どうにもならない、そんな時…なんだけどさぁ! 作:#任意の文字列
探し物。それは、ワーカーにしろ冒険者にしろ、切っても切れない関係にあるもの。自分たちもワーカー駆け出しのころは、必ずそういうそういう依頼を受けたものだし、ラキュースだってきっとそうだろう。だから、自分は単なる探し物の依頼でも気にせず受諾するべきだ、と考えている。
ただ、時と場合は考えてほしいものだが。
「…ふぅ」
「アルシェ、そっちはどう?」
「あ、ラキュース…」
探し物で一息ついた自分の後ろに、同じく探し物をしているラキュースが声をかけてくる。今回は彼女たちも一緒だから、そこは少し新鮮だ。だが、重ねて言うが時と場合を考えてほしい、と思う。
なんせ、自分たちは温泉地を満喫している途中なのだから。
「ダメ、こっちにはなさそう」
「そう…話によれば、アタリはついているとのことだけど、どうしたものかしら」
「イミーナもティアさんもティナさんも、みんな頑張ってる。自分も、もう少し頑張って探してみる」
「…なら、私も頑張らなきゃね」
自分の声掛けに、ラキュースも応えてくれた。その勢いのまま、今度は二人でこの付近を捜索することにする。この辺りの土地勘ははっきり言ってゼロだが、ラキュースとの二人なら、これくらいなんでもないような気がした。だから、温泉地を満喫していたことは、とりあえず忘れよう。
だが、それでも思うのだ。
「どうして、こうなった…」
何気ない呟きに乗せたその思いは、やがて虚空へと消えていった。
―それは、温泉から出て、男二人と合流し、皆と外を観光していた時の事。この時にはティアさんも、首をしきりに気にしつつもいつもの状態に戻っていた。
「…見て、あそこ。綺麗な、紅葉…」
「おお…これが最初に説明された、ふーりゅーってやつか?確かこの景色のために、ここを作った神様が一からこしらえたとか…そんな説明だったよな?」
「ええ、そうでしたね。ここをお造りになった神様とは、私が信仰する神とは違うハズですが…おそらく、素晴らしい神なのでしょうね」
「そうね~…脱衣所にあったミルクの一気飲み、しかもポーズ指定までつけるなんて変なおすすめ書いてるって思ったけど、確かに気分が良かったわ。ここの神様、ホントすごいのね」
そんな取り留めの無い話をしつつ、自分たちは純和風な土地を歩いていた。
「それにしても、このゆかた、っていうの、いいわね…何と言うか、雰囲気に合っているというか、みやび?とかいうものなのかしら」
「そのみやび、ってのもよくわかんねえけど、まあ、気分がいいのには変わりねえな!」
「そうだな…私は、よくここにいる全員分のサイズのゆかたとやらがあったと感心しているよ」
「そんなこと言って、またガガーランに叱られる…ティア、いい加減に首を触るのやめたら?」
「そんなこと言われても…なんかまだ痛いし…」
傍を歩く、ラキュース達も、全員が浴衣に身を包んでここを楽しんでいる。しかし、紅葉らしき木や浴衣まであるとは、ここは本当にすごい所だ。自分も、ここの神様に会ってみたいものである。
そんなことを考えつつ、のんびりと散歩を楽しむ。そんな時、彼は現れた。
「…ねえ、あそこ見て」
「ん?」
イミーナが指さした方向に、ヘッケランが興味を示す。自分も、自然とそちらへ視線を向けていた。
そこにあるのは、何の変哲のない砂利道…だが、そこで誰かが何かを探し求めている様に動いている。その誰かはこちらから顔を見ることが出来ないが、見えている部分は鎧―それも、パワードスーツのような近未来型っぽいもの―で覆われており、場にそぐわない雰囲気を醸し出していた。
なんとなく、皆で近づいてみると、その謎の人物の者らしい声が聞こえた。
「…ない…ない…!」
どうやら、この人物は探し物をしているという事であっているらしい。しばらく同じようなことを呟きつつ探し物をしていた謎の人物は、不意に動きを止め、こちらに振り向いてきた。
「…ん?」
起き上がってきたその人物と、自分たちの目が合う。その人物の鎧を見て、自分は驚愕に包まれた。
(…ベムラー!?)
