どうにもならない、そんな時…なんだけどさぁ! 作:#任意の文字列
スプリーム・ヴァージョン。
アグルの力を得て、V2となったウルトラマンガイアが持つ、最強の切り札。その力はまさに絶大なもので、いくつもの怪獣にとどめを刺してきた。まさに最強の名にふさわしい存在である。
告白すると、自分はウルトラマンガイアになった時、すでにV2の姿であり、アグルの力を得た覚えが無いのにアグルの力を使うことが出来た。今になって思うと、ラキュースもまたV2であるあたり、自分の知るガイアと自分の変身するガイアはまるで訳が違うのだろう。そのあたりは自分でもよくわからない点が多いので今は置いておく。
話を戻すと、自分は最初からV2の力を存分に振るうことが出来たのだ。しかし、ただ一つ、当時の自分には出来なかった事がある。
それが、スプリーム・ヴァージョンへの変身。超絶の力をまとう事である。
何故自分にスプリームの力が使えないのか、悩まなかったわけではない。むしろ大いに悩んだが、やがて使えなくても戦うのだ、と心を奮い立たせ、結局使えないまま二年の時を戦い抜いた。
転機が訪れたのは、ギャラクトロンと戦った時。あの日自分は一度敗れ、仲間に自分の正体を知られてしまった。
怖かった。自分がとてつもない力をもっていて、それで恐れられることが。だが、仲間たちは自分を受け入れ、援護すると誓ってくれた。その時、自分はあふれ出る嬉しさと共に、何かが自分の中で変わるのを感じた。
結果としてそれは大当たりだった。自分はついにスプリーム・ヴァージョンへの変身を遂げ、ギャラクトロンを撃破したのである。
それは、仲間たちとの絆が、より確かなものになって自分に力をくれたからか。なんにせよ、このことは自分にとっての大きな転換点、いわば生まれ変わりの時だったのだ。
大きな転換点を迎えた自分だが、その次の転換点はすぐ訪れた。もう一人の巨人、ウルトラマンアグルとの邂逅。青い海の巨人の力を得た、ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラとの出会い。そして自分はラキュースと共に超古代の光に触れ、力をもらったのである。
その時得たクリスタルは、ラキュースがいなければ手に入るものではなかったはずだ。つまりこれは、ラキュースと絆を紡いだ証明なのだろう。スプリーム・ヴァージョンがヘッケラン、イミーナ、ロバーテイクとの絆の証なら、ルーブジャイロにルーブクリスタル、そしてオーブリングNEOはラキュースと超古代の光との絆の証。今や、どちらもかけがえのない存在となった。
そして今、二つの絆の証が、一つの形で結実しようとしていた。相手は闇の化身、決して負けられない存在。今こそ、三度目の生まれ変わりの時だ。
この戦い、必ず勝つ。だから、力を貸して、みんな。
≪ウルトラマンガイア・スプリーム・ヴァージョン!≫
先ほど発動したガイアのクリスタルとはまた違う、巨人の名前。手に持つジャイロから、本来鳴り得ない名が告げられたと同時に、自分もまた新たな祝詞を唱える。
「纏うは超絶!」
必ず勝つ。勝って、皆の元に帰る。強い思いを載せて、言葉を紡いていく。
「
ルーブジャイロを握る手に、自然と力が入ってくる。自分はその力を緩めることなく、一気にジャイロを操作した。
瞬間、ジャイロから金色の光があふれ、自分の体を包んでいく。自分の存在が、今一度光に置き換わり、すでに纏っているはずの巨人の姿を溶かして、一つの光に戻っていく。
その光が一つの点に集まり、星のように輝く。そして、光は爆発的に拡がり、もう一度大地の巨人の姿となる。だが、巨人はもう先ほどまでの巨人ではない。巨人は海と大地、二つの光を束ねた至高の存在へと生まれ変わったのだ。超絶の巨人が光の中から再誕し、大空の彼方へと飛び立つ。
そして、巨人は光をその身に宿し、世界に存在を示し、大地に着地する。衝撃で土砂が舞い上がり、その質量を的確に表していた。
ウルトラマンガイア・スプリーム・ヴァージョン。自分の築き上げてきた絆の結実した姿が、新たなる絆を得て、今降臨したのだった。
「デュオッ!」
雄たけびを上げ、右腕を前に突き出し左腕を上げるという、特徴的な構えを取る。その先にいるのは、先程キックで吹き飛ばしたはずのダークメフィスト。やはり闇の巨人、タフさも十分高いのだろう。
だが、勝つのは自分だ。この姿は、自分一人だけの力ではない。皆の力をもらってできたこの姿が、負けるはずがない。その強い意志を籠め、構えを強調するようにして威圧した。
「オアッ!!」
「…!」
メフィストは、何も語らない。静かに、こちらの様子をうかがっているようだった。だが、その動きが若干後ずさりするように見えたのを、自分は見逃さなかった。奴も、この姿に何かを感じたのだろう。
二人の巨人が相対し、再び一瞬の静寂が場を支配する。にらみ合いを終えたのは、意外にもメフィストの方からだった。
「ウアアァッ!!」
何かを振り払うような叫び声をあげ、メフィストが走る。メフィストは自分に駆け寄りつつ、差し出す様に伸ばした右腕から光弾を発射してきた。光弾は自分に当たる事はなかったが、代わりに周囲を抉り、土煙で視界を悪化させてくる。そしてメフィストが最後にはなった一発が、自分の目の前に着弾した。着弾した箇所では爆発が起こり、土砂が舞い上がる。そのせいで、自分の視界からメフィストは姿を消した。
だが、慌てる必要はない。自分には、これまでの戦いを支えてきた自分だけの力がある。意識を集中し、周囲を自分の持つもう一つの目で見る。生命力を見るという特殊なタレントは、特徴的だった相手の力の在処をすぐに割り出した。
…正面!
