ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
もう少しでこの回は終わりになりそうです。
楽しんで読んで頂けたら幸いです!
第30話~選択と反撃の狼煙~
「主役は遅れて登場って感じだな」
俺、ハセヲは、スキル【死の恐怖】を使ったせいか身体が凄く重く感じている。
今みたいに軽い口調でいられるのは、アイズの無事な姿を確認できたからであろう。
そして、先ほどまでアイズと戦っていたのであろう赤髪の女。
奴が何者なのかは分からないが敵であることは間違いないと思う。
「助っ人っでやってきたがその必要はなさそうじゃないか?」
「ハセヲさんは喋るより回復を優先して下さい。回復薬です」
そう言ってレフィーヤからポーションを手渡しされる。
そういえば、レフィーヤにはまだお礼を言っていなかったな。
「レフィーヤ。さっきはありがとな」
「へっ?あ、い、いえ!私は別に大したことはしてませんよ!」
何のお礼なのか理解してなかったのか呆けた顔していたが、理解できたレフィーヤは慌てた表情をしながら話し出していた。
表情がコロコロ変わって面白い奴だ。
どことなくベルに似ているかもしれない。
「・・・ふう。ところでレフィーヤ。あの赤髪の女は何者だ?なんか知っているような反応していたようだが?」
「はい・・・。最近、リヴィラの町で殺人事件があったのですが、その犯人が彼女で、その時に食人花を操っていたんです。個人の戦闘力もアイズさんより上でフィン団長らと遜色ないレベルです。今回の騒動に彼女が関わっていると思ってはいたのですが・・・」
なるほど。
アイズを倒せるレベルの相手がいるかもしれないから、その助っ人としてこのパーティーが組まれた訳か。
よくよく考えれば考える程危険な依頼じゃねえか。
マジ、ステイタスを聞かれないくらいじゃ割に合わないぞ?
まあ、その事は後でいい。
そのアイズを倒せるレベルの女が、アイズに押されている訳だ。
もうお役御免って感じかもしれない。
「れ、『レヴィス』・・・!た、助けてくれ・・・!?」
「・・・お前が私に助けを乞う程に追い詰められているとはな。いったい誰にやられた?」
「あ、あの黒衣で銀髪のガキだ。だが、あれは人間の皮を被った化け物だ!?」
「ほう・・・」
赤髪の女『レヴィス』が俺の方を見て意外そうな顔をしている。
あの野郎・・・。
変な事を教えやがって・・・。
「レフィーヤ。厄介そうな女に目を付けられた気がするんだが気のせいだろうか?」
「あー・・・。どんまいです」
そこは嘘でも否定しろよ!
「あの化け物だけでなく、【剣姫】もいる状態では我々に勝ち目はない!だからここは退却を―――」
「もういい」
オリヴァスが逃げようと説得している最中に、レヴィスがオリヴァスの胸元に手を突っ込んでいた。
あいつ、一体どういうつもりなんだ?
「な、なにを・・・」
「貴様みたいな臆病者はもういらん。足手纏いだ」
「お、お前はあれを見てないから、そんな事を言えるのだ!あれを―――」
「くだらん」
レヴィスが胸元から手を抜くとオリヴァスは灰となって消えていく。
あれは魔石を抜き取ったモンスターと同じ現象だ。
ということはあいつが手に持っているのは魔石なのか?
「敵が何であろうと私のやることは変わらない」
レヴィスが魔石であろうものを口にした。
なんかとても嫌な予感がする。
「まずは【剣姫】。お前からだ」
「っ!?」
「くそがっ!!」
レヴィスの姿が一瞬で消えたと思ったらいつの間にかアイズの下へと接近しており、二人の戦闘が始まってしまう。
しかも、アイズが押されている状態を見てベートが援護の為にその場から走り出している。
「えっと、あの・・・」
「行ってこい、レフィーヤ。俺はもう少し休んでから向かうから」
アイズの下に行きたいだろうレフィーヤにそう言ってやると少し悩んだが、頷いてフィルヴィスと一緒にアイズとレヴィスが行ってしまった方へと向かっていった。
「ふう・・・」
俺は一度落ち着いて現状の把握に掛かる事にした。
周りを見渡せば、二つのグループに分かれている。
一つはアイズ、ベート、レフィーヤ、フィルヴィスのレヴィス討伐グループ。
二つ目は、リーダーか団長であろうアスフィが率いる冒険者グループ。
今は何かを回収しようとしているな。
そこで俺は、アスフィの頭上に誰かいることに気づいた。
「アスフィ!上だ!!」
「っ!?」
「なっ!?まだ、仲間がいたのか!?」
