鬼人のヒーローアカデミア   作:黝 証呂

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友人
「おたくの爆豪くんキャラ違うね。俺も登場して彼を弄りたいわ」

証呂
「ダメです。代わりにキャラに何か質問があったら、後書きで気まぐれで答えるかも」

友人
「だってよ読者諸君‼︎」

ちなみに↑この会話文は、作者がある勝負に負けて「今の会話内容をそのまま前書きに書け!そして質問受け付けを実装しろ!」と言われ掲示しました。
もしキャラへの質問があったら、答えられるものは最新話の前書き、後書きで書こう………かな?
質問は黝 証呂の活動報告にある、質問箱にコメントでお願いします。
(感想に書かれると、そのまま感想のページで返信して、他の方の目に入らない事もあるので)

それでは11話、グダグダっとどうぞー


11.少年少女の強化合宿(後編)

 酒呑家に訪れた2日目。

 午前、緑谷と爆豪は重りの道着を着て森を駆けずり回った。

 

 昼食を挟み午後になると、緑谷のみ道着を重くされた。ライバル意識なのか(本人にそう言えば激怒するだろうが)爆豪は自分の道着も重くするよう願い出た。

 しかし月華は緑谷の強化系の"個性"を見越しての判断で、爆破の"個性"の爆豪は今のままで十分と判断した。

 

 結果、着替えた緑谷は立つ事もままならない程の重りを着込み、常にフルカウルを使う事を余儀なくされる。そうする事でやっと動けるのだから、月華の目に狂いはないだろう。

 

 そんな状態で、午後は「緑谷 対 爆豪」で対人訓練を行った。まだフルカウルがぎこちなく、勝率は0:10で爆豪の勝利。しかし40%の確率で、爆豪を追い詰める事もあった。

 どちらも重りをつけている上での戦いだ。おそらく爆豪の方が強いが、一概に彼の方が強いとハッキリと判断はできないだろう。

 

 そして夜々は午後も鬼神殺しを無理矢理飲み下し、その日の修行は終了を迎えた。

 

 そして翌日の朝。

 

「今日の修行にはワシも付き合おう。その上で、小僧2人には別れてもらう」

 

 最終日である今日…そう言い放った童子は、自分が着ていた浴衣を脱ぎ捨て上半身を露わにする。

 

「出の字はワシと、爆の字は婆さんと"マンツーマン"じゃ」

 

「よろしくお願いします!」

 

「森に行くぞ、爆豪 勝己。タイマンやる。手加減してやるから全力で来な」

 

「あぁ?」

 

 月華にメンチを決める爆豪だが、月華の実力は初日のテストでわかっている。強者に対する挑戦に、爆豪は胸を躍らせ午前と同じ森の方へと姿を消した。

 

「えっと…も、もしかして僕も、童子さんとタイマンを………?」

 

「………やりたいか?」

 

「いや! その! …」

 

「フフッ…安心せい。そんな無謀な事はさせん」

 

 慈愛を持ってそう言うが、「お前では相手にならない」とも捉えられる言葉に緑谷は複雑な表情を浮かべる。

 

「では、こっちに来なさい」

 

 童子に連れられて向かった場所は、少し開けた森の中。その開けた場所の真ん中には、除夜の鐘を連想する大きな鐘が吊るされていた。

 

「鐘?」

 

「触れてみなさい」

 

 言われるがままに触れると、緑谷はその重さに驚く。

 

「吊るしてるだけなのに、ほとんど動かない………フルカウルでこれだ。素の力じゃビクともしないぞ………」

 

 見てみれば鐘を吊るしているのも、ただの縄ではなく有刺鉄線を何百も束ねて作られているものだった。

 

「出の字………否、緑谷 出久よ」

 

「は、はい!」

 

「"個性"の詳細は聞いておる。その"個性"は………どれだけ使える?」

 

