ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
前の話を読んでない読者様は気をつけてください。
第26話~理由なんてない~
「リリッッッ!!」
僕、ベル・クラネルは最近一緒にパーティーを組んでいるサポーターのリリを救うべく、キラーアントの大群に突っ込んでいた。
なんでそのような事になっているのかと言えば、結論から言うと僕はリリに裏切られた。
今回はリリと一緒に10階層まで潜っていたのだけれど、視界の悪いフィールドであった事もあり、リリに【神様のナイフ】を奪われ、アイテムによって誘き寄せられた10匹のオークに足止めをされてしまう。
時間をかければなんとか倒せる数だったけど、すぐリリを追いかけたい気持ちが焦りを生み、中々倒せることが出来ずにいた。
だけど、通りすがりの冒険者に助けてもらいなんとか撃退。
誰かは分からなかったけど、僕はその冒険者にお礼を言ってすぐにリリを追いかけるために走った。
僕はリリが通りそうな安全なルートを辿っていった。
広大なダンジョンだけど、そのルートはリリから教えてもらったもので、そこを通る可能性は十分にある。
その予想はずばり的中しており、リリを見つける事が出来た。
しかし、リリの状況は最悪でキラーアントの大群に囲まれていた。
僕は何の躊躇もせずにキラーアントの大群の中心に【ファイアボルト】を打ち込んでから飛び込んでいったのである。
「べ、ベル様・・・?」
「そうだよ!無事だよね?」
「はい・・・」
「良かった・・・」
本当に良かった。
間に合って本当に良かった。
心底安心しているとリリが【神のナイフ】を渡してくれる。
「リリ。いつもみたいに待ってて!」
リリにポーションを渡して、僕もポーションを飲んで準備を整える。
まずはこのキラーアントの大群をやっつける!
「うおおおおおおおおおおっ!!」
僕は次々とキラーアントを倒していく。
しかし、その数はかなりのもので一向に減る気配がない。
「くっ・・・」
「ベル様!逃げてください!リリの事は放っておいてください!」
リリがそう叫ぶが、冗談じゃない。
僕は絶対に逃げないぞ!
「大丈夫!絶対にリリを助けるから!」
「ベル様・・・」
「【ファイアボルト】!!」
僕は魔法でキラーアントをなぎ払い、突っ込む。
一撃一殺を絶対にしないと対応しきれない。
本当にやばい時に魔法を使うようにして僕は戦い続ける。
何が最善なのかを頭で考えて動く。
戦闘が始まってどのくらい時間が経過したのかは分からないけど、キラーアントの数が減ってきているのが分かる。
もう少しだ!
そう気合を入れ直したときだった。
後方にいたキラーアントが一気に吹き飛んだ。
「っ!?あれは・・・?」
目の前のキラーアントに注意しながらその後方を見ると全身黒いローブを着た誰かがいる。
もしかして、あれは最近噂になっている『黒衣の死神』なんじゃ・・・。
「でも黒衣の死神は中層でしか目撃情報はなかったはず・・・」
そんな事を呟いている間に『黒ローブの何か』にキラーアントが襲い掛かる。
『アアアアアアアアアアアアッ!!』
『黒ローブの何か』は大鎌でキラーアントを次々と薙ぎ払っていく。
その勢いは凄まじく、一振りで5体以上も倒していっている。
武器の特性もあるけど、凄い攻撃である事に変わりはない。
そんな『黒ローブの何か』のおかげもあり、キラーアントの大群はあっという間に退治することができた、
そして僕とリリ、『黒ローブの何か』の3人が残される。
僕はリリと『黒ローブの何か』の間に立って武器を構えた。
親切な冒険者だったら失礼かもしれないけど、未だにそれははっきりしていないし、急に襲ってくるかもしれないから警戒を解くことは出来ない。
『・・・・・・』
「っ!?リリ!動かずそこにいてね!」
「は、はい!」
『黒ローブの何か』は大鎌を構えて敵意を顕にした。
僕はすぐにリリへ声をかけてから準備を整える。
キラーアントを倒す動きからして凄く強いのは間違いない。
『アアアアアアツ!!』
「くっ!?」
先に動いたのは黒ローブだった。
僕は擦れ擦れで避けると一気に距離を詰める。
ああいう長物は超接近戦で勝負しろってハセヲさんから教わった。
正直怖いけど、リリを守る為にもそうはいっていられないんだ。
「はっ!やっ!せいっ!」
僕はナイフで応戦しているが全て回避されてしまう。
身体どころかローブにすら当らないなんて・・・。
「ぐっ!?」
僕は腹部に強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。
どうやら蹴りを喰らってしまったようだ。
あの全身を隠すローブのせいで分からなかった。
またさっきみたいに懐に潜り込まないと僕のナイフは当らない。
でも、僕にはまだ攻撃手段はある。
「【ファイアボルト】!!」
僕の魔法が黒ローブを襲うが、こんなんでダメージが通るとは思っていない。
これはあくまで繋ぎだ!