思わず声を上げることがなかったのは、ラッキーだった。その人物の姿は、まさしく自分の記憶にあるベムラーそっくりだった。それも、ウルトラマン本編に出てきた最初の怪獣、宇宙怪獣ベムラーではなく、漫画『ULTRAMAN』に出てきた方のベムラーである。というか、この人は本物なのか?もし本物なら、この人の正体は…
驚愕で動けない自分を尻目に、謎の人物はこちらをじっと見つめる。何か妙な雰囲気が漂い始め、ヘッケラン達も動きを見せない。しばらく沈黙が続いた後、謎の人物は急に動き出し―自分の方を指さした。
「君!」
「…え?」
自分も皆も驚く中、謎の人物は次の人物を指さす。選ばれたのは、ラキュースだった。
「それと君!」
「…私?」
そして、謎の人物は手を合わせ、縋り付くような声色で、こちらに語り掛けてきた。
「すまない、どうか、
「探し物を手伝ってほしい、ですか」
「そうだ。見ず知らずの人物に頼まれても迷惑だろうが、私はここの地理に疎い…一人ではどうしても限界があるし、何とか聞いてもらえないだろうか」
自分の言葉に、鎧の人物、ベムラーさんはそう答える。まさか姿が同じなら名前も同じ、だなんて思ってもみなかったが、事実はそういうことらしい。それはともかくベムラーさんは非常に困った様子でこちらに尋ねてきた。さて、どうしたものか。
「…一応言っておくが、俺たちもここは始めてなんだ。他の連中を頼った方がいいと思うぜ」
「むむ、そうか…しかし…」
「まあ、話は聞いておいてあげる。それで、一体何を探しているの?」
「ああ、これだ」
ヘッケランとラキュースの問いかけに対し、ベムラーさんは頷くと、そばに置いてあったアタッシュケースみたいなものを開く。そこに入っていたのは手のひらに収まるサイズの小瓶が二つと、それがはすっぽりはまりそうなくぼみが三つ。どうやら、その小瓶が、探し物で間違いなさそうだった。
「これは私が追いかけていたある男が持っていた物で、ハッキリ言うと危険物なんだが、その男は私の目の前である方法を使ってこの辺りに投棄した…私はそれを取り締まる側だから、探していたんだ」
「へえ、こんなのが…で、これは何て言う物なの?」
「…本当は喋りたくないんだが、君の頼みならば仕方がない。これは、グロテスセルと呼ばれる物質だ」
「グロテスセル…!?」
ベムラーさんが告げた意外な名前に、思わず反応してしまう。なるほど、確かに危険物だ。よく見れば、瓶の外見こそ違うが、中にある緑色の物体は、まさしくウルトラマンメビウスで出てきたグロテスセルそのものである。
そんな驚きの声を上げた自分に、皆の視線は急激に集まる。ベムラーさんもその反応は意外だったのか、表情こそ見えないが、それでもわかるぐらいには驚いているようだった。
「君は、これを知っているのか?」
「…はい、グロテスセル…かつてグロテス星人が持ち出した、魔神怪獣コダイゴンを操るために使われた物質です。中身が空洞の物体に入り込んで、それを動かすことが出来る…」
「…なるほど、アルシェのタレント知識が辺りを付けたってことは、怪獣関連か…あんたは、あれだ…宇宙人、ってやつで間違いないんだな?」
「…なるほど、タレントとは、異能のような力か。ああ、私は宇宙人で間違いないよ」
ベムラーさんは何でもない事のように、自分が宇宙人であると明かす。しかし、自分の頭の中はそれどころではない。ベムラーさんの話が本当なら、とんでもない事態になっているという事だ。
グロテスセルとは、コダイゴンを操ったグロテス星人が操る物質で、ある程度空洞の物体にグロテスセルを注入すれば、それだけでコダイゴンが完成してしまう、という代物だ。コダイゴンサイズでは破壊衝動を抑えることが出来なくなる上、コダイゴン自体がウルトラマンの力では早々破壊されないほどの強さを持っている。これは、とんでもないことになっていた。
そして、そのことを思い出すついでに、自分はある事に気が付いた。この小瓶のサイズ、見覚えがある…!
