どうにもならない、そんな時…なんだけどさぁ!   作:#任意の文字列

17 / 20
初手危険球から始まる作品があるらしい。嫌な予感がした人はブラウザバック後ウルトラマンガイアの配信ページにGO!大丈夫、ガイアは君を裏切ったりはしないぞ!
今回はお祭り回だ!

ウルトラマンガイア11話『龍の都』、これまでも既に活躍していたチームハーキュリースの本格的な顔見せ回。ウルトラマンガイアで一番印象に残るチームといえば、梶尾リーダー率いるチームライトニングかこちらのチームハーキュリーズのどちらかになるのではないでしょうか。
エキスパートチームの中で屈指の登場回数を誇り、隊員がメインとなるエピソードが全員分用意されるなど優遇されまくりのチームハーキュリーズ。のっけから暑苦しさで視聴者の印象に残り、我夢を心配して自分たちに巻き込みそこで頭脳プレーも見せるという八面六臂の活躍ぶりを見せるほか、スティンガーがやられた後再起動で前線復帰、それもダメなら白兵戦でダメージを与えるという掟破りのタフさも見えてくれました。後に被害者の会結成の要因になる自転車転倒もあり、終始サービス精神旺盛でした。ベリーグッドです。
登場怪獣は壬龍ことミズノエノリュウ。ウルトラシリーズの定番、環境の破壊が呼んだ怪獣ですが、特筆すべきはその強さ。改めて見てもこの手の付けられなさは半端ない。パワードザンボラーもそうですが、こういう大自然の化身がやたらと強いケースはこの辺りから伝統になったのではと思います。
意外だったのはゲストの風水師・黒田恵が壬龍に対し怒りからは何も生まれないと断じたこと。この手のキャラって人間に見切り付けてそうなヒトが多いと思っていたのですが、彼女はそうではなく、事実を受け入れ説得した感じ。あくまで等身大の人間として壬龍を説得した、というのは印象に残りました。

そして『超時空の大決戦』は第二章、パラレルワールド編。サタンビゾー戦から再開ですが、ガイアのエネルギー減少速度が早い!どうしたガイア、登場からまだ30秒も経ってないぞ!…ぶっちゃけると75分映画でサタンビゾー一匹に時間をかけるわけにはいかない故のこの処置なんでしょうけど、ここまで燃費が悪くなってたとは思っていませんでした…戦闘時間も1分半前後なので言うことなしです。
そして我夢は、自分が勉少年の世界では創作物の中の人扱いされてることを知りましたが(因みに田代まさし氏のシーンでカットありなので気になる方は別媒体で見ましょう)…我夢は割とすぐこういうパラレルワールドなんだなって割り切っちゃってますね…創作物の中の人が現実っぽい世界に出てくる作品だと、もっとこうアイデンティティの崩壊とか激怒するとかそういうのありそうなんですが、我夢は「ここは僕のいるべき場所じゃないらしい」で飲み込んじゃってる。この辺り時代を感じるというかなんというか…ウルトラマンからしたら、自分たちがテレビの中の住人になっている世界なんて単なるパラレルワールドの一つに過ぎないのかもしれませんね。また一つ、夢が広がりました。

野蛮なのかチキンなのかよくわからない二次創作者の屑


明暗
黒い仔山羊を撃て!


 人は、誰でも夢を見る。

 老いも若きも、男も女も。

 犬や野良猫も、夢を見るかもしれない。

 もちろん、戦士たちも夢を見る。

 

 黄金の眠り、それは、若さの特権だ。

 

 

 

 体が揺れる感覚に、心地よさの中に漂っていた意識が浮上していく。

 

「…んぅ…」

 

 再びの揺れとともに、意識が繋がる。瞳を開けると、そこには青空が広がっていた。

 

「…ふぁ…っ~!!」

 

 寝転がっていた体勢から体を起こし、ラキュースは眠たそうにあくびをした。そのまま伸びをして、気の抜けた顔でなんとなく前を向く。虚ろな瞳には何も映っておらず、まだまだ眠気が勝っていることが伺える。

 半分夢の中にいるラキュースは、それでも何とか起きようと頑張ってみる。横になって瞬く間に夢の世界に舞い戻りたいという欲求に抗いつつ、とりあえず立ち上がろうかと周囲を見渡したところで、彼女はある事に気が付いた。

 

「…ここは?」

 

 彼女の周囲には、見慣れぬ森林が広がっていた。どうやら自分は、見知らぬ土地のど真ん中で眠りについていたらしい。その事実が、ラキュースの意識を否が応でも鋭く研ぎ澄まさせていく。

