どうにもならない、そんな時…なんだけどさぁ! 作:#任意の文字列
ウルトラマンガイア13話『マリオネットの夜』、ホラー回でしたね。街一つが完全に支配された中で戦う人間たちのドラマ、堪能させていただきました。
今回は吉井玲子と藤宮君の初の会話があったり、田端さんが活躍したりとKCB回でした。マスコミが好意的に描かれ、長期にわたり活躍するのもガイアの魅力。といっても吉井玲子は藤宮君との絡みがピックアップされるので独立したキャラクターっぽい気がしますが…そんな彼女と藤宮君の初の会話は玲子が藤宮君に噛みついて終わり、という形でしたが、これを機に二人は惹かれあう事になる。彼女との出会いは、藤宮君の変化を語る上で外すことのできない重要なファクターなのです。
登場怪獣は超空間波動怪獣サイコメザード。メザードの同族であり、通常攻撃は全く無意味ちうトンデモは健在。その上こいつには電話を通じ人々を支配する能力がある。やはり無言無表情で迫りくる人々はトラウマもの。ガイアから時代が進んだ現代社会において、むしろ凶悪になったと言える怪獣です。しかも、こういうホラー回の怪獣は弱かったりするのに、こいつは空中戦でガイアを翻弄できるくらい強いのが性質が悪い。洗脳した人間の盾という凶悪な技を使ってガイアを圧倒しましたが、結局アグルにやられるというオチ。今回のアグルはめちゃくちゃ強くて、この回のアグルがウルトラマンガイアにおけるアグルV1の全体的な印象に影響を与えていると思いました。
『超時空の大決戦』は最終章、超時空の大決戦。前回の事で大ピンチな勉少年ですが、それでも勇気を振り絞って赤い球に触れるのはホントすごい。赤い球に触れても大丈夫だった勉少年でしたが、この辺りは続編でも触れられることとなりました。
ウルトラマンはガイアだけじゃない!勉少年の願いが奇跡を呼び、ウルトラマンティガとウルトラマンダイナを呼び出した!この後の戦闘シーンにも流れる神BGM「三大ウルトラ戦士・超時空の大決戦」をバックに登場した二大ウルトラマンはやはりカッコいい!そして対決する三大ウルトラマンと三大怪獣。戦場はそれぞれティガとスキューラが海、ダイナとバジリスが宇宙、そしてガイアとキングオブモンスが街…それぞれがテレビでの最終決戦の地で戦う事になりました。この辺り、ティガとダイナに関してはよく言われることですが、ガイアもゾグ第二形態との最終決戦の地は都市なので同じなのです。
そして、戦いはウルトラマンの勝利に終わり、我夢達はそれぞれの世界に帰っていく。勉少年はいつもの生活に戻るけど、この戦いは決して忘れることはない…超時空の大決戦、まさに「君の勇気が地球を救う」物語だったのですね。改めて、堪能させていただきました。
そしてついに『ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア 超時空のアドベンチャー』が発売されました!ネタバレするのは流石にアレなので深い所に触らないように一言で言いますと、この小説はまさに超時空の大決戦の続編小説でした。すなわちティガ・ダイナ・ガイアの物語である事、一種のお祭りである事、そして物語の舞台が僕らの住む世界であるという事、これらを引き継いで生まれた小説というわけです。だからこの小説はガイアの小説ではないけど、そんなことは気にならない位に満足できる仕上がりだったと思います。
主役は、あの戦いを経験した五人の少年達。それに加えてもう一人、しかし我夢ではない。このもう一人の登場人物が最初に出てきた時、自分は「そ…ッッッ そうきたかァ~ッッッ」てなりました。いや~これはこの小説じゃないとできませんね!その手があったか!て感じです。流石は長谷川圭一先生、感服しました。その登場人物、実はガイアを知ってる人なら一度は名前を見たことがある人物なのですが…その辺りは小説を読もう!
後はお祭り映画の続きという事で、オリジナル以外にも様々なウルトラ怪獣が出現します。ていうか最初からいきなり意外過ぎるキャラが出てきて飛ばし過ぎですね。そしてティガ・ダイナ・ガイア、三大ウルトラマンらしいキャラも登場します!続きが気になった皆も書店に行って『ティガ・ダイナ&ウルトラマンガイア 超時空のアドベンチャー』を買おう!限定版には特製ピンズセット、Wカバー、スペシャルポスターがついてくるぞ!
