提督落ちたから自力で鎮守府作る。   作:空使い

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明けましておめでとうございます。

これからはまとめて一気に書こうとせずに、時間を決めてちょっとづつ書いてみようと思います。





呼び声

 

 

 

「……さて、提督カッコカリ。今球磨たちがやらなきゃいけないコトが分かるクマ?」

 

「朝ごはんの準備とか?」

 

返事の代わりに、じとっ……とした眼差しが突き刺さる。

 

……背は俺より小っちゃいクセに、ナゼか激しく見下されている気がする。

なんかヘンな性癖に目覚めそうなんでヤめて欲しいです。

 

「あそぶー♪」

「たんけん」

「おひるねー?」

「ていとくとー……きゃー♪」

「きゃーっ♪」

 

「……妖精さんはちょっとあっち行ってて欲しいクマ」

 

「やなこった」

「そんなこといって、わたしたちのいないところでていとくさんをたべちまうですね?」

「えろどーじんみたいに!」

「えろどーじんみたいに♪」

 

「すすすするわけ無いクマっ!? そそそんなっ、ハレンチなっ……提督っ!」

 

アホ妖精ズにからかわれて一瞬で顔を赤くした思春期球磨ちゃんがすがるように俺を見る。

 

いや、妖精さんの言うことなんか真に受けない方がいいと思うよ?

俺を見てみろ。

コイツらの口車に乗った結果がセルフ島流しだぜ?

 

「はぁ……ほら、話が進まねぇだろ。後で遊んでやるから、行儀良く座ってろ」

 

「はーい♪」

 

仕方なくそう言って、パンパン、と手を叩くと、妖精さん達は俺の横に行儀良くペタンと座り込み、ご丁寧にバッテンマークのついたマスクで口を覆う。

今日日(きょうび)そうそう見ねぇぞそんなベタベタなお手つきペナルティ。

 

「ぐぬぬ……球磨の言うことは聞いてくれないのに……なんか釈然としないクマ……」

 

悔しそうに唸る球磨ちゃん。

惚れちゃっても良いのよ?

 

「そんでさ、まず何をするって?」

 

「……サバイバルの基本は、衣食住の確保クマ。取り敢えず住むとこはあるし、服も一着だけならあるクマ……まず、飲み水の確保、その次に食料の確保クマね!」

 

どこか得意そうな顔でそんな当たり前な事を言って、自信満々に人差し指を立てる球磨ちゃん。

 

それって結局朝食の準備じゃない? とは言わない。

提督はかしこいので。

 

「つまりちょうしょくのじゅんびです?」

 

「………………」

 

「あっ、コラ! お前、早々にマスク外してんじゃねーよ!」

 

「もがもが」

 

俺がアホ妖精の口を塞いでいると、球磨ちゃんがピョンと椅子から飛び降りて、ツカツカとドアに向かって行く。

 

「……今から探すんだから朝食じゃなくて昼食だクマ。まずは飲み水探しクマ。提督もついて来るクマ」

 

あ、なんかほっぺが赤い。

照れ球磨ちゃんかわいい。

 

「のみみずはもうていとくがみつけたです」

 

「………………食べ物を探すクマ」

 

あ、すごい赤い。

かわいい。

 

 

 

@@@@@@@@@@

 

 

 

さて、食料探しだ。

 

「そ、そっちじゃなくて海! 海で魚とか採ろう!」

 

庁舎を出て即座にジャンゴゥ(巻き舌)に向かおうとした球磨の肩を掴み、慌ててそう提案する。

 

「…………別にかまわないクマが……なんでそんなに必死クマ?」

 

さっきの名残でまだいくらか頬の赤い球磨ちゃんが、いぶかしげにそう聞いてくる。

 

「いや、実はさっき飲み水を探しがてらこん中に入ったんだけどさ、でっかいクロヒョウ的な猛獣がうろついてんだよこの密林」

 

「……つくづくとんでもない鎮守府クマ……で、だから何クマ?」

 

「だからも何もあっっっぶねぇだろ!? こん中は妖精さんにでも任せた方がいいって」

 

俺が身ぶり手振りでこの密林がいかに危険がデンジャラスか教えてやろうとすると、球磨は呆れたようにため息を吐いて俺に向き直った。

 

「はぁ……提督は球磨が艦娘だってこと忘れたクマ?」

 

そう言って、テクテクと林に近づいてゆく球磨。

 

「あ、ちょ、ちょっと……!」

 

俺が慌てて止めようとすると、球磨は一本の木の前で立ち止まって、幹に手を置いた。

小柄な球磨が両手を回してちょうど抱え込める位の太い低木だ。

 

球磨は何のつもりか、確かめるように幹の表面を撫で、脚を肩幅に開いて片手を幹に添えた。

 

「なんだ、球磨? その木がどう――――」

 

「危ないから提督はちょっと離れてるクマ。これくらいなら……クマァッ!」

 

球磨が気合いのこもった声をあげた瞬間だった。

 

メキメキメキメキィッッ!!!

