どうにもならない、そんな時…なんだけどさぁ! 作:#任意の文字列
あ、今回は陰謀回ですね。多分。
ウルトラマンガイア12話『野獣包囲網』、人狼回。人狼回という事で、みんな大好き「序盤人狼に襲われる人」ことらくだ便の配達員の清水一彦さんが登場。まあやられましたが、実はこの人こそウルトラマンアグルのアクターさん。人間サイズの戦いは負けたけど、その分アグルとしての戦いはキレッキレで圧倒していたので良しとしましょう。因みにガイアのアクターさんの一人・中村浩二さんはハーキューリースの桑原隊員を演じています。後は俺のメモリィィィィィ!!の人とか。
梶尾さん!何やってるんですか!…いや本当に何をやっているのか、みたいな回でした。君ら本当に防衛隊のトップガンだったの?体力は、まあ夜通し走り回ったゆえのあの様何でしょうが、射撃の腕がアレだったりウルフガスにビビったりといろいろ情けないなのはちょっと…まあ名誉挽回したので良しとしましょう。因みにこの話、ガイアの貴重なギャグ回でありいつもは頼もしい梶尾リーダーの意外な一面が見られるのでとっても好きです。北田と大河原?あいつらいつもあんな感じでは?(正しい歴史を忘れている並感)
ここでリザードの瀬沼さん初登場。ちょいちょい出てきて活躍してくれる縁の下の力持ちな人で、個人的にはきちっと仕事をこなしてそうでとても好き。まあ今回みたいにウルフガスにやられたりクインメザードに操られて我夢に消火器を浴びせられたリするんですが…
登場怪獣は獣人ウルフガス。生態兵器であるウルフファイヤーと違い出自は正確には不明。でコメントですが、デザインは好み。ただ、実力はちょっと…アグルの不意を突いたり頑張ってはいたのですが、生身の藤宮君にビビったり結局アグルにぼこぼこにされたり弱い寄りの不安定、といった感じですかね。ガスになる、というのを戦闘でうまく使えたら面白かったのでは、と思います。
そしてやはり対立するガイアとアグル。同じ正義のために戦うウルトラマンが方法論の違いで対立する、というのはガイアならではの魅力でしょう(ハンターナイトツルギは復讐者なので違う)。因みに初期案ではアグルに街ごと吹き飛ばされるオチだった模様。そうじゃなくてよかった…
『超時空の大決戦』は第三章、アドベンチャー編。いじめっ子のリーダー・浩少年ですが、彼もまた怪獣オタク。まあサタンビゾーの設定すらすら言えてましたからね。現在放送中のアニメ『SSSS.GRIDMAN』の重要キャラ・新条アカネちゃんとは脚本家が同じという事もあり少し被って見えますが、夢は日本一のモデラーだぜ!とのたまう浩少年の方が前向きかつ純粋で百倍まともに見えます。まあアカネちゃんは現状いろいろアレだし、見えない方がおかしいですが…後浩少年の口ぶりだと、彼もまたいじめにあっていたんでしょうか。いじめはよくない、これ絶対。です。
そして現れるのが、最強合体獣キング・オブ・モンース!!。キングオブモンス、デザインも強さも文句なしですが、他のスキューラ、バジリスが名前を神話からもらってるのに対しこいつはストレートな名前で、かつ子供が考えたにしては少し捻ってあってとっても好きです。
我夢ですが、こいつめちゃめちゃカッコいいな…!行けるかもわからない世界を、少し話ただけの少年たちを救おうと、成功するかもわからない実験を強行するのもカッコいいですが、勉少年らのピンチにメインテーマと共に現れるのは本当にカッコよくてカッコよくて…しかしアドベンチャーってマルチバース設定が整備された今だと本当にすごい…いや宇宙警備隊がゼロを送り出した時のあれとはいろいろ前提が違うのですが、それでも地球由来の技術だけで並行世界の壁を超えるマシンを作るのはホントすごいことだと思います。あとガイアがめちゃめちゃ元気ですが、あれは赤い球がビックになったからかな?
しかし、キングオブモンスはやはり強い。それどころか、幼少時の入野自由演じる優少年(ちなみに勉少年は濱田岳が演じています)が赤い球に操られ、その結果巨大顎海獣スキューラ、骨翼超獣バジリスが出現。さあ、どうなる!?