「えっと…僕が負荷なく引き出せるのは5%までです。全身に"個性"を使うフルカウルは昨日習得したばかりで、気を抜けばすぐに解けてしまいます」

 

「それを使った機動力は、いずれ会う事になるワシの友に習うと良い」

 

「いずれ会う………?」

 

「ワシから出の字に教えるのはこれじゃ」

 

 童子は緑谷を下がらせ鐘の前で構える。

 腰を下げ、上半身は起こし、拳に作って腕を引く。

 

「鬼人・一閃」

 

ー ゴォォォォオン‼︎ ー

 

 

 山中に響き渡る鐘の音と大きく揺れる鐘を前に、緑谷は尻餅をついて自分の腰を押さえる。

 道着の重みもあって、地味に痛いのだ。

 

「今のは、"個性"の力ですか?」

 

「否、ただの正拳突きじゃ。正確には、()()()正拳突きじゃ」

 

「童子さんの………ですか?」

 

 大きく揺れる鐘を片手で抑え揺れを止める。

 

「出の字の拳は………オールマイトを見習い過ぎているな」

 

「ッ! よ、よく…わかりましたね」

 

 自分の"個性"の前所有者の名前が出て、緑谷は図星を突かれる。

 

「しかしお主の身体はお主のものじゃ」

 

「………?」

 

「…お主のその体格にあった、自分の打ちやすい型を見つけろ。と、いうことじゃ」

 

 いまいちピンと来てない緑谷に、童子は振り向きざまに告げる。

 

「型………ですか?」

 

「どれだけ力があろうと、それの全てを伝達できなければ意味がない。ワシが教えるのはそういった力の使い方じゃ。それが一つ………」

 

 童子は指を立てて少し勿体ぶる。

 

「まだあるんですか?」

 

「こちらが最も今、出の字が必要とする技術じゃろう」

 

「僕が一番………」

 

 生唾を飲みこみ次の言葉を待つ緑谷に、童子は膝をつき緑谷に顔を近付ける。そして立てた指で緑谷の腹部を突いた。

 

「ガッ⁉︎ ………ッカ…ゴホッ………な、何を?」

 

「一度体勢を立て直す際、距離を取るより急所を突き動きを止めた方が良い時もある」

 

「き、急所突きですか?」

 

「そういうことだ」

 

「わかりました。ところで…」

 

「ん?」

 

「よっちゃんの方は見なくて良いんですか?」

 

「うむ」

 

 なんせ夜々が行う修行も、昨日と同じ鬼神殺しという密造酒を飲み干すことだからだ。見ていたところで、アドバイスもクソもない。

 

「早速、打ってみなさい。まずはお主の型を作るぞ」

 

「はい‼︎」

 

 早速緑谷は構えて試してみる。

 構える手順の一つ一つを丁寧に、確かめながら意識するようにゆっくりと………

 

 そんな緑谷を見て、童子は僅かに口角を上げる。

 

(貴様より教え甲斐がありそうじゃな。俊典………)

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「テメェの武器はその爆破の応用と、優れた反射神経だ」

 

「ーーーッ‼︎」

 

「だからそれに頼り切り、看破された時に対応できない」

 

「ググーーー! ウゥーーー‼︎」

 

「だから俺の鎖に警戒した時、蹴りへの対応が遅れる。今までならその反射神経で見てから間に合ってたんだろうなテメェは」

 

ウゥーーーーーーッ(わかったから退きやがれッ)‼︎」

 

 爆豪は猿轡のように鎖を噛ませられ、月華に組み伏せられていた。

 いくら月華の実力を認めていても、背中の上で注意を垂れ流されるのはプライドの高い彼にはさぞかし苦痛だろう。

 

 言いたい事を言い終えたところで、月華は爆豪の上から退き鎖を解く。

 

「少し休憩にするぞ」

 

「はぁ⁉︎今始めたばっかじゃねぇかよ‼︎」

 

「身体は良くても頭がな…反省点を抑えて2分後に活かせ」

 