「ベムラーさん、探しているモノは、これと同じサイズですか?」
「ああ、そうだ」
「…確認します。この小瓶で作れる、コダイゴンの数は、何体ですか?」
「…鋭いな、君は。三体だよ。これ一本で、嘗て地球に現れたコダイゴンなら三体は出来上がる」
…やっぱり!なら、事態はかなりまずい。そのことを噛み締め、自分はヘッケラン達の方に振り向いた。
「リーダー、ベムラーさんを手伝おう。この小瓶を放っておくと、大変なことになる」
「そうか…因みに、さっきの話はどういうことだ?」
「あの小瓶の中身がばらまかれると、コダイゴンと呼ばれる怪獣が三体出現する。コダイゴンはウルトラマンでも苦戦するほどの怪獣。放っておくのはあまりに危険」
「マジか…この小瓶一つでそんなことが…」
自分の言葉に、ヘッケランは驚愕を隠せていない。小瓶を眺めるヘッケランにも、そしてその後ろで待つ皆にも、事の重大さを理解してもらえたらしい。やがて、ヘッケランは小瓶から視線を上げると、ベムラーさんに真剣な表情で向き合った。
「よし!この小瓶探し、俺たちが手伝うぜ!」
「ほ、本当か!とても助かる!」
「ああ、これをほっとくのはシャレにならないらしいからな…できる限り協力させてもらう。お前らもそれでいいな?」
「ええ、いいわよ」「問題ありませんね」
「よし、なら「だったら、私たちも探す」…いいのか?」
小瓶探しに意気込むヘッケランの話に割り込むように、ラキュースが手を挙げた。彼女を見れば、こちらもまた、真剣なまなざしでベムラーさんを見つめていた。その後ろの『蒼の薔薇』の面々を含め、やる気十分、といった様子だった。
「ええ、その小瓶が危ないってことはわかったわ。なら、私たちも放っておけない。ここに来て怪獣が現れるなんて最悪よ」
「…ま、そりゃそうだな」
「…それに、私はやりたいことがある。…誰かを護るために、全力を尽くすってことを」
ラキュースはそう言うと、視線を自分の方に向けてきた。自然と、彼女と視線が合う。彼女の表情には、やる気に加え、何かに憧れているような、キラキラとしたものがあった。そして自分と視線が合った彼女は、にこっと、見事な笑みを浮かべてくれた。
「…鬼リーダー、やっぱりもう人のこと言えない「あらティア、首のマッサージの続きする?」なんでもないです」
「…まったく。とにかく、よろしく頼むわ、ベムラーさん」
「…ああ!こちらからも、よろしく頼むよ!」
ラキュースの差し出した手に、ベムラーは嬉しそうに握手を返す。遅れてヘッケランも、ベムラーさんの手を握りしめる。こうして、自分たちは小瓶探しを行う事になったのだった。
―そして、現在。自分はラキュースと二人で、近辺の捜索に当たっていた。…の、だが
「…ない」
「…ないわね」
やはり、簡単に見つかるはずもない。そもそも小瓶は小瓶、サイズは小さめだしどこに転がるかもわからず、拾われてしまえばどうしようもない。故にそうやすやす見つかるわけもない。そろそろ日も暮れて来たので、早めに決着をつけたいところなのだが、そう上手くはいかないらしい。寧ろ難しくなっていくばかりである。
そんな感じで途方に暮れる自分たちに、男性っぽい声が届く。
「君たち、そちらはどうかな?」
「あ、ベムラーさん…ダメです、見つかりません」
「そうか…小瓶の位置はある程度把握できるからいいものの、ある程度だからな…まあ、ターマイト君達が先に見つけているかもしれないし、君の仲間のイミーナ君と、あとティア君とティナ君だったか?二人の探索能力は高いそうだから、そちらが先かもしれない。なんにせよ、合流するまでは、よろしく頼む」
「…はい、大丈夫です」
「ええ、私もいいわよ」
「そうか…ありがとう」