原作キャラの魔改造に着手しだした二次創作者の屑
体が揺れる感覚に、心地よさの中に漂っていた意識が浮上していく。
「…ぅん…」
再びの揺れとともに、意識が繋がる。瞳を開けると、そこには見慣れた仲間の顔が広がっていた。
「…ティナ?ティア?」
「…ッチ」
半分寝ぼけた頭のまま、ラキュースは目の前にいる仲間の名前を挙げていく。顔を思いっきり近づけていた忍者の姉妹の片割れは、小さく舌打ちするとともに、背後の座席に座りなおす。その隣では、もう片方の姉妹が「あ、起きた。とりあえず目の前にいるのはティナ。だから私は悪くない。それだけは伝えたかった」などと口にしていた。
「何を言ってるの?これを言い出したのはティアだから。私はこいつにやらされただけ」
「ティナこそ何を言ってるの?ノリノリでやってたくせに度の口がそんなことを言うのやら」
「…?」
未だ半分眠りの中にいるラキュースには、目の魔で繰り広げられている双子の言い争いが理解できない。いったいどういう事かと眠そうな顔のまま周囲を見渡すラキュースに、横から突然液体の入った瓶が差し出された。
「おはよう。よく寝ていたじゃないか」
「…イビルアイ?」
「それくらいはわかるか。ほら、これでも飲んで目を覚ませ」
イビルアイから渡された瓶を受け取り、ラキュースはそれを呷る。するとラキュースの口の中に、言いようのない苦みと渋みが広がった。その味が、ラキュースの意識を否が応でも明瞭としたものに覚醒させていく。
覚醒しだした頭で、ラキュースは現状を思い出した。現在、ラキュース含む『蒼の薔薇』の面々は、ある依頼を受け馬車で移動している所だ。本来なら、最近復活魔法で復活し戦闘能力の落ち込んだガガーランとティアの修行に専念したいところだったのだが、今回の依頼は依頼主がラキュースの知人でもある王国の王女であり、彼女が依頼をしてくる場合は重大な依が多いため、全員で向かう事になったのである。依頼主である王女が今回の依頼について、かつて王国で行った麻薬撲滅の依頼よりも重大そうな様子で依頼してきたのも、決め手の一つだった。
また、依頼内容が気になったというのもある。依頼というのは、国境付近のある場所で不思議な現象が起きており、それを調べてほしいというもの。どうも「空が虹色になる」「夕暮れと共に音が鳴る」など様々なことが起きているようだが、その中でラキュースは「大きな影が見える」というものに着目した。もしこの「大きな影」というのが怪獣の仕業なら、自分が出るしかない。ラキュースは友である王女に対し、自分がウルトラマンである事を明かしてはおらず、故にこの依頼を振ってもらえたのは幸運だったと考えていた。
因みに現在馬車の中にはラキュースの他イビルアイにティア、ティナが乗っており、残るガガーランは馬車の外にいる。今回乗ってる馬車の御者が何やらガガーランの好みに入る部類だったらしく、彼女は隣に座ると言って聞かなかったのだ。
閑話休題。
とりあえず手に取った飲料物を全て飲み込み、目が覚めたラキュースは隣に座るイビルアイに声をかけた。
「おはよう、イビルアイ。私、どれくらい寝てた?」
「さあ?あまり興味ないが、そこまで長い間寝ていたわけではない。…それはそうと、私自身はこちらにもさほど興味はないんだが…目の前を見てみろ」
「…?」
ラキュースは言われるがままに、対面を見る。そこには、双子忍者が何やら言い争っている姿がある。
「ティア、往生際が悪い。古来より言い出しっぺが責任を取ることは、イジャニーヤ秘伝の古文書にも書いてある。諦めた方がいい」
「ティナこそ諦めた方がいい。私の中の古文書には古の時代より責任を取るのは実行犯と書いてある。元より乗り気だったティナに文句は言わせない」
「ティア…!」
「ティナ…!」
二人の会話を聞いていると、二人はどうやら責任の押し付け合いをしているようだった。そんな二人を見ているラキュースの目に、あるものが揺れ動いている姿が映る。
ティナが手にしているモノは、ラキュースもよく知っているモノ。化粧の時に使われる化粧筆だった。何故そんなものがあるのかはさて置き、その筆には何かインクのようなものがしみ込んでいるのが見える。
…ラキュースの中で、ティアたちの会話、ティナが持つ筆とそれに付着したインクの事がつながっていく。すべてがつながり状況を理解したラキュースの顔に浮かんでいたのは―笑顔。ただし純粋な怒りの籠った、恐怖を与える表情だった。