「スピードが負けてんのはわかってんだよ。だが後少しだ。スピードが負けてても、後少し早く動ければ対応できる………もう少しなんだよ!」

 

「そうか………じゃあやはり、重りを少し追加するか」

 

「はぁ⁉︎」

 

 成長を妨げるかのような行為に、元々物言いがあった爆豪は更に機嫌を悪くする。

 

「ぶっちゃけテメェ、天才肌だろ。オレは放っておいて強くなる点を、わざわざ教えてぇんじゃねぇのよ。テメェに成長してもらいてぇ所はもっと別にある」

 

「別ぅ?」

 

 悪かった機嫌を一度抑え、爆豪は真剣に考えてみる。

 

「戦い方だ、戦い方。反射神経に頼り過ぎず先読みも鍛えてけ。んで"個性"ばっか使うな」

 

「んだよ。戦闘で"個性"使うなとでも言うのかよ?」

 

「強個性なんだ。使わない手は無い。だがもっとバリエーションを持たせてほしい。移動も攻撃も手使うんなら、動かさねぇ足が勿体ねぇだろ」

 

「………じゃあ体術」

 

「おぉ。それだよ、オレがテメェに多少かじってほしい要素はよぉ」

 

 そう言った月華は指を咥え、綺麗な指笛を吹く。

 するとガサガサと草木を分けて1匹の猿が現れる。

 

「………UKYAッ⁉︎」

 

「昨日逃がした猿」

 

「あ? んだよ、キビダンゴがビビってんじゃねぇか。じゃあゴマ大福に相手させっか」

 

「おい、ネーミング」

 

 思わず爆豪が月華のネーミングにツッコムが、気にせずに月華が別の動物を呼んだ。身長は1m80cmほどの黒い毛皮に覆われた二足獣で、太い四肢が特徴的だ。

 

「紹介しよう。オレの(しもべ)のうちの一頭。ゴリラのゴマ大福だ」

 

(ここは動物園かよ)

 

「試しに攻撃は体術のみでやってみろ。体得すんのは隙を作る一打程度でいい。実践じゃどうせ、決定打は爆破だろ」

 

「一打程度でいい? ハッ! ざっけんな。全国トップ並みの体術身につけたらぁ‼︎」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 12時を回ったころ、夜々は酒瓶を床に置いて立ち上がる。

 フラつくその千鳥足で倉庫の扉の前に立ち、両手でグッと押しあける。

 

「………ご飯…」

 

 その目は虚で、生気を感じない。

 何かに絶望し切ったような表情を浮かべ、そのまま昼食の場へと夜々は向かった。

 席に着くと、その変わり果てた姿に緑谷と爆豪は目を丸める。

 

「………どうした酒井」

 

「……………」

 

「よ、よっちゃん?」

 

「……………そっとしといてくらさい」

 

「夜々。米は? 大盛りか?」

 

「………少なめ」

 

「大盛りだな。昨日も食ってないし」

 

「おにぃ………ウ…」

 

「夜々よ………()()()()()()()()

 

「………ング…」

 

 夜々はこの修行を2人に誘った張本人である。

 しかし彼女は誘ったことどころか、自分が参加したこと自体を後悔していた。

 なんせ彼女が望んでいた修行は、もっと汗水流して身に付けるものだったのだ。しかし蓋を開けてみれば、待っていたのは酒漬け地獄。

 

 実は昨夜逃走を図り、月華に夜々は捕まっていた。

 

 だがどのみち今日が最後。それが彼女にとっての唯一の救いだった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 昼食後は、また森に放り込まれ動物たち相手に生き抜いた。今回は夜々も参加していた。緑谷曰く夜々は満面の笑みを浮かべ「解放された!」と何度か口にしていたらしい。

 

 そして午後の4時頃、修行に励んでいた3人は月華に呼ばれある場所に来ていた。

 そこは夜々が修行の酒盛りをしていた倉庫で、その中から鬼神殺しを片手に童子が出てくる。

 