俺の声が聞こえたようでアスフィは横に飛ぶことで突如現れた全身黒いローブを着た男か女かも判らない奴の不意打ちを避ける。
俺を含めアスフィ達は新手の出現に動揺を顕わにしてしまう。
その最中に、そいつが一直線にアスフィ達が回収しようとした物を手にしてしまう。
「完全ではないが十分に育った!『エリュオ』に持って行け!」
「『ワカッタ』」
「ルルネ!止めなさい!」
新手はやっぱりレヴィスの仲間だったようで何か丸いガラス玉みたいなのを持ってその場から離れていく。
アスフィがルルネに追いかけるように指示するが、レヴィスがさらにとんでもないことをしでかす。
「巨大花!!生み続けろ!枯れ果てるまで力を絞りつくせ!!」
そうレヴィスが言った瞬間だった。
大きな鼓動が聞こえた同時に天井から何かが降ってきた。
「・・・未成熟の食人花?」
まるで生まれたての小鹿のように震えている食人花。
しかし、これは始まりの序章に過ぎなかった。
ぼとぼと、ぼとぼとと。
食人花が次から次へと、まるで雨のように降り落ちてくる。
そして、辺りを見渡せば食人花一色に染まっていった。
この光景が夢に出てきそうで怖くなるな。
「来るぞ!」
「ムリムリムリムリだって!?」
「離れるなぁ!潰されるぞ!!」
大量の食人花が一斉に襲いかかって来る。
それは当然、俺の方にもやって来る。
これは体が重いだのなんだの言ってられないな。
俺は身体に鞭を打って食人花を倒していく。
「うおおおおおおおっ!!」
倒しても倒しても次々と出てきやがる。
このままじゃヤバい。
どうする・・・?
【死の恐怖】を使うか?
いや、今の状態で使えば暴走しかねない。
なら、あれを使うしかない。
だが、あれを使うには条件を満たさなければ・・・。
みんなはどこにいる?
「っ!今の魔法か?」
誰かは分からないが今見えた魔法の場所へ向かおう。
「いた!」
進んだ先にはアイズ、ベート以外の奴らだった。
魔法詠唱をするレフィーヤを中心にして、円を描く様にフィルヴィスを含めた冒険者達が食人花と戦っている。
恐らく、レフィーヤの魔法で食人花を一掃する為の作戦なのだろう。
って、冷静に状況分析している場合じゃない。
一人の冒険者が食人花に食べられそうになってやがるじゃねえか!
「【
本日二回目の大鎌最大アーツを繰り出して冒険者を助け出すことに成功する。
「はあ、はあ・・・無事か?」
「お、おう。すまない。助かった」
今ので俺の魔力がかなり削ってしまった。
後、一回でも【
「っ!!引き続きここを頼むぞ!」
俺はその冒険者の返事も聞かずにその場を離れる。
なぜならば、他にも食人花にやられそうな2人のガキがいるからだ。
「せいっ!」
「くっ!?」
「きゃっ!?」
どうにか間に合った俺は迫りくる食人花を次々と倒していく。
そして俺はアイテムボックスから回復薬を取り出して2人のガキに渡した。
「さっさと飲んで復帰しろ!」
「わ、分かってるつーの!」
代わってやろうとも思ったが、俺にはまだ確認しなければならないことがある。
持ち場を戻し、俺はすぐにアスフィの下へと向かった。
「アスフィ!現状を簡単に説明!!」
「っ!私達は食人花を一掃する為に
「お前らだけで可能か?」
「それは―――」
アスフィが話そうとした瞬間だった。
「食料庫外から食人花の援軍!!」
「!?」
「マジかよ・・・」
あのレヴィスが呼び寄せたのかは分からないが状況がさらに絶望的になった。
俺のさっきの質問もいい返事は来ないだろうと確信出来る。
「後方から大量に来るぞ!!」
「まだかよ、レフィーヤ!?」
極大な魔法はその威力に比例するほど時間がかかる。
アスフィが言った通りで完成までまだ時間がかかりそうだ。
それなのに食人花の援軍でレフィーヤを守り切るのはほぼ不可能に近い。
ここで俺は二つの選択肢を求められる。
俺の発展アビリティ【覚醒】には、二つの能力が発動出来る。
【武獣覚醒】と【魔道覚醒】。
効果はゲームとは違うが、今の状況をひっくり返す事が出来る可能性がある。
一応、両方の効果を事前に試したが、
【武獣覚醒】は魔力以外のステイタスを極大向上。
【魔道覚醒】は魔法を魔力消費なしで連発可能。
魔法の連発が可能ならそっちの方が良いじゃないかと思うかもしれないが、これにはゲームにはなかった仕様が存在していた。
それは、連発可能なのは覚醒中に詠唱が完成されたものに限る、だった。
さらに詠唱スピードは普段の戦闘時と変わらないものだった。