小説を読んで「ひょっとして長谷川圭一先生も自分と同じような一面があるのか…?」という自惚れに近い疑念を抱いてしまう二次創作者の屑
巨体が、大地を揺らして歩いている。
この光景はウルトラマンになってから何度も見てきたものだが、それでもどこかその迫力に圧倒される自分がいる。やはり、怪獣という生き物は、いつの世も自分たち人間に畏怖を与え続ける存在なのだろう。
とはいえ、この光景はテレビの中の出来事ではなく、現実の出来事だ。悠長に見ている時間の余裕はあまりない。自分は適当な岩場に身を潜め、怪獣を肌で感じることで寝起きの頭が冴えていくのを感じつつ、平原を通過していく怪獣を改めて注視した。
「Kruu…」
唸り声を鳴らしつつ、魚にヒレの代わりの四つ足を生やしたような怪獣が闊歩していた。体を揺らしつつ四足歩行で歩く怪獣の先端には、良く回りそうならせん状の突起物。つまり、ロマンの塊・ドリルが存在していた。
深海怪獣グビラ。それが、この怪獣の名前である。グビラは特に暴れる訳でもなく、のんきに散歩をしているように見受けられる。どことなく楽しそうなその姿に、害意の類いは感じられなかった。
「グビラかぁ…」
思わず、怪獣の名前を呟いてしまう。しかし、それも仕方ないだろう。グビラという怪獣は、悪意があって暴れる類いの怪獣ではない。実際の所、目の前にいるグビラもその行動に悪意を感じることはできない。ただ散歩している様にしか見えないその姿から察するに、このグビラも悪意のないタイプのグビラなのだろう。
こういう場合、自分も鬼畜ヒーローの類いではないのでなだめてどうにかする、とういうかそうしたいのだが、そのなだめる行為というのはやりづらいのだ。ウルトラマンなりたての頃は、頭では怪獣を殺さず終わらせたいと考えていても余裕が全くなく、結局殺してしまうという事が多々あった。まあその怪獣の弔いというわけではないが、野ざらしにしたくなかったという考えもあって提言したのが怪獣ビジネスなのだが。
ともかく、怪獣をなだめて終わらせる、というのは単なる怪獣退治よりもかなり技量を要するのである。だから、自分は今でも条件がそろってて余裕のある時にしか怪獣をなだめて鎮めたりはしない。怪獣によっては鎮めるなんて無理難題な場合もあるし、怪獣を鎮めてもその後どうするかを考えなければ、結局怪獣も守るべき人も皆苦しめるだけで終わるのだから。
とはいえ、今回はなだめて終わらせるのにチャレンジしてもいいケースだろう。グビラはその名の通り海から来ている怪獣だが、今回もその例に倣ってか近場に海がある。そして、今回のグビラの出現場所は集落からは遠い。よって周囲には人がいないため、自分の戦い方にも幅が出ている。これなら、チャレンジは十分可能だろう。
ちなみに、ヘッケラン達は自分の近くにはいない。今回自分たちはワーカーの仕事で、帝国領内の海岸線近くに来ているのだが、依頼のあった集落に来る途中でグビラの姿を見かけたのだ。そこで自分は皆から離れ、怪獣の方に接近したのである。ヘッケラン達は距離を取った場所で待機し、自分が戦いを終わらせ飛び立ったところで狼煙を上げ、そこで合流する手はずになっている。一応自分がガイアになってるとすぐ皆の居場所はわかるのだが、正体がバレた後はこうして手厚い支援を行ってくれる。本当にありがたい。つくづく、自分が本当に仲間に恵まれているということがわかる。ありがとう、皆。
閑話休題。
グビラはこちらに気づく様子もなく、平地を散歩している。戦うなら今か。自分はグビラを視界に収めつつ、ジャイロを取り出そうとする。
だが、その時、闇色の輝きがグビラに襲い掛かった。
「KAaa!?」
突如飛来した禍々しい光弾が、グビラの体を撃ち抜く。突然の一撃に、グビラはたまらず悲鳴を上げ、横転した。
いったい何が。グビラの転倒で巻き起こった土煙が視界を奪う中、何とか下手人を探そうと目を凝らす。あの闇色の輝き、該当しそうな下手人はいくらかいるが、そのどれもがあまりいい予感がしないため、必死になって周囲を見渡す。
