ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
第34話~帰還への道標~
「よし。着いたな」
俺、ハセヲは18階層に来ていた。
何故ならば、昨日アスフィから聞いた新種生物ことチムチムを探し出す為だ。
チムチムはこの世界の生き物ではない。
捕まえれば何かしらの手掛かりを得られる筈だ。
「でもどうやって探す?ゲームだと木や破壊可能なオブジェクトの中に潜んでいるだが・・・」
木の下から覗き込んでもチムチムの姿は見られない。
試しに蹴ってみるか。
「ふん!」
蹴ったら『ばきっ!』と音が鳴り、見れば俺の足が木に減り込んでいた。
やばい、加減を間違えた。
再度チャレンジして木を揺らすもチムチムは落ちてこない。
他の木でも同じようにチャレンジを繰り返したがチムチムは一度も落ちては来なかった。
ゲームだと腐るほど出てくるくせに・・・。
加減の問題だろうか?
弱すぎて落ちてこないのかもしれない。
でも強すぎると、さっきみたいに足が減り込むんじゃなくて木を圧し折っちまう可能性がある。
どうせ圧し折っちまうなら大鎌で片っ端から木を薙ぎ倒していくか?
いや、それはさすがにダメか・・・。
『ぎゃああああああっ!?』
「悲鳴?それに爆発音も聞こえた・・・あっちか!」
俺は悲鳴と爆発音が聞こえた方へと走った。
しばらくして倒れている数人の冒険者がいた。
ふらふらと立ち上がろうとしている男がいたのでそいつに事情を聴いてみよう。
「おい!大丈夫か!」
「ぐっ・・・ああ、見た目よりはダメージはねえ。って、少し前に【
「そういうあんたは確かボールスだったな?何があった?全身黒焦げだぞ?」
ぷすぷすと白い煙を上げ、身体全身黒焦げで焦げ臭い。
倒れたままだったら死体と勘違いしていたかもしれないな。
「奇妙なモンスター達に爆弾を投げられてこうなったんだ」
「『奇妙なモンスター』?」
「ああ。最近、部下たちから見た事の無いモンスターがこの18階層にいると報告されたんだ。部下たちに捕獲なり退治なりしろと命令したが成果はなく、返討ちされる始末。だから俺様直々にやってやろうとしたんだがこの有り様だ」
溜息を吐くボールスは確かレベル3だったな。
レベル3でも退治できないモンスターが18階層にいるのか。
「その奇妙なモンスターはどんな姿なんだ?」
「俺が報告を受けたのは全身紫色をしたちっさいモンスターだ。だが、そいつはただ逃げるだけで特に何もしない。俺たちに爆弾を投げたのはそいつらの亜種みてえなので全身赤色で服を着て背中には東洋武器『手裏剣』を背負ってたな」
チムチムの亜種、見たことがあるな・・・。
確か・・・名前なんだったっけ・・・?
「しかもアサシンみたいに動きが早く、背後に回られたと思えば尻を思いっきり蹴ってくんだ。その蹴りに耐え切れず倒れた俺らに止めとばかりに爆弾を投げてきたんだ」
「アサシン・・・」
あっ、思い出した。
『チムアサシン』だ。
チム玉を持ちすぎると現れる奴で蹴られるとチム玉を落としてしまう面倒な奴ら。
ゲームの仕様とは違い普通に現れるみたいだな。
「そいつらがどこに行ったか分かるか?」
「あ、ああ。あっちの方に行ったぞ」
「そうか。ありがとな」
俺は人数分の回復薬をボールスに渡して教えてもらった方向へと向かう。
「・・・っ!見つけた!」
「チムッ!?」
チムアサシンではなく、普通のチムチムを発見した。
俺の知っているチムチムで間違いない。
なんでいるのかとか考えるのは後だ。
捕まえて手掛かりを見つけるんだ!
「っ!?おっと!」
「チッ、ム」
背後から殺気を感じたので横に飛ぶと俺が元居た場所に赤い物体が通り過ぎる。
チムアサシンだ。
油断も隙もねえ。
いつの間に俺の背後にいたんだよ。
「しかも、5体。囲まれたか・・・」
チムアサシンが俺を囲んで逃げられないようにしてやがる。
このままじゃあ、ボールスみたいに袋叩きにされてしまう。
「チム!」
「チムチムー!!」
俺の目の前にいるリーダーらしき奴が号令をかけると一斉に俺に襲い掛かってきた。
これは絶体絶命・・・てなるか!!