 完全に目が覚めたラキュースは立ち上がり、所持品を確認する。幸いにも彼女が愛する魔剣は置いてあったし、その他装備も十分そろっている。小物もそろっており、今すぐ依頼を受けても大丈夫だと思えるくらいには物がそろっていた。

 また、意識を集中させて背後に手をやれば、そこから『ルーブジャイロ』を引っ張り出すことが出来る。さらに意識を集中すれば、この間アルシェが手に入れた二つを加えた『ルーブクリスタル』と、『オーブリングNEO』もバッチリ出てくる。何処ともわからない場所に投げ捨てられていた割には、装備は万全。その事実が、逆にラキュースの不安を煽っていく。

 そんな不安を振り払うように、ラキュースはまず現状把握に努める。いったい自分がなぜこんなところで寝ていたのか。自分は眠りにつくまで何をしていたのか。これらを思い出すことで、自分の身に何が起こったのかを推測しようとする。

 だが彼女の思考を遮るように、大地が再び揺らされた。

 

「…!今のは…」

 

 その揺れ方を感じ、ラキュースはある事に気が付く。これは単なる地震とは違う。彼女が知る限り、この揺れ方に近い現象はたった一つ。巨大なモンスター…否、怪獣の動きによるものだ。

 

(…どうする?)

 

 揺れ方を推測したところで、ラキュースは思案する。このまま、巨大な揺れを起こす元凶を探しに行くか、それともここで待機し何者かが通りかかるのを期待するか。彼女が一瞬の間を置き、前者を選択した。

 とりあえず、前方に向かって歩き出す。割とすぐに森林地帯を抜けると、そこには崖が広がっていた。ここからなら、もしかしたら怪獣の姿を確認できるかもしれない。そう考えて崖に立ち周囲を確認すると、そこにはアダマンタイト級冒険者である彼女も 息を呑む光景が広がっていた。

 

「これは…!」

 

 彼女の眼下、崖の下に広がる荒野を、巨大な怪物達が歩いている。怪物はここからだと遠くてよくわからないが、巨大であることはわかる。少なくとも、ラキュースが見た怪獣のどれよりも大きい予感がした。

 それ以上に不気味なのは、怪物の見た目だ。ラキュースの知る怪獣は、差異はあれど獣らしい見た目をしているものが多かった。だが、ここから見える怪物の姿はそのどれとも異なる。全体的に黒く、上半身は触手のようにうねっている。下半身にはこれまたよく見えないが、口のようなものが複数存在しているのが見える。怪獣ともモンスターとも違う見た目に、ラキュースは戦慄を覚えた。

 そして、この怪物が複数いるのも問題だ。ここから見える怪物の数は五体。五体それぞれが悠然と大地を闊歩しているが、果たしてこれで全部なのだろうか。それ以上に相手の実力がわからない以上、迂闊に接近するのは賢くない。だが、これを放っておいてよいのか。ラキュースの心に、迷いが生じる。

 とりあえず、判断材料が欲しい。その考えの通りに、ラキュースは怪物に釘付けになっていた目を動かし、崖の上から怪物の周囲を確認する。そんな彼女の目に、怪物とは別の動きが映る。

 

「…あれは、人?」

 

 怪物から逃げるように動いている影がある。かなり小ぶりで見えにくいが、それが人間で、鎧らしきをつけているというのは確認できた。どこかの軍だろうか?それが怪物と遭遇し、逃げている?彼女の思考をよそに、兵隊らしき人たちは逃げまどっている。その動きを観察していると、ある動きに気が付く。

 

「…怪物が人を追っている?」

 

 怪物たちは、非常にゆったりとした動きで、しかし確実に軍隊に向かっている。おそらく、怪物はすぐに軍隊に追いつくだろう。そしてそれらを木の葉を散らす様に蹂躙することは、簡単に理解できた。

 …火が、付いた気がした。ラキュースはその火に導かれるがごとく、弾かれるように自分の背後に手を伸ばす。そのまま引っ張り出したジャイロを構え、続いてもう一人の自分の姿が描かれたクリスタルを手に取った。

 

「セレクト!クリスタル!」

 

 クリスタルを展開し、ジャイロにセットする。あまり回数をこなしたわけではないが、一連の動きはスムーズに行われる。

 

≪ウルトラマンアグル!≫

「纏うは大海!生命の育み!」

 

 ジャイロからの声と共にお決まりのセリフを叫び、ジャイロのハンドルを操作する。ジャイロが発する青色の輝きが、ラキュースの体を包んでいく。

 

アグルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

 そしてその名を呼ぶとともに、ラキュースの体は舞い上がり、巨人の姿へと変わっていった。

 一方崖下の荒野では、そんなことが起こっているとは露知らずといった様子の怪物たちが、逃げまどう軍隊へと迫っていた。怪物は足取りは遅いが巨大だ。たちまち人間の集まりでしかない軍隊に追いつき、その巨体で押しつぶそうとする。いや、押しつぶそうとしているかも怪しい。怪物たちを遠目で見れば、ただ歩いているだけのようにしか映らない。それだけ、怪物の動きに悪意というものは見られなかった。

 だがそんな怪物たちも、突然上空が青く光ったことで足を止める。怪物たちがそれを見上げ―ているのかは、外見からは判別しがたいが―その場にとどまっていると、輝きが巨人の姿に変化する。そのまま巨人、ウルトラマンアグルは、足を大きく広げ相手を巻き込むような蹴り、いわば複数相手のドロップキックのような体制で降下する。慌てたのかどうかは知らないが、怪物たちがそれに対応しようとするが、もう遅い。アグルのキックは、そのまま二体の怪物の胴体に突き刺さり、そのまま大きく突き飛ばした。

 

「デゥアッ!!」

 

 そして着地し、怪物たちに向かい構えを見せるウルトラマン。その中にしっかりと生身の体で存在するラキュースは、ふと背後に視線を向け、後方の軍隊の様子を確認しようとする。そこで彼女は、ある事に気が付いた。

 

「…王国の兵?」

 

 怪獣に立ち向かうアグルの背後では、兵士たちが立ち止まり、こちらを見上げている。ラキュースが改めて兵士を見てみれば、彼らの装備は、自身も所属するリ・エスティーゼ王国において一般の兵卒が使用しているモノではないか。十中八九彼らは王国の部隊であり、しかもその数は想像以上に多い。後方まで続いている軍の大きさを見ても、間違いなく万は下らないだろう。

 いったいこれはどういうことか。ラキュースの記憶が正しければ、これだけの量の軍を展開するような予定は聞いたことがない。ラキュース、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラは王国の貴族の令嬢であり、また彼女には親愛なる友だと思っている王女がいる。その様な状況にいる自分が、これほどの軍が動く事態を把握できないはずがない。そのような確かな自信が、ラキュースの中にはあった。

 それに、周囲をよく見れば、地形に見覚えがある。ここは確か、呪われた地扱いされているカッツェ平野だったはず。いつも霧に覆われているはずなのだが、今はそんなものはどこにも見当たらない。カッツェ平野は王国とバハルス帝国の戦争が行われる日だけ何故か晴れるのだが、それだろうか?

 

(…まさか)

 

 しかしその考えを、ラキュースは一蹴する。最近の情勢を鑑みれば、王国と帝国の戦争はありえない。そのことをラキュースは知っていた。だからそれ以外だろう、と彼女は考える。

 そして、それ以上このことを考えてもしょうがない、と思考を中断した。材料が少なすぎるし、後で兵士を捕まえて聞いてみるなり平野の近いエ・ランテルにでも行って情報を確かめたりすればいい。

 今はそれより目の前の怪物だ。気持ちを切り替え、ラキュースは再び怪物に集中する。

 

「…悪趣味ね」

 

 改めて怪物を見て、ラキュースの口からそんな言葉が漏れた。

 怪物の見た目は、明らかに悪辣そのもの。全体的に短めの胴体に、うねうねとうごめく数本の太い触手がこちらをうかがっている。それだけでも不気味なのに、それ以上に気味が悪いのは胴体の口だ。この怪物の胴体には口らしきものが数個生えているのは先ほど確認した通りだが、その口はまるで人間の口をそのまま植え付けたような、言いようのない見た目をしていたのだ。ご丁寧に全体的に黒く染まった怪物の中で、口の中は歯や歯茎の色がしっかりしているあたりが、ますます不気味さを加速させている。これなら心の弱いものはこの姿を見ただけで死ぬかもしれない。そんな一笑に付されそうなことを、ラキュースは大真面目に考えていた。

 そして、ラキュースは一つ気付いたことがあった。

 

「デカいわね…」

 

 怪物を少し見上げると、その巨大さが理解できる。この怪物は、これまでラキュースが見た怪獣の中でもトップクラスに巨大なのだ。ラキュースの中での怪獣とは、途方もなく大きいがいざウルトラマンになってみると同じくらいか若干高い、くらいのサイズが主流だった。しかし目の前の怪物は、明らかにウルトラマンよりも大きい。二倍とまではいかないが、1.5~6倍くらいはあるだろうか。とにかく初めて見るサイズの怪物が、しかも複数目の前にいるという事実に、ラキュースは再び息を呑んだ。