そして、グビラの後方に、下手人らしき存在がいた。その存在を認識したとたん、自分の中で血の気の引くような感覚を覚えることになる。
下手人の正体は、それだけ自分にとって恐るべき存在だった。
「そんな、あれは…!」
未だその姿を信じられない思いが、自分の口から漏れ出す。漏れ出してしまう。それくらい、この巨人にはいてほしくなかったというのに。
下手人の正体は、巨人だった。全体的に黒く、そこに赤と銀のラインが走る姿。胸元のランプと、銀の顔面に存在する瞳は、闇のように暗い。背骨や肋骨のようなモールドが入ったその姿は、まさしく死神そのもの。
自分の目の前に屹立する、この黒い悪魔の名は―
「―ダーク、メフィスト」
闇の巨人、ダークメフィスト。暗黒破壊神ダークザギによって作り出された、ウルトラマンネクサスと対になる者・ウルティノイドの一人。恐るべき宇宙の悪魔・スペースビーストを使役する能力を持つ怪物が、今自分の目の前に立っていた。恐らく攻撃の後らしく、残心を取っている。こいつがグビラを攻撃したのは、明らかだった。
いったいなぜいるのか、自分にもわからない。だが、この巨人は明らかな強敵。それもウルトラマンネクサスにとっての
そう、人間だ。こいつの中にいるのは、人間。自分と同じ知恵を持つもの。人間が中にいるだけで、知恵の回り具合は他の怪獣と一線を画すだろう。なにより、自分はウルトラマンとして、巨人の中の人間を、殺すことになるかもしれないのだ。
…人を、殺す。それも、ウルトラマンの力をもってして。その事実が、自分の心に重くのしかかってくる。ワーカーとしての自分は、時折同業者や犯罪者相手に戦う事はあるが、それでも殺しはやったことはない。それを、しかもウルトラマンとして犯さねばならないというのは、とても受け入れがたい。ウルトラマンネクサスと
そんな自分を意に介さず、ダークメフィストはグビラに近づく。巨人は腕を振り上げ、グビラを虎視眈々と狙っているように見える。恐らく自慢の爪・メフィストクローをもってグビラを殺すのだろう。
グビラはそれに対し、ダメージが大きいのか動く気配がない。横転した状態のまま、グビラはただ鳴き声を発するだけだった。
「KUuuu…」
―声が。聞こえる。
「KUu…KUu…」
今にも消え入りそうな、悲しみと悔しさが入り混じった鳴き声が、グビラの口から自分に、確かに伝わった。
「―何をしている、自分」
重圧に押しつぶされそうだった自分を、叱咤する。
そうだ、こんなところで怖気づいている場合ではない。目の前で、一つの命が奪われようとしているのだ。それが怪獣だからといってどうしたというのだ。罪のない命が、殺されようとしている。生きたいと願う命が、助けを求めている。その声に応えるのが、自分のやるべき事。
「後悔は、救ってからすればいい…!」
最終的に、命を救えたのなら、それだけでも意味があるはずなのだから。
もう、やるべきことは見えた。心の中の暗がりを振り払い、自分は光となるための器を取り出した。
「セレクト!クリスタル!」
闇の巨人と対になる、自分のもう一つの姿。大地の光が宿るクリスタルを、ジャイロの力をもって一気に開放する。
≪ウルトラマンガイア!≫
「纏うは大地!生命の営み!」
ジャイロから光が放たれ、自分はそれと一つになっていく。今敢然と闇に立ち向かう光の名を、高らかに叫んだ。
「ガイアァァァァァァァァァァ!!」
光と化した自分の体が、この空を飛ぶ。光は今巨人となり、自分という魂を経て、ウルトラマンガイアとなる。
目下では、ダークメフィストが突然現れた閃光に対し、眩しそうに手をかざしているものの、視線ははっきりとこちら側に向けていた。自分もまたその姿を捉えつつ、まだ倒れているグビラの付近、闇の巨人から彼を守れるウような位置に着地した。
「デュアッ!」
「…アアァァァァァァ…!!」
地鳴りを上げ、土煙を舞い上がらせつつ、ダークメフィストに対して構えを取る。ダークメフィストは、こちらに対し吠えるように顔面を突き出していた。吠えたという事は感情が高まったのだろうが、目が光らなかったあたり、このダークメフィストはツヴァイではないのだろうか。