「舐めんじゃねえ!」
「ヂムッ!?」
俺は正面から来たチムアサシンを足の裏で蹴り返す。
そして、そのまま正面突破した俺は振り返って残りのチムアサシンへと向かった。
「おらおらおらおらっ!!」
残り4体のチムアサシンを蹴り上げると煙となって消えた。
最初に蹴ったチムアサシンを見ているといたので、恐らく分身の術かなんかなのだろう。
ゲームにはない仕様だけどな・・・。
「今更だが、こいつを捕獲しても喋れねえじゃん・・・」
さっきもチムとかしか言葉を発してなかったし・・・。
「この容赦がない蹴り・・・お主がハセヲ殿であるチムね?」
「・・・は?」
「吾輩はお主を待っていたチム」
チムアサシンが喋った!?
は?なんで、どうして?
何かのバクか?
いやここゲームじゃねえし、バグとか関係ねえし・・・。
・・・とりあえず、落ち着け俺。
俺の事を待っていたって事はこれはもしかしなくても手掛かりだ。
落ち着いて、チムアサシンと会話をするんだ。
「『待っていた』というのはどういう意味だ?お前たちはただのチムチムじゃねえんだろ?」
「言葉通りであるチム。吾輩たちはハセヲ殿を待っていたでチム。ハセヲ殿を元の世界に帰す為の使いとして生み出されたチムチムでチム」
「生み出された?誰に?」
「それは言えないでチム。付いてくるでチム」
そう言うとチムアサシンが歩き出す。
俺は警戒しながら後を付いていった。
少しして森の奥までやってきた。
そして森が開けた場所に到着するとそこにあった物に俺は驚いた。
「これは・・・『カオスゲート』!?」
ゲームではどこにでもある転送装置『カオスゲート』が今俺の目の前にある。
俺は一目散にカオスゲートへと向かい、この手で触れるがある事にすぐ気づいた。
「稼働していない・・・」
「そうでチム。吾輩達の生みの親の力では稼働した状態のカオスゲートを用意する事は出来なかったでチム。稼働していないカオスゲートとそれを守る吾輩達を生み出すので精一杯だったでチム」
なるほどな。
少し残念ではあったが当初よりも良い成果に俺は感動している。
だって、帰る為の手段を見つけることができたのだからな。
「稼働する為にはどうしたら良いんだ?」
「条件はとある四つのアイテムをこの稼働装置に入れるでチム。一つは『ウイルスコアα』x50。二つは『ウイルスコアβ』x50。最後に三つは『ウイルスコアγ』x1、だチム」
「・・・『ウイルスコア』ってなんだ?」
「ハセヲ殿のアイテムボックスにその一つが大量に入っている筈でチム」
既に持っている?
しかも大量に?
俺はアイテムボックスを確認してみると確かにあった。
『ウイルスコアβ』x77。
しかも目標個数以上の数だ。
一体いつこんなにゲットしたんだ?
「『ウイルスコア』取得の条件はただ一つでチム。モンスターに『データドレイン』をぶつけるでチム」
「データドレイン・・・そうか!これは食人花から手に入れたものだったのか」
「そうだチム。この『ウイルスコア』はモンスターの種類で『ウイルスコア』の種類も変わるでチム。『ウイルスコアα』は上層・中層。『ウイルスコアβ』は上層。そして『ウイルスコアγ』は・・・」
何故か言い淀んでいるチムアサシン。
不思議に思っていると意を決したのかチムアサシンが喋りだした。
「吾輩達をこの異世界に送り込んだ際に紛れ込んだ『異物』でチム」
「ま、紛れ込んだ『異物』?」
「そうでチム。そいつを倒せるのはこの世界にはデータドレインを使えるハセヲ殿しかいないでチム」
ま、マジかよ・・・。
俺が帰る為にはその異物を探し出して『異物』をデータドレインで駆除しなければいけないって訳か・・・。
「でも、その異物はどこにいるんだ?この世界を手当たり次第に探し出すなんて不可能だぞ?」
「そこは安心するでチム。吾輩達の生み出しの親の力で18階層より上にはいけないようにプロテクトを張っているでチム。そして、吾輩にはその異物の場所が分かるようにプログラムされているチム」
「・・・その異物は今どこにいるんだ?」
「少し前までは色んな場所を回っていたでチムが、最近はある場所にずっといるでチム。その場所は、59階層でチム」
・・・なんともまあ出来すぎた流れな気もするが、これはもう色々と覚悟を決めるしかねえな。
「当分はその場所から動くことはないと思うでチム。だけど、出来る限り急いだ方が良いと思うでチム」
「分かった。今あるウイルスコアをお前に預けることは出来るか?」
「可能でチム。余ったウイルスコアは分解して『β』から『α』に変えることも出来るチム」
「じゃあ頼む」
俺はアイテムボックスからウイルスコアβを取り出す。
緑に輝くウイルスコアβをチムアサシンの前に差し出すと、チムアサシンは口を開いてウイルスコアβを食べる。
・・・見たくない光景を見てしまった。
モゴモゴと口を動かしているとペッと何かを吐き出した。
「それが『ウイルスコアα』でチム」
「汚ねえよ!!」
もっとマシな渡し方はなかったのか?