 

「――――――~!!」

 

湿ったような凄まじい音を立てて、生の低木が差し金のように直角に折れ曲がった。

 

「――――っとまあ、球磨がちょっと本気を出せばこんなもんクマ。ヒョウでもライオンでも9万馬力の前には無力クマ」

 

根っこが半ば露出して、湿った繊維質を中程まで引きちぎられた哀れな低木の前で、そう言って得意気に胸を張る球磨さん。

 

「べ、別に実演せんでもイイだろうが! ちょっとビビったぞ!」

 

よく見れば幹には球磨の手形がくっきり凹みとして残っているし、球磨の両足は地面に足首までめり込んでいた。

 

なんつうバカ力だよ!

9万馬力ってなんだ。

漫画か。

鉄腕なアトム君並みかよ。

 

…………球磨ちゃんは怒らせない方がいいな、うん。

 

「見た方が理解が早いクマ。提督は何にも知らないみたいだし、艦娘についても球磨が色々教えてやるクマ」

 

「色々……………………それって――――」

 

メキィッ! と凄まじい音と共に、樹の幹の表面が握り潰される。

 

「おっと、ちょっと力加減が……で、何クマ?」

 

「サー! よろしくおねがいしますっ! サー!」

 

「サーは提督クマ」

 

 

 

@@@@@@@@@@

 

 

 

「ふー……ふー……こ、ここが水場な」

 

「へぇ……なかなかキレイな水場クマね。これなら飲み水には困りそうもないクマ」

 

朝と同様、妖精さんに厳重に守ってもらいつつ、湧き水の場所までジャングルを掻き分けてきた俺は、大きめの岩に腰かけて帽子を取り、Tシャツの胸元をパタパタして熱を冷ます。

 

朝と違い、先行した球磨ちゃんが道をふさいだ岩やら倒木やらをひょいひょいとどかしてくれたお陰で幾らか楽が出来たが、それでも悪路には変わりない。

 

あっという間に汗だくになり、羽織っていた暑苦しい軍服はだいぶ早い段階でただの腰巻きと化している。

部屋に置いてくれば良かったよ……。

 

球磨ちゃんは泉に片手を突っ込んでかき混ぜながら、「だらしないクマ」と言いたげな顔でこちらをチラチラ見ている。

 

エエイ、軍人さんと一緒にするんじゃない、こちとら筋金入りのインドア派なんだ。

 

「……提督、飲むクマ」

 

ふと頭を上げると、球磨ちゃんが空のペットボトルに汲んだ湧き水を差し出してくれている。

 

「おお、ありがとう」

 

この子、言動キツいけどけっこう優しいな……ホントちょっとナマイキな女子中学生くらいかね?

 

そんなコトを考えながらグビグビと喉を潤していると、その球磨ちゃんが周囲をキョロキョロと見回しながら言う。

 

「う~ん……とりあえず、ここを中心に探索してみるクマ? 来る途中にも何本かそれっぽい木があったクマ」

 

「ごくっ……ごくっ……ぷはっ、ああ、うん、そうっスね……おーいオマエら、この辺に果物のなってる木とか心当たりある?」

 

球磨ちゃんに問い掛けられて、泉でパチャパチャと水浴びをしていた妖精さんズに尋ねてみる。

 

「あるよー」

「ばななとかあかいのとか」

「ここなつもなかった?」

 

元気よく答える妖精さん達。

 

「よーしでかした。そしたらこの辺りにある食えそうなもん、テキトーに集めて来てくれー」

 

「ごほうびあるです?」

 

「お手玉してやる」

 

「やろうどもーつづけー♪」

「おー♪」

 

すると、頭の上から飛び降りたツインテが先頭に立って、妖精さんずを引き連れてジャングルに突撃してゆく。

 

