ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
最近仕事が忙しくていつもより遅くなってしまい申し訳ありません。
少しでも早く投稿できるように頑張ります。
では、本編をどうぞ。
第14話~脈動せし秘めたる力~
「まさかテメエがトマト野郎と同じファミリアだったなんてな」
「・・・・・・」
『豊饒の女主人』の外の路地でハセヲとベートが対峙している。
ハセヲがベートに酒を頭から被せるという一波乱があり、ベートが殴りかかろうとした所をロキ・ファミリア一同で止めた。
その後、ロキが落とし前は店の外でやるようにと説得してこの状況が作られた。
「トマト野郎よりかは威勢があるようだが、それだけだ。俺に喧嘩を売った事を後悔させてやるよ」
「・・・・・・」
ベートは完全に上から目線で話を続けている。
それも当然だ。
ハセヲのレベルは『1』。
ベートのレベルは『5』。
兎が狼と戦うようなものである。
「ロキ、良いのかい?彼はロキのお気に入りだろ?」
「まあ、そうなんやけどな。うちの子にあんな事されたら黙ってる訳にはいかん。ハセヲはんには勉強の意味も込めてベートにやられてもらうわ」
ハセヲはその典型的なパターンであると思っているロキ。
「僕は彼が力を見誤るようには思えないが・・・」
フィンは嫌な予感を抱えながらこの喧嘩の行方を見守る。
「テメエは俺に傷一つ付けることも叶わねえ。圧倒的実力差に絶望し、トマト野郎みたいに怯え震えやがれ!」
「ごちゃごちゃうるせえ」
「んだと?」
対峙してから何も喋っていなかったハセヲが口を開く。
「弱い奴ほどよく吠えるとは正にこの事なのか?流石は犬野郎だぜ」
「・・・テメエは半殺し確定d―――」
「おらっ!」
舌戦の最中で喧嘩が開始される。
最初に動いたのはハセヲだった。
挑発でベートを怒らせ、力んでいる所での不意打ち。
ハセヲの拳がベートの顔面を捉えた、かに見えた。
「ぐっ!?」
「ちっ!」
ベートは咄嗟に首を横に動かしてハセヲの拳を避ける。
ハセヲは舌打ちをしながらバックステップでベートと距離を取った。
「ざ、残念だったな!雑魚のレベル1にしては悪くない不意打ちだったぜ!」
「・・・なに避け切ったつもりになってんだよ。ここ」
ハセヲが頬を指差す。
ベートが指された頬を触ってみると微かだが手に血が付いている。
避け切ったと思われたハセヲの拳はベートの頬を掠め、傷をつけていた。
「さっき言ってたよな?傷一つ付けられないって。早速傷を付けられてるじゃねえか。出来もしねえ事を言うもんじゃねえな?犬野郎?」
「こ、こんなの傷に入るかああああああっ!!」
嘲笑うハセヲにベートの怒りは限界を超える。
そんな状態のベートが攻撃を仕掛けた。
全力の右拳がハセヲの顔面を襲う。
「見え見えだ!」
「がはっ!?」
「もう一発!」
「うっ―――」
だが、ベートの大振りで単調な拳に当るハセヲではなく、ハセヲは避けながら懐に潜り込むとベートの鳩尾へ拳を減り込ませた。
鳩尾のダメージで身体が硬直するベートに、ハセヲは続けて鳩尾へ拳を減り込ませる。
これも大ダメージとはいえない攻撃ではあるのだが、先程の打ち上げパーティーで泥酔するまで飲み食いしていたベートにはキツい攻撃だった。
「う、うおええええええええええ!?」
腹部への強打にベートは地面に両手両膝を付いて嘔吐してしまう。
そんな光景に野次馬一同が驚く中、ハセヲだけが動いていた。
「おらっ!」
「っ!?」
ハセヲは四つん這いになって下がってしまったベートの頭を全力で蹴りつけた。
蹴られたベートはまるでボールのようにバウンドしながら転がっていき、うつ伏せの状態で止まる。
「ゴミと罵った
「くそ、が・・・!」
よろよろと立ち上がるベート。
レベル1とレベル5の喧嘩とは思えない展開に驚く野次馬達。
しかし、ベートと同じく第一級冒険者達はハセヲの闘いぶりに関心していた。
「ハセヲは戦い方が上手いね。観察眼と適応力でベートを錯乱させた」
