回答者:酒姫(夜々の母)
「儂ゃあ36…イレイザーはんたちの6つ上じゃな。初めて会ったのは22の頃…1年だけ雄英の教師の真似事をしてな。一年過ぎた後も少し面倒を見てのう………夜々は覚えてへんやろうけど、2人とも儂の娘抱っこしとるんやで?」
それでは12話、グダグダっとどうぞ!
12.鬼と体育祭
「………………」
「………なはは〜………おはようございます。相澤はん」
眼光を光らせる相澤を前に、流石に今回ばかりは萎縮する夜々。
相澤はUSJ事件の傷が完治しておらず、未だに包帯を全身に巻いていた。
ちなみにここは1-A組の教室で、夜々以外は全員席についている。
「酒井、遅刻だ」
「いや〜相澤はん。これには山より深く海より高い理由がありまして…」
「それ海抜0メートルだろ。ひとまず話せ」
「………寝坊しました」
小声でそう呟く夜々の頭を、相澤は出席名簿の裏面で軽く叩く。
「説教はまた今度にする。座れ」
「はい」
そそくさと自分の席へと向かい、バッグを置いて椅子に腰をかける。
「一人遅刻したが全員揃ったな。体操着に着替えて控え室に移動しろ。それから………」
両手で教卓の角に手を置き、少し前のめりになって間を空けてから相澤は告げる。
「各自、全力を尽くすように」
その言葉はやけに重く、遅刻して軽くおちゃらけていた夜々が気を引き締めるのにも十分だった。
今日は雄英体育祭。
ヒーローを目指す少年少女たちの、数少ないビックイベントである。
ー
ーー
ーーー
「凄い集まっとるな〜」
「夜々ちゃん、緊張しないの?」
「しとる。普通にしとる」
雄英に今、大勢の人が集まっていた。
保護者や見物客はもちろん、ヒーローの卵を見にきたプロヒーローもいる。
USJ事件もあり警備として雇われた多くのヒーローもいるので、それを含めればヒーローだけでも1000人を超えるだろう。
それを話題にして、入場控え室では各々が雑談をしていた。
その目的は主に、緊張を緩和させるためだろう。ただ話題のせいで、逆に緊張感を増す者も中にはいた。
「そんなにヒーロー集まるって、ヤバくね?」
「それだけ皆、注目しとるんやろ。充電はバッチリか、ピカ〇ュウ」
「誰がピ〇チュウだ‼︎いや良く言われるけどよ⁉︎」
「今日もバチバチして可愛いなぁ」
静電気で逆立ったような上鳴の頭を、夜々は無邪気に指を通し掻き乱す。
「可愛いって…ちょ、やめろよ! お前のテンションにまだオレ付いていけねぇわ」
「すまん。ふざけてへんと緊張紛れんのや」
「女子に構ってもらうなんて………上鳴…お前だけはオイラの仲間だと思っていたのに………」
血走った目で上鳴を睨みつける峰田に苦笑いを零すが、上鳴はその後ろに立つ2人を見て更に表情が引き攣る。
「あー、酒井。そろそろやめてくれ」
「うい」
「緑谷…ちょっといいか?」
緑谷と爆豪の無言の圧に負け、上鳴はその場をそっと離れる。
それとほぼ同時のタイミングで、轟が緑谷に話しかける。少し異質な組み合わせに、周囲のクラスメイトの何名かがそれに注目する。
「客観的に見ても実力は俺の方が上だ」
いきなりなんだと思うが、確かにそうだな。と緑谷はまた微妙な表情を浮かべる。
「だけどお前………オールマイトに目かけられてるよな?」
「へ?」
オールマイトと緑谷の関係を轟は知らない。ただ師弟関係でもあるため、隠してはいるが時折一緒にいるところを皆は見ていた。
増強系の"個性"同士、"個性"の制御ができていない緑谷をオールマイトがアドバイスしている。クラスメイトの大半はそう捉えているが、轟は違ったようだ。
緑谷もそれを感じ取って、必死に隠しているが焦っているのが表情に出る。
「そのことについて深く詮索はしねぇ。だが緑谷………お前には勝つぞ」
「宣戦布告なんてやめとき。色々面倒や」
そう言ったのは夜々だった。
緑谷の肩に腕を回し、悪絡みするように首を突っ込む。
「仲良しこよしじゃねぇんだ。別に良いだろ?」
轟は夜々を睨みつけるが、負けじと夜々も睨み返す。
「何だ。言いてえ事があるなら言えよ」
「轟はん…あんたに宣戦布告するような資格ないで?」
「………なんだと?」
空気がピリ付き、事の始まりを見ていなかった者も今では見ている。
「あの2人…どうしたんだ?」
「そういえば酒井のやつ………やけに轟のことを嫌ってないか?」
「ちょっとわかる…最初は気のせいかな? って思ってたんだけど…夜々ちゃんたまに轟を見て嫌な顔するんだよね。悲しいような………なんというか………」