「ねぇ、二人とも」
「「何…ひっ!?」」
二人の怯える声が重なる。ラキュースの顔を見ると同時に、彼女の顔に込められた感情が伝わったらしい。しかしラキュースはそれを意に介することなく、いたって穏やかに務めることを意識しつつ、そのままの表情で短く言い放つ。
「後で、お話ね」
「「…いや、これh「返事」ハイッ!!」」
「よろしい」
ラキュースは二人の返事に、満面の笑みで答えた。一体二人が何におびえているのやら、とでも言いそうな調子で一連の会話を終えたラキュースは、怯える二人の忍者を気にすることなく、自分の席に深々と座り直した。隣ではイビルアイが楽しそうに含み笑いを漏らしているが、これはあまり関係ないだろう。
とにかく後でどう仕置きしようかなどと考えるラキュースであったが、ふと、ある事が頭の中に浮かびあがる。
(…そういえば、私は、何か夢を見ていたような…)
ラキュースの中で、そのことが妙に引っ掛かる。自分は、夢を見ていた気がするのだと。どんな夢なのかは思い出せないが、その夢は不思議な夢だったような気がする。その夢には、印象的な何かが出てきた気がするのだ。何と無くそんなとりとめのない考えが頭の中に駆け巡り、ラキュースは何とか夢の事を思い出そうとした。
だが、考えても考えても、夢の内容は思い出せなかった。
「…ま、いいか」
やがてラキュースはそう小さく呟き、思考を中断した。夢なんてそもそも不思議なものだし、その内容は大した意味がないものが大半だ。それに夢なんて見ていたことは覚えていても内容が思い出せない事なんてよくある事だし、気にするほどでもないだろう。ラキュースはそう判断し、そのことはもう考えないことにした。
それより今は仕置きの事か依頼の事。現実のやるべきことに集中しようと気持ちを切り替えようとして、ふとポケットに何やら硬い感触がある事にラキュースは気が付いた。
「…これは」
それを引っ張り出してみれば、そこにあったのは二つの結晶体。最新の友人たるアルシェにルーブクリスタルと教えられたそれは、確か温泉地でアルシェが手に入れたと言っていたクリスタルそのものであった。
『炎』と『鎧』という、見慣れないけど何故か意味は分かる文字が描かれたクリスタル達を見て、ラキュースは遠くにいるアルシェの事を思い出した。温泉地で別れしばらくたったが、彼女は何をしているのだろうか。ワーカーとして働いているのか、それともウルトラマンとして戦っているのか。
アルシェの事を考えると、ラキュースの胸がぽかぽかとする。ラキュースはこの感覚が、嫌いではなかった。
「…また、会えるといいな」
それまでには、このクリスタルの事も使えるようにならないと。そう思い、ラキュースはクリスタルを仕舞いこむ。
何故だか、今ならこのクリスタルもすぐに使いこなせる気がする。そんな考えが、ラキュースの中で確信めいて存在していた。
「…そろそろ、ラキュース達は指定の場所に到着するところでしょうか」
王城にある自室の窓の向こうを見つつ、黄金の姫はそんなことを口にした。ラキュースが生命の美しさを持つなら、彼女の持つ美しさは宝石のそれ。見るものすべてを魅了するような息遣いで、この部屋の主は空を見る。
彼女の名は、ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ。リ・エスティーゼ王国の第三王女その人である。彼女は自分の部屋で、風変わりな箱のような物を片手にくつろいでいた。
「ラキュース達が、無事に仕事を終えてくれればいいのだけど」
ラナーは窓の外、外界の方を見つつ、今回自分が依頼を行った者達の事を呟く。ラナーにとって、今回の依頼はかなり重要なポジションを取っている。ならば依頼の動向を案じ、それが言葉に出るという事も珍しいことではないだろう。ラナーという少女が、人とはかけ離れた本性を持っていたとしても、だ。
そして依頼の事を気に掛けていたからか、ラナーの脳裏に彼女が気に掛ける貴族の令嬢の顔が浮かびあがった。
「ラキュース…」
ラナーは物憂げに彼女の名を口にする。ここ数日の間、ラナーは珍しくラキュースの事を考えている時間が多めになっていた。