「そうだな。挑発でベートを怒らせ身体が強張っている所へ不意打ち。顔を殴らせるような挑発でベートの行動を操ってカウンター。その後の流れるような追い討ち。これはやろうと思っても中々出来るものじゃない」
「・・・ベートさんが酔っていたから、出来た戦法。でもステイタスの差から考えてギリギリだったと思う・・・」
「じゃな。ハセヲの度胸と勇気に賞賛を送るべきじゃて。逆に泥酔しているとはいえ、ハセヲの思い通りに動かされたベートには後で説教が必要じゃのう」
フィン、リヴェリア、アイズ、ガレスがハセヲの戦いを冷静に分析し、ハセヲの動きに賞賛を送っている。
しかし、4人は誰もハセヲが勝つとは思っていない。
何故ならば、『レベル1』と『レベル5』の差はそれくらいでは埋められないと知っているからだ。
「・・・やってくれやがったな」
「・・・やってくれやがったな」
俺、ハセヲは静かに立ち上がるベートの姿を見て内心舌打ちをしていた。
さっきので戦意喪失してくれてたら楽だったんだが、そう上手くいかねえようだ。
「おー、恐い恐い。図星だからってそんなに睨むんじゃねえよ」
「・・・もうお前の挑発には乗らねえぞ」
やっぱりか。
犬野郎は完全に冷静になってしまった。
これで俺が勝つ為につけいる手段が無くなったと言える。
それほどまでに俺と犬野郎の実力が違いすぎた。
避けられた不意打ちは当てる気だったし、カウンターの時だって避けるのは紙一重だった。
それもこれも犬野郎が俺を
今の犬野郎からラッキーパンチを与えるのはもう期待出来ないだろう。
ここからは純粋な実力勝負となる。
「行くぞ!」
犬野郎の動きは速かった。
目では追えるものの身体が追いつかない。
「さっきのお返しだ!」
「かはっ!?」
「顎がお留守だぞコラ!!」
「があっ!?」
犬野郎の拳が俺の鳩尾へと減り込むと思わず、手がお腹を抑える為に移動してしまう。
その間に犬野郎の拳が俺のがら空きの顎へとアッパーを繰り出し、俺はもろに喰らってしまい、後方へと吹き飛ばされてしまった。
「く、そ・・・」
やっぱり一撃が重い。
これだったらミノタウロスの一撃の方がまだマシかもしれない。
「よく立ったぞ、
犬野郎の拳が俺の顔面を捉えた。
しかし、その拳は一撃では終わらない。
「おらおらおらおらおらおらおらっ!!」
俺の身体全体を余すことなく、連続で殴り続ける。
倒れる事も許されないその連打で俺の身体はあっという間に痣だらけとなっていく。
「これで最後だ!」
顔面への一撃で俺は再び背後へと吹き飛ばされる。
このまま倒れてしまえば楽になっただろう。
だが、それは絶対に許されない。
俺は身体に力を入れて倒れないように踏ん張った。
「はあ、はあ、はあ・・・」
「・・・面白れえな、
「・・・らあっ!」
「ぐっ!?」
犬野郎が性懲りも無く大振りしていたので、顔面に拳をお見舞いしてやった。
満身創痍な俺から反撃はないと思ってたのかもろに喰らわす事が出来た。
目を見開き鼻を押さえる犬野郎。
よく見たら鼻血をだしてやがる。
「・・・ざまぁ」
「・・・この死に損ないがあああああああっ!!」
犬野郎の連打がまた俺に襲い掛かる。
顔だけはガードしているが、これも長くはもたない。
「ぐっ!?」
「とっとと、死にやがれええええええええっ!!」
ガードが簡単に崩され、犬野郎の嵐のような連打が俺を襲う。
何発殴られたか分からないし、もう痛いという感覚すら感じなくなった。
止めろ・・・。
お前も
俺が築き上げたものを傷つけるな、壊すな・・・。
・・・力だ。
力がなければ、
力が、力が欲しい・・・。
ドクンッ
俺の身体の中から心臓ではない何かの鼓動を感じた。
ドクンッ
その鼓動の正体が何なのかは分からないが、そんな事はどうでもいい!
俺に力を・・・。
俺から全てを奪う奴らを倒す力を!
ポーン
俺の頭の中から八長調ラ音が響き渡る。
・・・感じる。
俺の中から、俺を呼べと訴えかけている。
いいぜ・・・。
来い、来いよ!
俺は、ここにいる!