 そしてしばらく動きを止めていた怪物たちが、再び動き出そうとしている。先ほど吹き飛ばされた怪物たちも、すでに立ち上がっていた。そのおぞましい挙動が、周囲の者たちに恐怖を振りまく。

 

「―あ、あああ!来る!奴らが来る!」

「に、逃げろ!あの巨人からも、逃げろぉ!!」

 

 兵士たちの悲鳴が、戦場にこだまする。その声が聞こえたアグルが今一度後ろを見れば、そこには再び恐怖にかられ、隊列など忘れたかのように我先に逃げ出す兵士たちの姿があった。

 ―再び、火が付く。そうだ、彼らを、王国の民を守らなければ。ならば、こんなところで怖気ついてはいられない。

 

「デゥアッ!!」

 

 雄たけびと共にアグルが怪物の1体に突撃し、まずその触手を取り押さえる。何とか逃げ出そうともがく怪物の体を、そのまま横に放り投げた。そのまま転がる怪物を尻目に、ラキュースは次なる怪物に掴みかかる。まずは、逃げる軍隊とこの怪物たちの距離を離すことを優先する。ラキュースの動きに無駄はなく、そのまま流れるように次の怪物の触手をつかんだ。

 だが、そこで後方にいたもう一体の怪物の触手が、アグルの体を打ち据えた。その一撃の痛みに、たまらずアグルがうめき声をあげる。

 

「ウォッ…!」

 

 そして力が緩んだアグルの隙を突き、掴みかかられていた方の怪物は体を振り回し、アグルの腕を振り払う。怪物はそのまま、腕が振り払われ若干体勢が崩されたアグルの体を、触手を動かし打ち据えた。たまらずその攻撃で後退してしまうアグルを、待っていたかのような動きで後方の怪物が体当たりで追撃する。アグルは今度は自分が突き飛ばされる形で、地面に投げ出されることとなった。

 

「くっ…!」

 

 あおむけに飛ばされた状態から、すぐに前転で距離を取り、膝で立つ形で怪物たちを見据える。だがラキュースの目の前には、勢ぞろいした5体の怪物が、今にもこちらに迫ろうとしていた。

 この状況はまずいと、ラキュースの戦士としての勘が忠告する。相手の数は5で、こちらは1。何をどう考えてもこちらの不利は覆る事はない。一度引いて体勢を立て直すべきか。状況を鑑みたラキュースの心が揺れ動く。

 

「…ダメね」 

 

 だが、それはできないと、ラキュースの心は結論付けた。今目の前の怪物を見逃せば、恐らく敗走する王国軍へと襲い掛かる事になる。現在、王国軍は全力で逃げてはいるものの、そこまで距離を稼げてはいない。なら、せめて彼らが逃げるまでの時間を稼がなくてはならない。それが今の自分のやるべきことだ。そう理解し、アグルは再び立ち上がった。

 そして、怪物たちとアグルが再び激突しようとしたその時、怪物の後方から突如赤い輝きが立ち上った。

 

「…あれは!」

 

 ラキュースがその赤い光を見上げれば、光が空中で一つの形に変わっていく。その姿を、ラキュースは知っている。短い間ではあったが、共に戦った友の姿は、彼女に強い印象を残していた。

 そして赤い光が人の形となり、アグルの隣に着地する。強い衝撃と共に土砂が舞い上がり、その姿に怪物たちがたじろぐ。そして土砂が落ちたその場所には、赤い巨人―ウルトラマンガイアが立っていた。

 

「アルシェ!」

「ラキュース…大丈夫?」

「…ええ、何ともないわ」

 

 頼れる友の登場に、ラキュースの声色も思わず弾む。実際、ラキュースは彼女の登場を歓迎していた。怪獣に詳しく、自分より長く戦ってきた友。彼女がいれば、複数相手でもこのような怪物に後れは取らないという強い確信が、ラキュースの中にあった。

 怪物に相対するアグルの隣で、ガイアもまた怪物たちに相対する。そこでラキュースは、アルシェにある事を聞こうと声をかける。

 

「…アルシェ、あの怪物が何なのか、わかる?」

「…ごめん。分からない」

「えっ…!?」

「あの怪獣の事を、自分は知らない。あれは、自分も見たことのない怪獣…」

 

 だが、アルシェから帰ってきたのは、ラキュースにとって思わぬ答えであった。怪獣の事を言い当てることが出来るタレントを持っており、それを十全に使いこなしていたと感じていたラキュースにとって、彼女が分からないと言う事態は想定外の事であった。

