ダンジョンに死の恐怖がいるのは間違っているだろうか。(仮) 作:TE
後書きにあるお願いを書くので読んでいただけると幸いです。
第37話~託されたもの~
「ハセヲさんと試合・・・」
僕、ベル・クラネルはアイズさんとの特訓最終日に最後の締めとしてハセヲさんと試合を行う事になった。
ハセヲさんとはちゃんと戦った事は一度もない。
それらしきものなら一回だけある。
ハセヲさんがモンスターに扮して僕に襲い掛かってきたときだ。
その時は僕の完敗だった。
今、考えれば本当に同じレベル1なのだろうかと疑ってしまう程の差があった。
僕だって数人のレベル1の冒険者なら対応出来るステイタスを持っているのにも関わらずに・・・。
もしかしたら、僕には伝えられていないだけで既にハセヲさんはレベル2になっているのかもしれない。
そんなハセヲさんに今の僕がどれだけ通用するか試してみたい。
「覚悟はできたか?今日は久しぶりの双剣だから良い勝負が出来るかもだぜ?」
「ずるいな、ハセヲさん。それで僕の油断を誘おうなんて無駄だよ?」
「それは残念。でもそれが分かっただけでも試合をする価値があったな。前回は逃げることしか出来なかったもんな?」
ハセヲさんが僕を見下すように笑いながら話している。
これも挑発だって分かっているから笑って返すとハセヲさんも笑った。
お互いに小細工は不要だと理解できた。
「行きます!」
「来い!お前の全力を見せてみろ!」
先に動き出した僕は全速力で前へと走り出し、両手に握る武器を力強く握りしめた。
「うおおおおおおおっ!!」
【
しかし、ハセヲさんの片方の剣で僕の攻撃を受け止められてしまう。
結構力を込めたんだけど、それだけじゃ通らないか・・・。
「はあああああっ!!」
連撃!連撃!連撃!
僕は手数で攻めることに切り替える。
「おっ?武器だけじゃなく、蹴りも攻撃に組み入れて回転数を上げたか」
それでもハセヲさんは冷静に僕の攻撃を分析しながら捌く。
分かってはいたけど、僕とハセヲさんの実力差はかなり開いている。
だからってこのままで終わるわけにはいかない。
「ふっ!はっ!せいっ!」
「お、っと!単調な攻撃だけでなく、フェイントも入れてきたか。今のは喰らいそうになったぞ!」
「うわっ!?」
僕の攻撃を力技で僕ごと弾き飛ばしてくるハセヲさん。
こんなのをされたんじゃあ中途半端なフェイントは意味がない。
「ならばっ!」
「おっ!中々の速さだな」
ハセヲさんを中心にして僕は縦横無尽に駆け回る。
でもハセヲさんは僕の動きが見えているようで付け入る隙が全く見当たらない。
「どうした?早く仕掛けてこいよ」
「くっ・・・」
「来ねえなら・・・こっちから行くぜ!!」
僕の視線からハセヲさんが消えた。
「後ろだ」
「がはっ!?」
声をかけられてようやくハセヲさんが僕の背後に回られた事に気づき、その直後僕は背中に強い衝撃を受けて吹き飛ばされる。
あの感じは双剣ではなく、蹴りを受けたようだ。
レベル1とはいえ俊敏では多少の有利があると思っていたのに・・・。
「まだまだ行くぞ!」
「くっ・・・」
攻守が入れ替わり、ハセヲさんが僕を攻め立てる。
ギリギリのところで攻撃を防ぐがこのままじゃやられてしまう。
「どうした、どうした!アイズから教わったのはただその場しのぎの技術だけか!」
「っ!」
そうだ。
アイズさんとの訓練で身に付けたことを思い出せ!