ベムラーさんはそう言うと、自分たちに頭を下げた。しかし鎧の汚れ具合からして、彼もこれまで本気で探しているのがうかがえる。これには自分たちも付き合ってあげないといけない…と思う。
先ほどの会話の後、自分たちはこの格好では探し物はできないという事でまず着替えた後、ベムラーさんからある説明を受けた。というのも、彼は小瓶が落下した位置をある程度まで絞り込める装置を持っており、それを頼りに探していたとのことらしい。自分たちは持っていた地図にその範囲を何とか書き込むことに成功し、さらに絞り込むことが出来た。しかしそれだけでは不足があるという事なので、二手に分かれることとなった。
一つは、この温泉地の各地を回り、その小瓶が見つかっていないか探すチーム。これには、ヘッケラン、ロバーテイク、ガガーランさんにイビルアイさんが参加した。彼らは落し物の類いが集まりそうな場所、情報が集まりそうな場所を巡り、そこから小瓶の行方を捜すことになっている。
もう一つは、決められた範囲を探すチーム。こちらには、自分にイミーナ、ラキュースとティアさんティナさん姉妹に加えベムラーさんが参加している。こっちのほうが範囲が決まっていてもしらみつぶしになることが予想されたため人数は多い。このチーム分けで、自分たちは捜査網を広げていくこととなった。今の所、こちらは見つかっていないが、向こうはどうなのかが気になるところである。
しかし、自分にはそれ以上に気がかりなことがあった。
「そういえば、あなたはその鎧みたいなものを脱がないみたいだけど…宇宙人、というのはそういう金属みたいな体をしているの?」
「いや、私の種族は君たちと姿は異なるが、これは外皮と言うわけではないよ。…実はこれは、シェイプアップ用の健康器具なんだ」
「…え?健康、器具?」
「ああ。実は私、最近どうも筋肉が付きすぎてしまってね…兄弟や仲間たちにはまた肉ダルマに磨きがかかりましたね、みたいなことを言われたし、お気に入りの服もサイズがきつくて着れなくなってしまってね…これはいけない、とダイエットすることにしたんだ」
「そ、そう…宇宙人、というのも大変なのね」
「ああ、宇宙人と言っても悩むことは君たちと一緒なんだ。…いや、私の場合は筋肉付きやすい体質が原因なんだけどね。ヒカリがなんとかしてくれないものか…」
何気なくその気がかりのいる方向に意識を向けば、そこにはラキュースと会話するベムラーさんがいる。その会話内容を聞くと、どことなく脱力するというか…気がかりは杞憂なんじゃないか、と思えてしまう。
しかし、ベムラーさんは先ほど、自分の事をグロテスセルを取り締まる側の者だと言っていた。グロテスセルが存在するのはM78ワールドであり、そこでそういうものを取り締まる団体とはおそらくただ一つ。つまり彼の所属は宇宙警備隊である可能性が高い。それに、彼の鎧も彼の名も、ある宇宙である人物が持っていたもの。ここにいるベムラーさんがその人物本人と言う事はおそらくないと思うが、これが例えば並行世界の同一人物だとすれば…ベムラーさんの、この人の正体は…
「―皆!こっち!」
その思考は、突然響いたイミーナの声で遮られた。思考を中断し、顔を上げてみれば、イミーナが何かを握ってこちらに手を振っている。後ろでは、ティアさんとティナさんも、それぞれ何かを抱えているように見えた。
「…イミーナ、どうかした?」
「ええ、ちょっとね…まずは、これを見てほしいの」
「鬼ボス、こっちも」
「待ってね二人とも…これは…」
とりあえず三人でイミーナ達に駆け寄り、彼女たちが持っていたものを確認する。そこにあったのは、ブタの貯金箱、木彫りの熊、招き猫の像の三種類。なんというか、すごくガラクタ臭かった。
「…これは?」