「ウオオッ!!」
「デュアッ!!」
正面に舞い上がった土煙をかき分け、メフィストが目の前に躍り出る。そしてメフィストは自分に対し、助走をつけてからのハイキックを浴びせてきた。
だが、それは見えている。迫りくるメフィストのキックを後ろに下がって躱しつつ、ガイアはメフィストの足を捕まえることに成功した。そこでメフィストが何かをするよりも早く、自分はメフィストの足を一気に持ち上げる形で空中に放り投げた。メフィストは空中で一回転し、地面に叩きつけられる。
メフィストはその一撃に一瞬屈しそうになっていたが、自分が駆け寄るよりも早く起き上がり、後方転回を決めて距離を取った。どうやら懲りてはいないようで、メフィストクローを構えすぐにでもこちらに飛び込んで来ようとしてる。
なら、こちらもそれに合わせてみよう。自分は構えを取って、メフィストを待ち構える。メフィストはすぐにしびれを切らし、自分に向かって突撃を行った。
自分もそれに合わせ、メフィストへと疾走する。自分とメフィストはお互い正面からぶつかり、お互いの胸部を掴む。そのまま力比べになるが、勝者は自分だった。
「デュアアアッ!!」
雄たけびと共に、メフィストの胸と鳩尾を掴むと、そのまま後方へと投げ飛ばす。メフィストの体が宙を舞い、地面に叩きつけられることになる。
だが、これでは終わらない。今度こそ、倒れこんだメフィストが起き上がり逃げる前に捕まえる。座り込んだメフィストの体を上から掴み、無理やり立ち上がらせるように持ち上げる。
「デェアアアッ!!」
そして、立ち上がった勢いのまま、メフィストをもう一度、全力で後方に投げ飛ばした。メフィストは空を舞い、再度、地面に叩きつけられることとなった。
メフィストは少しは堪えたのか、何とか起き上がろうとした体勢のまま苦しそうに手を伸ばすが、うまく立ち上がれないようだった。多少なりとも、ダメージを与えられたのだろう。なら、やるべきことは一つ。
「畳みかける…!!」
自分は再度メフィストに接近し、その体を掴み上げもう一度立ち上がらせる。何とか逃げ出そうともがき続けるメフィストを力で押さえつけ、自分はその場でぐるぐると回転を始めた。
「デュオッ!…デュォォォォ…!!」
何度も何度もその場で回転し、次第に勢いを強くしていく。その回転にメフィストも巻き込まれ、はた目から見れば仲良く見えるくらいの距離間でぐるぐると回り続ける。
そして勢いが一定の速度を超えた時、メフィストの足が地面を離れた。そのままメフィストは遠心力ですっ飛んでいきそうになるが、何とか抑えてさらに回転の勢いを増していく。何時しかメフィストの体は完全に地面から離れ、腹ばいになって空中を回りだしていた。
「オアアァァッ…!!」
すぐにでも飛んでいきそうなメフィストの体を、相手の腕一本を強く握りしめ抑え込む。メフィストが地面に着地し、そのまま勢いを利用したカウンターで今度は自分を回転ブランコ状態にする…なんていう自体が起きないよう、勢いに細心の注意を払って回転する。
そして勢いが十分なほどついたところで、自分は腕にさらに力を込めた。
「デェヤアアァァッ!!」
そして、腕力と回転の勢いの両方がこもった、渾身のスウィングが、メフィストの体を大きく吹き飛ばした。メフィストは腹ばいになって空を飛び、山を越えてなぎ倒す。かなりの距離を滑り、メフィストは停止した。
これのダメージは、先程の投げとはわけが違う。確固たる自信が、自分の中に存在していた。
「グオォッ…!」
だが、メフィストはふらつきつつも、そこまで時間を置くことなく立ち上がった。やはり、並の怪獣と並列に考えるのは、間違っているのだ。いかに自分が対応できる技を繰り出すばかりでも、体はしっかり闇の巨人なのだから。
そしてメフィストは接近戦は不利と見たのか、空に舞い上がる。今度は追いかけることなくそれを見上げていると、メフィストの目の前で、大きな光の球が現れるのが見えた。先ほど同様、バーストクラスターでこちらを責め立てるつもりなのだろう。
「…その技は、もう見た」
一度見た技なら、ある程度攻略の手順が見えてくるのは当然の事。流石に同じ技を連発されて、攻略されないと思われるのは心外だ。
自分はメフィストの目の前の光が大きく輝くのを見ると、両手を頭上で錐状になるように合わせ、その場で回転しながら空中へと飛び上がった。遠目から見ると全体的に円錐状に近くなり、加えてきりもみ回転を行いだした自分は、そのまま相手へと飛び込んでいった。