 …いや、そんなものなのかもしれないと、ラキュースは認識を新たにする。タレントというのは万能のモノではないし、ラキュース自身、ティガの地でアルシェが対応に困っていた事があったのを覚えている。ひょっとしたら、自分はアルシェを全てを解決する万能の存在と思っていたのかもしれない。実際の所ラキュースはアルシェを大恩のある勇者だと思っているが、それと同時に一人の人間であることを知っている。ならばあまり期待をかけすぎても彼女の害になるだけだ、ラキュースは自身にそう言い聞かせた。…実際の所、アルシェの怪獣知識はタレントによるものではないが、これは当の本人以外には些細な事であろう。

 様々な思いがラキュースの中で渦巻く中で、怪物を見据えるアルシェの中で、ある単語が浮かび上がっていた。

 

「…『黒い仔山羊』」

「…えっ?」

「…たぶん、あの怪物に関する名前だと思う。よく、わからないけど」

 

 アルシェは自分の思考に疑問を覚えつつ、そう答える。はたして黒い仔山羊とは何なのか、実のところアルシェにもわからない。アルシェはただ怪物を見て自分の中に浮かんできた言葉を口にしただけで、それがどういう意味を持つのかまでは理解できないでいた。

 そんなことは知らないラキュースは、名前が判明した怪物の事を注視する。怪物はガイアの登場に驚いたのか、まだ動く様子はない。しかし、その不気味さは健在だ。…これのどこが山羊なのかラキュースにはさっぱり理解できなかったが、まあアルシェがそういうのならそう言う事だろう、と納得することにした。

 そして意識を戦う事に切り替えたラキュースは、ガイアに語り掛ける。

 

「アルシェ、あの怪物どもは、向こうにいる王国軍を狙っている。奴らはここで食い止める必要があるわ」

「…!!わかった。なら、今はあいつらを抑えることに集中する…!」

「ええ、よろしく…行くわよ!」

「うん!」

 

 心が通い合った二人のウルトラマンは、息を合わせて怪獣に突貫する。ガイアとアグルは、勢いのままに黒い仔山羊の群れへと躍りかかった。

 

 

 

「オアァァァ…!」

 

 ガイアが気合のこもった声と共に、片腕で怪物の胴体を持ち上げる。

 

「デュワッ!」

 

 片腕でリフトアップした怪物を、ガイアはそのまま思いっきり投げ飛ばした。たまらず、怪物は遥か遠方へと飛ばされていく。しかしガイアが技を決めた隙を突け狙うかのように、怪物のうちの一匹がガイアに飛び掛かっていった。

 

「甘い…!」

 

 だが、それを見切っていたアルシェは、体の向きを反らすだけで怪物の突進を躱す。そして飛び込んできた怪物の触手を掴むと、その先端をしっかり握りしめ、思いっきりそれを振り回した。

 

「アアァァァ…デュアァァァァ!」

 

 両腕でしっかり触手の先端を掴み、体全体を使って大きく怪物を振り回す。ジャイアントスイングの状態に持ち込んだ怪物を、ガイアは先に吹き飛ばされた怪物の方に投げ飛ばす。怪物は勢いのまますでに転倒していた怪物に激突し、大きく離されていく。ガイアはそれを横目で確認し、すぐさま三体目の怪物の方へ向き直った。

 一方でアグルもまた、怪物たちに敢然と立ち向かっていく。

 

「オアァァァ!!デゥアッ!!」

 

 怪物の懐に飛び込むと、その胴体を思いっきり蹴り上げる。空高く舞い上がった怪物をアグルは追い、空中で数発キックを浴びせていく。そして頃合いを見計らったトドメの蹴り技で、怪物は思いっきり地面にたたきつけられた。

 技を終え着地するアグル。その隙を狙うかのような動きで、怪物が背後から迫りくる。だがアグルは怪物を一瞥することもなく、突如回転し空高く舞い上がった。その回転力によって弾かれてしまった怪物は、体をアグルが舞い上がった方向に向ける。すると、アグルはそこでとてつもない速さで怪物へと飛び掛かった。

 

「デゥアァァァァ!!」

 

 その勢いに対応できるはずもなく、怪物は飛び込んでくるアグルに捕まってしまう。そのまま怪物はアグルに捕まえられた形で地面を転がり、勢いが死んだところでアグルに投げ飛ばされた。そしてアグルは、何事もなかったように立ち上がる。

 

「…弱いわね」

 

 怪物たちを一瞥し、ラキュースはそう呟いた。

 怪物たちと戦ってたキュースは、怪物たちがあまり強くない事に気が付いた。もちろん怪物の持つ巨大な体は驚異的だし、数も多い。だが、それだけだ。怪物たちはラキュースの想定よりもはるかに軽く、動きも遅い。それにラキュースの目には、怪物たちがそこまで自分たちのような巨大な存在と戦い慣れていないように見えた。故に今のラキュースにとって、目の前の怪物たちは怪獣程恐ろしい存在ではなくなっていた。

 あるいは、ラキュース自身アルシェの登場で士気が上がっているのかもしれない。少なくとも1対5のような状況でもない限り勝てる。ラキュースの中には、そんな確信があった。

 その確信を胸に構えたラキュースの目に、何かの光が入ってきた。

 

「これは…?」

 

 その光の発生源を掴んでみると、そこにはアルシェが温泉地で手に入れたルーブクリスタルの姿があった。赤と青、アルシェと自分のように並び立つ二つのクリスタルを見て、ラキュースは理解する。

 ―今こそ、これを使う時!