僕は徐々にハセヲさんの攻撃を受けるのでは、受け流すようにしていく。
「ここ、だっ!!」
「っ!?」
ハセヲさんの攻撃を受け流して前へと踏み出し、そのまま攻撃へと転じる。
その攻撃は頬を掠めただけだけど、ハセヲさんから一撃を与えることが出来た。
「・・・やるじゃねえか。まだ不安要素はあるが、これならヘスティアを任せられる」
「え?それってどういう・・・?」
「おっと、その話は後だ。・・・決着をつけるぞ」
「っ!?」
僕は背筋が凍るような感覚に襲われ、ハセヲさんとの距離を離した。
ハセヲさんの雰囲気が変わった・・・。
一番初めにアイズさんと立ち会った時と一緒だ。
ハセヲさんは僕に殺気をぶつけている。
でも、アイズさんの時とはまた違う殺気のようにも思える。
これは・・・。
「・・・か、体が震えてる?」
ハセヲさんの構えがいつも以上に重心を前にして、いつでも襲い掛かれるようにしている。
その恰好はまるで獣で・・・。
「そうだ・・・。ミノタウロスだ・・・」
僕が初めて恐怖したモンスター。
その圧倒的な死の恐怖が僕の身体に染みついているんだ。
ハセヲさんの殺気はそれに似ている。
「・・・・・・う、うわああああああっ!!」
僕は情けない声を上げながら走り出していた。
限界だった。
ハセヲさんの殺気を耐え続けることが出来なかった僕は一秒でも早く消し去りたくて攻撃を仕掛ける。
「歯食いしばれ!」
そんなハセヲさんの声と同時に僕の左頬に衝撃が走る。
僕はハセヲさんに平手打ちをされていた。
その瞬間、僕の頭の中が真っ白になり、頬の痛みが妙に感じる状態になっていた。
次に認識したのは目の前にいるハセヲさんの顔。
その顔は僕が今まで見たことがない凄く悲しそうな表情で、僕の心がギュッと締め付けられるのを感じた。
何故ハセヲさんがそんな表情になっているのか分からないけど、その原因が僕であることはすぐに分かった。
それがとても情けなくて辛かった。
その感情が僕の頭の中を駆け巡る。
少し前に神様とハセヲさんの事で話したことを思い出す。
あれから結局ハセヲさんの事情は聞けていない。
それは僕がハセヲさんに認められていないと同じことだ。
さっき、神様を任せられると、もう少しで僕の事を認めてくれたのに・・・。
僕は一体なにをやっているんだ!
このままじゃ終われない。
ハセヲさんに認められる男に僕はなるんだ!!
「良い目になったな・・・。さっきみたいな無様をもう二度と晒すんじゃねえぞ?」
「はい!」
「・・・行くぞ」
僕の返事を聞いた後、ハセヲさんは再び殺気をぶつけてきた。
とても恐い。
でも、僕はさっきみたいに身体が動かなくなることはなかった。
「うおおおおおおおっ!!」
「はあああああああっ!!」
今日一番の僕とハセヲさんの激しい攻防が始まった。
攻撃をすれば受け流し反撃し、その反撃をさらに受け流す。
お互い一歩も引かずに、少しでも選択を間違えればやられる斬りあいを続けていく。
恐い・・・でも、行くんだ!
僕は右方向からくる攻撃を受け流す為に構える。
すると、その攻撃が寸前で止まった。
これは、フェイント!?
それを認識したと同時に逆方向から殺気を感じたのでしゃがんだのだが、来るはずの攻撃が来ていない。
「かかったな?」
「ぐっ!?」
やられた。
ハセヲさんは左右からの二重フェイントからしゃがんだ僕を蹴り上げる。
蹴り上げられて僕の視界が空一面となっていたが、すぐに黒い影が現れた。
ハセヲさんである。
双剣を振り上げているから蹴り上げた僕を地面に叩きつける気だと瞬時に理解した僕は武器をクロスさせて防御態勢をとった。
「せいっ!」
ガキンッと武器がぶつかり合う音に攻撃の衝撃が走る。
その衝撃を受け流すことなど出来る訳がなく、僕は地面へと叩きつけられた。
「かはっ!?」
肺に残っていた空気が吐き出され、背中に叩きつけられた痛みが僕を襲う。
追撃が来る!速く立て!
そう分かってはいるものの僕の身体は言うことを効かない。
どうにか視線だけはハセヲさんから放していなかったのだが、ハセヲさんは追撃の為に落下しながら僕の方へと向かっていた。
そして―――。
「チェックメイト、だな」
ハセヲさんの双剣が僕の顔の隣に突き刺してそう言った。
分かってはいたけど、やっぱりハセヲさんには勝てなかった。
・・・分かっていた筈なのに、悔しい。
「立てるか?」
「は、はい・・・」
差し伸べるハセヲさんの手を掴んで僕は立ち上がった。
ポーションを受け取って回復するとハセヲさんが話し出した。
「強くなった。でも俺を倒すにはまだまだだ」
「はい。でも、次は勝ちますよ」
「・・・へっ。言うようになったじゃねえか」
ハセヲさんが僕の頭を撫でてくれる。
おじいちゃんのような大きな手じゃないけど、とても温かくて気持ちが弾んでしまう。
「ベル。お前には三つ伝えなければいけない事がある。よく聞けよ」
伝えなければいけない事?
