ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
楽しんで読んで頂けたら幸いです!
第29話~絶望と希望~
「何で死人がここにいるんですか!?」
今回の騒動の首謀者は過去に死んだ筈の【
そんなあり得ない事実にレフィーヤが思わず大きな声をあげてしまう。
「生きていたのですか・・・?」
「いや、死んだ。だが、死の淵から私は蘇った」
オリヴァスの言っていることが、全員理解出来なかった。
しかし、レフィーヤは見た。
下半身が人間のものではない異様なものへとなっているところを。
「私は二つ目の命を授かったのだ!他ならない『彼女』に!!」
「彼女だがなんだか知らねえが、化け物として蘇らせられるなんて碌な奴じゃねえだろうな」
「ハセヲさん!」
ローブ集団を相手に殿を務めていたハセヲが到着する。
これでオリヴァスは実質一人となった。
「この私が化け物だと?そんな安い言葉でまとめないで頂きたいな?」
「んじゃなんだっつうんだ?」
「人とモンスター。二つの力を兼ね備えた至上の存在だ!」
人とモンスターの『
それが何を意味するのかハセヲには分からないが、彼にとってそんなものはどうでも良かった。
「そんな至上の存在様がこんな所で何やってんだ?悪趣味な食人花の栽培でもして売り捌こうとしてんのか?」
「はははっ!そんな小悪党な真似する訳なかろう?私の目的はただ一つ、
オリヴァスの衝撃的な目的に一同が驚愕する。
もし、迷宮都市が滅ぼされてしまえば、千年も続いた平和が一気に崩れ去る。
それほど恐ろしい事をやろうとオリヴァスはしている。
「ベート。こいつ、捕まえてロキ達に引き渡した方が良くないか?」
「悪くねえ意見だが却下だ、ボケ。こんないかれた野郎を地上に連れていけるか。回復の時間稼ぎをしようとしてやがるし、さっさとやるぞ」
ベートの言う通りでオリヴァスは先ほどの戦闘で碌に動けない状態であった。
全快まで程遠く、このままだとオリヴァスはあっという間に倒されてしまうだろう。
しかし、オリヴァスにはまだ奥の手がある。
「やれ―――」
オリヴァスは片腕を上げながら後ろで悠然と聳え立つ存在に指示を出す。
「
「・・・嘘だろ」
あまりの光景にルルネはそう呟いた。
オリヴァスの後ろにあるのは食人花よりも遥かに巨大なモンスター『巨大花』。
その巨大花がゆっくりとルルネ達の方へと倒れてくる。
「散れぇ!!」
ベートの一声と同時に全員がその場から全速力で走りだした。
巨大花の胴体が地面へと降り立つ。
逃げ遅れた者はいないがその衝撃はかなりのもので耐え切れずに吹き飛ばされてしまう。
「蹴散らせ!」
オリヴァスの指示で巨大花は暴れだす。
その光景はまさに天災が具現化したかのようなものだった。
「ちぃっ!」
「くっ!」
ベートの攻撃は通用せず、レフィーヤの魔法は詠唱を唱える余裕がない。
まさに防戦一方の状況である。
「アスフィ!こんなのどうしたらいいんだよぉ!?」
「・・・・・・」
ルルネの質問にアスフィは答えられない。
この状態では誰も巨大花に抵抗できずに全滅してしまう。
思考を巡らすアスフィだが、視界の先である人物が巨大花に向かっているのを見た。
「来い・・・」
それは、ハセヲだった。
「来い・・・」
ハセヲは胸に片手を当てながら突き進む。
ここにきてからハセヲの身体の奥底から何かが訴えっているかのように強い鼓動を感じていた。
「来い・・・!」
ローブ集団や食人花を倒す度にその鼓動は強くなっていた。
しかし、鼓動は決してハセヲを苦しめるものではなく、逆に高揚して興奮状態に陥りそうになった時もあった。
「来いよ・・・!」
その興奮をようやくコントロール出来たハセヲは、ベートと戦った時のような感覚を思い出していた。
「俺はここにいる!」
今なら使えると判断したハセヲは自分の奥底に眠っている何かを呼び起こすように叫んだ。
「スケエエエエエエエエエエエエエィス!!」
ハセヲの声が全員の耳に聞こえるように響き渡る。
その瞬間、地響きが止まった。
いや、地響きと云うよりも、暴れていた巨大花の動きが止まってしまったのだ。
「巨大花が止まった!?どうして?」
「
アスフィとルルネがオリヴァスの視線を辿ってみると、二人も唖然とした表情へと変わってしまう。
身体に赤い紋様が浮かび上がり、空を飛んでいるハセヲがいた。
アスフィも魔道具を使って空を飛ぶことが出来るがハセヲにそれといった魔道具を身に付けている様子はない。
「巨大花!奴を殺せ!」
「・・・・・・」
オリヴァスが巨大花を操ってハセヲに攻撃するように指示を出した。