ラナーはラキュースの、ここ数日の間の変化の事を考える。まず前提として、ラナーから見たラキュースとは、幼いころから文武両道明朗快活、今とは違って大事な大事な騎士がいなかった頃の自分もよく気にしてくれていたと、いろいろ眩しい存在だった。知恵がつき周囲との違いを理解し、しかし今と違って大事な兵士がいなかった頃のラナーが、少しだけ羨ましさを覚えたくらいに。
しかし、一年半ほど前から、その輝きが鳴りを潜めていた。理由は、当時聞いてみたもののわからず、彼女の仲間である『蒼の薔薇』に接触しても皆口を噤んでいたためわからなかった。しかし当時日に日に暗くなっていくラキュースを見れば、ラナーでなくともラキュースが何か悩みを抱えていて、それがとてつもなく重たい問題になっていることは簡単に予測できるくらい、ラキュースは憔悴していた。
だが、ラナーはこのことについて、ラキュースの変化に気が付いた一年以上前にそこまで深く関わりを持たないことを決めていた。このことがラキュースを慕う仲間たちがまともに話す気がないくらい重い問題であり、そもそも自身では性格上おそらく助けにならないだろうと、すぐ理解したが故に。そして、ラキュースの悩みはかなり長引きそうだと漠然と感じていた。解決に10年強はかかるだろう、というのがラナーの最近の予測だった。
しかし、その予測は唐突に裏切られることになる。
「本当に、元気になったわね」
ラナーは少し前、依頼を行ったときの事を思い出す。そこには、暗く暗く堕ちていったかつてのラキュースの姿はどこにもなく、かつての輝かしき彼女が舞い戻っていた。
いったい何が起こったのか。ラナーが問いかけると、ラキュースははにかみがらこう答えた。何でも、友が出来たのだと。その友に、助けてもらったのだと。その友というのが今のラキュースにとって重要な―例えば、精神的支柱のような―存在だという事は、その友、アルシェ・イーブ・リイル・フルトの話をする際のラキュースの嬉しそうな顔を見れば、長年彼女を見てきたラナーでなくとも一発で理解できた。
ここで一つ整理しておくと、ラナーはラキュースと友人関係にある、とされている。少なくともラキュースはラナーの事を親友だと思っており、二人の周囲にもそういう認識を持つものが少なくない。ゆえに、今のラナーを見ればこう考える者がいるだろう。ラナーは、ラキュースを新しい友に取られて嫉妬しているのだ、と。
「本当に、残念ね」
―あえて言おう。その考えは、ラナーという少女を理解していない者の考えである。
「もう少しそのままだったら、私のお人形になっていたのに」
ラナーは心底残念そうな様子で、ラキュースの変化を評価した。
前述のとおり、ラナーはラキュースが暗くなった原因を正確に把握しているわけではない。だが、ラナーは知っている。ラキュースが、巷で
願わくば、ラキュースにはまだまだ闇の中にいてほしかった。そうすれば、ラナーが
「まあ、いいかしら」
とはいえもう終わった事。もしもの事を考えても徒労に終わるだけだし、人形にできなかったとはいえ未だラキュースは無邪気にラナーを友と慕っている。何なら今のラキュースは友情に敏感になっているし、むしろ使い道は増えたまである。ならば深く気にすることでもないだろう。前向きに考え、ラナーは思考を中断した。
そして何と無く窓の外を見ているうちに、ラナーはある事に気が付く。
「そういえば、そろそろ戦争の時期ね」
彼女の言う戦争とは、毎年リ・エスティーゼ王国とバハルス帝国の間で、主にカッツェ平野にて行われている戦闘の事を指す。リ・エスティーゼ王国はバハルス帝国と目下戦争中であり、帝国側の収穫の時期を狙う攻撃により王国が次第に衰退しているのが現状となっている。ラナーに限らず、この状況を知る有識者達は皆王国が次第に滅びそして敗ける未来を予見しているほどだ。
だが、最近はこの戦闘がお流れになっている。ここ二年程、カッツェ平原での戦闘に限らず帝国の侵攻は明らかに勢いを欠いているのだ。
理由は簡単、怪獣である。およそ二年程前から突如存在が確認された怪獣たちは、その超常的な力をもって帝国も王国も、そして周辺諸国も荒らしまわった。特に帝国での怪獣出没が顕著であり、それゆえ帝国は周辺諸国に比べ被害が大きくなった。その結果、帝国は弱体化し、戦争の手を緩めざるを得なくなったのである。
しかし、帝国にとって幸いだった事が3つある。まず、帝国には怪獣出現と同時にウルトラマンが現れたこと。帝国に怪獣が出現するたびにウルトラマンもまた現れるため、怪獣はやがて退治される。民は怪獣に対する恐怖と絶望の中でウルトラマンの存在にわずかな希望を見出し、周辺諸国は主に帝国に出現するウルトラマンを警戒せざるを得なくなった。