「これは少し先のお土産屋さんで売ってた品物なのよ。可愛かったから思い出の品と思って一人一つづつ…て、そうじゃなくて、これがすごいの!なんて言っても、神様が宿っているのよ!」
「…神様?」
興奮するイミーナの物言いに、思わず怪訝な声が出てしまう。傍に控える二人の忍者を見ても、なんか嘘を言ってるようには見えないが、神様とはなんだ。しかし自分の声など気にしていない様子のイミーナは、興奮冷めやまぬまま、「ちょっと待ってね」と言うと、ブタの貯金箱の腹の部分をくすぐるような、奇怪な指の動作を始めた。
いったい何を、というより早く、それは訪れる。
「動いた…!」
「え!?…二人とも、まさかそれも…」
「うん、皆見てて…えい」
「な、なんと…これらすべてが動くのか…!」
三人が持っていたガラクタが、一斉に動き出したのだ。それも、生物みたいにひどく滑らかに。その奇妙さに、自分もラキュースもベムラーも皆驚き、思わず後ずさりそうになってしまう。
しかし、いち早く硬直の解けたベムラーさんが、ブタの貯金箱を手に取った。
「すまない、これをお借りしてもいいかな」
「ええ、大丈夫よ」
「では失礼して…うむ、中に駆動系のパーツや動力は見られないか…では、中身を」
ベムラーさんはそう言うと、貯金箱の裏にあった蓋を外す。すると、緑色の何かが、飛び出していった。そして、貯金箱はそれっきり、動かなくなった。
…待て待て待て。今のは、アレなのか?ひょっとして、これが正解なのか?イミーナは「…あ、神様逃げちゃった…」なんて可愛い声を出しているが、それどころではない。自分はラキュースに目配せすると、ラキュースさんもそれに頷き、二人同時に忍者姉妹の持つガラクタに手を伸ばした。
…そして、残されたのは、動かぬガラクタ3つだけ。姉妹の持っていたガラクタも、緑色の何かを吐き出し、動かなくなってしまった。姉妹は「…動かなくなった」「…そんな。私の猫が…」などとそれぞれいじけているが、自分たちはそれどころではない。状況を把握した自分たちは、三人で顔を合わせ、同時にガラクタ共を指さした。
「「「これだ!!」」」
―そして、事態は動き出す。
「失礼するわ」「お邪魔します」「すみません」
「ああいらっしゃい…お、お客さん?」
店主のおじさんへの挨拶もそこそこに、イミーナ達から聞いた土産物屋に入っていく。突然奥に入り込んできた自分たちのただならぬ雰囲気に店主さんは困惑気味のようだが、知った事ではない。とっとと奥に入って、グロテスセルを探さなければ。
…周りの商品を見てみると、商品の土産物共はそろいもそろって勝手に動き出している。店先には『神様の宿ったありがたい品売ってます』なんてあったが、何が神様か。やはりここに、グロテスセルがあるとみていいだろう。グロテスセルが漏れ出して、商品が動いていたのだ。
困惑していたイミーナ達も店の中に入ったところで、捜索を開始する。店の中は狭く、グロテスセルが見つかるのは時間の問題と思われた。
「あ!あった!」
間もなく、奥の方でベムラーさんの声が聞こえた。声につられ見てみると、そこには見覚えのある小瓶を掲げるベムラーさんの姿が。その小瓶には、緑色の何かが存在していることが伺える。間違いない、あれこそ探していたグロテスセルだ。ああ良かった。時間はかかったが、見つかったのならこれで一安心である。
ラキュースと二人で近づき、小瓶を大事そうに抱えるベムラーさんに話しかけた。
「見つかったのね、よかった…」
「やりましたね、ベムラーさん」
「ああ、良かったよ。二人ともありがとう。ああ、本当に良かった―」
ツルッ(小瓶が滑り落ちる音)
↓
パリン!(小瓶が割れる音)
「―え?」
…
…
…
…うん?