 

「いくわよ!」

 

 クリスタルに語り掛けるような声と共に、ラキュースはジャイロを取り出す。まずは青いクリスタルをセットする。ジャイロはそれに応え、描かれていたウルトラマンの名を告げる。

 

≪ウルトラマンヒカリ!≫

 

 そしてラキュースはジャイロを掲げ、ハンドルを操作する。その光がラキュースを包み込んだ時、アグルの体にも変化が生じる。

 アグルの右腕に、青い光が集結する。絡み合う線のような光が形を作り、ガントレットのようなアイテム『ナイトブレス』へと変化したのだ。無論ラキュースは、それが何なのかを知らない。だがラキュースがそれを見た時、その使い方が頭の中に入ってきた。

 それに導かれるように、ラキュースは動き出す。

 

「ウルトラマンヒカリの力よ!」

 

 その声と同時に、アグルの体は先程蹴り飛ばした方の怪物に向く。アグルは動き出そうとする怪物を一瞥すると、ナイトブレスが出現した右腕を天高く掲げる。そこに稲光が生じ、右腕が胸元に運ばれることでそれは光の線に変わる。そしてアグルが光の集った右腕を相手側に向けるように十字を組むことで、一連のプロセスは完成した。

 その技の名をラキュースが叫ぶとともに、アグルもまた咆哮する。

 

「ナイトシュート!」「デゥアァァァッ!」

 

 アグルの組んだ十字から、青白い光線が発射され、それが怪物へと一直線に飛んでいく。怪物はそれを躱すことが出来ず、光線をまともに受けることとなった。怪物に怪獣程の耐久力はなく、よって光線を受けた所からの生存は望むべくもない。怪物は光線を受けると一瞬光り、そのまま爆散した。

 怪物の爆発を見届けたアグルは、そのままもう一体の怪物を見る。すると、ラキュースの手元でもう一つのクリスタルが光り輝く。

 ラキュースはその輝きに、クリスタルの声を聴いた気がした。―僕を使ってほしい、と。

 その声に応えるような形で、ラキュースは次なるクリスタルを装填した。

 

≪ウルトラマンメビウス!≫

 

 そしてジャイロの放つ輝きと共に、アグルの左腕に新たな輝きが宿る。それだけではない。アグルのナイトブレスが光となって、左腕の輝きに合流する。ひときわ強くなった輝きが晴れると、アグルの左腕にはメビウスとヒカリの力の結晶『ナイトメビウスブレス』が宿っていた。

 そしてアグルがナイトメビウスブレスを操作することで、光の剣『メビュームナイトブレード』が出現する。その輝きに、ラキュースはアグルセイバー以上の鋭さを感じた。

 

「ウルトラマンメビウスの力よ!」

 

 そしてアグルは剣を掲げ、怪物に飛び掛かる。アグルが左腕を大きく振りかぶると、光の剣は大きくしなりながら伸びていく。伸びきった光の剣を、アグルは思いっきり怪物に叩き込んだ。

 

「ブレードオーバーロード!」

 

 そして怪物はそれを回避することが出来ず、真っ二つにされた。そこにアグルは体を捻りつつ左腕を振り上げることで、剣をさらに動かす。輝く剣筋が8の字を描き、怪物は絶命。大爆発と共に消え去った。

 一方、怪物と戦うガイアにも、動きが生じる。

 

≪ウルトラマンダイナ!≫

「ウルトラマンダイナの力よ…!」

 

 かつてコダイゴンジアザーとの戦いでそうしたように、アルシェはジャイロとクリスタルの操作を行い、それに応えるかのようにガイアに光が集まっていく。ガイアは両腕を広げ、拳を合わせることで光の集合地点を作ると、両腕を回して光を集めていく。すると光は赤い球体へと変化し、それの完成と共にガイアの拳が放たれ、光の球体を押し出した。

 

「ガルネイトボンバー!」

 