次に、周辺諸国にも怪獣が出現した事。基本怪獣は人知を超えた存在であり、退治はウルトラマンでもいない限り不可能とみていい。しかしウルトラマンの内よく出現する赤い方は、なぜか帝国領内以外の怪獣出現に対し、初動が遅い傾向にあるのだ。これはウルトラマンは帝国領内のどこかを活動拠点としていることを表すのだと考えられる要素だが、とにかく怪獣の被害が馬鹿にならないため周辺諸国も自分の国の事で一杯になりがちなのである。もちろん、これは王国も例外ではない。
そして最後は、帝国の指導者が優秀だったこと。帝国を治める鮮血帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは優秀な君主であり、怪獣の脅威にさらされる帝国を何とかもたせている。それどころか様々な政策を繰り出し帝国の底上げを行ったことで、帝国は活気を取り戻しているとか。最も帝国の民から怪獣への恐怖が消えたわけではなく、それどころか怪獣を退治できないという帝国の一面がよくクローズアップされるせいで、鮮血帝の求心力は高くはないのだが。
とにかく、今の帝国には幸運な面もある。だが、根本的には周辺諸侯よりも多く怪獣の被害を受けているのが現状だ。よって、これからも帝国の侵攻は停滞した状態が続く、というのが現在優位に立つ見解である。ラナーもこの情勢の見方に、異論はなかった。
「でも、戦争は起きるわ」
―ラナーは知っている。今年、戦争は起きると。カッツェ平原での帝国と王国の武力衝突が、情勢を無視して発生するのだと。そしてそれが、
確信があるわけではない。ラナー自身、戦闘が起これば王国が負ける可能性が高いとは考えているものの、情勢だけ見れば戦闘は今年もないだろう、と考えてしまう。
だが、それはない。戦闘は起こる。なぜなら、それがラナーの
「…本当に、何が望みなのかしら」
真の主の望みを思い返し、ラナーは思考する。果たして彼女の主は、何がお望みなのだろうか。
しかし、ラナーがどれだけ考えても、答えは出ない。ラナーをもってしても、彼女の今の主の存在は、理解の外にあった。無理矢理推理するならば、アインズ・ウール・ゴウンの存在が浮かび上がる。ラナーが支配した
「まあ、いいわ」
考えるだけ無駄に近い主への洞察を、早々に取りやめる。ラナーは何度も主について考えてみてはいたが、その内何も理解できない事に気が付いたからだ。
わかるのは、ただ一つ。ラナーの主は、根源的な破滅を望んでいるということ。彼女の主は、すべての行動をその一点に収束させている。それだけだ。
故に主の名すら、ラナーは知らない。無理に名づけるなら―根源的破滅招来体、とでもいったところか。ラナーは他人事のように考えていた。
主の事は考えても無駄。それがラナーの出した結論。そんなことを考えるより、未来の事を考えよう。そう思うと、ラナーの中に、ある少年騎士の事が浮かび上がってくる。
「ああ、クライム…」
ラナーは心の底から愛おし気に、大事な大事な騎士の名前を口にする。
そして、同時に主への感謝の念が生まれる。ラナーの主は、彼女に素晴らしい力を与えてくれた。この力は、騎士との未来を彩るのにこれ以上のものはない、とラナーは解釈している。そして、主が与える報酬も、ラナーが騎士との未来を歩むのに重要なファクターとなる。主の途方もない力、そして報酬は、ラナーの心を惹きつけてやまないものだった。
だから、ラナーは今の主を敬愛している。今の主は、騎士を手にしたい自分の事を応援してくれるから。その敬愛の感情からか、ラナーの手は自然と、主が与えてくれたあるものへと伸びていく。ラナーがその与えられたもの―黒く光る、短い杖のようなものを手にしたとき、ラナーは自分の部屋の扉の向こうに、同業者の気配を感じた。
「邪魔をするよ」
気配の主は、全体的に白と黒の配色が目立つ、外見は未だ10代半ばにみえる少女であった。これまた正面から真っ二つに白と黒に分かれた美しい髪と、それに隠されたエルフ耳の持ち主―ラナーは彼女から断片的に聞いた、彼女自身の生い立ちの話から、ハーフエルフではと考えている―は、ノックをすることもなく部屋へと入る。その光景に、誰かが物申すことはない。それどころか、この周辺に人の気配は存在しない。ラナーと気配の主に与えられた、人払いと認識阻害の力は十分な効力を発揮していた。