 夜々は酒瓶を見て嫌な汗を流すが、酒瓶を童子が口にする事で飲まなくていいのかとホッとする。

 

「最後の修行じゃ。小童ども」

 

 酒瓶を空にした童子のツノが薄らと光り、両の手を切って血を地面に流す。流れ出た血は多くないが、血の赤は童子を中心に半径20mほどの円が地面に広がる。

 そしてその手を合わせ、なんらかの印を結んだ。

 

「十升モード………()()()()

 

「わっ⁉︎」

 

 童子が呟けば地響きが始まり、夜々たちが立っていた地面が盛り上がる。

 否、盛り上がると言うのは語弊があるかもしれない。その地面から、誰かが這い出てきたのだ。

 

「んだこれ?」

 

 それも1人や2人ではない。

 数十人の大男が、3人を取り囲むように湧いて出てきたのだ。

 

「爺さんの奥義"百鬼夜行"。見ての通り、百人の爺さんが血の混じった土塊から生まれる妖術や。本来、百升モードで使うやつやから、まだマシやろ。通常より脆いやろし、数も50ちょいかの?」

 

「まさか…この全員と戦うとか………?」

 

「出の字………そのまさかじゃ」

 

 最後の修行。

 それはただの乱戦だった。図体のあるせいで、1人に対して3人しか一度に襲いかかってこない。それでも前後左右から襲ってくる鬼たちに、3人はなすすべもなかった。

 

 だがそれは、一昨日の彼らだったらの話。

 

「フルカウル…上限、5%………‼︎」

 

 まだ習っていないが、フルカウルによって劇的に向上した機動力で童子の分身体の間をすり抜ける。

 

「スマッシュッ‼︎」

 

 ー ボコ ー

 

 放った拳は、分身の一部を土塊のように削るだけだった。

 

(確かに思ってたより硬くない。何発も打てば壊せるだろうけど、数が………)

 

 一度に3体までしか襲ってこないが、それは襲えないだけで後続に控えている。

 間をすり抜ければ、その向こうの分身が襲ってくるのは当然だった。

 

「でも分身の作りが人型なら………」

 

 緑谷は右手を握り、その上から左手を被せる。そしてそのまま、分身の一体を背後から右肘で突いた。

 

 それは右エルボーを左手で押し込む形となり、分身は腰から砕けて上半身が倒れる。

 

「よし! ブヘッ‼︎」

 

「気い抜いてんじゃねぇぞクソデクッ‼︎」

 

 分身に殴られ、頭から地面に叩きつけられる緑谷。しかし分身は追撃をする前に、爆破を食らって上半身を失う。

 

 爆豪も同じように襲われているはずなのだが、最小限の動きで避け、一度たりとも止まらずに動いていた。

 

「んー焦るなぁ………んく……十升モード」

 

 出来ることなら百升を試したかったが、流石にそんな隙は無いと判断する夜々。

 ひとまず十升で分身の攻撃を受け流し、カウンターを決める。

 

「量がキツイけど、やっぱ脆いなぁ………んく…二十升……」

 

「ハッ! もっとペースあげても良いんだぜ? 酒呑 童子さんよぉ!」

 

「ちょっ………流石にこれ以上は………」

 

「もっと自信持ちぃ、出久。ちゃあんと強くなっとるさかい………んく……四十升」

 

「酒井………ッ! ………テメェは、使えるようになったのかよ⁉︎」

 

「らしいで。まだ試し……てないけどな」

 

「二人とも、話辛いなら集中しなよ!」

 

 気付けば3人は一塊(ひとかたまり)となり、分身との攻防を繰り広げていた。

 

「五月蝿え‼︎テメェと違って全然余裕だわ‼︎」

 

「その割にまだ全然倒せてないじゃないか!」

 

「勝己、婆さんの口調うつった? あ、元々口悪いか。んく…七十升」

 

(クククッ…道着の重りを忘れさせられる動きしやがって。夜々と緑谷は兎も角、なんで増強系じゃねぇテメェが慣れてんだ爆豪?)