1-Aのクラスメイトは、わりかし周囲の人を見ているらしい。だから夜々が轟を見て、目を曇らせている事を何人かは知っていた。
「轟はんって、
「な! 酒井さん‼︎流石に言っていい事と悪い事が………」
「生き方が醜いねん」
轟の容姿はイケメンの部類だ。髪は左右で色が違うくらいで、顔そのものは整っており1-Aの中ではトップだろう。ただ顔の左…そこに古い火傷痕が残っているのだ。それは治った今でも古傷を残している。
それについて言っているのであれば。と、八百万が夜々を咎めるが、どうやら違うらしい。
轟も「生き方が醜い」と言われ、表情を顰めて次の言葉を待った。
しかし夜々は目を瞑り、目頭を指で押さえて反省の色を見せる。
「いやすまん………なんでも無いわ。忘れてくれや」
「おい! そこまで言っといてそれはねぇだろ」
引っ込みがつかず、去ろうとする夜々の肩を掴む。
その手を剥がして振り向くが、夜々はそれでも謝罪の言葉を述べ逃れようとする。
「ホントすまんて。これ以上は喧嘩になってまうし、ここでやめとこうや」
「………ならせめて、結局何が言いたかったのかだけ教えろよ」
本当に申し訳なさそうにする夜々の姿に頭が冷めたのか、轟も少し落ち着きを取り戻し改めて尋ねる。
すると少し迷った表情を浮かべ、溜め息をついてから轟以外に聞こえないよう耳打ちをした。
「そのままでおるならお前さん………ヒーロー諦めた方が良えよ?」
「………………」
轟は意味がわからず硬直する。
空気は嫌に白けたままだが、夜々はそろそろ入場だと言って控え室を出て行った。
それに続いて…というよりは、この空気に耐え切れず次々とクラスメイトは部屋を出て行く。
「………轟くん」
「緑谷…」
最後に残ったのはこの2人だった。
「さっきの話の続きだけど………僕よりは轟くんの方が実力は上だと僕も思うよ。かっちゃんやよっちゃんでも、君に勝てるのか分からない。けど、他の科の人も本気でトップを取りに行こうとしてるんだ……だから」
緑谷は少し間を空けてから、轟の目の前に立ち宣言する。
「僕も“本気”で獲りに行く!」
「………そうか」
夜々の言葉の意味がわからず少し考え込んでいたが、緑谷の言葉で現実に引き戻される。
(そうだ………今は考えてる場合じゃねぇ)
「だが俺が勝つ」
そう言って2人も、控え室を後にした。
ー
ーー
ーーー
列をなして暗い通路を進む1-A組の生徒たち。もちろんその中には夜々や緑谷たちの姿もある。
暗い道だが前はわかる…光が差す入場口と、その向こうからすでに聞こえている歓声。
『遂に来たぜ‼︎年に一度の大バトル‼︎ヒーローの卵と侮んなよ‼︎ つうかお前等の目的はこいつ等だろ⁉︎ヴィラン襲撃を乗り越えた鋼の卵共‼︎‼︎』
入学試験でも聞いたプレゼント・マイクが場を盛り上げているのも聞こえてくる。
明らかに自分たちに的を絞った内容で、また緊張する者と冷静を保つ者…そして気恥ずかしく不恰好に頬が釣り上がる者に別れた。
そしてついに光差すグラウンドへ入場する。
『1-A組だろォーーーッ⁉︎』
「「「「「ウオォォォォォオーーーッ‼︎‼︎」」」」」
鼓膜が破れかねない歓声。すでに上がっていた歓声の声量が、これまでに引き上げられるのかと驚く。
皆と共に入場しているから問題ないが、もしこの中を1人で歩けばきっと動けなくなる者もいるだろう。
そして1-Aに続いて他のクラスも入場してくる。
1年の全生徒が集結すれば、宣誓台に1人の女性のヒーローが上がった。
ヒールにガーターベルト、そしてマスクに鞭。そっち系のクラブを連想させるコスチュームを着たその人は、18禁ヒーローのミッドナイト。
「選手宣誓! 選手代表。1-A組、爆豪 勝己‼︎」
「あ、勝己が代表なん?」
「一応入試トップだからな………一応」
夜々が言えば瀬呂が答える。
彼は元々誰とでも分け隔てなく話せるタイプで、爆豪にも怖じけず意見を言ったりふざけたりできる人間だった。
「センセー」
そして気怠そうに宣誓台に上った爆豪は、腕を上げて宣誓………というより、宣
「………………」
「クックックッ………勝己らしいわ」
人知れず笑う夜々だが、その声は一瞬で掻き消された。
爆豪の行動に対する盛大なブーイングによって………それでもなお爆豪は反省の色も萎縮した姿も見せない。
代わりに見せたのは、親指で首を搔き切る仕草だけ。
無論、ブーイングの嵐は更に強くなる。
しかし爆豪はその表情を真面目なものに変え、ある人物を睨みつけた。