…正面から見ると、やはりダークメフィストは異質な存在だというのがわかる。これまで戦ってきた怪獣とは一線を画すような気配を漂わせているし、自分のタレントで確認しても、見たことのない反応を示しているのがわかる。生物の延長線上にある怪獣と、闇の存在というのは全く違うという事か。
やはり、こんな存在を前に誰かを庇って戦える余裕はない。声が聞こえるのかはわからないが、倒れこんだままのグビラに話しかける。
「…逃げて」
「…?」
自分の声に対し、顔を上げたグビラ。どうやら反応はあるらしい。何とか意思が伝わるように、その上でメフィストへの警戒を怠らないように、顔を動かし伝えてみる。
「逃げて…ここから逃げて」
「…?」
しかし、グビラは首を傾けるようなしぐさをするばかり。やはり、怪獣との意思疎通というのは難しいのだろう。そのもどかしさに、少しずつ焦りの感情が生まれてくる。
だが、そこでメフィストに動きが生じた。
「グオオォォォォ…!!」
「…!」
痺れを切らしたかのような様子で、メフィストが再び吠える。そしてメフィストが腹の前で腕を組むと、そこに闇色の輝きが集まりだした。
「まずい…!」
その動きに、自分の記憶が警鐘を鳴らす。あの技は、確か大技だったはずだ。いきなり大技を使うのはフラグだというのに、使ってくるとは。
…そんなどうでもいいことを言ってる場合ではない。何とかしないと自分もグビラもやられてしまう。彼の命を救うと決めたのに、こんなところでやられるわけにはいかない。
意を決し、自分は最近手に入れた赤いクリスタルを手に取り、ジャイロにセットした。
≪ウルトラマンメビウス!≫
ジャイロの光と共に、勇気ある若きウルトラマンの名が告げられる。その頼れる力を開放すべく、ジャイロを操作していく。
すると、ガイアの左腕に、∞の字を描く光が折り重なってく。それはやがて一つの形を取っていき、輝きがひときわ強くなるとともに、赤いブレスレットに変化する。これこそ、宇宙警備隊が若き勇者メビウスに与えた力『メビウスブレス』だ。
「ウルトラマンメビウスの力よ…!」
そして力を借りるための祝詞を告げるとともに、ガイアの体が動き出す。メビウスブレスをこするように胸元で腕を広げ、両手を天に掲げるような形で近づける。腕を上げると同時に∞の字を描く輝きが集まっていき、そこに確かな力が集まっていく。
「…ハァッ!」
それと同時に、メフィストもまた動く。腹の前で組んだ腕を広げ闇色の輝きを集めると、その腕を一回転させ、さらに高めていく。あの闇の力は油断ならないことは、肌に感じる不気味な気配で察することが出来た。
そして、自分が十字を組むのと、メフィストが腕を組み、それを倒すように動かすことで逆Lの字―逆しまのクァンタムストリームのような形―に構えたのは、ほぼ同時だった。
「メビュームシュート!」
「ハァァァァ…ハッ!」
必殺の『メビュームシュート』と、暗黒に染まる『ダークレイ・シュトローム』がほぼ同時に発射される。金と黒、二つの光線は相手目掛けて真っ直ぐに飛んでいき、二人の巨人の中間で激突した。
「くう…っ!」
ウルトラマンと、それに準ずるもの同士の光線のぶつかり合い。すぐ押しきることができたテラノイド戦や二人がかりでどうにかしたゼルガノイド戦とは違い、同じ生きた人間との衝突は自分の想像以上に重たかった。気を抜くと、すぐに押し返されそうになる。
だが、負けるわけにはいかない。自分は、自分以外の命を背負っているのだから。だが、その命をこの死地に付き合わせるつもりもない。自分は光線に渾身の力を籠めつつ、後ろにいる怪獣に叫んだ。
「…逃げて!!」
「…Kuu「早く!!」…!」
自分の意思がやっと伝わったのか、光線に釘付けになっていたグビラは、跳ねるように飛び起きた。そしてこちらを一瞥すると、自慢のドリルを地面に突き刺し、どんどん掘り進めていく。
その動きを妨害されないよう、光線に込める力を今一度強くする。だが、相手の光線もまた強く、激突のポイントは揺れ動いても大きく傾くことはない。相手のポテンシャルの高さに、改めて驚く。