「うおおおおおおおおっ!!」
黒ローブは予想通りに【ファイアボルト】を大鎌で対処していたのでその隙にまた懐へ潜り込み、その勢いのままナイフで攻撃をしかける。
顔を狙った僕の攻撃は寸前の所で避けられる。
でも、それも僕の予想通りだ!
「【ファイアボルト】!!」
僕の超至近距離での魔法が炸裂した。
これが僕の本当の狙いである。
流石の黒ローブも超至近距離で魔法を喰らえば無事ではないは―――
「―――がっ!?」
「ベル様!?」
・・・今、何をされたんだ?
いつの間にか仰向けになって倒れているし、左頬が熱く、身体の節々が痛い・・・。
そして視界には涙目のリリがいる。
首を横に動かせば、黒ローブが無傷で佇んでいた。
「ぐっ・・・」
落ち着け!
状況をすぐに整理するんだ!
よく見えなかったけど、黒ローブに攻撃されたのは間違いない。
その攻撃で吹き飛ばされて地面に倒れてしまったのだろう。
というか、あの超至近距離で無傷って・・・。
「リリ・・・。逃げるんだ・・・。僕じゃあいつを倒せないかもしれない・・・」
「ベル様・・・」
今の僕じゃ奴を倒せない。
なら、逃げることを考えるんだ。
まずはリリを逃がす為に時間を稼いで、その後僕も逃げる為に動く―――。
「なっ!?」
互いの攻撃が届かない位置にいたのに黒ローブが一瞬で距離を詰めていた。
止まった距離は、奴の大鎌が届く距離。
しかも、奴は既に大鎌を振りかぶっている。
逃げる算段をしていた僕は、奴の懐に潜り込む事も、ナイフで防ぐ事も間に合わない。
やばい、死―――
「ストップです!!」
「え・・・?リリ?」
いつの間にかリリが僕の目の前にいて両手を広げるようにしながら、黒ローブを前に立ち塞がっていた。
僕はそんなリリに唖然としつつ、顔のすぐ横で寸止めされている大鎌に肝を冷やしていた。
「ハセヲ様。リリはやりすぎだと思うのですが・・・」
「・・・え?」
僕はリリの言葉に唖然としていると、大鎌とローブが一瞬にして姿を消して、黒ローブの素顔が顕になる。
その素顔は僕がよく知る人物で、その名前を恐る恐る言った。
「ハセヲ、さん?」
「おう。まだまだだな、ベル」
「え、えええええええええええええええっ!!??」
僕の叫び声がダンジョンに響き渡った。
「ハセヲ様はやりすぎなのです!反省してください!」
俺、ハセヲは現在、リリを背負いながら地上へと向かう最中なのだが、そのリリから説教をされている。
まあ、原因は俺が正体を隠してベルと戦闘を行なったからなのだが・・・。
「悪かったって。ベルの本気を見るのはああいう機会しかねえんだからよ」
「だからって、やりすぎなのは、やりすぎです!!下手したら大怪我でしたよ!ベル様も文句の一つ二つ言ってやってください!」
「・・・というか、リリは最初から知ってたの?黒ローブの正体はハセヲさんだって・・・」
ベルの鋭い指摘にリリは「うぐっ」と声を漏らす。
出来れば拠点で話そうと思ったが、仕方ないからここで話しちまおう。
「実はというとベルがキラーアントに突っ込んでいく前から俺は潜んでいた」
「ええ!?じゃ、じゃあどうしてハセヲさんはすぐに出てこなかったんですか?」
ベルの疑問はもっともだ。
だが、それには勿論理由がある。
「リリを狙う協力者が誰なのかを探る事だ」
「協力者、ですか?」
「俺とベルを勧誘してきた冒険者は、絶対にリリを捕まえられる自信があった。この広大なダンジョンでだ。ベル、本気でリリに逃げられたら探せられるか?一度姿を消されちまえば、俺でも無理だ。となると・・・」
「リリをよく知る人物の後ろ楯に、協力者がいた・・・」
俺とリリが話してその可能性が高いと踏んだ。
その冒険者にそれとなく聞いたが教えてもらえず、あくまで分け前をくれてやるから黙って従えといった感じだった。
「それで、その協力者を探るべく、色々と作戦を立てた。ベルを裏切らせたのも作戦の一つだった」
「すみません、ベル様・・・」
「いや、謝る必要は無いよ。仕方ない状況だったんだから。それで、その協力者を見つけ出す事が出来たんですか?」
「ああ。その協力者はリリと同じファミリアの冒険者だったんだよ」
「ええっ!?」
まさかの真実に驚くベル。
まあ、そうだよな。
ベルにとって、仲間や家族でもある同じファミリアの人間がリリを陥れようとしてたんだからな。
「その冒険者は前からリリが稼いだお金を無理矢理奪う最低な奴らでした。先日、ベル様もその場面を見かけた事がありますよね?」