メフィストはというと、それにお構いなしといった様子で、そのまま大きくなった光の球を殴り飛ばした。光の球は空中で大きくはじけ、自分の周囲に小さな光弾を生む。このままなら、また自分の元に光弾が殺到することになるのだろう。
だが、自分はもう、それをいちいち躱すつもりはなかった。そのまま光の雨の中を、ドリルのように回転しながら突っ込む。当然、光弾は自分に飛び込み、直撃して爆発した。
「ぐうっ…!!」
痛みにうめき声が出るが、何とか我慢する。回転を続け、そのままメフィストに向かっていく。光弾は容赦なく自分に降り注ぎ、直撃して爆発していった。
だが、その攻撃は、自分に痛みは与えどそこまでダメージを与えることはなかった。
自分のやったことは簡単。自分に回転を加え、その勢いで着弾した光弾をはじき返すというもの。もちろん、こんなことをしても自分に来るダメージを完全にカットできるわけではなく、そもそもそれ目的ならバリアを使った方が早い。だがバリアの場合、非常に目立つのでメフィストに逃げられてしまう可能性がある。躱しきったところで、先程みたいに別方向からの突撃を許すだけだ。なら、気持ちだけでもダメージを減らし、その上で一気に接近できる方法を取ればいい。それに合致する技こそ、この『ガイア突撃戦法』なのである。
そして目論見通り、自分はダメージを受けつつもメフィストに接近することが出来た。光の雨をすり抜けることは想定していなかったのか、若干メフィストが慌てているようにも見える。だがもう遅い。自分は回転速度はそのままに、メフィストの土手っ腹に風穴を開けるくらいの勢いで飛び込んだ。
「グアアアァァァッ!!」
メフィストはたまらず吹き飛び、眼下に広がる海の方へと吹き飛ばされていく。メフィストはかなりの勢いをつけ、最初に相対した海岸線近くの平原地帯へと墜落した。
メフィストは、地面に着弾することとなった。地面が爆発したように吹き飛び、土煙がメフィストの姿を隠した場所の近くへ、自分もまたゆっくりと降下する。土煙の中、メフィストの状態が見えないかと、何とか目を凝らしてみる。
そこで、自分のライフゲージが赤色に輝き、点滅を始める。それと同時に胸が苦しくなり、限界が近いことを悟る。その苦しみを抑えつつ、なんとかこれで終わってくれと、祈りを込めて目を凝らした。
「…ウオオォォォッ!!」
やはりというか、闇の巨人はかなりタフなようで、メフィストはそこまで時間をかけることなく、土煙をかき分け姿を現した。流石にダメージは大きかったらしく、腹部を抑え肩で息をしているが、それでもしっかり立ち上がった。そして、自分を見つけると、威嚇するように吠えたのだった。
「グオオォォォォ…!!」
そしてメフィストは、今一度腕を振り上げ、全身に気合を込めるかのような動作を見せる。そしてそのまま、腹部のあたりで腕を組み、そこに闇の色をした輝きを生み出していった。
「…『ダークレイ・シュトローム』…!」
その動きは、この戦いの序盤ですでに見た動き。ダークメフィストの必殺技、『ダークレイ・シュトローム』の発射のための構えそのものだ。
おそらく、肉弾戦では不利であるとみて、なら今度は再びの大技に賭ける、と思っての行動なのだろう。その考えは、自分にも身に覚えがあるからよくわかる。最近もコダイゴンジアザー戦で効果的なのかわからないまま大技のゼットシウム光線を使ったのだ。肉弾戦が不利だととりあえず光線技、それも大技に頼ろうと考えてしまうのは―たとえ肉弾戦が不利な場合が多いのだとしても―悪い癖なのかもしれない。まずは敵の体力を効果的に消耗できる肉弾戦、これが基本。戦いの基本は格闘だ。
それはさておき、相手の光線は今にも飛んで来ようとしている。メフィストは腕を組んだまま、何かをこらえるように震えつつその場を動かないが、最初の時以上のエネルギーをためているのか。しかし、飛び込んだところでいきなり撃たれるのがオチだ。光線自体もかなりの速さを誇っているから、飛び回るわけにもいかない。先程肉弾戦がどうこう言っておいてなんだが、ここは光線技で突破するほかないだろう。
なら、どう攻めるか。そこに思考がたどり着いたその時―
「…うん?」
―胸元に、赤い炎のような輝きが生まれる。輝きを手に取り、かざしてみれば、輝きが消えるとともに『炎』の文字が描かれた赤いルーブクリスタルが現れる。
「メビウス…」
ウルトラマンメビウスのクリスタルが、輝きと共に自分の存在を主張していた。