しかし、その甲斐あってグビラの逃げる時間は稼いだ。グビラは穴を作り終え、そこに潜っていく。姿が完全に見えなくなったのを確認すると、少しだけ安心した。
なら、もう光線勝負に付き合ってやる必要はない。自分は光線に意識を集中させ、それが爆発するように念じる。その念が通じ、光線はぶつかり合っていた場所で爆発を起こした。
「デュオッ…!」
「グオォ…ッ!」
爆発により二つの光線が消失し、その衝撃が自分たちを襲う。思わず吹き飛ばされそうになったが、そこは堪えて何とか体勢を立て直した。そして光線の煙が晴れると、自分の目の前には黒い悪魔の姿があった。
「オォォォォ…!!」
メフィストは自分に怒りをぶつけるような視線を向け、吠えると同時に右腕を掲げる。すると、メフィストの右腕に装着された、ガントレットのような『アームドメフィスト』から、かぎ爪状の武器が飛び出す。
現れた『メフィストクロー』を構え、メフィストはこちらを睨みつけてくる。自分もまたいつも通りの構えを取って、メフィストがいつ来てもいいように体勢を整える。
一瞬、静寂がその場を支配する。その硬直を破壊するように、メフィストはいきなり自分目掛けて跳躍した。
「ウアァッ!」
叫び声と共に、振り下ろされたメフィストクローが自分の元に迫る。当然だが、あんなものをもらうわけにはいかない。横にスライドするように移動し、悪魔の爪を回避する。
爪での一撃が交わされたメフィストは、間髪入れずにこちらに向き直り、さらに爪を叩き込まんと自分目掛けて腕を振り回す。流石は闇の巨人、怪獣とはまるで違う速さを持つ攻撃を、体を反らし飛びのくことで躱してく。
…何度かメフィストの爪攻撃を回避していると、少し、不可解な点が見えてきた。
「鋭くない…?」
メフィストの攻撃は、確かに速い。怪獣とは違い人間に近い体型を持つメフィストの一撃は、怪獣の攻撃とはまるで比べ物にならない動きと速さを重ね合わせた、恐るべきものだ。一撃貰えば、結構な痛手となるだろう。
だが、この攻撃が人間が繰り出しているモノだと考えると、少し違うものが見えてくる。メフィストがクローの付いた腕を振り回す様には、武術をたしなむとか訓練を受けたとか、あるいは一部冒険者やワーカーのような戦闘慣れしている人間の持つ独特の鋭さが感じられないのだ。この振り回しようは、まるでど素人。喧嘩慣れしている人間のモノとは思えないくらい、躱しやすい。メフィストの中の人間がそれなりに戦闘慣れしている場合、例えばヘッケランみたいな人が入っていたら、ワーカーとはいえ後衛でしかない自分なんか今頃ボッコボコであるというのに。
…とりあえず、今は目の前に集中しよう。メフィストの攻撃は続いているが、無闇矢鱈と腕を振り回す攻撃何て分かりやすいもの、いくらでも躱せる。なら、自然と反撃のチャンスも見えてくるものだ。
「…そこ!」
そして、それはすぐ訪れる。メフィストが大きく振りかぶったところに、滑り込むように移動し腕をクロスする。そしてクロスした腕がメフィストの腕に当たるように体を動かす。
「ウゥッ!?」
はたして、メフィストの腕は自分の腕に当たり、その動きを大きく阻まれる。メフィストの驚くような声とともに、メフィストクローが自分の顔面近くで止まったことを確認すると、自分は腕に一期に力を籠め、相手の腕を押し出そうとする。
メフィストは本気で驚いたのか一瞬硬直していたらしく、メフィストの腕は簡単に跳ねのけることが出来た。その勢いで大きく体勢を崩し、無防備となったメフィストの腹部に、一気に踏み込む。
「ダアッ!」
「グウッ…!」
そしてメフィストの腹を思いっきり殴り飛ばすと、メフィストは体を苦の字に曲げ大きく後退した。うめき声をあげたメフィストの、こちら側に大きく突き出した顔面に、追撃のキックを浴びせる。
「オアッ!!」
その一撃でメフィストは大きく吹き飛び、地面で数回転がる。だが、その程度では大きなダメージにはならないのか、メフィストはすぐに立ち上がった。流石に闇の巨人、タフさも他の怪獣とは違うのだろう。