「…は?」「…えっ?」「えっ?」「何?」「どうかした?」「な、何事じゃ?」
…
…
…
…何か、とんでもないことが、起こった気がする。固まった体を、ぎぎぎ、という音が鳴りそうなくらいに無理矢理動かし、恐る恐る音が鳴り響いた場所、すなわちベムラーさんの足元を見てみると、そこには小瓶が見事に割れているのが見えた。そして小瓶の中から出たの緑の物質が、とぐろを巻く蛇のような生物らしさを醸し出しつつ、意思を持つかのように動き、置いてあった像…この温泉地に伝わる伝説によれば、ここの神様が目出度いものだと言って流行らせたとされる物体、恵比寿様の像に入り込んでいった。
そして、目が光る恵比寿様。…まずい!!
「ラキュース!」
「わかった!!」
自分の掛け声に応じ、ラキュースが恵比寿様を持ち上げ、それを抱えて走っていく。「わ、わしの恵比寿様が~!」とかなんとか店主さんが言っているが、気にしている場合ではない。ラキュースさんを追いかけ、急いで飛び出す。
「…あ、ま、待ってくれ!」
遅れてベムラーさんも飛び出し、その後事態に気が付いたらしいイミーナ達も、そして何故か店主さんまでもが店を飛び出した。
先頭を走るのは、恵比寿様を抱えるラキュース。かなり早いが、何とか追いつける。とりあえず遠くに走って、これをどうにかしなければ。そう思っていると、目の前のラキュースの懐近くが、光ったような気がした。
「…くっ!これは…!」
戸惑いの声を上げ、速度の落ちたラキュースに何とか追いつく。そのまま彼女と並走しながらその懐をよく見てみると、そこでラキュースが抱えている恵比寿様が、光と共に胎動しているように見えた。
まずい。これは本格的にまずい。嫌な予感が背中を走ったことで、自分は走りながら、恵比寿様をどうするか迷っている様子のラキュースに、思いっきり叫んだ。
「ラキュース!!それ、思いっきり投げて!!」
「!わ、わかった!!」
ラキュースはそれに応じ、恵比寿様を全力で振りかぶり、投げ飛ばす。一流の戦士であるラキュースの戦力で飛んでいく恵比寿様を、近くにあった小高い丘の上に移動して観察する。後ろを走ってきた面々も、自分たちに追いつき、同じように丘の上から恵比寿様を見守る。
恵比寿様はというと、飛んでいく勢いはそのまま、だんだん肥大化していくのが見えた。ふくよかに膨らんでいく恵比寿様は、想像以上に遠くに飛んでいき、温泉地から離れた広い平野部に飛んでいく。いや、これは、恵比寿様本体の力も働いているのか?自分の考えなぞ知らない顔の恵比寿様は、やがて空中で体を捻ると、見事な着地を決めた。その姿は、まさしく怪獣そのもので、赤く光る瞳が不気味な雰囲気を醸し出していた。
コダイゴンジアザー、まさに誕生の瞬間である。
「…最悪だ…!!」
頭を抱えたベムラーさんから発せられた、やってしまった、といった感じの声が、丘の上でむなしく響いた。
温泉回の描写ですが、登場人物の容姿のうちオーバーロード本編で描写されていない容姿につきましては、作者の妄想が入り混じっているということをここに告白いたします。
~用語解説~
『温泉』
地中から湯が湧き出している現象や場所、あるいは湯そのものを示す用語。その湯を用いた入浴施設やそれらが集まった地域も一般に温泉と呼ばれる。今回アルシェたちが入ったのは、広々とした純和風の露天風呂。温泉がある隠れ里では、神様が作ったと言われている。実はこの神様とはプレイヤーで、そのプレイヤーは日本の温泉というものに非常に強いあこがれを持っており、この世界にやってくると願望成就に走り出し、自分の持っていたスキルを温泉地建設にフル活用したという裏設定があるが、たぶん本編と関わる事はない。