これは、メビウスのクリスタルが、自分に何かを伝えようとしてるのか。ではそれは何だろう。メビウスのクリスタルに描かれている文字は、『炎』。炎という文字にまつわる、メビウスにとって、大切なもの―
「―ファイアーシンボル」
答えは、すぐに出た。メビウスの炎、それはファイアーシンボル。メビウスが決して忘れることがなかった、大切な仲間たちとの絆の証。ファイヤーシンボルは絆の証として、時にメビウスに新たな姿を与えたのだ。
「仲間、か…」
仲間、という単語に、少し心が反応する。自分は、これまでの戦いで仲間たちに支えられ、結果勝利をつかむことが出来た。その絆の集大成が、このスプリーム・ヴァージョン。『フォーサイト』というウルトラマンとしての戦いが始まったころからの友。ラキュースという最新の戦友。自分にとってどちらも大切な存在である者達との絆が、この姿となって結実したのだ。
なら、その思いを、持って行こう。皆がくれた思いが作ったこの姿で、闇の巨人に、大いなる闇にも、勝つ!
「―行こう、皆」
届くのかはわからない、しかし自分にとって大切な一言と共に、メビウスのクリスタルを握る力を強くする。
そして、大切な人々の顔を、思い浮かべていく。
「父さん、母さん、クーデリカ、ウレイリカ、リーダー、イミーナ、ロバーテイク、ラキュース…」
呟きと同じくして、皆との思い出が、自分の中に浮かんでくる。その思いは自分の中で熱い流れになって、握りしめたメビウスのクリスタルに集まっていく。
準備は、できた。自分はクリスタルを相手に向けてかざし、宣言する。
「見せてあげる、闇の巨人」
この力をもって、勝利する。皆の力が、お前に勝てるのだと、信じるが故に。
「私たちの―
そして、その宣言と共に、クリスタルに今一度赤い輝きが宿る。光が消えると、そこには中心に『燃』の文字が浮かび、その文字の通り真っ赤に燃え上がるような色と炎の紋章を宿した巨人が描かれたクリスタルがその存在を主張していた。
自分は迷うことなく、そのクリスタルをジャイロに装填する。
≪ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブ!≫
新たに生まれ変わった巨人の名がジャイロから飛び出し、その名と共にあふれた赤い光が、自分の周囲に確かな熱を生み出す。
それと同時にガイアの左腕に再び『メビウスブレス』が出現し、胴体にも一瞬だが金の炎の紋章―メビウスが自分の体に刻んだ、ファイアーシンボルが浮かび上がった。
「ウルトラマンメビウスの力よ…!」
力を借りるための祝詞を告げると共に腕を交差させ、メビウスブレスに装着された球体を回す様にして腕を広げる。まるで翼を広げた不死鳥のような構えとともに、自分の体に浮かび上がったファイアーシンボルが再び輝き、それが浮き出ることにより全てを焼き尽くす炎が生まれる。炎を確認した後、広げた腕をゆっくりと脇腹の当たりに戻していくことで、炎はさらに大きくなり、大きな球体と化した。
それとほぼ同時に、メフィストもまた光線の構えを動かし、腕を一回転させ発射寸前までに持っていく。瞬間、自分とメフィストの視線がぶつかり合う。そして理解する。この光線の撃ち合いこそが、この戦いの勝負どころなのだと。
自分とメフィストの咆哮は、重なり合うようにして飛び出した。
「メビュームバースト!」
「ハァァァァ…ハッ!」
メフィストが逆Lの字の構えから光線を発射するのとほぼ同時に、自分もまた目の前の炎の球体を思いっきり押し出した。自分の放った『メビュームバースト』は真っ直ぐ飛んでいき、メフィストを焼き尽くさんとする。そしてメフィストが自分目掛けて放った『ダークレイ・シュトローム』と『メビュームバースト』はそれぞれ相手を捉え、自分たちの中間地点で激突した。
一瞬、最初の光線の撃ち合いのように、光の拮抗が生じる。だが、それも一瞬だった。
「!?」
メフィストの驚くような声が響くとともに、拮抗していたはずの光線の撃ち合いが『メビュームバースト』のされる形で破られていく。メフィストは光線に込める力を強めているようだが、依然『メビュームバースト』の方が強い。炎の球と悪魔との距離は、だんだんと狭まっていた。
…当然だ。自分が、どれだけの想いをその技に込めたと思っているのか。その技に、皆の想いがどれだけ作用したと思っているのか。その技は、皆との絆の証。破られるなんて、あり得ない…!