だが、蹴りの意味はあったらしく、メフィストはこちらを向いたものの、少しふらついている様子だった。メフィストはその状態で何とか自分に一撃浴びせようと突進してくるが、そんな状態の攻撃何て簡単に躱せる。難なくその突進をいなし、背中に蹴りを叩き込むと、メフィストはつんのめったが耐えきり、そのまま反転する。そして懲りることなく再び突進の構えを取った。
しかし、動きが直線的すぎる。再びの突進に対し、今度は自分の体を大きく回転させる。回転の勢いを乗せ鋭さを増した踵蹴りを顔面に叩き込む、いわゆる胴回し回転蹴りといわれる技で、突っ込んできたメフィストを迎撃した。
自分の踵は見事メフィストの顔面を捉え、大きく吹き飛ばすことに成功する。先ほどの攻撃時よりさらに吹き飛ばされ倒れこんだメフィストに、さらに追撃を加えんと飛び込むように駆け寄った。
「…ウオォッ!!」
「!」
だが、メフィストはまたしてもすぐに立ち上がり、その大きな爪をもって自分を振り払う。爪で自分との距離を稼いだメフィストは、その後立ち上がると、腕を広げ大空へと飛び上がった。
「逃がさない…!」
ここで逃げられるのは、後々とてもよろしくない。自分もすぐさま空に飛びあがり、メフィストの後を追った。
メフィストのスピードはそこまで速いわけではなく、自分の全開を出さずともすぐに追いついた。メフィストの方を見上げると、こちらを見つめるメフィストと支援がぶつかり合う。
すると、こちらを見る悪魔の顔が、笑みを浮かべていた。
「…まずい」
これは、誘い込まれたのか?疑念と警戒が自分の中であふれかえる中、メフィストは自分の目の前で大きな光の球体を作り出す。完成した光球をメフィストが右腕で殴りつけると、それは獲物を狙う猛禽のように、的確に自分の方へと向かってきた。
…あの技には、見覚えがある。嫌な予感が自分を突き動かし、飛来する光から逃げようとする。だが光は自分の目の前に接近すると一瞬停止し、自分に当たることなくいきなり爆ぜた。そしてそこから、小さな光の球が広がり、自分の周囲を取り囲んだ。
「この技は…!」
この光景には、非常に見覚えがある。アレは確か、かつてダークメフィスト・ツヴァイがウルトラマンネクサスに対し使用した、分裂する光弾『バーストクラスター』だ。そしてこの技には、続きがある。それを知る自分は、すぐにその場を移動しようとする。
しかし自分の動きよりも早く、周囲の光弾が動き出す。四方八方から、自分目掛けて光の弾丸が飛び込んできた。それに対し、何とか体を動かし、飛び回りながら躱していく。
やがて、光の弾丸が減っていき、次第に自分目掛けて飛んでくる弾丸も減ってきた。しかし、息する暇もなく、今度はメフィストが突進してきたのを視認した。自分に接近したメフィストは、メフィストクローを構えると自分目掛けて何度も突き出してくる。その技はまさしく、ネクサスを苦しめた連続攻撃『ダークファランクス』そのものだった。
「ぐうっ…!」
腕が分裂しているように見えるほどの連続突きを、空中で体をスライドさせるように躱していく。だが、自分ははっきり言って空中での戦いにそれほど心得があるわけではない。地上とは勝手の違う場所での動きを強制され、次第に悪魔の攻撃に反応しづらくなっていく。
そして、動きが一瞬遅れた自分に対し、メフィストの突きが飛び込んでくる。それに対し、自分の腕が割り込んだのは幸いだった。しかしそんなものお構いなしに繰り出された突きは、不安定な場所にいる自分を吹き飛ばすには十分だった。
「デュオッ…!」
地上目掛けて吹き飛ばされ、なすすべなく落ちていく。地面に着地させられた後も大きく後退し、やがて背後にあった山に叩きつけられ、うめき声をあげることになった。よく見れば周囲は森林地帯、かなりの距離を移動させられたらしい。
山に叩きつけられ、全身に痛みが走る。爪を防いだ腕には、強い痺れが生じていた。体に走る感覚にに悶えそうになり、それでも何とかこらえていた所に、空中からメフィストが飛び込んでくるのが見えた。メフィストはただ一直線に、爪を構えこちらに飛び込んでくる。恐らく突き出したその爪で、自分を串刺しにするつもりなのだろう。