 

 童子の隣で日傘をさし、修行光景を眺める月華が口を押さえて小さく笑う。

 童子もその修行光景を面白そうに見ていた。

 

「悪いんやけど………残りはもらうで」

 

「チッ………勝手にしろ」

 

「んく………百升モ〜ドォ……」

 

 ツノの発光が僅かに強くなり、それが妖力なのか、夜々から目に見えない何かが溢れ出す。

 

「………ハァ…ん………思ってたより、症状も悪ないなぁ〜」

 

 その状態を楽しむように、夜々は飛んで分身の頭上に飛び乗る。

 

「"鬼圧"」

 

 ズンッと音を立てると共に足場にしていた分身は、夜々に潰されて容易く砕け散る。

 続けざまに指先を、分身が比較的密集している所へ向ける。

 

「………おい爺さん。夜々に()()はしたのか?」

 

「………………あ…」

 

「"鬼砲"」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「スミマセンデシタ」

 

 場所は変わって屋敷の前。

 そこには何重にも鎖で巻かれた状態で正座をする、酒呑 童子の姿があった。相変わらず強面だが、その目には反省の色が見える。

 

「つぅーわけで夜々。百升モードで鬼砲は撃つな」

 

「はい」

 

 そう釘を刺す月華だが、それにはもちろん理由がある。

 百升モードで撃てばもちろん威力が上がるのだが、パワーバランスが崩れ制御がしにくいのだ。

 

 放った結果、直径3mほどの極太レーザーはのたうち回る大蛇のようにうねった。真っ直ぐ撃てたとしても直径3mだ。空に向けて撃たない限り、地面にレーザーが触れ足元が崩れてしまう。

 

「つーかそれ対人で絶対使うな。制御できないとマジで人が死ぬ。死ななくてもあぁなる。わかったか⁉︎」

 

「はい………すみませんでした」

 

 月華が半ギレ状態で指差す先には、屋根が消し飛んだ屋敷があった。今朝この屋敷で目を覚ましたのだが、その頃の面影はほとんどない。

 

「まぁそれは説明しなかった爺さんの監督不届きだ………人に向けて使わない事を約束すりゃあそれでいい」

 

「婆さん。足痺れてきた」

 

「あ?」

 

「ごめんなさい何でもないです」

 

「…チッ………屋敷の修理費と、爆豪 勝己が壊した鳥居はテメェのヘソクリから出すからな」

 

「いや鳥居は婆さんが」

 

「………」ジャラン

 

「どうぞお使いください」

 

「………はぁ。さて…改めてだがお疲れさん。短期間でオレらが教える事は可能な限り詰め込んだはずだ。精々頑張んな、ガキども」

 

「ありがとうございました!」

 

「…した………」

 

「勝己もっとハッキリ言えや。爺さん、婆さん、じゃあの〜」

 

 学生3人は傷だらけの身体で荷物を持ち、月華たちの住む山を後にした。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 帰宅後、3人はそれぞれのオーバートレーニングによって得たものと、代償として生じた不調の改善に勤しんでいた。

 

「スゥー、ハァー………フンッ‼︎」

 

 緑谷は自室でサンドバッグをぶら下げ、正拳突きを放つ。

 今着ているのは、餞別に貰った道着。もちろん修行中に使っていた重りだ。

 

「………ダメだ、まだ力がどこかからか逃げてる気がする。肘か? 腰もしっくりこないし、無意識に今まで"個性"頼りで威力を出してたんだな僕………よし、もう一回」

 

 腰を落とし態勢を直すと、全身に痛みが走る。

 

「うっ………今は、筋肉痛を治した方が………いいかも」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「で、どうだったのよ。夜々ちゃんとのお泊まり合宿」

 