「…とどめ!」
チャンスは今。状況を理解し、さらに動く。思いついたのは、皆が受け入れてくれて初めて仕えたあの技。皆の想いが自分に力をくれたこの戦いの決着には、あの技を使うこと以外考えられなかった。
「デュアッ!!オァァァァァァァ…!!」
咆哮とともに全身に力を籠め、右腕を頭上に掲げたのち、腕を大きく振りかぶり、体の前で両手を合わせる。特徴的な構えが自分にさらなる力を与え、その一撃をさらに高めていく。
そして合掌の形から右手を下にずらし、準備を終える。狙いは、正面の悪魔。迫りくる闇に意思を示す様に、自分はその力を開放した。
「フォトン…ストリィィィィィィィム!!」「デュオッ!!」
そして、ガイア最大最高の一撃、『フォトンストリーム』が、悪魔目掛けて放たれた。光線はまず炎の球に達し、その奔流に炎を加え、さらに勢いを増す。
炎の球に注意を奪われていたのか、メフィストはそこでやっと異変に気が付いたらしく、光線を中断しようとする。だが、すべてが遅かった。
炎をまとった光線が、悪魔の闇色の光を飲み込んでいき、一気に迫る。その勢いはすさまじく、先程押していた『メビュームバースト』の勢いとは比べ物にならない。メフィストはなすすべもなく、その光を全身に浴びた。そして、光線はメフィストの体に吸い込まれていき、光線を自分が止めることで、やがて消えていった。
一瞬、メフィストの体が大きく光を放つが、何も起こらない。もしや、効かなかったのか?そんな不安が、自分の中に走る。
だが、それも杞憂だったらしい。
「…グオォォォォォォッ!!!」
メフィストは遅れて、断末魔の叫び声をあげた。そして再びメフィストの体が輝き―大爆発。メフィストは光の膨張に巻き込まれ、輝きの中に消えていく。
そして光が止むと、メフィストはもうどこにもいなかった。
―勝った。その事実を理解し、力が抜ける。だが、まだ締めが残っている。もう休みそうになる自分を叱咤し、自分は大きく広がる空に向かって両手を伸ばした。
「…デュワッ!!」
そして、残り少ないエネルギーをふり絞り、自分は大空に向かって飛んでいく。
『一難去ったら空を飛べ』。この言葉は、やはり名言である。この名言に従い、ウルトラマンガイアは空の彼方へと去っていくのだった。
―今回の戦いは、何とか勝つことが出来た。
闇の巨人は、総じて強大な力を持つ。今回此処までスムーズにダークメフィストを倒すことが出来たのは、まさに幸運だっただろう。今回のメフィストはおそらく弱い方だったが、その弱い内に決着をつけることが出来たのは本当によかったと思う。
だが、これで終わりではない。今回現れたダークメフィストはウルティノイド、一般の怪獣のような自然の存在ではなく、何者かの手で作り出された存在だ。つまり、メフィストの裏には黒幕がいる。黒幕が何者なのか、予想はできても確定はできないだろう。だが、黒幕がメフィストなんて目じゃない位強いのは明らかだ。最近判明した闇といい、この世界で自分が戦うべき相手は本当に底が知れない。
―だが、それがどうした。今の自分には、あまり恐れはない。今回の戦いで、皆がくれた力が闇の巨人にも負けないことがはっきりわかった。
自分は一人じゃない。
自分には、絆を紡いだ仲間がいる。
仲間がいる限り、自分にはとてつもない力が生まれてくる。
そのことが分かった今、自分は確かな希望を抱いていた。希望はある。勝ち目はある。だから、恐れる必要はない。仲間がいれば、自分には確かな未来があるのだから。
だからこそ、今は帰ろう。皆との約束を―必ず帰るという約束を、果たすために。
「…すごい」
ウルトラマンガイアが、空の彼方へと飛んでいく。戦いを終えたその姿を、番外席次は地上から眺めていた。ガイアに感動したような口ぶりで見送る彼女の表情は、ガイアに対する惜しみない感嘆の念を表していた。
「…うん、素晴らしい戦いだった。強いのは好きだよ」
うっとりとした表情で、ガイアに称賛の言葉を贈る。普段は何事にも無関心である番外席次だが、ウルトラマンという存在に対しては、強い関心を持つこととなった。
巨人同士の戦いを間近で見て、番外席次が感じたものは、ウルトラマンという存在の力強さだった。ウルトラマンは姿がよく似た巨人―ウルトラマンとは対になる存在だと、番外席次は聞いている―に対し、一歩も引くことなく戦い抜いた。そして未知の強大なる力をもって、相手の巨人を圧倒し、そして撃破したのだ。
その強さに、番外席次はどうしても惹かれてしまう。あの巨人なら、さらなる強さを得た自分を倒せるのではないか。そしてその子供を産むことが出来れば、その子はきっと―
