事の始まりは一つのニュース。
中国にて発光する赤子の誕生というSFじみたニュースが世界中に流れたその日を境に世界は一変した。
世界総人口の約八割が何らかの特異体質…"個性"を発現するようになった。その
プロ野球選手やアイドルに代わり、それは多くの者が目指す夢の職業となっていた。
そしてココにも、それを目指す3人の少年少女がいた。
彼らは俗に言う幼馴染で、共に遊び同じ釜の飯を食った仲である。
そのうちの1人にツノの生えた少女がいた。
その少女は涙ぐみ、溢れる涙を両手で拭い続けている。
見れば2人の少年も涙を見せていた。
緑色をしたボサボサ髪の少年は滝のように涙を流し、もう1人のツンツンした髪の少年も、堪えつつも涙をボロボロと流している。
「うち…やっぱ、いややァーーーッ!」
「グスッ……エグっ………」
「………ッ……!」
涙の訳は"別れ"である。
少女は家庭の事情で引っ越し、生まれ育った故郷から離れなければならないのだ。
無論、物心つく時から共に育った幼馴染達とも。
「こりゃ困ったの〜」
「よっちゃん。また遊びに来たらいいじゃない。ね?」
「離れとうなぁい〜〜〜っ!」
緑髪の子の母親と思われる女性がそう宥めるが、よっちゃんと呼ばれた少女は泣き止まない。
よっちゃんの母親も呆れ顔でお手上げのようだ。
そんな中、ツンツン髪の子の母親が笑みを浮かべたまましゃがんで目線を合わせる。
「ねぇ
「ッ……うん………」
「ヒーローは泣いていいのかしら? オールマイトはこんな時泣く?」
「………ううん」
少女は泣きながら首を振る。
「ならほら…ちゃんと前向いて! 大きくなったらまた会えるわよ。みんな同じとこ目指してるんだから」
両手でまた両目を擦り、真っ赤になった目で少女は前を向いた。そして幼馴染の少年2人に拳を差し出す。その拳は固く握られていたが、小指だけがピンッと伸びきっていた。
「いずく…グスッ…かっちゃん……約束」
「う、うん………グズっ…」
「………………ん」
少女の小指に、少年2人は指を絡ませた。
長いようで短く感じるこの時に3人は約束した。
ー
ーー
ーーー
時が経つこと約十年。
少女だった夜々は成長し、ちゃんとした個性を身につける。
個性にはいくつかの部類に分けられるが、夜々は自分の意思で発動させる"発動型"と生まれた時から個性が発動している"異形型"が合わさった"複合型"だった。
高校受験を考える歳になる。
そんなある日の夜…夜々は家族と夕食をとっていた。リビングのテーブルを囲むように夜々と父、そして夜々よりも小柄な少女がもう1人いた。
夜々は家族揃っての夕食を早々と終わらせると、食器類を即座に片付けて自室へ向かう。それから一分も掛からずにリビングに戻ると、少女はテーブルに一冊のパンフレットを叩きつける。
「うち、ここ受験する‼︎」
まだ食事中の父親は箸を止めて呆気にとられ、かけていたメガネがずり落ちる。
それに対して小柄な少女は視線も向けず、箸の動きも止めない。
「………雄英高校…本気なんだね?」
国立雄英高等学校。
名だたるヒーロー達を輩出し、偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件と言われるほどヒーローになるための登竜門として認知されている。それほどにヒーロー科が有名な名門校である。
倍率300はくだらない狭き門だが、父親は否定せずに意思を確認する。
夜々は「当たり前だ」と言わんばかりに頷く。
「……クフゥ…ご馳走さん。さて、儂も反対せえへんよ。可愛い愛娘の将来は、可愛い愛娘自身で決めることじゃ。こうなる事は十年前からわかっとったしのう?」
続けて食事を終えた少女はそう言って、面白そうに夜々を見る。
そしてこの少女…身長は130cm程だが、話の流れからすると夜々の母親らしい。外見を見れば誰もが妹と勘違いするだろうが………
「夜々………気張れよ?」
そう静かに鼓舞する姿には威厳のあり、この様子を見たならば先程の勘違いを前言撤回するだろう。
鼓舞された夜々は自室に戻り、受験の対策を練るのだった。
ー
ーー
ーーー
そのやり取りがあったのは半年以上前のこと。
多くの学生がその登竜門を潜り、夜々自身も今、その門を潜って一歩踏み出した。
文字通り彼女は受難を乗り越えるべく踏み出したのだ。
それから試験の説明会場へと足を運んだ夜々は席に着く。
そしてしばらくすると………
『今日は俺のライブにようこそー!!