一体なんだろうか?
「まず一つ。俺はアイズがいるロキ・ファミリアと遠征に行く」
「ええっ!?そうなんですか、アイズさん!?」
「うん。戦闘員兼サポーターとして」
「俺はサポーターとしてとしか聞いてないが・・・」
ジト目でアイズさんを睨みつけるハセヲさん。
アイズさんはそんなハセヲさんの様子に首を傾げている。
可愛い、じゃなくって!
「ど、どうしてそんな事になったんですか?」
「色々あってな。最後に説明するから落ち着け。ちなみにちゃんとヘスティアにも報告してあるし、許可ももらっている」
神様が許可しているならいいのかな?
少し前に元気がなかったのはそれが原因だったのかもしれない。
今ではすっかり元気になったけど。
「二つ。今日からヘスティア・ファミリアの団長をベルに任命する」
「おおー。おめでとう」
「へ?あ、ありがとうございます・・・。って、はいい!?」
「もちろん、これもヘスティアに許可をもらってある。ギルドにも申請済みだ」
ぼ、僕がファミリアの団長!?
「ど、どどどどういうことですか!?」
「落ち着け。それは最後の伝えたい事に含まれてるから黙って聞け」
落ち着けって言われても無理ですよ!?
冒険者になってもうすぐ一ヶ月の僕がファミリアの団長なんて・・・。
でもハセヲさんも冒険者になって僕と半月しか違わないんだよね。
人数も二人しかいないから団長となったとしてもやることは特にないので問題ないといえばないのかもだけど・・・。
「最後の三つ目。俺は遠征から戻ったら・・・オラリオから出ていく」
「・・・え?」
一瞬世界が止まった。
そんな錯覚を感じるくらいに僕は衝撃を受けた。
そして、僕は頭の中でハセヲさんがなんて言ったかを思いだす。
ハセヲさんが遠征から戻ったらオラリオから出ていく。
「ど、どうしてですか?」
「俺は元々国に帰る方法を探すためにオラリオに来た。その手段が見つかって、その手段に必要な物を遠征で手に入れてくる」
「そ、そうだったんですか・・・。く、国に帰るのはいつですか?」
「俺が遠征から帰ってすぐだ」
「そ、そんな・・・」
急すぎる。
そんな大切な事をこんな直前になって・・・。
「最初、お前をファミリアに勧誘したのは、俺が帰っても大丈夫なようにする為の人数合わせだった。最低限一人で戦えるようにお前の面倒を見てやった」
僕をファミリアに勧誘してくれたのはそういう理由があったんだ。
それでも不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「俺の無茶苦茶な特訓にも文句ひとつ言わず必死になって付いてきてくれた。一緒に日々を過ごしてお前の純粋な心を見て、俺も少しずつ変わってきた。今ではお前は俺のかけがえのない存在。俺の大事な弟だ」
「ハセヲさん・・・」
嫌な気持ちにならない理由が分かった。
きっかけはどうあれ、僕を大事に想い、育ててくれた今日までの日々は嘘じゃない。
オラリオに来て、ハセヲさんや神様のいるファミリアに入って僕は幸せな日々を送れたんだ。
嫌な気持ちになる訳がない。
「俺は国でやらなければいけない事がある。それを終わらせたらちゃんと帰ってくるから、その間ヘスティアとファミリアを頼む」
「・・・任せてください!神様もファミリアも僕が全力で守ります!だから安心して国に帰ってください!『兄さん』!」
「に、兄さん?」
ハセヲさん、いや、兄さんは僕の呼び方が急に変わった事に戸惑っているようだ。
ハセヲさんが僕の事を弟のように思っているように、僕はハセヲさんの事を兄のように思っているから何の問題もない。
兄さんがしばらく居なくなるのは寂しいけど、僕は兄さんに託されたものを守るために、もっと強くなろうと心の中でそう決心したのであった。
如何でしたでしょうか?
感想・評価をお待ちしてます!
それで、前書きにあったお願いなのですが、
アンケートを取りたいと思っておりまして、
それにご協力頂けたらと思っています。
内容は活動報告で2018/12/1212:00ごろに発表致しますのでよろしくお願い致します。