ちなみにお手玉というのは、そのまんま妖精さんをボールにして行うお手玉だ。

実家の妖精さんどもにお仕置きのつもりでやってみたら大ウケしてしまい、妖精さんの間で大人気の遊びになってしまったのだ。

ジャグリングは激アツらしい。

 

「……よし、じゃあ、俺らはここで休憩してようか、球磨」

 

「……はっ!? いやいや、突然のコトで固まってたクマ! まさか全部妖精さん任せクマ?」

 

「いやだって、この密林だよ? ヘタに踏み込んだら迷子になったり変な虫に刺されたりクソデカにゃんこに食われたりしちゃうよ? 地元妖精さんに任せるのが確実だって」

 

俺がそう言うと、球磨ちゃんの目線がそわそわと密林と俺を行き来する。

 

「それはそうクマが……妖精さんクマよ? こんな森のなかで自由行動させたら、八割は遊び始めちゃって当分帰って来ない――――」

 

「みつけてきたです」

「たいりょうだー♪」

「おてだまおてだま♪」

「かっこいいきのこもあったです」

「あかとしろのまだら」

「たべたらおっきくなれるかも」

 

「おー、お帰り。早かったなお前ら……オマエはそのヤバげなキノコをポイしてくるまで俺に近付くなよ?」

 

よっぽどお手玉が楽しみだったのか、赤い小さな実が房状になった果物っぽいモノを抱えてきたツインテを皮切りに、妖精さんズが次々に食べられそうなモノを抱えて走ってくる。

 

あれよあれよと言うまに、泉の前に食料の山が築かれてしまった。

 

「おおー、なんだホントにバナナもあんじゃん! ものっそい緑だけど……これはヤシの実か? この三角の茎っぽいのも食えんの? めっちゃ滴ってるケド……」

 

「あまずっぱいです」

「くせになるあじ」

 

「ふーん、どれどれ…………うん、青臭いけど、確かに甘酸っぱい……のか?」

 

「………………」

 

「よーし、お前ら、お手玉してやろう。一列に並べよー、三人ずつだぞー?」

 

「きゃーっ♪」

 

俺が出来る妖精さん達を順番にお手玉していると、球磨ちゃんが何か言いたげな顔で此方を見ているのに気付いた。

 

「ほいっ、ほいっ、ほいっ…っとと、おい、空中で身体捻んな、手元が狂う……何? 球磨、どうかした?」

 

「……今ちょっと球磨の中の常識とかそういうのと目の前の現実の折り合いをつけているクマ」

 

「やめとけやめとけ、妖精さんに常識とか当てはめちゃダメだって」

 

「…………まあ、考えるだけ無駄クマね」

 

一瞬間があったが、何か言いたいコトでもあったのかね?

 

 

 

@@@@@@@@@@

 

 

 

山盛りの木の実や果物を手分けして抱えて、再び庁舎前へ。

とって来た食料をどこに置こうか一瞬悩んで、軍服が入っていた長持を引っ張り出してその中へ放り込む。

 

「さて、次は肉……はキツそうだし、魚かな。やっぱりタンパク質を取らないと食った気しないもんな」

 

「まあ、クマとしても名前も分からないようなネズミとかリスとかカメレオンを食べるよりはその方が安心クマ」

 

というコトで、お次は海岸へ向かうコトに。

 

せっかく艦娘を建造したというのに、全く提督らしいコトをしていないがイイんだろうか?

もうちょっとセクハラとか視姦とかすべきかもしれない。

 

でも球磨ちゃん超強いんだよなぁ……。

 

チラッ、と隣を歩く球磨ちゃんを盗み見る。

 

「? 何クマ?」

 

一瞬で気付かれた。

 

その上、

 

ゲシッ!

 

「あいたっ!?」

 

妖精さんにふくらはぎドロップキックをくらい、

 

ビシッ!

 

「目がっっっ!?」

 

頭の上のツインテが両目に猫パンチを食らわせてきた。

 

「……いや、本当に何してるクマ?」

 

「まだ何もしてねぇよ……!」

 

「えっちなのはいけないとおもいます」

「どうしてもというなら……」

「わたしをつかっていいのよ?」

「いやん♪」

 

「お前らいい加減にしろよ特にツインテ! 目ぇ潰す気かっ!」

 

「わたしいがいをみつめるめなんて」

 

「だまらっしゃい! 二頭身の分際でヤンデレ気取ってんじゃねーよ! 全然怖くないわ!」

 

ツインテのツインテを両手でつまんで、アホ妖精を縄跳びのようにグルグル回していると、隣から呆れたようなため息が聞こえてくる。

 