「…まあ、無理なのが残念だけどね」
しかしそこで、番外席次は肩をすくめ、思考を中断する。こればかりはどうしようにもないといえる、大きな問題が彼女の望みを絶ち切っていることを、番外席次は知っていた。
「女なんだっけ…」
そう、番外席次は、ガイアの正体を知っている。ラナーが闇の力を得ることで、傍にいたラキュースがウルトラマンの力を得ていたことを把握したように。ウルトラ
ちなみに、ラナーと番外席次が二人のウルトラマンの正体を把握しているのに仕掛けることがないのは、彼女たちの真の主がそれを望んでいないから。ラナーはそのことについて疑念を持たずにはいられなかったが、番外席次はというと、そのことに関しては異論を持たなかった。
それは番外席次にとって、真の主が救いの主だったが故。ずっと閉じ込められて、ずっと夢をかなえることが出来ないまま終わるのではと心のどこかで感じていた番外席次に、真の主は力と共に救いの手を差し伸べてくれたのだ。だからこうして空の下を歩くたびに、番外席次の心は真の主への感謝でいっぱいになる。なればこそ、番外席次が真の主の命に疑念を抱くことはなかった。
さて、番外席次がしばらく認めたくない事実に悲しみを覚えていると、何かを引きずるような音とともに、何者かが近づく。番外席次はその何者かを察知すると、そちらに一瞥もせず、語り掛けた。
「…終わった?ラナー」
「ええ、終わりました。もうここにいる必要はないわ」
来訪者―ラナーはそう言うと、引きずっていたものを前方に放り投げる。それを一目見て、番外席次の表情がわずかに曇った。
そこにあったのは、干からびたヒトガタの何か。ミイラのようになった、人間の死体だった。すいぶんどころか何もかも失われたようなその体からは、生前の特徴が一切感じられない。性別すらわからない死体を見て、番外席次はラナーに問いかけた。
「…なにこれ」
「何って…私たちの
「あ、そう」
だが、楽しそうなラナーからその正体を聞き、番外席次は興味の対象から死体のことを削除した。負け犬の事なんて、彼女にとっては一番どうでもいいことだったから。
「あ、そうって…一応、私と同じ力を持つ人なのよ?まあ、もう死んだのだけれど…」
「だから何?弱い奴には興味ないし。…というか、死んだって言うけど、とどめを刺したのは君じゃないの」
「そうとも言うわね」
番外席次のぶっきらぼうな指摘に対し、ラナーは笑顔で受け答えした。
そう、この死体こそラナーと同じ力を持つに至った暗黒適応者、すなわちダークメフィストだったものの成れの果てである。この死体の生前の姿はラナーたちの前任者、つまり二人と同じく闇の力の尖兵だった。だが、今は物言わぬミイラになり果て、何者であったかを伺い知ることはできない。そもそも番外席次もラナーも、このミイラについて大した興味を持ち合わせてはいなかったが。
「で、ご主人様の命令は果たせたの?それが気になるんだけど」
「ええ、この通り。私の力はさらに増しました」
そういってラナーは、自身の持つ『ダークエボルバー』を掲げる。それに宿る闇の輝きは、番外席次が以前見た時よりもさらに勢いを増している。これなら命令は果たせたのだろう。確信を得て、番外席次はひとまず安堵した。
今回二人の受けた任務は二つある。一つは、前任者を追いかけ、始末をつけること。ラナーたちが聞いた話では、前任者は力を得たものの暴走し、命令を受け付けることなく獣のようになってしまったらしい。その後、後任である二人の魔人が出来上がったため抹殺命令が下る事になったのだ、と番外席次は認識していた。
そしてもう一つは、前任者の総てをラナーが奪い、糧とすること。つまりラナーの強化である。ラナーの力と前任者の力は酷似しており、ゆえにラナーも簡単に前任者の力を奪うことが出来た。こうして力を奪われ出来上がったのが、件のミイラというわけである。
ラナーはこの二つに関し、後者が本命だと感じていた。すなわち前任者なぞ主にとって本来どうでもよい存在で、でもせっかくだから再利用しようというのが、主の考えであると。もちろん本当の考えはラナーにもわからないが、前任者は失敗作である事、実際戦闘能力もウルトラマンに負けるくらいには大したことがない事を踏まえれば、これこそが正解だとラナーは確信していた。
そんなラナーの考えなんて露知らず、といった様子の番外席次は、気だるげに話を続けていく。彼女の興味は、別の所にあった。
「…それで、どれだけ強くなったの?ウルトラマンにも…私にも、勝てそう?」
