡張できた。
我らの生存は常に保たれる。
例えどのような時でも、我々は決して絶望しない。
そんな中、我が党からも食糧を配給しようと善意?悪意?の支持率目的で掻き集めたパンなどを突撃隊と共に避難民に給付する。
が、
彼らは有り難みもなく絶望の目だけ暮れてもらっては立ち去る。
馬鹿だ。大馬鹿ものだ。
全ては我らの生存のためだとも思わずに。
「...寄越せっ...ふんっ...。」
遂にはぶんどっていくものまで出た。
親衛隊2名とぼくの監視があるのにも関わらず、臆すこともせずだ。
ガンッ
不意に親衛隊員が足を強く踏みつけ、彼を転ばした。
「ガァッ...何をしやがるお前らぁ...。」
そう血走った目を向ける彼 中年の男 は地に手をつけ無様にもそう言う。
闘争本能を叩き起こした家畜は僕らに歯を向ける。
その小さな小さな歯を。
ぼくは彼の前まで歩く。
こんな劣等人種を生かしておく謂れはない。
__________粛清だ__________
腰のWaltherをホルスターから抜き取り、男の頭へと銃口を合わせる。
男は一瞬呆けた顔をした。が、すぐに絶望と畏怖の顔へと戻り、
「ヒッ、ヒィッ!」
と、叫び声を上げた。
自分に何を向けられているか、理解した様だ。
「...君の様な劣等人種がいるからこの国は腐り、食糧庫が底をつくんだよ。分かるかい家畜。」
そう問うと、彼はさらなる恐怖へと落とされたかの様に真っ青になる。
理解も示さない家畜に引き金を引こうとした直前
「そこの貴様!!何をしている!!」
あ、やばぃ。
声をかけられた方向を見ると、駐屯兵の連中が近づいてきていた。
今彼らとやり合う気は無い。おとなしく引きさがろう。
「あ、あぁー、いやぁー、実はこの豚がですね...
何ら礼もせずパンをぶんどっていくものですから...
つい手が出てしまいまして...。」
そう言うと駐屯兵の連中はその男に近づき、
「本当か?」
と、問う。
「...あぁ...。」
そう男は心底暗い顔で答える。
駐屯兵は溜め息を大きくしながら、
「連れて行け...。」
そう言い、彼は一度向こうへと引き取られた。
これにて一件落着 ばんじゃぃばんじゃぃ。
その後も彼らに食糧を配給していくのが続き、ようやく配給する分が無くなった。
目の前にちょうど来た間に合わなかった人は切らした木箱を見て、顔を絶望から憤怒へと変えた。
「...ぇーと、今日配給できる分はこれで終わりです。残りの方は駐屯兵からの配給に頼ってくださいね。」
そう言いながら突撃隊が片付けを始める。すると、
「ちょ、ちょっと、おい!俺はここまでずっと並んだんだぞ!!」
「俺らがどうなってもいいってのかよ!!」
「そうよ!お願い食糧を分けて!!」
と、並んでいた彼らが喚き散らし出した。
駐屯兵の目もあるので我らは何も言わずに片付けを始める。
だがそれでも捲し立てる彼ら。
(...うっさぃな...。)
次第にその怒号は酷くなるばかりだ。
駐屯兵共は笑いながら見てやがる。
うざっ。
ぼくは我慢ならず、やっぱり口を開く。
これがぼくの悪い癖だ。演説癖、とでもいうのかな。
すべきという絶対的な義務感に駆られるんだ。
でも党員はそこにカリスマ性があるとかなんとか。
あんまりよくわかんないや。
「...諸君らは同志でもなく、生産をしているわけでも無い。
だがそれでも食糧を分けろと。
家畜の如く与えろと。我らの生存を放棄してか。
ぼくにはその原理はわからない。だから諸君らを救うつもりもないし、見捨てるつもりでいるし、
党にも入らずにいる分際でそんなことは言わせないよ?」
親衛隊員が得物を構える。
それだけで、彼らは黙り込む。
我らとの闘争を回避したいから。我が生存のみを、我が身可愛さに願うから。
哀れであり愚かであり死罪に当たる。
「...な、なら!俺たちも何か手伝えることはねぇのかよ!」
一人の青年がぼくに歩み寄ってきた。
また同じ類かと思って睨みつけるが、彼の目を見た瞬間ぼくは少しだけ気分が変わった。
彼は所謂 同志の目をしていた。
何か手伝えることはないか。
自分にできることは。
そう思えるということは、国家社会主義への大いなる一歩となりうるということだ。
彼には闘争の素質 そして民族の素質がある。
だからぼくは、彼に返事をする。
「...もし、もし君が我らと共なる生存を謳歌したいのであれば...