「………………」
ボイスヒーローのプレゼントマイクがそう叫ぶ。が、何千人ものリスナーがいるにも関わらず返ってくるのは静寂のみ。
(あの人が説明してくれるんか? 随分と騒がしい人やな)
実にノリの悪い観客だと普通は思うだろう。だがこれは普通の反応である。
決してプレゼントマイクに人気が無いわけではない。
『こいつは中々シヴィー‼︎‼︎ んじゃ、実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ‼︎ アーユーレディ⁉︎』
「………………………」
プレゼントマイクは静寂の中でもテンションを変えずにリスナー…もとい、受験生達に向けて説明を始める。
雄英高校のヒーロー科入学希望の者達は、筆記試験とは別に実技試験なるものがある。
その試験内容は制限時間内に市街地を模した試験会場で、ロボットの仮想敵を行動不能にするというものだった。
救助、殲滅、護衛……ヒーローとしてどのジャンルの仕事をするにしても、最低限の戦闘力は必須である。故に多くの敵を行動不能にすれば良いのだが、夜々は説明中に配られた資料を見て首を傾げる。
「ポイントになる仮想敵は1ポイント、2ポイント、3ポイントの3種……この4体目の記載はなんなん?」
千を超える受験生の中で手を挙げ質問するのは度胸がいるが、重要な点だという事もあり声をかけようとする。
しかし夜々より早く手を挙げ質問する人物がいた。
広い説明会場の少し離れた所で叫んでいるが、それでも周囲に届く声で内容は十分に聞き取れた。夜々と同じ疑問を唱えているようだ。
雄英高校がどうのこうの、失態がどうとも言っている。
「ついでにそこの君! そう縮れ毛の君だ‼︎さっきからボソボソと気が散るじゃないか! 物見遊山ならば立ち去りたまえ‼︎」
更に同じ受験者への注意。
彼は随分と肝が座っているのだなと夜々は思ったが、即座に別の事に気が向いてしまう。
(ーーーッ⁉︎ 出久やん‼︎)
同じヒーローを目指す者としてここを受けるとは思っていたが、再会がこのような形だと内心複雑な気分に駆られる。
対してプレゼントマイクは4体目の記載について説明を始めた為、夜々は切り替えて話に集中する。
どうやらそれはスーパーマ◯オでいうドッ◯ン。0ポイントのお邪魔ギミックとの事。
『最後にリスナーへ我が校の"校訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った! 「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!! "
それを最後に受験生はいくつかに割り振られ、夜々は自分が割り振られた試験会場へ向かう。
「出久はどんな個性なんやろな〜……おっといかん。集中せんと……」
夜々は額に生えたツノを避けるように、前髪を両手でかき上げた。
そしてツノの根元を押し上げるように額に手を当て、これから起こる試験内容を再確認して集中しようとする。
『ハイ、スタートー!』
着いた試験会場の入り口前で独り言を零していると、それに続いてまたプレゼントマイクの声がスピーカー越しに響いた。
それを聞いて皆が呆気にとられる。無論、夜々もその1人だ。
プレゼントマイクの言葉で一瞬頭が真っ白になる。
『どうしたぁ⁉︎ 実戦じゃカウントなんざねえんだよ! 走れ走れぇ! 賽は投げられているぞ‼︎』
「エェッ⁉︎」
「は⁉︎ マジかよ‼︎」
複数に割り振られたとしても目の前にいる受験生は大勢。それが波となって試験会場へ雪崩れ込む。
「嘘やろ⁉︎」
遅れて夜々も焦って試験会場に入っていく。