そのことについても、ラナーは感謝している。自分と主を同じくするこの同業者は、とてつもなく危険な存在なのだ。一応何ら制御できない愚者というわけではないが、それでもこの同業者と自分の騎士は極力合わせたくない、というのがラナーの本音だった。それは自分が怪しまれてしまうから、というよりも同業者が騎士に何かする可能性を極力排除したかったからなのだが。
そんな思考は隅において、ラナーは特に表情を意識することなく、入ってきた同業者に声をかけた。
「あら、お城の探険は終わったのかしら」
「うん、思っていたより楽しかったよ。やはり外はいいね。あんな場所に比べたら、何処も天国な気はするけど」
「そう…スレイン法国最強、漆黒聖典の番外席次というのも大変なのね、『絶死絶命』さん?」
「まあ、そうね…ご主人様に目立つような動きをするなって言われた手前、普段の監視にはある程度付き合わないといけないから…」
同業者―スレイン法国の特殊部隊である漆黒聖典の番外席次、通称『絶死絶命』は、「まあ、もう殺せるけどね」と言ってラナーの対面に座った。…毎度のことながら、この法国最強のハーフエルフにハラハラさせられるのはどうにかならないものか、とラナーは一人考える。彼女の発言は基本、危うい。彼女もまた、ラナー同様に主を敬愛しているし愚か者ではないため、そこまで危険な行為には出ないとは考えているが、それでもラナーは気にかかるのだ。それは友情からの心配ではなく、疑念と不振からなるものなのだが。
そんな今日の夕飯を決めるような調子で白金の竜王すら屠殺しそうな勢いの少女は、ラナーを見て、そしてラナーの手元にある箱に目を向けた。
「…ねえラナー、私のルビクキュー、どうだった?」
「…あらごめんなさい。少し遊んだだけで、置いたままにしていたわ」
「ふーん…ひょっとして、君でも解けなかったとか?」
「…いえ、そういうわけではありませんわ」
何故か自慢げな番外席次をよそに、ラナーはルビクキューとかいうカラフルな箱を手に取り、それを動かし始める。別に、目の前のハーフエルフのドヤ顔がうっとおしいとか、そういうわけではない。
…ルビクキューを触るうちに、ラナーは何故目の前の怪人がこの箱を弄んでいるのか、何と無くわかってきた。この箱は、どうやらいくつもある色の付いた小さな面を動かし、その小さな面をそろえ大きな一色の面を作るというのが目的となっているらしい。いきなり箱の色を合わせるのにはなかなか頭を使うし、面を動かす感触も心地よいものがあり、暇つぶしには十分すぎる。これ自体の構造は複雑ではなさそうだし、量産すれば王国に新たな流行を作り出せるかもしれない。そんな面倒をしなくとも、騎士との触れ合いのネタにはもってこいのモノである時点で、ラナーの中の箱への評価は鰻登りとなっていた。
とはいえ、ラナー自身はこのルビクキューに対しそこまで難しさを感じてはいない。数回程面を動かした後、ラナーは一気に面を動かしてく。適当に面を動かす様子に最初はニヤケ顔が止まらなかった番外席次も、そのよどみない動きに次第に顔が引きつっていく。
そして触りだして数分持たたぬうちに、ラナーの掌にはすべての色がそろったルビクキューが鎮座していた。
「…ふう」
色がそろったことに、満足感を感じる。思わぬ感情の発露もあって、ラナーは内心とても上機嫌だった。
「ルビクキュー、想像以上に楽しめました。ありがとう、番外席次さん…どうか、しましたか?」
だが、上機嫌なラナーに反して、番外席次の顔は引きつったままだ。色のそろったルビクキューを、元の持ち主たるハーフエルフは無言で手に取って、しっかりと検分する。
そして色がきっちりそろっていることを認識したのか、番外席次はルビクキューを置き、口を開く。
「…最悪」
その声は、苛立ちをまるで隠していなかった。番外席次はそのまま、目の前の王女への話を続ける。
「…私は、このルビクキューを気に入っているの。ハッキリ言えば、宝物だって思ってる」
「はい…?」
「その宝物を、ぽっと出の女に掻っ攫われて、しかも私より上手く…そういうの、わからないかしら」
「…はあ」
…つまり、目の前のハーフエルフは、自分より上手くルビクキューを触れるラナーに苛立ったのだ。ラナーの頭脳は、その事実をたやすくはじき出す。この番外席次は、ルビクキューを自分よりうまく扱えることが、気にくわないのだと。