「あの時の・・・」
「どうも勘の良い奴で、リリがまだ金を持っていると踏んで色々調べ上げたらしい。そして、リリを恨む冒険者に声をかけて実行させたんだ」
今思い出しても胸糞悪い奴だった。
リリをキラーアントの群れに投げ込んだ時は、すぐにでも飛び出して殴り飛ばしたかったよ。
「それで、リリから全財産を奪い取った挙句、キラーアントを呼び寄せてリリを殺そうとしてたんだ。そんなピンチにヒーローの登場って訳だ」
「ベル様。とっても素敵でした!」
「え?いや、ありがとう・・・って、問題はその後じゃないですか!?リリは全財産を奪われたんですよね?」
照れた様子のベルだったが、すぐにリリが酷い事になっている事に気づき声を上げる。
勿論、話には続きがある。
「それで、あの黒ローブの出番だ。ベルも知っているだろ?『黒衣の死神』の噂は?」
「は、はい」
「まあ、その噂の張本人が俺なんだが、それを利用しない手はないと思ってな。そいつらを襲ってリリの全財産である金庫の鍵を取り戻した訳だ」
「な、なるほど!・・・ん?さらっと凄い事いいませんでした?」
また騒がれるのは面倒なのでベルを無視して話を続ける。
「流石に殺しはしてないが、当分は復帰できないようにしてやった。肉体的にも精神的にも、な・・・」
「どんな内容なのか聞くのも怖い・・・」
「ですね・・・」
まあ、俺も口に出して言いたくはないことをしたから聞かないでもらえると助かる。
「あれ?リリの金庫の鍵を取り戻した時点で目的達成ですよね?どうして僕と戦う必要があったんですか?」
「・・・それはさっきも言ったがお前の実力を見定める為だ。身内だとどうも手が鈍るしな、ベルは。その総括についてはまた今度話すとして、今はリリの事だ」
「え?」
いきなりの話題にベルは唖然としているようだが、俺は話を続ける。
「ベル。お前はリリに色々と騙されていた。そんな奴とお前は一緒にいて良いのか?」
「は、ハセヲさん!?リリの目の前でそんな話を・・・」
「これは大事な話だ。だろ?リリ?」
「はい・・・」
俺はリリを下ろすと、リリはベルの方を向いて話し出した。
「ベル様。どうしてリリを助けになど来たのですか?」
「え・・・」
「リリは今日までベル様を騙し続けて来ました。ベル様からお金を搾り取る為ならなんでもやりました。リリはそんな最低な
「う、うん」
リリの早口に圧倒されながらも即答するベル。
まあ、そうだろうとは思ってたが・・・。
「ど、どうして!?」
「お、女の子だから?」
「~~~ッ!!」
俺も予想外の答えとはやるな、ベル。
リリも顔を真っ赤にして怒りを顕にしてるぞ。
「ばかぁっ!ベル様の馬鹿!!女の子なら誰でも助けるんですか!?それもハセヲ様から教わったんですか!?この女誑し兄弟!!女の敵!!!!」
色々とツッコミたいが俺は我慢して2人を見守っているとベルがリリの頭に手を置いて撫で始めた。
「じゃあ、リリだから、だよ」
「え・・・?」
「リリだから、いなくなってほしくなかった。リリを助ける事に理由なんて必要ないよ。それはハセヲさんも同じだと思う」
優しい笑顔を向けながらそういうベルは俺の方を向いて同意を求めてきた。
リリも俺の方を向いており、なんか気恥ずかしくなりそっぽを向いてしまう。
今は俺じゃなくてお前の話だろうが・・・。
「ぷっ・・・あはははっ!」
急にリリが笑い出した。
どうしてリリが笑い出したのか分からない俺とベルは目を合わしていると、リリが笑いを抑えながら話し出した。
「御二人とも本当に兄弟みたいに同じ事を言うのですね?それがおかしくて・・・あはははっ!!」
「そ、そうなんですか?」
「・・・知らねえ」
戸惑うベルに聞かれるが俺に記憶にはない、
ないったらない。
「あははははははっ!!」
「・・・ぷっ、あははははっ!」
笑うリリに釣られてかベルまでも笑い出してしまう。
さっきまで、死線潜り抜けていた奴らとは思えねえな。
俺はそんな事を思いながら笑うベルとリリを眺めている。
俺の口角が上に上がって、笑っていたことに俺は気付いていなかったのであった
如何でしたでしょうか?
いきなりクライマックスで戸惑った方がいたのではないでしょうか?
もう少しハセヲとリリを嵌める冒険者達の話を入れようかと思いましたが、似たり寄ったりになりそうでやめました。
期待していた人がいましたらすみません、、、