しかし大きいとはいえ会場の入り口は1つ…いくつかに割り振られてもかなりの人数だ。その人数が雪崩れ込めば流石に人混みができ、夜々は完全に出遅れてしまう。
むしろ出遅れずに済んだのは、序盤で動いた者か空中を移動できる受験者のみだろう。
現に前の方を見れば、両手を爆破させてその衝撃で飛ぶ男子受験者が見えた。
「あんな事うちにはできんし、ひとまず外れんと」
会場に入っても人混みで身動きが取りづらい。故に人混みの流れを横断するように端へ……そこでようやく、夜々は会場の様子を理解する。
「市街地を模してるんやな」
横断してたどり着いた端にはアパートとそれを囲う塀がある。それによじ登り、夜々は更にアパートの上に飛び乗る。
「先頭はもうドンパチやってるなぁ……」
少し呑気にそう言うが、先頭での戦いは眼を見張る物だった。激しい爆発と共に弾けるエネミー…よく見ればたったの一人であの戦闘を繰り広げている。
周囲にいる敵を一掃し、近くで戦っている受験者は獲物を横取りされてしまっている。
ならば離れて戦うべきだが、戦闘が激化するあまり引き寄せられるのか仮想敵がそこへ集まりつつある。
ならばどうする?
「早急にコツコツと稼ぐしかないやない」
人混みからなるべく離れ、夜々は文句も言わずに小さな点を稼いで回った。
ー
ーー
ーーー
殴る。蹴る。投げつける。
夜々の戦い方はいたってシンプル。それでいて十分な力だった。
仮想敵は備え付けられたゴム弾や模造刀で攻撃してくるが、まるで歯が立たない。
彼女の個性は"
能力は典型的な身体能力の向上………だがそれは"異形型"の個性としての話。鬼人にはそれに加えて"発動型"の別の能力もあるが、それを使う程の場面ではなかった。
市街地を模している限り、周囲の被害は抑えるべきと判断した結果だ。
だがそれが夜々にとってはもどかしくもあった。
(今ので12ポイント…少ない気がする。もっと稼がんと)
本気を出せないまま落ちるなんて許せない。
焦りに焦る彼女だったが、一際大きな轟音に足を止めて振り返る。
「……なんやあれ……デカすぎや」
今までどこにその姿を隠していたのか、見ればそこには0ポイントの巨大なエネミーがいた。
距離はあるが遠くもない。倒せなくもないが、ポイントが欲しいなら無視して逃げるのが吉。だがそれで良いのだろうか?
「ーーーッ‼︎」
0ポイントは歩くたびに地鳴りを起こし、足元には亀裂が走る。それによって住居は倒壊する。それによって退路を阻まれた受験者も中にはいた。
それを見た瞬間、彼女は自分の親指を咥える。
「しゃあなしやな!」ガリッ
彼女の憧れるヒーロー像に、
「何やってんだアンタ! こっち来るアレが見えないのか⁉︎」
危険を危惧して声をかけてくれる受験者もいたが、彼女にしてみれば見えていないのはそっちの受験者の方だった。
彼女は右手の親指の腹…そこの皮膚を歯で噛み破る。
その傷口に口を当てながら顔を上に傾ける。右手を日本酒などの酒瓶に見立てて、一気飲みするようにも見えるその姿…だが口内に流れるのは酒ではなく自分の血液………それもかなりの量だった。
「プハァ………」
やがて親指から口を離すとツノは白く発光し、彼女の顔は煌々と火照り酔っているようだった。そして今度は人差し指を
「………十升モード〜」
酔ったその口調は非常に柔らかい口調だった。しかしその指先から放たれたものは、そんな優しいものではなかった。
ーーー ゴオォォォォオ‼︎ ーーー
「何ッ⁉︎ウオォォォオ‼︎」
ジェット機のエンジンの横で耳を澄ませたような轟音と共に、赤い極太のレーザーが指先から放たれる。
心配していた受験者は風圧で飛ばされないように踏ん張る。
矛先が向いていなくとも余波でそうなる始末。そのレーザーの矛先が向けられた巨大な仮想敵はというと、レーザーを受け止めた上半分が大きく抉れて風穴が空いていた。