国家社会主義帝国労働者党に入党すればいい。
そうすれば、君にはできることがある。 」
同志になれるかもしれない友邦なのだから。
そう言ってぼくは片付けを終えた突撃隊と共にここを去る。
さっさと去る。
がしかし、歩いていると道中また口論を始めてた馬鹿がいた。
幼い子供の声だった。
今日は闘争心の盛んな日だなと思いながら、少しだけその闘争を見物する。
ん?
「あれ、あの少年どっかでみたな...。」
野次馬の間からチラッと見えたその顔。
どこかで見たっけ...。
あっ、あそこか...ぼくが初めて演説した時。
そう、あの街の一角の川の向こうから、彼らはこちらを顔を覗かせて見ていた。
特にあの少女。あいつが印象深い。
えっと、あの少女は...いた。
恐らく殴られたであろう黒髪の少年に付き添っていた。
しかも運悪く相手は駐屯兵の連中。
どうせ目の前で駐屯兵の食糧が彼らに手渡されるのに愚痴を吐いてたんだろ。
すると、彼 黒髪の少年はぼくと不意に目が合ってしまった。
「...おい待てよ!あんた、あん時演説してた人だよな!」
そう声を掛けてきた。
...は?
...巻き込まないで♡
そう心底願ったが少年は裏切りの如く続ける。
「あぁ?なんだてめぇ。」
駐屯兵は柄悪そうにこちらを睨みつける。
ぼくは悲しいことに身長が160cmもないチビで女顔だから舐められやすい体質だったのも合間って、
更に野次馬達がぼくらから距離を置き囲むような形で
少年少女ら3人と同じ組みと思われるような形となった。
ひどい。グスン。
突撃隊には先に行かせ、ここに残ったのは親衛隊とぼくだけ。
非常に目立つ。
幸いにも周りには野次馬がいて他の駐屯兵にはバレてない。
「こ、こいつらが!何も知らないくせに、巨人を見たこともないくせにぼくらを
「もうやめなよエレン!」
そうエレン...と呼んだかな、その黒髪の少年、エレンにストップをかけた金髪の子...
確かこの子もあの時彼と一緒にいた子だ。
..........何あの子 超絶かわいい............
これが所謂一目惚れって奴...恋の発展...あへへ...
あっでもでも同性...同性愛は禁止...禁欲...でもこれは愛じゃなくて友情...
あっ、でもでも...
と、なぜかぼくはひたすら自分の中で葛藤していた。
あの時は遠くであまり顔は見えなかったから今になってこんな反応が出てしまう。
そう一人SAN値ピンチしてると
「ご、こめんなさい!お腹が空いて...イライラしてて...その、大人の人に対してあんな失礼なこと言ってしまったんです...。
本当にごめんなさい!」
そう金髪の子は必死に謝る。
その姿は滑稽で、無様で、屈辱的だ。
諸君らは諸君らで生存することは許されず、
上に搾取されながら生存する事しか許されず
そんな中必死にもがき続ける彼は、非常に愚かであった。
それがどうにも笑える。
その笑いをどうにか抑えようとするが、
「...くっ...ぷっ...ふはははっはははっ... 」
堪えることは叶わなかった。
ぼくは場違いにも彼らを笑ってしまった。
「な、なに笑ってんだおめぇ...。」
そう駐屯兵の奴が再び睨みつけながら寄ってくる。
「い、いやぁ...ごめんね、あまりにもその子に謝られるあなたが無様で、その子も無様で、あははっ 」
「舐めてんのかテメェ!」
彼はぼくの胸倉を掴んできた。
当然の反応である。
そして当の少年 エレンもぼくを睨みつける。
「あーごめんごめん、ぼくが悪かったよー。ほれ、これはそのお詫びだよ。」
ぼくは事を大きくしたくなかったので仕方なく謝り、彼らに懐の自分用のパンを彼に放り投げる。
彼は慌ただしくパンを手に取り、
「...っ、次からは気をつけやがれよガキどもが...。」
と、難なく事をおさめてくれた。
「って、無事に帰すわけないでしょ?」
と呟きながらぼくは彼の後頭部に思いっきり回し蹴りをした。
お前みたいな肉壁にもなれない兵士が、民族が、
ぼくの目の前に立てること自体おかしいんだよ。
闘争心全開の、エレン少年は睨みつける顔から一気にナイス!って顔に変わった。
感情の起伏が激しいな...。
当の本人はバキィッと耳の痛い音がしたが、せいぜい気絶程度だろう。手加減はしておいた。
「グハァッ...。」
「おっ、おい!大丈夫か!おい!」
と、彼の連れは看護に回ってくれた。
ありがとナス
その間にぼくらは退散させてもらう。
彼が前に放り投げ出したパンは無事に避難民の取り合いになって散りましたとさ。
おしまいおしまい。
さてと、ぼくはこれから党の活動書類や報告書に目を通さなきゃならない。
あまり暇をしてる時間はない。
少年らからの感謝の言葉?的なものを笑顔で言っているのを聞き流しながら仕事に戻るのだった。