「スケエエエエエエエエエエイス!!」
「な、なんやこれ・・・」
ロキが唖然とした表情で呟く。
それは突如として起きた。
抵抗できずされるがままなハセヲを見て勝敗は付いたと判断したロキがフィン達に止めるように指示しようとした時だった。
ハセヲの身体から赤い光が溢れ出し、周囲を飲み込んだ。
光が収まり、発生源であるハセヲを見るとその姿にロキだけではなく、全員が驚いた。
まずは、防具が変わっていた。
軽装な防具が重装な防具へと変化。
これだけならまだ早着替えと納得するかもしれない。
だが、一番驚いているのはハセヲの身体に浮かぶ紋様であった。
赤く輝いている紋様は一体なにを意味しているのかは分からない。
だが、ロキには微かにその光から
「・・・
「・・・・・・」
ハセヲの目の前にいるベートも第一級冒険者としての経験又は野生の勘で赤い紋様が異様であることを理解する。
ベートに問われたハセヲは何も答えない。
それどころか、ハセヲは俯いた状態で動きもしない。
「何も答えねえなら・・・半殺しにしてでも聞き出してやるよ!!」
「っ!?あかん、ベート!やめい!!」
攻撃へと動き出すベートを止めようとするロキだったが既に遅かった。
間合いを詰めてハセヲの頭部へと拳を振るう。
「な、なに!?」
だが、ベートの拳はハセヲの掌で受け止められてしまった。
しかも、しっかりと握られてしまい、ベートはその場から抜け出す事が出来ない。
「う、うおおおおおおおおおっ!!」
ベートは必死な形相でハセヲに蹴りを喰らわせた。
ハセヲにベートの蹴りが当る度に痛々しい音が鳴る。
「ベートさんが、慌ててる・・・」
蹴りが主体のベートがこの喧嘩で初めて使った事でアイズは、ベートが追い詰められていると感じ取った。
推測でしかないが、ベートにしか見えていない何かを恐れている。
アイズはそう思った。
「はあ、はあ、はあ・・・」
何発蹴ったか自分で分からない程蹴り続けたベートはとうとう疲労によって蹴りが止まってしまう。
蹴られ続けたハセヲはというと俯いた状態から一歩も動いておらず、蹴りでの傷は一つも出来ていない。
「・・・くくくっ、あーははははっ!!」
明らかに異様な光景に唖然とする一同をバカにするかのように嗤い出したハセヲ。
「次は俺の番だ」
「うおっ!?があああっ!?」
ハセヲはベートの拳を掴んだ方でベートを持ち上げると、すぐさま地面へと叩きつけた。
何度も。
何度も何度も何度も何度も。
ハセヲはベートを地面へ叩きつけるのを止めない。
「止めるんや、ハセヲはん!」
「・・・・・・」
ハセヲが発する異様な重圧からいち早く抜け出したロキがハセヲへ声をかけて止める。
その言葉が届いたのか、ハセヲはベートから手を放した。
「くくくっ」
ハセヲは自分の手を見て笑い出す。
明らかにハセヲの様子がおかしい。
だが、ロキが優先するのは
駆け寄ろうと思ったとき、
「ま、まだだ。俺は、まだ、やれる。止めるんじゃ、ねえ!」
「なっ!?止めい、ベート!」
ロキの制止を聞かないベートは自身の身体に鞭を入れて構える。
「折角、ロキが止めてくれたのにまだやるのか?」
「当たり、前だ!
「そうか。仲間の気遣いより、くだらないプライドを優先するか・・・。救えねえ野郎だ・・・。だが、お前のおかげで俺は力を手に入れた。お礼に一思いにやってやる」
「っ!?全員でハセヲを止めるんや!」
ハセヲが満身創痍であるベートに襲い掛かる。
ロキが眷属達にハセヲを止めるように指示をするが遅かった。
「消えちまえ」
ハセヲはベートの眼前でそう呟いた。
その時、ベートにはハセヲの背後に見た事のないモンスターが見えたという。
「『
「っ!?」
誰もが間に合わないと思ったとき、アイズが一瞬にしてハセヲとベートの間へと割り込んだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ハセヲの拳はアイズの顔面の手前で止まる。
2人の視線が交差し、少ししてハセヲの拳は下ろされた。
「・・・忘れてた。ベルを迎えに行かねえと」
アイズの姿からベルの事を思い出したハセヲは踵を返して走り去って行く。
「ま、待ちや、がれ・・・」
「ベート!」
倒れるベートにロキ達が急いで駆け寄った。
大怪我ではあるものの命に別状はなく、緊張の糸が切れたようでベートは気を失っていた。
とりあえずは無事な事に安心したロキは走り去って行くハセヲを見る。
その時にはハセヲの身体にあった紋様は消えていて、ロキが感じていた力も消えていた。
「ハセヲはん。あんたは一体何者なんや・・・」
そんなロキの呟きに答えられる者は誰もいなかった。
如何でしたでしょうか?
ベートとの喧嘩に、それに影響されて発現した力。
何の力なのかは言わなくても分かると思いますので言いません、、、
少しでも楽しんで読んで頂けたら幸いです。
次回も頑張って投稿します。
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