この世界ではそう都合の良いようにさせてもらえないらしい。
他にも覚醒時はモンスターの動きを止める仕様もあるはずだがそれもない。
ただでさえ、覚醒の効果は常軌を逸しているのだ。
多少のデメリットくらい仕方ないだろうと、その時は思った。
それが今になって後悔することになるとは思いもしなかったよ。
恐らくレフィーヤの詠唱が完成すれば食人花はそれで全滅する。
ならば【覚醒】で使うのは【武獣覚醒】しかない。
冒険者達のステイタスを上げてレフィーヤを食人花から守り切らせるんだ。
「アスフィ!ルルネ以外の冒険者に俺へ名前を教えるように指示しろ!」
「なっ!?それに何の意味が!?」
「いいから早く!」
アスフィに有無を言わせず、急がせる。
この【覚醒】には、ゲームと違う仕様の発動条件があるのだ。
ゲームではパーティーを組んでいる事、使用者のテンションゲージがある程度溜まっていないと発動出来ない。
この世界ではテンションゲージの仕様はなくなっており、【覚醒】を使いたい時に使える。
だが、パーティーを組んでいない限り使えないのは変わっていない。
問題はそこだった。
レフィーヤを守る冒険者達。
その冒険者達が俺とパーティーを組んでいない限り、その効果を得ることが出来ない。
なら、組んでやれと思うだろうが、ただあいつは俺のパーティーだと思うだけで【覚醒】の効果を得られる訳ではないのだ。
俺がパーティーを組んだ奴の名前を知って初めて本当のパーティーだと認められる。
だから、俺はアスフィとルルネの名前を急に聞いていたりしていたのだ。
今、俺の【覚醒】の効果を得られるはこの中でも半分に満たない状態となっている。
このことを説明している時間はない。
それはアスフィにも分かっている筈だ。
「っ!団長命令です!銀髪の冒険者ハセヲに名前だけで良いから自己紹介しなさい!」
「ホセだ!さっきは助けてくれてありがとよ!」
「ポックだ!なんとかできるならなんとかしてみろよ!」
「ポットよ!何もなかったら恨んであげる!」
いち早く反応してくれたのは俺が助けた3人だった。
それに続いてどんどん自己紹介が続く。
「メ、メリル、です!ポックとポットを助けてくれてありがとうございます・・・!」
「エリリーよ!」
「セインだ!」
「ドドン・・・」
「ファルガーだ。ホセを助けてくれてすまない!」
「ゴルメス!」
「ネリーです!」
「タバサよ!」
「スィーシア・・・」
「ルルネ!さっきしたけど一応!」
メリル、エリリー、セイン、ドドン、ファルガー、ゴルメス、ネリー、タバサ、スィーシア、だな。
よし、覚えた!
「みんな!少し違和感あるかもだが気にせず戦え!行くぞ!【武獣覚醒】!!」
俺は【武獣覚醒】を発動させ、反撃の狼煙を上げた。
ハセヲ達が食人花の大群と戦っているとき、アイズとベートは魔石を取り込んで強化されたレヴィスと戦っていた。
「邪魔だ!狼人!」
「ぐっ!?」
アイズに落とされた剣を拾いに行かせる為の時間稼ぎとして、ベートが独りでレヴィスと戦っている。
しかし、ベートはレヴィスに少しずつ押され始めている。
レベル6となったアイズが苦戦するレヴィスにレベル5のベートが勝てるはずがないのは明白ではあった。
だが、ベートは少しでも時間稼ぎをする為に奮闘している。
「はあああああっ!!」
レヴィスの猛攻がベートに襲い掛かる。
焦るベートだが、そんな時にあることに気づいた。
身体が軽い、と。
「ふん!」
「がっ!?」
「おらおらおらおら!!」
ベートはレヴィスの一発目の攻撃をカウンターで合わせた後、レヴィスが怯んだ間に目にも止まらぬ速さで攻撃を打ち込んでいた。
「狼人の動きがいきなりよくなった・・・。一体どうなっている?」
「・・・ちっ。この
ベートが横目で何かしらを行っているハセヲの姿を捉えた。
ハセヲの【武獣覚醒】の効果がベートにも発動されたのだ。
これでレヴィスと対抗以上に戦える。
「
そう呟きながらもベートはレヴィスに向かって戦いに挑んでいった。
ハセヲの【武獣覚醒】の効果でステイタスを極大強化されたアスフィ達は襲い掛かってくる食人花の大群を次々と倒している。
「これは想像以上ですね。これなら・・・」
これなら魔法の発動までレフィーヤを守り切ることが出来る。
そうアスフィが思っていた時だった。
「ぐっ・・・」
「えっ!?」
誰かの呻き声が聞こえ、アスフィが視線を向けると一人が膝をついていた。
それはまさかのハセヲだった。