また秘境にある浴衣や土産物に関しては、絵描きだった神様の残した絵を元に、現地の人が作り出したものである。
『ベムラー』
一般的にはウルトラマン第1話「ウルトラ作戦第一号」に登場した宇宙怪獣の事を指すが、ここでは漫画「ULTRAMAN」に登場した人物の事を指す。ベムラーは「ULTRAMAN」最重要キャラクターであり、ウルトラマンスーツと酷似した装甲服を身に纏っている。数々の特殊能力を持っているが、その正体と彼の故郷の事情には誰もが驚いたはず。この世界に現れたベムラーは、もちろん本物ではない。ある人物が、同じ名前を名乗りよく似た鎧をつけているだけである。
『ULTRAMAN』
少年の体に宿る正義(ウルトラマン)の遺伝子、運命の子は本物のヒーローになれるのか?月刊ヒーローズで連載中のSF漫画で、ウルトラマンに変身していたハヤタ隊員の息子、早田進次郎の戦いと苦悩を描く作品。作者が作者なため、某ラインバレル臭がするキャラがいる。ウルトラマンの最終回後のストーリーだが、それ以降のウルトラ戦士が地球に来ていないという、いわゆるM78ワールドのレベル3マルチバース、つまりパラレルな世界観を持つ。この作品でのウルトラマンはパワードスーツ化された存在だが、主人公の早田進次郎とハヤタ隊員のアーマーはスペシウム光線を発射できる。こんな感じで楽しい設定楽しいシナリオ目白押しなので、皆も読もう。
『グロテスセル』
魔神怪獣コダイゴン、及び魔神怪獣コダイゴンジアザーの内部に充填された物質。中身が空洞の物体に入り込むことで、入り込んだ物体を生物のように動かすことが出来る。量があれば物体を怪獣クラスに拡大することもできる。ただし怪獣サイズになると破壊衝動が拡大してしまうため、グロテス星人くらいにしか制御できなくなる。また怪獣サイズの物体を動かすのに必要なグロテスセルは非常に少なめで、地球人にも複製が可能と結構優秀な物質なのかもしれない。
『M78ワールド』
いわゆるM78星雲とそこに浮かぶウルトラの星、そして光の国が存在する宇宙。ウルトラシリーズで用いられる世界観の設定に「マルチバース」というものがあり、M78ワールドはマルチバースに浮かぶ宇宙「レベル2マルチバース」の一つ。マルチバース設定のおかげで、ウルトラマンシリーズの世界観は大きく広がった。なので作者はこの設定大好きである。
『宇宙警備隊』
M78ワールドに存在する平和維持機構。ウルトラマンの本編開始から3万年前に勃発した、エンペラ星人による「ウルトラ大戦争」を経て結成された。日夜宇宙の平和の為に活動しており、凶悪な怪獣の退治や、侵略宇宙人の撃退。星間戦争の調停等を行っている他、最近はマルチバース間の移動が活発化したせいか他のマルチバースの平和も可能な範囲で守ることが増え、その為別マルチバースのウルトラマンとの交流が存在する。また最近ではウルティメイトフォースゼロの面々も宇宙警備隊の別動隊みたいな扱いになっていることがわかり、ウルトラ戦士以外の隊員もいることから範囲はさらに拡大している模様。
『魔神怪獣コダイゴンジアザー』
やらかしの結果。詳しくは次回以降によろしく!
次から戦闘です。よーし作者本気を出しちゃおっかなー。
次回は11月7日水曜18時、いつもの時間に投稿予定です。