訳の分からない理由で苛立ちをぶつけられたことに、次第にラナーも腹が立ってくる。ハーフエルフめ、ルビクキューが自分より上手く扱えないのは、あなた自身の問題でしょうに。そんな逆恨みをなぜ聞かなくてはならないのか。理解すればするほど、うっとおしく思えてくる。
そうなれば、ラナーの口が開くのも早かった。
「番外席次さん、あなたがルビクキューについてセンスがないなのはわかりましたが、だからといって他人に当たるのはどうかと思います」
「…何?」
「あなた、私よりも長くこのおもちゃを遊んでいるのでしょう?それなのに私にあんな形で怒るのは、あなたにこれを触るセンスがないことの証明よ。だって、少し触った私だって、すぐに解けたのだから」
「…ラナー、君、人を怒らせるのが上手い王女なんだね」
口撃を受け、苛立ちが募った番外席次は、立ち上がると懐から赤黒い塊を取り出す。ラナーは毅然とした様子で、座ったまま先ほど取り出した黒き杖を取り出した。
これらこそが、彼女たちが主より賜った最強のアイテム。この世界の国々を、たやすく滅ぼせる程度の力。その姿は、知るものが見れば驚愕に包まれるのが容易に想像できる姿をとっていた。
番外席次の手にあるものは、赤と黒が主体の、面のようなアイテム。二本の角のようなものが目立つそれは、知るものが見ればこう言うだろう。色が違うが、あれは『ネオバトルナイザー』そのものだと。
ラナーの手にあるものは、黒く輝く短い杖。杖は両手で握りやすい形をしており、中央には金色の発行体が鎮座するそれは、知るものが見ればこう言うだろう。あれは『ダークエボルバー』そのものだと。
両者ともに、主から受け取った力の象徴を手に取り、睨み合いを続ける。その、第三者からは一瞬とも永劫ともとれるような睨み合いが続き―
「―やめよう」
―やがて、番外席次が乱暴に腰を下ろすことで終了した。
「…あら、もうお終いなのかしら」
「…まあ、時間の無駄だし。私たちには、やるべきこと、そして何よりも欲しいものあるからね」
番外席次は未だ不機嫌そうな様子で、ラナーに答える。ラナーはしげしげとその様子を眺め、やがて「そうですね」と笑顔で答えた。
そう、彼女たちには、主より指示された、彼女たちのやるべきことがある。すべては、主が目的を為すために。そして、彼女たちが主にもたらされることを約束された、報酬のために。
「この世界を受け取り、私とクライムだけの至福の時をもたらす糧にするために」
「この世界を見限り、まだ見ぬ強者と至高の敗北、そして強き子供を得るために」
受け取る手はずの報酬を、自分たちの夢を、ラナーと番外席次は、確かめ合うように語り合う。二人の道は、幸運なことに衝突する事はない。その事実こそ、この二人が協力できる大きな理由だった。
「…さて、そろそろお暇するわ。認識阻害も、限度があると思うし」
「そうですか?認識阻害は、時間経過ではそうそう破れることはないけれど」
「…試したの?勇敢というか、無謀というか」
少し呆れた様子の番外席次に、「可能と不可能を理解するのは当然よ」とこちらも呆れた様子でラナーも応答する。一瞬だけ、再び二人の間に緊張が走るが、それも一瞬。すぐに番外席次は立ち上がり、扉に向かっていく。間違いなく、真正面から出るつもりだろう。それに関しては何の問題もないことは理解していたので、ラナーは何も言う事はなかった。
二人はこの後、別れて任務にあたる。ラナーは王城で諸国の動向を探り、番外席次はあるものを探しに行く。二人は破滅の使徒たる魔人として、己の欲のために世界を脅かす。その行為に、二人は何ら罪悪感を感じていない。二人の行動を、止める者は誰一人としていない―
「―ん?」「あら?」
―否、一つだけ、存在する。
その唯一の存在、彼女たちの主の啓示が、二人の脳裏に直接届く。
その啓示に、二人は怪訝な表情で、顔を合わせる事となった。
タイトルですが、元ネタはウルトラマンネクサスから。ウルトラマンネクサス、タイトルが特徴的ですがその中でストライク・フォーメーションとかクロムチェスターδとかはっちゃけたりしているから面白い。因みにルインは破滅、デモンは魔人と訳してください。