「ヨイショ〜」クイッ
向けた指先を曲げると、レーザーの軌道が大きく曲がりUターン………そしてそれは夜々の元へ
「ンッ!」ボッ‼︎
右手で受け止めるとレーザーは段々と霧散していった。
「………………」
「ふぅ〜、久方ぶりやなぁ」
「……怪我させてもうた? スマンなぁ……」
「え、いや………別に」
「チィィッ‼︎ 遅れたッ‼︎」
そこへ新たな受験者がやってくる。両手を爆破させて飛んできたのは、目立って暴れていたあの受験者だった。
夜々の背後から来たところ、アピール目的か何かであの巨大な0ポイントを狙っていたのだろう。
「………アンタ…もしかして………」
「………あ?」
『終了ォォォォオ‼︎‼︎』
夜々はその爆破個性の受験者の姿が、幼き頃に別れた幼馴染の面影と重なった。
だがそれを確認するよりも早く、試験終了の合図が響き渡った。
ー
ーー
ーーー
この実技試験は仮想敵を撃破する事でポイントが加算されていくシステムだと、そう受験者には説明されている。
しかしその試験にはもう一つ、ポイントを獲得する方法があった。
それは"救助活動ポイント"。
皆がポイントを稼ごうとする中、誰かを助ける行動を起こした場合は審査制でポイントが加算されるのだ。
そしてその審査も終えた後で、審査員である雄英の教員達は試験の様子をモニターで見ていた。
そのモニターの映像に映るのは受験者達ではなく、その中で受かった一握りの合格者達。
彼らはその少年少女達を改めて審査していった。最終確認というやつだろう。
「YEAH‼︎ さっきの
「うん。まさか0ポイントが二体も壊されるなんてね」
司会役だったプレゼントマイクが口を開けば、小動物…それも鼠の姿をした者がそう返した。ちなみにこの鼠はこの高校の校長である。
「撃破ポイント12、救助活動ポイント60の総合3位‼︎ イレイザー! お前はどう思うよ⁉︎」
プレゼントマイクは自分の同期であるヒーロー、イレイザーヘッドに話を振る。
振られた本人は迷惑そうな表情を浮かべるが視線を戻し、モニターに映った少女の評価をする。
「撃破ポイントが少ないのは…まぁ、撃破ポイントのみで総合一位になった
「YEAH‼︎ ベタ褒めじゃねぇか‼︎」
「五月蝿いぞマイク」
「でも珍しいわね。貴方が受験者を褒めるなんて」
18禁ヒーローのミッドナイトが今度は話を振る。
「今回の総合1位や8位と比べれば、凹凸のない受験者だと思っただけだ。マイクの不意打ちスタートには出遅れたが、そこからの動きはまだ荒いが中坊だった奴の判断にしては合理的。獲物が少ないと判断し即行動…最後の0ポイントを見た時も自身のポイントが少ないにも関わらず、足元の受験者を見てすぐに攻撃に入ったってのも大きい」
「やっぱりベタ褒めじゃねぇか‼︎」
「8位の子、
「何はともあれ、彼女も合格で問題ないね。それじゃ次の合格者の映像を………」
鼠の姿をした校長…根津校長は最終決定の意を込めて、1人の少女の受験票に"合格"の判を押す。
その受験票には"
個性:鬼人
母譲りの個性で常時並みの人間以上のステータスが発揮できる!
そしてアルコールを摂取する事で更に強化し、簡単な妖術を扱う事も可能‼︎
彼女の血はアルコール度数が高く、自分の血を100ml飲む事で鬼殺しの一升瓶の10本分のアルコールが摂取できるぞ‼︎
未成年者であるため自分の血を飲んで警察のお世話にならないか、実は内心ビクビクしていたりする⁉︎
酒井'sヘア :ツノを避けて真ん中分け+ポニーテール
酒井'sツノ :白くて長さ15cm!額に一本!
酒井'sアイズ:一重!
酒井's全身 :身長167cmのナイススタイル‼︎