 そう言って爆豪の耳に息を吹きかけるのは彼の母親だった。

 吹きかけられた爆豪は鳥肌を立て震え上がる。

 

「ッ⁉︎何しゃがんだクソババア‼︎」

 

「誰がババアだ‼︎んな口の利き方して、夜々ちゃんに嫌われても知らないからね‼︎」

 

「五月蝿え‼︎テメェには関係ねぇッ‼︎」

 

 そう言い残し、爆豪は自室へと移動した。

 そしてベッドに身を沈め、全身の筋肉痛を感じる。

 

「………………チッ」

 

 そこで自分のスマホを探すが、リビングに置いていった事を思い出し舌打ち。また起き上がり、リビングへと向かおうとすると………

 

「勝己、あんたスマホ忘れてる。んで何これ?」

 

「テメッ…人のスマホ勝手に見てんじゃねぇ‼︎」

 

「検索履歴の"人に好まれる話し方"って何⁉︎嘘でしょアンタ!」

 

「ガアァァァァァーーーッ‼︎‼︎」

 

 スマホを奪い取り部屋から締め出すと、実の母親から「自覚あって悩んでたの…ごめんなさいね」と笑いながら言われる。

 

 爆豪は顔を真っ赤にして精神的に死にそうになった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 そしてここにも死にそうな少女がいた。

 

 修行によって血液のアルコール度数は高くなり、今までより少ない量で百升モードになる事はできた。

 よって今回は貧血が原因ではない。原因は大量の鬼神殺しによる二日酔いである。

 

「うぅーーー、気持ち悪い………」

 

 夜々は財布を手にウコンを買いに行くか悩んだ。

 何に悩んでいるかというと、それを必要とするという事は「未成年でありながら酒を飲み二日酔いになりました。と店員に打ち明ける事になるのでは?」と考えていたからだ。

 

「うぅーーー………」

 

 前も言ったが、彼女は"個性"の関係で飲酒を黙認されている。

 しかしそれを知っていてなお、彼女はそれに抵抗を覚えている。つまりチキっているのだ。

 

「………んくんく………ふんだ!」

 

 結局、彼女は水だけ飲んで横になった。

 

「うぅ………体育祭まで………あと数日………うぅ」

 

 最高のポティンシャルに戻せるのかというプレッシャーも相まって、夜々はこの後、盛大に吐いた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 そして翌日。

 いつも通りの学校生活を過ごすが、体育祭が近い事もあり雰囲気が違う。そして帰りのホームルームが終わり、各々が帰路につく。

 強化合宿について夜々たちは質問されたが、誓約書を理由に断固拒否。緑谷と爆豪は別に言っても問題ない気もしたが、真に隠すべき理由は夜々だけが知っている。

 

 彼が現れたのはそんな時だった。

 

「ふーん。本当にハニーと合宿に行ってたんだ」

 

 帰ろうとした緑谷と夜々は、教室の前で待ち構えていた男子生徒によって足を止められた。

 男子生徒は、制服の背中に穴が空いておりそこから一対の黒い翼を生やしていた。

 

「えっと、誰………ってハニー?」

 

 男子生徒の言葉に緑谷は首を傾げ、夜々は蛞蝓(なめくじ)を見るような目をしていた。その様子から、夜々の知り合いなのだろう。

 

「………誰だテメェ。退けやコラ」

 

 同じく帰ろうとした(というていで)爆豪が話に首を突っ込む。

 

「この2人が例の幼馴染くんかい?」

 

「………人違いデース。通してくだサーイ」

 

 そう言って無理矢理通ろうとすると、腕を掴まれた挙句、両手でその手を熱く掴み顔を近づける。

 

「どうしたんだい? もしかして照れていルッ⁉︎」

 

 最後に上ずった声を上げ、男子生徒は膝から崩れ落ちた。

 緑谷は白目を向いて息を呑み、爆豪は無反応を取り繕ったが若干内股になる。偶然その光景を見ていた尾白は「また君はそうやって………」と遠い目をしていた。

 