…甘い。真っ直ぐにしか飛び込んでこないなら、やり様はいくらでもある。痛みに堪える体に鞭打ち、何とか体勢を立て直すと、飛び込んできたメフィストに、渾身の蹴りを叩き込んだ。
「ダアァッ!!」
「!?グワアァッ!!」
咆哮と共に放たれたキックが、メフィストの胴体を捉える。メフィストはこのキックに対応することなく、悲鳴と共にそのまま遠くに吹き飛ばされることになった。恐らく、対応しなかったのではなく、できなかったのだろう。
…改めて、メフィストを見てみる。その姿はやはり異様で、タレントをもってしても異質な力にあふれていることくらいしかわからない。凡百の怪獣とはわけが違うのは、明らかだ。
その戦闘能力も非凡であり、攻撃の速さはかなりのものを持つ。やはり人間に近い体つきなだけあって、格闘に込められた速さやリーチは、怪獣のそれとは一線を画すものだ。特殊能力に関してはさらに顕著で、手数も威力も性質もすべてが未知の領域に存在する。
闇の巨人、恐るべし。それが、自分の抱いた感想だった。
「…でも、今ならやれる」
しかし、このダークメフィストに関しては、さほど脅威を感じていない自分がいた。それこそ、ギャラクトロンやゼットンのような、とびきりの強豪怪獣とは比べ物にならない。それが、結論だった。
確かに、ダークメフィストは速さがある。しかし、動きが全体的に単調で直線的なのだ。人間が入っているのは明らかだというのに、それ相応の格闘戦が出来ていない。格闘が得意な、例えばラキュースのような前衛職をやっている人物なら、もっともっといい動きをする。その場合ならフェイントや格闘術などが盛り込まれ、ほとんど独学と経験の積み重なりでしかない自分の挙動なんてすぐに取り押さえられるのは目に見えている。
にもかかわらずそれが現実のものとなっておらず、実際は自分が反応できている。そこから導かれる結論は、ただ一つ。
「…こいつは、戦い慣れていない」
つまり、経験不足。それが、自分がメフィストの中にいる人間に下した評価だった。
…好機だ。そんな考えが、自分の中で膨れ上がる。もちろん、相手に対する警戒を怠るつもりは毛頭ない。しかし、相手がまだ経験が足りていない、ひよっこウルティノイドの状態だというなら、ここで抑えてしまうべきだ。今は素人でも、これが経験を積みさらなる強さを身に着けるようになれば、メフィストの性能も相まって手が付けられなくなる。もとよりメフィストのスペック自体は目を見張るものがあるし、ここは早急に相手を撃破し、人間に戻して捕まえることが最優先だ。自分の中で、戦いの指針が見えてきた。
「…セレクト!クリスタル!」
気が付けば、自分はあるクリスタルを手に取っていた。赤い巨人が描かれた、一番思い入れのあるクリスタル。この戦いに決着をつけるのならば、それは自分自身の力がふさわしい。そんな思いが、自分の中にはあったのかもしれない。自分はつかみ取ったクリスタルを、ジャイロに装填する。
≪ウルトラマンガイア!≫
クリスタルに描かれた巨人の名が、ジャイロから発せられる。ジャイロの中に輝くクリスタルに込められた力を、今一度開放する。
すると、ジャイロから解放された光はすぐに集まり、ジャイロの真上で一つの形をとる。その形は、まさしくルーブクリスタルそのもの。しかし、そこにある姿は、これもまた自分自身の姿だった。
新たに生まれた、『絶』の文字が描かれたクリスタル。もう一つの自分が描かれたクリスタルを、空いたジャイロの中心へとセットする。
≪ウルトラマンガイア・スプリーム・ヴァージョン!≫
先ほどとはまた違う、巨人の名前。ジャイロからその名が告げられたと同時に、自分もまた新たな祝詞を唱えた。
「―纏うは、超絶!」
最近思い付いたネタ。
ウルトラマンメビウス×インフィニット・ストラトス
SSSS.GRIDMAN×THEビッグオー
SSSS.GRIDMAN×メガゾーン23
最初のはともかくあと二つはみんなわかるのだろうか…書くかは未定。
次回は12月8日土曜18時、ガイアの時間に投稿予定です。
皆ももウルトラマンチャンネルにてウルトラマンガイア14話『反宇宙からの挑戦』を見よう!
続編小説『超時空のアドベンチャー』も絶賛発売中!