ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
楽しんで読んで頂けたら幸いです!
第23話~変わった理由と深い愛~
「というお誘いがあった。お前も中々人気者だな」
「リリは全然嬉しくないのですが!?」
俺、ハセヲは先日、リリルカの被害者からあったお誘いの出来事を本人に話している。
当然だが、リリルカは青ざめて頭を抱えている。
「いきなりハセヲ様が人の居ない静かなカフェに行こうと誘われ、何かとドキドキしていたら違う意味でドキドキさせられるなんて思いもしなかったです・・・」
「でも良い情報だろ?」
「そ、それはそうですが・・・」
未然に知っておけばある程度は対策が取れるからな。
「少し前にお前とパーティーを組んでいた俺が恨みが深いだろうと判断して声をかけてきたらしい。後々、現在組んでいる奴にも声をかけると言っていたぞ」
「そ、それってまさか・・・」
「そう。ベルだ」
ベルがリリルカとパーティーを組んでいたのは勿論知っている。
少しあからさまな条件でリリルカとパーティーを組ませようと仕組んだが無事にパーティーを組めてよかったと俺は思っている。
リリルカにはすぐにばれて俺に言い寄ってきたが、俺から横領した分でベルを頼むとお願いしたらあっさり引き受けてくれた。
「ベルはお前の事を色々話してるよ。とても助かっているし、勉強になると褒めてたし、時折、表情を歪めている時があるから不安だとも言っていた」
「ベル様が・・・」
ベテランサポーターのリリルカならベルに良い刺激になると思ったが想像以上に良い仕上がりになっている。
自分だけでなく、周囲の人にも目が回る余裕を持てるようになった。
これができるとできないで意外と変わってくるからな。
「・・・ハセヲ様は、ベル様が危険だからもうパーティーは組むなと警告しに来たのですか?」
「は?違うぞ?」
「・・・え?」
唖然とした表情で俺を見るリリルカ。
そんなに意外だったのだろうか?
「俺は言葉通り、忠告しに来ただけだ。お前がベルと組もうと問題はねえ」
「大ありだと思いますよ!?下手したらベル様の命も危険に陥ってしまうかもしれないのですよ!?」
「それも一つの経験だ。その経験がベルを強くする」
ベルにはもっともっと強くなってもらわないといけないからな。
ある程度の困難や危険は速い内に経験しとく方が良い。
「そういうものですか?」
「ああ。パーティー内で横領される事にいつ気づく事が出来るかも今後には必要になるしな。お前はどれくらいベルから盗ってんだ?」
「えーっと・・・4割ほど」
・・・ベルは人を疑う事を覚えて欲しいんだが、これは少し時間が掛かりそうだ。
「それと、【
「は、はい・・・」
おっと。
少し脅しが過ぎたな。
唯でさえ小さいリリルカが縮こまってさらに小さくなっちまった。
「まあ、これまで通りベルを頼むって訳だ。頼んだぜ?」
「あうっ!?」
俺はリリルカの頭に手を置いたら変な声を出すリリルカ。
どうしたんだ?
「は、ハセヲ様!淑女の頭を撫でるなんてセクハラですよ!」
リリルカが急に怒り出した。
というか、この世界にもセクハラがあるんだな。
「いや、淑女つーより、子供にやるような感覚だったんだが・・・」
「最低です!最低です、ハセヲ様!」
「最低と思うなら、俺の手を退けてから言えよ」
「はっ!?」
こいつ絶対に満更でもないと思ってるだろ?
俺の言葉でようやく頭に乗せられた手を振り払うリリルカ。
なんか唸りながら俺を睨みつけているが全く恐くないな。
「まあ、一応奴らの誘いに乗って情報を集めるつもりだ。何か進展があったら連絡する」
「え、あ、ありがとうございます・・・」
「じゃあな」
「・・・ま、待って下さい!!」
これでリリルカに話す事は終わった。
俺は伝票を持ってその場を去ろうとするとリリルカが呼び止めてきた。
「どうして出会って間もないリリにそこまでしてくれるのですか?ハセヲ様と出会ったときも、ハセヲ様に気づかれながらもリリは横領してました。そんなリリを助ける理由や得する事なんて一つもありません!どうしてですか!」
そう言われてみれば確かにそうだ。
俺はリリルカを助ける理由もないし、義理もない。
ましてや、得する事なんて一つもない。
ここに来る前の俺だったら絶対に助けなかっただろう。
俺はどうして出会って間もない奴を助けるような偽善者になった?