しかし、巨大花は一向に動こうとはしなかった。
「どうした!なぜ、言うことを聞かない!?」
「言うことを聞かないんじゃねえよ」
「なに!?」
「動けねえんだ」
よく見れば巨大花は小刻みに震えているようにも見える。
ハセヲが何かしらの技で巨大花の動きを封じたようなのだが、誰もハセヲが何をしたのか分からない。
「貴様!何をした!!」
「【スタンショット】、って言っても分からねえよな。お前らには見えてないようだしな」
「見えていない、だと?」
「もう終わりにしよう。怪我人もいるんでな」
そう言うと、ハセヲは大鎌を取り出して振りかぶる。
すると、ハセヲの姿が消えた。
「えっ!?」
「一体どこに!?」
「デカブツの頭の方だ!」
ベートの云う通りでハセヲは巨大花の頭部の前にいる。
この中でハセヲの動きを見れていたのはベートだけだった。
それでも全神経を巡らしてギリギリだった。
「はあっ!せいっ!」
たった二回のハセヲの攻撃が巨大花の頭部を簡単に削り、削られた所から魔石が顕わになった。
そして、三回目。
一、二回目よりも溜を入れている。
「止めだ!!」
ハセヲの止めの攻撃が炸裂。
その攻撃は体長何メートルあるのか分からない巨大花の身体を真っ二つにしてしまう程の威力だった。
魔石ごと真っ二つにされた巨大花は灰となってその姿を消してしまった。
「そ、そんな馬鹿な・・・」
ありえない光景にオリヴァスは全身の力が抜けて尻から地面に付いてしまう。
オリヴァス程ではないにしろベートやレフィーヤ達もその光景に只々驚いている。
「くくくっ・・・!」
「ハセヲ、さん・・・?」
「食人花!!奴を殺せえええええ!!」
空で一人笑みを浮かべるハセヲを見たレフィーヤは悪寒を感じた。
そして、オリヴァスは恐怖で顔を歪めながら残りの食人花をハセヲへ襲わせるように指示した。
今度は一斉に動き出す食人花。
ハセヲは上へと飛んで距離を離す。
食人花は逃がすまいと追いかけ続けるが一向に追いつかない。
ある程度の距離を保ちながらハセヲは大鎌をしまい、手のひらを食人花に向けた。
「【スタンショット】」
「なっ!?また動きが・・・奴は何をやっているんだ!?」
「不可視の攻撃?それとも彼にしか見えない何かがあるの?」
理解できず思考が回らないオリヴァスはただ頭を抱える事しか出来ない。
アスフィは冷静に可能性を模索するが結論にまで至れないでいる。
そして、すべての食人花の動きが止められてしまう。
ハセヲはそれを確認した後、動きを止めて先ほどと変わらず、手のひらを向けている。
一つ違うのは、手のひらを出している腕が赤く光り輝いている事である。
その赤く輝く光を見たベート達は酷い悪寒を感じた。
あれは、やばい。
そう本能が訴えているのを感じた。
「【データドレイン】!!」
ハセヲの腕から赤い閃光が解き放たれる。
赤い閃光に呑み込まれた食人花たちはあっという間に、灰も残さずに消滅していった。
「・・・・・・」
ついさっきまでの激闘が嘘かのように静寂へと包まれる。
それは安心や安堵などではない。
ただ恐怖のみが、この静寂を作り出した。
「さて、後はてめぇだけだ」
「ヒ、ヒイィィッ!?」
オリヴァスにもう抵抗する意思はない。
そもそも恐怖で腰が抜けて動けないありさまである。
そんなオリヴァスなどどうでもいいかのように、目の前にやってきたハセヲはオリヴィエの頭を片手で掴んで持ち上げる。
「っ!?」
もがくオリヴァスはただでさえ恐怖で歪んでいた顔が驚きによってさらに歪んでしまう。
オリヴィエは何かに気付いたようだ。
「な、な、なんだそれは!?その化物はなんなんだ!?」
「ば、化け物?」
「奴は何を言っているんだ・・・」
じたばたと暴れながら叫ぶオリヴァス。
その言葉にレフィーヤとフィルヴィスは理解が出来なかった。
全員には、ハセヲがただオリヴァスの頭を掴んで持ち上げているだけに見える。
「やっぱりあれは見間違えじゃなかったのか・・・」
そんな誰にも聞こえないベートの独り言。
ベートは似たような体験をその身で味わった事がある。
ハセヲと喧嘩をして赤い紋様に包まれたハセヲに掴まれた時、ベートはハセヲの姿が違う姿と重なって見えていた。
それが何なのかは説明できない。
ただ言うならオリヴァスと同じ言葉を使うだろう。
『化け物』、と。
「くたばれ、カスが」
「や、止めてくれぇぇぇ!?何でも話す。何でも言う事を聞くから!?」
ハセヲの腕が食人花たちを消滅させた時のように赤く光り出した。
今さらそんなオリヴァスの戯言を聞くハセヲではない。
「死ね」