「さあ…といいたいところですが、私は喧嘩が不得手だし、先程の前任者程度に動けるかどうか…そういう事ですので、私に期待してても無駄、と言わせてもらうわね」
「…そう、つまらない」
しかしラナーの返答は、番外席次の望まないものだった。同じ主のしもべなら、主に手を加えてもらって子を作ることが出来るかも、と思っていたこともあり、番外席次の落胆は大きかった。
…落胆してもしょうがない。全てに決着がつけば、強者を漁る最高の旅を始めることが出来る。ならばいましばらくの辛抱だ。そう自分に言い聞かせ、番外席次は復活する
「…ま、命令を遂げたならいいか。帰ろう」
「そうね。ここにはあまりに何もないものね」
「私は好きだけどね…後、これからも組み合わせは同じ、ってことでいいの?」
「ええ、あなたが前に出て、私が後ろにつく。適材適所、よろしく頼むわね」
「構わないよ。もしかしたら、思わぬところで強者に出会えるかもしれないしね」
二人はそう言って、主にたまわった力により、忽然と姿を消したのだった。
そうして、二人の魔人もまた、目的を果たしその場を去る。力をさらに付けた闇が消え、周囲は静寂に満たされる。戦いは終わり、この地に一時の安寧がもたらされた。
―光と闇は、差はあれど互いを認識しあい、相手に対し思考を巡らせていく。二つの走狗が激突する時は、近くに来ているのかもしれない―
タイトルですが、特に言う事はないです。というわけで別の話。クリスタルの変化ですが、これはアルシェやラキュースなど所持者の感情の変化によって発生しています。なので友情パワー的なものでの変化ではないのですが、今回の場合だとアルシェの感情が高ぶったきっかけはアルシェが絆を感じたことなので特に違いがない、といった感じでよろしくお願い致します。
~用語解説~
『深海怪獣グビラ』
ドリモゲモン(グビラが先)。ウルトラマン第24話「海底科学基地」にて登場。完成式典中の海底センター付近を彷徨っていると、鼻先のドリルで海底センターのパイプラインを破壊してしまい、さらに海底センターの格納ドックも破壊してしまった。その後は潜水艦を叩き壊した後ウルトラマンにつられて上陸、八つ裂き光輪にドリルを通す一発芸を披露したがあえなく爆殺された。後にウルトラマンXとそれ以降の作品にも登場しているが、その場合何らかの事情があって暴れているだけで、悪意はない怪獣として登場する事が多く、大体生還している。ルーブではネロンガもゴモラも爆殺されたのにこの差は一体…?この世界でもただそこら辺を散歩していた所、いきなりダークメフィストと遭遇するという災難に遭遇した。それでも生きているあたり、この世界においても生存力は高いことが伺える。
『ダークメフィスト』
通称、黒い悪魔。ウルトラマンネクサスEPISODE.14「悪魔 -メフィスト-」から登場した闇のウルトラマン。変身者は溝呂木眞也。ダークファウスト亡き後、様々なトラウマ攻撃で孤門一輝と姫矢准(と視聴者)を苦しめた。実力も相当で、スペースビーストとの連携もありネクサスを追い詰めている。しかしこの世界のダークメフィストは、ハッキリ言ってそこまで強くない。というのも、これに変身するラナーと番外席次の「前任者」は失敗作で、暴走し理性を失ったまま一年ほど行方不明になっており、そのため大した鍛錬などを積むことが出来なかったから。最終的にはラナーの強化のための生け贄となった。因みにこの「前任者」、実はアルシェと同じケースの転生者でかつてのアルシェ同様オバロ世界だという事に絶望していた所に力を与えられる契約を持ち掛けられた…とか思いついたけど今後こいつのことが掘り下げられる可能性はないので適当なバックヤードを考えておいてください(投げやり)。
『メビウスブレス』
ウルトラマンメビウスの変身アイテム。ウルトラマンメビウスが地球に降り立つ際、ウルトラの父から与えられたブレスレット型のアイテム。これがあると人間体でもウルトラマンの技が使えるというスグレモノで、メビウスの変身者ミライ君はこいつを使ってメビュームスラッシュをぶっ放していた。でもミライ君はブレスを介してなくてもバリアを張ったりできるのであまり作用はしていないのかも。後は必殺技の起点になったり、メビュームダイナマイト発動時ウルトラ心臓の代わりにメビウスを再生するためのかなめになったるすることが出来る。なおこいつにはキングがヒカリに与えたナイトブレスという殆ど上位互換のアイテムが存在する。この辺りは、流石キングといったところなのだろう。
『メビュームシュート』