俺は気を取り直して赤く輝くウイルスコアαを拾う。
これを後、23個集めないといけない訳だ。
「では健闘を祈るでチム!さらばでチム!」
そう言ってチムアサシンは煙玉を使って姿を消した。
目の前にはカオスゲートがあるが、今の状態ではただのオブジェクトに過ぎない。
放っておいても問題ないだろう。
「さて、と。色々と面倒な事になりそうだ・・・」
俺はそう呟くと踵を返してその場を去るのであった。
「ふんふんふーん!」
ボク、ヘスティアは久しぶりの休暇を満喫している最中だ。
ハセヲ君に叩き込まれた掃除テクニックを披露している。
こんなボクの姿をほんの少し前のボクが見たらとても驚いてしまうだろうさ。
ハセヲ君が眷属になってもうすぐ二ヶ月で、ベル君が眷属になって一ヶ月半になるのか・・・。
2人とも性格は正反対なのに神様であるボクをびっくりさせて飽きさせない素晴らしい子供たちだ。
揃って浮気癖があるのは頂けないけど、それはそれで二人にはとても魅力があるって事だから誇らしく思うべきかもしれないね。
「二人とも早く帰って来ないかなー。三人で外食をしたいなー。借金はあるけど、たまにはそんな贅沢をしても罰は当たらないと思うんだよねー」
そんな事を呟きながら掃除をしていると足音が聞こえてきた。
ボクの最近の特技で足音でハセヲ君なのかベル君なのかを特定出来るんだ!
この足音はハセヲ君だな!
やけに早い御帰宅だけどボクの願いが通じたのかもしれない!
よーし!
ドアが開いたら抱きつくぞ!
避けられるか、アイアンクローされるかもしれないが、これもスキンシップさ!
ドアが開かれ、ハセヲ君であると念の為確認すると、ボクはハセヲ君に跳び付いた。
「ハセヲ君!おっかえりー!!」
「・・・・・・」
・・・あれ?
避けられなかったし、アイアンクローもされなかったぞ?
ボクは何事もなくハセヲ君に抱きつくことが出来た。
「・・・ヘスティア」
「ふわっ!?ど、どどど、どうしたんだい、ハセヲ君!?」
しかもハセヲ君が優しく抱き返してくれたじゃないか!?
いきなりの事でボクはかなり動揺しながらハセヲ君に問いかける。
「・・・俺、ロキの依頼を受ける事にした。ロキにもそう伝えてきた」
「っ!?」
ロキの依頼って・・・遠征に行くって事じゃないか・・・。
「な、なんでだい?ボクに相談もなく決めるなんて・・・」
「・・・59階層に必要なものがあるんだ」
「ひ、必要なものって?」
ボクは声を震わせながら聞かなくても分かっている答えを尋ねた。
「・・・帰る為の手段が分かったんだ」
予想通りの返事を聞いたボクは震える身体を必死に抑えながらハセヲ君を見る。
ハセヲ君はとても複雑そうな表情でボクを見ている。
ハセヲ君も辛いんだ、悲しんでくれるんだ。
喜ぼう。
ハセヲ君の念願があと少しで叶うんだから。
「お、おべでどう!はぜおぐん!ぎみがもどのぜがいにがえれるごどがわがってぼぐもうれじいよ!」
「ヘスティア・・・」
ダメだ、ちゃんと喋れないよ。
笑顔で喜びたいのに目から溢れ出す涙を止められない。
鼻水も出て顔が崩れている。
そんなボクを見て、ハセヲ君はさっきよりも強く抱き寄せて頭を撫でてくれる。
「ごめん・・・」
「・・・あ、謝らないでぐれ。ぞんなごどざれだらボクは、ぼぐは・・・・・・うわああああああああああああああああんっ!」
一言の謝罪でボクの心のタガが外れて、引き留めていた涙が溢れだした。
ン億年生きてきた神生の中でこんなに号泣したのは今日が初めてだった。
如何でしたでしょうか?
シリアスな雰囲気を書くのが苦手なのでちゃんとそうなっているか不安です。
この調子で早めに投稿出来るように頑張ります!