オリヴァスの恐怖と涙で歪んだ顔を見て愉悦に浸りながらハセヲは止めをさそうと力を込める。
「だ、ダメえええええええええっ!!」
響き渡るレフィーヤの声。
そして、その本人はハセヲの背中に抱きついていた。
私、レフィーヤは、アイズさんのお助けをする為に、ベートさん、フィルヴィスさん。
そして、ハセヲさんと一緒にダンジョンへ向かいました。
最初は酷くギスギスしたパーティーでしたが、フィルヴィスさんと仲良くなったり、ハセヲさんがベートさんを上手く丸め込んだりしてなんだかんだで良いパーティーになったと思います。
そして、24階層の北の食料庫で凄い事件に巻き込まれてしまいました。
怪物祭で暴れた食人花が出るだけではなく、それを操る男、数年前に死んだ【
そいつが操る食人花の上位種と思われる巨大花で私達は窮地へと押しやられてしまいました。
そんな窮地を救ったのがハセヲさんでした。
ハセヲさんのスキルかなんなのかは分かりませんが、私達には見えない何かで巨大花を一刀両断。
大量の食人花を赤い閃光で消滅させてしまったのです。
勝利はまさに目の前にある。
だけど、胸の奥底に感じるわだかまりが私を不安にさせる。
ハセヲさんをあのままにしてはならないと私は直感だけどそう思った。
そう思った時には、私はハセヲさんの下へと走り出していた。
今のハセヲさんは笑っている。
でも、あの笑みはダメ。
私やティオナさん、ヘスティア様と一緒にいた時の優しい笑顔に戻ってください。
そのままじゃ、貴方は戻れなくなってしまう。
「だ、ダメえええええええええっ!!」
私はハセヲさんの背中に抱きついた。
その瞬間、体全体に悪寒が走った。
少しでも気を抜いたら倒れてしまいそうになる。
そして、私は見てしまった。
オリヴァスがハセヲさんを『化け物』と称した理由を理解してしまった。
ハセヲさんの姿が黒い悪魔のような異形な姿へと変わっていた。
いや、変わったというよりハセヲさんの姿と異形な姿が重ねて見えるのだ。
ハセヲさんはこの異形な存在の力で巨大花や食人花を倒していたのだ。
ベートさんの時も同じなんだと思う。
ダメ。
ハセヲさんにこれ以上この力を使わせてはいけない。
今のハセヲさんはこの力に呑み込まれかけてる。
だから私はハセヲさんに必死になって声をかける。
「ハセヲさん!もう十分です!だから、その力はもう必要ありません!」
「・・・・・・」
「ガアアアアアアッ!?」
ミシミシと嫌な音が聞こえてくる。
多分ですが、
「ハセヲさん!私の声が聞こえてますか!止めてください!そんな笑みで殺してしまったらヘスティア様が悲しみます!」
「・・・ヘス、ティア?」
ヘスティア様の名前に反応して私の方を見てくれるハセヲさん。
しかし、ハセヲさんと異形の存在の顔が重なって見える私にとって恐怖が倍増してしまう。
怖い・・・。
でも、ここで逃げたら私は絶対に後悔する!
「そうです!今のヘスティア様が見たらなんて言うと思いますか?考えてみて下さい!」
「・・・・・・」
私は真っ直ぐハセヲさんの顔を見てそう言った。
すると、少しずつ異形の存在の姿が薄まっていく。
それと同じくして、ハセヲさんが纏っていた赤い紋様が消えていった。
「ぐっ・・・」
「ハセヲさん!?」
全身の力が抜けてしまったのか膝を地面に付いてしまうハセヲさん。
その時に
「レフィーヤ・・・?」
「はい!大丈夫ですか、ハセヲさん?」
「ああ・・・。この力をコントロールするのはまだ無理だったようだ。途中からの記憶があやふやだ・・・」
片手で頭を押さえるハセヲさんがそう言っていた。
彼にとっても、あの力はちゃんと理解していないで使ってしまったようです。
危険な状態だったとはいえ、なんて無茶を・・・。
「・・・格下。てめえはもう寝てろ。後の始末は俺がしてやる」
「ベートさん・・・」
ベートさんが這いずりながら逃げようとする
これで戦闘が終わる、そう思った時だった。
大きな音を上げながら壁が吹き飛んだのです。
全員がそっちに視線を向けると、壁が吹き飛んで落ちてくる瓦礫と共に見えたのは赤髪の女性。
彼女は少し前に18階層で
でも、そんな事を考えるよりも赤髪の女性が出てきた穴から人影が見える。
その人影は私達にこれ以上ないほどの安心感を与えてくれる存在でした。
「アイズさん!!」
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの凱旋です。
如何でしたでしょうか?
スケィスさん登場です。
レフィーヤもなんかヒロインっぽい感じになってます。
そして、アイズ登場。
どうなるでしょうか、、、
私にも分かりません!
ではまた次回!