「はぁ……ホントによく分からない提督クマ……妖精さんに好かれてるんだかそうじゃないんだかさっぱり分からんクマ」

 

「ん、なんか言った? 俺が男前だって?」

 

「…………」

 

「いや、そんな哀れみの目で見ないでよ……冗談じゃん……」

 

あ゛~~~~♪ と相変わらず何しても楽しそうなツインテを適当に放り投げて、海岸沿いの岩場を下る。

 

そこでも、仁王立ちから水中に片手を突っ込んで掬い上げる熊スタイルで魚を捕ろうとした球磨ちゃんが執念で一匹を捕まえる間に、海女さんスタイルで海に潜った妖精さん達が、魚やタコ、ウニや貝なんかを山のように採ってきてくれた。

 

分かってはいたが、もう妖精さんがいればいいんじゃないかな状態である。

 

その結果。

 

「……球磨は本当に必要クマ?」

 

「いやいや、そんな落ち込まんでも……球磨だってスゴく役に立ってるから、な?」

 

「ぐすっ……どんな?」

 

「……ほら、カワイイじゃん」

 

「くまかわいいです」

「やくにたたないけど」

「わたしたちほどじゃないけど♪」

「どんまいける」

 

「ぐま゛ぁ゛……!」

 

「あぶなっ! 怒るか泣くかどっちかにしてって!」

 

球磨ちゃんがスネた。

 

そりゃ、沈んだ軍艦の魂が、再び戦うために甦ったような存在だ。

提督の役に立てないと言うのは想像以上のストレスらしい。

 

そんなコト言われたって、こんな無人島で、右も左も分からなくて、燃料も弾薬もないと来たら、水曜スペシャルくらいしかやることないワケだし、そうなってくると確かにバカ力なだけの女子中学生よりも妖精さんの方が頼りになるのは事実だし……。

 

「役立たずはイヤだクマ……! なんでもするから見捨てないで欲しいクマぁ……!」

 

重症だなこりゃ。

 

「くそう……そんな凹まれると憧れの『何でもする』でもエロい事出来ないじゃんか――――ん?」

 

ふと、顔を上げる。

 

「ぐすっ…………? どうし――」

 

「しっ! ……今、なんか聞こえなかったか?」

 

キョトン、とした様子の球磨ちゃん。

どうやら気付かなかったようだ。

 

しかし今、確かに、小さな声が聞こえた気がしたのだ。

 

ピョンッ、と、頭の上からツインテが飛び降りる。

チラッ、と一度俺の顔を見上げ、スッ……と俺と同じ……岬の向こう側に視線をやる。

 

他の妖精さん達は、俺とツインテが何を言っているのか分からないというように、球磨といっしょにキョロキョロと周囲を見回している。

 

「……オマエも聞こえたのか?」

 

「どうするです?」

 

「ちょ……ちょっと、怖がらす気ならやめて欲しいクマ……」

 

「イヤ、本当なんだって、小さい声だったけど、確かに聞こえたんだ。何かこう、掠れたような声で――――」

 

 

 

『タス――――――ケテ――――――――』

 

 

 

「っ! 今、またっ!」

 

今度は、先ほどよりはっきりと聞こえた。

 

見れば、今度は球磨にも聞こえたようで、驚いたように肩をビクつかせ、先ほどまで俺とツインテが見ていた岬の方を見ている。

 

「き、聞こえたクマ……スゴく小さな声で、助けてって……!」

 

「さっきは痛い、苦しいって言ってたんだ! は、早く行かねぇとヤバいんじゃねぇか!?」

 

俺が走り出そうとすると、グイッとズボンの裾を引っ張られてつんのめる。

 

「っ、な、え、なにっ?」

 

見れば、球磨ちゃんが青ざめた顔で俺を見上げていた。

 

プルプルと震え、髪の先の方がうっすらと白くなっている。

 

「……なんかイヤな予感がするクマ」

 

見れば、ツインテ以外の妖精さん達も、未だに声が聞こえないようであっちこっちに頭を向けながら難しい顔の横に手を当てて耳を澄ましているようだった。

 

自分とツインテに最初に聞こえて、

球磨ちゃんにはうっすら聞こえて、

妖精さん達には聞こえない、声。

 

そう分かった上で、

 

「それがどうしたっ! ってね」

 

「クマっ!?」

 

俺は声の方に向かって走り出していた。

 

 

 

 


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