後前回の話についてですが、まあそういう事です。実際の時系列は、アインズ様が魔導王を名乗り、その後王国に帝国の宣戦布告の知らせが届くまでの一か月間のどこか、といったところですかね。因みに王国と帝国間の戦争は怪獣の登場で二年前から停滞していました。ぶっちゃけ今も余裕はない…のですが、今人知を超えた存在の魔の手が、その前提を覆さんとしている…みたいな感じです。
~用語解説~
『ラナー・ティエール・シャルドロン・ライル・ヴァイセルフ』
リ・エスティーゼ王国第三王女。「黄金」と呼ばれる美しい姫で、オーバーロード作者・丸山くがね氏謹製の王様優秀度ランキングでは、エントリーした12キャラ中二位の鮮血帝を大きく突き放した理解外レベルの優秀さを見せるくらい優秀。根回しは苦手だが、基本は温厚で慈悲深い性格。…というのは表の顔で、裏の顔は自分の目的のために全てを裏切り罪悪感を感じない、という一流の殺し屋みたいな性格。表でも裏でも自分の兵士であるクライム君を愛しており途轍もなく執着しているが、それは「拾った子犬(クライム君)が自分に向ける視線の中に、「自分と同じ人間」を見出したため、満たされたから」というちょっと理解できない理由ゆえ。この世界ではアインズ様ではない真の主に、この世界をもらいそこでクライム君と暮らすという報酬を約束され、それを承諾したことでウルティノイドの力を与えられ破滅の尖兵となった。ウルティノイドは体力勝負のようで実際は知恵を使って人間を虐めるのが主な目的なのでピッタリなのだ。ナザリックにつけられたシャドウデーモンもすでに支配下。というか、スペースビーストにでもなってるんじゃないんですかね?(他人事)
『番外席次』
スレイン法国の特殊部隊、漆黒聖典に所属するハーフエルフ疑惑の女性で、通称『絶死絶命』。法国最強で不敗の存在であり、人類の守り手扱いされている。見た目は10代の少女だが年齢は明らかに違う。「白金の竜王」の感知を避けるために特定の場所から出ることさえ制限されているため、普段は六大神が広めたとされるルビクキューという玩具を弄っているが、二面揃えるのは苦手だったりする。表面上はクールな性格で、気だるげで陰鬱とした印象を受けるが、実際のところは同じ漆黒聖典のメンバーが死亡したと聞かされても何の感情も生まれないくらい、世の中の事に無関心。関心があるのは戦いで、そこで敗北を知る事、更には自分を負かした相手が男ならその間に子を作り母となる事を望んでいる。この世界では真の主に、別な世界で強者と出会うための力を与えるという報酬を約束され、それを承諾したことで、自身に薄くだがしっかり存在していたレイオニクスの力を覚醒させられ破滅の尖兵となった。よって元より高めだったその実力はさらに倍増、怪獣使いの力も体力が物を言うので非常にかみ合っている。また、真の主に与えられた力により自由に外出できるようになったため、現在世界を満喫している真っ最中だったりする。よって、主への忠誠度はかなり高めである。
『ネオバトルナイザー』
怪獣を操るアイテム「バトルナイザー」が進化した姿。縦長メカのバトルナイザーから、丸っこくレイブラッド星人似のファンタジーチックな姿になった。これを使うとレイオニクスは使役する怪獣とシンクロし、より強力なバトルを楽しめるが、いわゆる闇のデュエル仕様になるため大変危険(オンオフは可)。番外席次が持つものは、バーストモード(暴走状態)のレイモンとほぼ同じな赤黒主体という特別カラーである。
『ダークエボルバー』
ウルトラマンネクサスに登場する闇の巨人、ダークメフィストの変身アイテム。黒い棒のような形状をしており、これを胸の前に持ってきて引き伸ばすことで使用者をダークメフィストorダークメフィスト・ツヴァイに変身させる他、エネルギー弾を撃つことができ、武器としても使えるスグレモノ。ウルトラマンネクサスの変身アイテム・エボルトラスターのモチーフが日本刀なのに合わせ、こちらは薙刀がモチーフである。
強キャラを闇に染め(もともと闇属性だが)、いよいよ追い詰められていく作者。使い方が特殊なキャラを重要ポジに置いた作者の明日はどっちだ!
次回は12月5日水曜18時、いつもの時間に投稿予定です。
皆もウルトラマンチャンネルにてウルトラマンガイア13話『マリオネットの夜』を見よう!
同時配信の『超時空の大決戦』及び続編小説『超時空のアドベンチャー』もよろしく!
『超時空のアドベンチャー』は2018年11月30日発売予定!