「ォ………ォ………」

 

「よっちゃん! 急に何をッ⁉︎だ、大丈夫ですか⁉︎」

 

 緑谷はテンパった様子で、現れた男子生徒に手を伸ばす。

 

 しかしその手は、男子生徒本人の手で払われ、今まで股間を押さえて蹲っていたのが嘘のように緑谷をキツく睨みつけていた。

 

「触らないでくれ。君なんかの手助けは要らない」

 

「え………」

 

 この異様な男子生徒の登場により、気付けばA組の生徒のほとんどが寄ってきていた。

 そこが出口なのだから当然といえば当然だが………

 

「え、何々? どうしたの?」

 

「なんかこの人、青山と同じ人種な気がする」

 

「え☆そう?」

 

「フフッ、まぁ僕の事を知らない人のためにも自己紹介しておこうかな?」

 

 そう言って制服の埃を叩いてから優雅に立ち上がる。

 翼は両サイドに大きく広げ、右手で胸を押さえ空いた左手は後ろに回す。そうやっていいトコの坊ちゃんのように礼をした。

 

「ボクは1-B組の黒羽(くろば) 礼文(あきふみ)。そこのマイハニー…酒井 夜々の許婚さ」

 

 そう言って爽やかな笑みをA組の面々に向ける男子生徒。

 それに対してA組の面々は口を開けて驚愕する。

 

「「「「「えぇーーーーーーッ‼︎⁉︎」」」」」

「「「「「はぁーーーーーーッ‼︎⁉︎」」」」」

 

 男女の二重の驚愕が飛び交うが、それすらもどこ吹く風といった感じで顔を夜々へ向ける黒羽。

 

「で、答えをまだ聞いてなかったね」

 

「るっさい、未練タラタラストーカーナルシスト糞烏。何が許婚や。何度フったら死ぬねんお前。だったらなんやねん」

 

(夜々ちゃん、口悪いな)

 

「別に………ただ君の目はどうやら曇っているようだから、体育祭で完膚なきまでに潰してボクの方が良いってことを教えてあげようかと………だからボクが優勝した時…その時は………」

 

 そう言ってまて夜々に手を伸ばそうとする黒羽だが、その手首を掴まれたせいで夜々には届かない。

 その手は僅かに熱く、ガチガチに固まった鍛えられ酷使された手だった。

 

「待てや。何勝手に話進めてんだ」

 

「………爆豪くん。だったかな? この手は何のつもりだい?」

 

「何も糞も、要は宣戦布告だろ。何俺から目ぇ逸らしてんだ」

 

「宣戦布告だなんて…ボクにその気は全然無いんだけどな」

 

「ハッ! 眼中に無ぇってか? 体育祭でサクッとやられて恥かくぞテメェ」

 

「………言うじゃないか。まぁいい………続きは体育祭でやろう」

 

 そう言い残して黒羽は踵返して帰路についた。

 

「ん? お前ら、何をたむろしてるんだ?」

 

「あ、B組担任のブラド先生………」

 

「ちょうど良かったわぁ。実は黒羽とか言う気持ち悪い生徒にセクハラされてん。退学処分にしてもらえへん?」

 

(酒井、今のやつを凄く嫌ってるんだな)

 

 そう心で思いながら、切島は別れの挨拶をしていち早く帰り始めた。

 




Q.(前書きの友人の質問)
ここの爆豪って夜々ちゃんに好かれたくて何かしてたりする?何か検索履歴にあったりしない?

回答者:爆豪 光己(爆豪の母親)
「作中にでた会話術の他、ファッション系をチェックしてたわ。ちなみに夜々ちゃんの誕生日は3/9で、次の誕生日に服をプレゼントするつもりらしいのよね。ちょっとは可愛いとこあるでしょ?今言ったこと勝己には内緒ね?」
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