 そしてアルシェの叫びとともに放たれた『ガルネイトボンバー』は、3体いた怪物のうちの一体に直撃する。かつてウルトラマンダイナが強敵との決着のため放った一撃に、怪物が抗うことが出来るわけもなく、一瞬の輝きと共に怪物は爆発した。

 それを見た怪物たちが恐れおののくかのよな動きが見せたのをアルシェは見逃さない。アルシェは再び、ジャイロと同じクリスタルを手に取り、次の一撃の用意を始める。

 

≪ウルトラマンダイナ!≫

「ウルトラマンダイナの力よ…!」

 

 ジャイロの操作が終わった瞬間、突如ガイアの姿が消失した。その現象に怪物たちは混乱したかのような動きを見せるが、ガイアの姿を捉えることはできない。何故ならガイアは奇跡のような瞬間移動で、すでに1体の怪物の背後を取ってたのだから。

 そしてガイアは額に両腕を合わせ、そこに光を発生させる。ガイアがその光を右手に宿し掲げると、光が渦を巻いて集結し、大きな発光体へと変化する。ガイアはそれを押し出すような形で発射した。

 

「レボリウムウェーブ!」

 

 ガイアの放った光が、渦巻く光線のような形となり、後ろを向いていた怪物に向かっていく。怪物はそこで用なく異変に気が付いたがもう遅い。怪物は為すすべもなく、その身に『レボリウムウェーブ』を受ける結果となった。

 そして『レボリウムウェーブ』はただの光線ではない。『レボリウムウェーブ』は時空エネルギーを集約した超衝撃波であり、その力はブラックホールを呼び起こす。怪物は突如発生した超重力の檻に囚われ、跡形もなく消滅することとなった。

 残る怪物は、後一体。最早混乱の極みに陥ったのかおろおろするばかりの怪物の前に、二人のウルトラマンが立ちはだかる。怪物を見たラキュースの中には、〆を飾るにふさわしい技が浮かんでいる。ラキュースはそのことを胸に、隣に立つ友に声をかけた。

 

「アルシェ、あの技で行くわ。私たち二人の気持ちを、一つに」

「…うん!」

 

 アルシェの力強い返事とともに、ラキュースの目の前に『オーブリングNEO』がその姿を現す。ラキュースはそれをつかみ取り、ジャイロにセットし起動させる。

 

≪トリプルオリジウム光線!≫

 

 そして二人のウルトラマンが作り出す頂に光が集結し、光に呼ばれウルトラマンオーブが現れる。オーブのかざした円にさらなる光が集結し、完全なる円を描いた時、3人のウルトラマンは一斉に構えを取り、十字を組んで怪物に狙いをつけた。

 

「「トリプルオリジウム光線っ!!!」」

 

 そして放たれた偉大なる光は、強大なる光線となり、怪物に直撃する。怪物はその輝きの中に消え去っていき―大爆発とともに、消え去る事となった。

 二人のウルトラマンは光の行く先を見届けると、構えを解く。そして向かい合い、拳を打ちつけ合い、最後に握手する。二人のウルトラマンの互いを褒め称える行為が、この戦いが終わったということを強調する。

 こうして、怪物・黒い仔山羊の群れとの戦いは、ウルトラマンの勝利という結果で終結するのであった。

 めでたしめでたし。

 

 

 

「…ん…あれ、自分…」

「…おや、おはようございます。よく眠れましたか?」

「…おはよう。自分は、寝てた?」

「ええ、ぐっすりと。最近は忙しかったですからね。たまには昼寝もいいものだと思いますよ」

「そう…ありがとう」

「いえいえ、それほどでも」

「…そう、わかった」

「…?どうかしましたか?」

「ん、大したことないよ。ただ…」

「ただ?」

「…不思議な、夢を見ていた気がする」




タイトルですが、元ネタはウルトラマン第2話、そして伝説のウルトラマン最初の制作第1話「侵略者を撃て」…ではなく、ウルトラギャラクシー大怪獣バトル NEVER ENDING ODYSSEYより第8話「潜入者を撃て!」です。これはこないだルーブでゴモラが出て来たから…ではないです。多分。

~用語解説~
『夢』
ウルトラマンティガ第40話のサブタイトル。一言で言うと、ダイゴ隊員が敵前逃亡するお話。今回の話の最初の文は、この「夢」のナレーションを元ネタとしている。気になる人は見てみよう。