ウルトラマンメビウスの必殺技。メビウスブレスをこする形でエネルギーを開放した後、腕を天に掲げ、その後十字に組んで放つ必殺光線。温度は約10万℃とされ、威力は充分だが、タロウ教官のストリウム光線には及ばない…という扱いを受けている。腕を天に掲げる際両手の先に∞の字が浮かび上がるのが特徴だが、それ以外はオーソドックスな光線である。因みにメビウスはメビウスブレスを起点に技を放つことが多いため、よくブレスがないと何もできないのでは?と疑念を持たれることが多いが、別にブレスがなくても光線は使えたりする。
『ダークレイ・シュトローム』
ダークメフィストのメフィストの最強技。クアンタムストリームを鏡写しにしたような逆L字ポーズで放つ光線技で、この光線と撃ち合いになるまで喰らったビーストを必ず粉砕してきたネクサスの「オーバーレイ・シュトローム」を相殺したあたり相当な威力があると思われる。ただし、この技は一介しか使われていない。この技句を使った後、メフィストはネクサスに敗北したためだが、ダークファウストも必殺技は一回こっきりだったしダークザギも光線の撃ち合いに負けて死んだし、ウルティノイド組は総じて光線技を撃たない方が良かったのでは?まあ前述のとおりこいつは相殺に成功したんだけどさ…
『アームドメフィスト』
『メフィストクロー』
どちらも同一ギミックの上になるため並べて解説。アームドメフィストはダークメフィストの右腕に装着されたガントレット状のアイテムで、メフィストクローはそこから飛び出すかぎ爪状の凶器。ネクサスは様々な挑戦が行われた意欲作だが、こういうアームズなんたらみたいなこれまでと一風変わった武器を持っているのも魅力の一つである。
『バーストクラスター』
『ダークファランクス』
繋がりのある攻撃であるため同時に解説。バーストクラスターはまず巨大な闇の球を造り射出し、その闇の玉が小さな小弾に分裂して敵を追尾しながら飛んでいくという技。これはダークファウストとダークメフィストが持っていた「ダーククラスター」「ダークレイクラスター」に相当する技である。ダークファランクスは高速接近してメフィストクローを超高速で突き出し、相手の体を連打する技。どちらもダークメフィスト・ツヴァイの技だが、この世界のダークメフィストはなぜか使用できた。まあスキルがあっても使い手がヘボじゃなぁ…因みに作者はダークメフィスト・ツヴァイの方が好きである。
『ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブ』
ウルトラマンメビウスの強化形態の1つ。正式名称は「メビウスバーニングブレイブ」。自分の体に仲間との絆の証であるファイアーシンボルを体に描いた「燃える勇者」で、高まった身体能力と炎の力により、単に爆破するだけでは一瞬で再生してしまうインペライザーを再生を許さず一瞬で焼き尽くすことで、師匠であるウルトラマンタロウにもできなかったことを成し遂げた。仲間との絆で変身できた姿であり、最初は仲間を認識できないと変身できなかったが、後に仲間とは離れていてもつながっていることを認識し問題を克服している。こういうととても王道な強化変身だが、初登場は仲間達に正体がバレた直後に体得という、とても衝撃的な登場となった。
『メビュームバースト』
ウルトラマンメビウス・バーニングブレイブの必殺技。メビウスブレスから発生した炎のエネルギーを、胸のファイヤーシンボルに集中させて形成した巨大な火球として敵に放つ大技。技を放つ際翼を広げた不死鳥のような構えになるのが好き。その威力は絶大で、ウルトラマンタロウにも撃破できなかったインペライザーを、「再生を許さず一瞬で焼き尽くす」というごり押しで撃破した。この技はどう考えてもファイアーシンボルがきっかけとなった技だが、これ以外にもバーニングブレイブの技は皆メビウスの紡いできた絆から生まれたという感じがひしひしと伝わってとっても好み。皆もウルトラマンメビウス、見よう!
今回と前回の話、突然頭の中に湧いて出てきた話だったのですが、それでも形にできて一安心。アー疲れた。
次回は未定です。というのも、作者リアルがとっても忙しくなりそうなので…これが12月発売の各種ゲームのせいだったら良かった(良くない)のですが、残念ながら違うのがつらい。とてもつらい。まあ頑張ります。
大丈夫、作者がエタっても、ウルトラマンという素晴らしいコンテンツは決して消えることはないから!だから安心して、皆もウルトラマンを見よう!ウルトラマンの歴史は、まだまだ続く!
では、そういうわけで次回更新は先の話になりそうです。それまで皆さん、さようなら~