何が俺をそんな風に変えたんだ?
『ハセヲ君!今日はじゃが丸君パーティーだ!!』
『ハセヲさん!今日も宜しくお願いします!』
俺の頭の中に浮かんできたヘスティアとベルの顔。
よく分からねえが、少なくとも俺が変わったのはあいつらが関わっているのは間違いなさそうだ。
どっちも放っておけない奴らだ。
いや、どっちも放っておいても勝手に着いてくる、そんな奴ら。
「お前もそうなんだろうな・・・」
「え?何がですか?」
「いや・・・」
俺はリリルカの前に立つと、リリルカの頭の上に手を置き、視線が合う様に膝を付けた。
「俺にとってお前、いや『リリ』は放っておけない存在なんだと思う」
「え、あの、ハセヲ様!?」
「悪いな、リリ。今はこれくらいしか分かってねえんだ」
俺は優しくリリの頭を撫でる。
「あわ、あわわわわっ!?お、落ち着くのです、リリ!これは違うのです!絶対にそういう意味ではないのです!」
「ん?そういう意味ってなんだ?」
「ふわっ!?」
何か知ってそうなリリに顔を近づけたら顔が一気に赤くなっていく。
一体どうしたんだ?
「やっぱり・・・」
「やっぱり?」
「・・・ベル様はハセヲ様に毒されているのですね!!この女たらしいいいいいいいいいっ!!」
変な奇声を上げながらリリは去って行ってしまった。
ベルが俺に毒されて女たらし、ってどういう訳だよ・・・。
「つーか、俺は女を誑し込んだ事なんて一度もないんだが・・・」
1人残されてしまった俺はそう呟く事しか出来なかった。
とある狭い路地の格安居酒屋。
そんな場所に似つかない存在がいた。
「聞いてくれよよ、ミアハ!ハセヲ君とベル君が・・・2人が、浮気していたんだ!!」
「浮気とは穏やかではないな。2人がそのような事をする光景が想像できんが」
お互い零細なファミリアである為、滅多な事がない限りではこの格安居酒屋で飲んでいる神達である。
「そもそも。ハセヲとベルの恋人ですらないそなたが浮気云々言う資格はないのではいか?」
「くそぅ!お酒おかわり!」
辛辣な事実を述べるミアハにヘスティアはお酒を一気に飲み、おかわりを注文する。
どんどんヘスティアの苛立ちがヒートアップしていく。
「そもそも一体なんなんだあの娘達は!?ハセヲ君とベル君はボクのものなんだぞぉ!」
「これこれ。2人は誰のものでもないぞ」
「分かってるさ!言ってみたかっただけさ!」
ヘスティアはぐいっとエールを一気飲みする。
それをミアハはお通しを摘みながらその光景を眺める。
「最近、ボクはバイトを掛け持ちするようになってから、ますます2人と顔を合わす機会が減ってしまって寂しいんだ!ハセヲ君は時々顔を出しに来てくれるけど、それでも全然足りない!!」
ヘスティアが言う通り、【
ハセヲはヘファイストスの店でアルバイトをすると約束しているところを見ているので知っている。
ベルには偶々店に買い物に来た所を目撃されてしまった。
借金という事情を知らないベルがアルバイトを止めさせようとするが、必死に抵抗してベルを諦めさせ、出来る限り店に来ないように約束させたヘスティア。
しかし、ハセヲもそんな約束をしたにも関わらず、会いに来ては笑って帰っている。
ハセヲなりの気遣いだとヘスティアは理解しているが止めてほしいと思っている。
「ボクが居ない間に、2人は色んな人と仲良くしてたよ!主に女性と!2人にはボクという女神がいるのに!!」
ヘスティアの目は完全に据わっている。
長い付き合いのミアハには既に分かっているが、ヘスティアはもう泥酔状態で、しかも悪い方向に酔っ払っている。
これは下手に止めれば面倒なので気が済むまで付き合おうとミアハは判断した。