『黒い仔山羊』
ユグドラシルのモンスターの一種。超位魔法「黒き豊穣への貢/イア・シュブニグラス」の発動により、即死した死者数に比例して召喚されるモンスター。アインズ様は後に大虐殺と呼ばれる王国と帝国の戦争時にこの魔法をブッパし、通常は1体召喚出来れば上出来のところ、7万人の生贄を捧げたことで5体の召喚に成功した。大きさは書籍版の場合触手を除いても10メートル。なのでウルトラマンと戦うにはまるで背が足りない…のだが、アニメでのこいつはやたらと大きく描かれており、有志の計算によると「足元の兵士を170cmとした場合、黒い仔山羊の大きさはおよそ80メートル」という結果が出た。断っておくと、この作品は一応書籍版準拠である。が、今回だけは諸般の事情で面白そうなこっちを採用した。てへ。今回はウルトラマンにボコボコにされる事になったが、まあLv90を超える程度なので…

『ナイトブレス』
選ばれたのか…キングに!ウルトラマンヒカリの持つ変身アイテムであり、護身用の武器であり、必殺技の媒体でもある万能アイテム。ウルトラマンヒカリが惑星トワールにいたウルトラマンキングに授けられたアイテムで、元の持ち主が持ち主なだけあって大概チート。これ一つでメビウスをメビウスブレイブにヴァージョンアップできる他、エンペラ星人の力で消滅したメビウスを復活させたりした。

『ナイトシュート』
ウルトラマンヒカリの必殺技。ハンターナイトツルギの状態でも使用でき、二つ目のアーブギアで変身したツルギの場合のみ、ナイトシュートは虹色に変化する特徴を持つ。ナイトブレスを天に掲げ、稲妻が落ちたと同時に胸元に構え、それを流れるような動きで十字に組む…という一連の動きはとても流麗なので必見。十字を組むときはスペシウム光線と違い相手の方に向ける腕が逆になっていないといけないのもこの光線ならではの特徴である。

『ナイトメビウスブレス』
『メビュームナイトブレード』
せっかくなので同時に解説。ナイトメビウスブレスはメビウスブレスにヒカリから託されたナイトブレスを合体させたもので、これによりメビウスはメビウスブレイブに進化する。
メビュームナイトブレードはナイトメビウスブレスから繰り出す光の剣であり、メビウスのメビュームブレードやヒカリのナイトブレードを合わせた上位互換技。この剣をもって戦うというのがメビウスブレイブのスタイルであり、その性質上だいたいトドメ専用形態となっていた。

『ブレードオーバーロード』
ウルトラマンメビウス・メビウスブレイブの必殺技の一つ。相手に瞬間的に巨大化させたメビュームナイトブレードを叩きつけて切り裂き、その後反転し動きに逆らうことなくさらに相手を切り裂くという技。相手はこの技を受けると8の字、つまり∞の形に切られることになる。一連の動きは美しいのでやはり必見。

『ガルネイトボンバー』
ウルトラマンダイナ・ストロングタイプの必殺技。シューティングバージョンと劇中未使用の投げ技・スウィングバージョンが存在する。シューティングバージョンはストロングタイプ唯一の光線技で、胸の前で両拳を合わせてエネルギー(この技に限り「気の力」という説明になっている)を集約し、パンチアクションで放つ超高熱光弾というシロモノ。この技でネオザルスを相手の光線ごと貫いた。またトラウマ怪獣マリキュラ戦ではバリアで相手の光弾を受け止め、投げ返すという形で発射された。特別な呼称はない。

『レボリウムウェーブ』
ウルトラマンダイナ・ミラクルタイプの必殺技。アタックバージョンと吸収反射のリバースバージョン、またアタックバージョンには超広範囲殲滅型のタイプⅠ、それに重力を加えたタイプⅡという派生技が存在する。アタックバージョンは右手の掌に時空エネルギーを集約して超衝撃波を撃ち出し、敵の背後にブラックホールを出現させ、その中に押し込んで圧殺し、跡形も無く消滅させるというとんでもない技。最初の頃は火力に掛けると思われていたミラクルタイプの評価は、このとんでもない技で覆された。ただしジオモスやワンゼットには防がれ、グライキスには躱されたりしている。それでも特殊な状況でなければ防げないあたり、この技の恐ろしさは群を抜いている。そしてこの技が解禁されたという事は、倒せない怪獣はほぼいない=怪獣を出せない理由の一つ「技が有効ではない」が成立するケースが激減したことを意味する…



いやーはっちゃけました。この後どうなるか作者にもわかりませんが、まあどうにかなるだろうということで。(ノープラン)後は未来の作者に任せた!
皆もウルトラマンチャンネルにてウルトラマンガイア12話『野獣包囲網』を見よう!
同時配信の『超時空の大決戦』及び続編小説『超時空のアドベンチャー』もよろしく!
『超時空のアドベンチャー』は2018年11月30日発売予定!

《追記》
次回は11月28日水曜18時、いつもの時間に投稿予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。