「ハセヲ君とベル君はボクが手塩にかけて育てた自慢の子供だ!ぽっと出の女に渡してたまるものか!!ボクはあの子達を愛しているのだから!!!!」
「こ、これ!?声がでかいぞ、ヘスティア!」
急に立ち上がり演説を始めだすヘスティアをどうにか止めようとするが無駄だった。
ヘスティアの眷属に対しての想いが語られる。
「愛している証拠に、ボクは2人さえいれば下水道に住み着いたっていいぜ!?ぶっちゃけ同じベッドで寝たいんだ!3人川の字で2人に挟まれながら両手の花を実感したい!それくらい2人の事が好きなんだ!だから、ボクの元から居なくならないでおくれーっ!!」
「・・・・・・」
ぷつんとまるで糸が切れた糸人形のように動きが止まり、テーブルへとヘスティアは潰れてしまう。
散らからないようにお酒や皿を非難させていたミアハは酷い有様のヘスティアを見て溜息を吐く。
「でも・・・ハセヲ君はいずれ居なくなってしまう・・・」
完全に潰れたと思いきや、首だけを起こして話し出すヘスティア。
その内容にミアハは黙って聞くことにした。
「仕方ないと分かっているんだ。でも、ボクの初めての家族が居なくなるのは寂しいんだよ・・・」
「ヘスティア・・・。人は
事情は分からないが相当な理由があるのだと理解するミアハは慰めの言葉をかける。
だが、その言葉は悪手へと変わる。
「子供は居なくなる・・・。なら作れば良いじゃないか!!ハセヲ君の子供を!!」
「・・・は?」
ヘスティアの爆弾発言に流石のミアハも固まってしまう。
そんなミアハを余所にヘスティアは色々と盛り上がっていった。
「よしっ!そうと決まれば行動だ!ベッドに潜り込んで○○○して!それから―――」
「せいっ!!」
「ふがっ!?」
突如として頭上に激痛が走ったヘスティアはそのまま意識を失った。
意識を失い地面へと落ちそうになったところをヘスティアに拳骨を落とした人物が受け止める。
「仮にも女神が何言ってやがんだよ!!この駄女神が!!」
「は、ハセヲ・・・」
その人物とはハセヲだった。
まさかの渦中の人物の登場に流石のミアハも焦る。
「ミアハ。うちの神が迷惑をかけたな」
「そ、それは構わないが・・・。ハセヲ、どこから聞いてた?」
「ああ?この駄女神が『ベッドに―――』って言い出してからだが・・・?」
ハセヲは嘘を吐いていない。
それが分かったミアハは一安心。
自分の事でないとはいえ、聞かれていたらヘスティアが憐れで目も当てられない。
そんなミアハの心の内など分からないハセヲはヘスティアを背中に乗せてお金が入った袋をミアハに渡す。
「ヘスティアはこのまま連れて帰る。それに入っている金で足りなかったら後で言ってくれ」
「あ、ああ。分かった」
「じゃあな」
「・・・待ってくれ、ハセヲ」
ミアハに呼び止められたハセヲは首だけ振り向く。
「お前はヘスティアを幸せに出来るか?」
「・・・俺には無理だ」
少し間を空けて答えたのは真直ぐな本心。
何か事情があるのは分かるがそこまで問い詰める事が出来ないミアハはむず痒い気持ちになる。
「でも、まあ・・・。俺がいる間はそんな気持ちが続くように努力する」
そう言って今度こそミアハの前からハセヲは姿を消した。
最後の言葉に嘘はない。
「頼むぞ、ハセヲ」
それが分かっているミアハは誰もいない空間を見つめながらそう呟いた。
如何でしたでしょうか?
ハセヲの成長具合やヘスティアの少し歪んだ愛が見られた回だったと思います。
原作通りならデート回。
それかベルの魔法取得になる予定です。
頑張って書きますので応援よろしくお願い致します!