「………フン。肝は座ってるようだね」
黒羽は眉間に青筋を浮かべ、背中から飛び出した翼の羽が苛立ちを表すように逆立ち始めた。
だがそれでも司会進行役であるミッドナイトは、体育祭の選手宣誓と処理して次へ進める。
宙に配置された巨大なスクリーンに、第一種目の内容が表示される。
「さーて、それじゃあ早速第一種目に行きましょう! いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ! さて運命の第一種目! 今年は……
スクリーンに表示された文字は「障害物競走」の5文字。
いくらヒーローの名門校でも、やはり体育祭らしい内容なのだなとコレでは思うだろう。
しかしそれは障害物の内容を知れば、「いくら体育祭でも、やはりヒーローの名門校なのだな」と意見を変えるだろう。
「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周、約4km! 我が校は自由さが売り文句! コースさえ守れば何をしたって構わないわ‼︎さあさあ、位置につきまくりなさい!」
「つきまくるってなんや? まぁ、この人数なら"つきまくる"でええんかな?」
そんな事を言いながらスタート位置へ移動する。
人数が多いので、それだけでも一苦労…ましてや先頭に陣取るなど無理に等しい。それでも先頭に運良く陣取れる者も居るわけだが………
「あーもうこの辺でいいや」
全員が位置についたのを確認できたのか、スタートの合図を示すシグナルに3つのライトが灯る。
それを見た生徒たちと観客のざわめきは、すぐに小さくなってやがて消えてなくなった。
「ここって真ん中ちょい後ろくらいやろか?」
シグナルのライトの1つが消える。
(さてどうするか。うちの十升モードに必要な血の量は、100mlから80mlに減っとるけど)
障害物競走は第一種目で、種目は全てで3つあると伝えられている。
最終種目まで出来る事なら温存したい。
(そのためにここは素でやろうかの?)
そう考えていると、シグナルがまた1つ消える。
残り1つの光が消えるのを、今か今かと皆が待ち構えていた。
(上位に食い込めば良いだけやし…うん)
そして最後のライトが消えた。
『スタート‼︎‼︎』
歓声がまた上がり、人の波か一気に動こうとしたその時………
「なっ⁉︎」
「嘘だろオイ!」
「ちょっ、いきなりかよ‼︎」
凍った足元に一同は困惑する。
両足は凍りつき地面に固定され、動ける者はほとんどいない。
「悪いな」
主犯は轟。スタートと同時に凍らせて妨害し、先頭に躍り出る。
ただ手の内を知っている1-Aは、全員が回避して後を追っていた。
「チッ…流石に全員は無理か………なっ⁉︎」
そして彼女も、もちろん逃れていた。
ツノを僅かに光らせ、たった今轟の頭上を飛び過ぎていく。
進行方向に背中を向け、指先から出るビームの推進力で空を飛んでいた。
「でもやっぱ、温存できるほど甘くはないわなーッ!」
ー
ーー
ーーー
『ついに始まったぜ、雄英体育祭1年部門! 実況はこのボイスヒーローことプレゼント・マイク! 解説は抹消ヒーロー、イレイザーヘッドの2人でお伝えしていくぜ‼︎解説のミイラマン、アーユーレディ⁉︎』
『無理矢理呼びやがって…』
相変わらず包帯姿でミイラマンと称された相澤は、仕方なく競技に目を向ける。
『さぁ! スタートダッシュで先頭に出たのは、後続を凍らせた轟…ではなく⁉︎空飛びナウの酒井ガーーールッ‼︎その後ろを1-A組の面々が追いかけていく‼︎教え子の活躍を前に感想はねぇのかよイレイザー⁉︎』
『休ませろ』
夜々は地上を見下ろし、コースだけ確認して飛び続ける。
しかしこのまま飛べば早々に切れるため、着地するタイミングを探すが………
ー カァン ー
「ヘブッ!」
『プッハ! ここで酒井ガール撃墜‼︎』
『何やってんだアイツ』
前方不注意で何か硬いものに叩き落とされた夜々は、土埃の中から立ち上がり振り向く。
そこに佇んでいたのは2体の巨大なロボで、ヒーロー科の生徒達は入試で一度見ていた0ポイント
『クゥーーーッ! しかし早いな! もう第一関門か⁉︎手始めの第一関門………"ロボインフェルノ"の始まりだぜぇ‼︎』
「マジかい」
「先行くぞ」
土埃を払って走り始めると、その横を轟が抜き去っていく。
もちろん先頭を走る轟をロボが襲うが、それも一瞬で氷漬けにされて動かなくなる。
『ここで先頭が入れ替わるーーーッ‼︎轟! またもやお得意の氷結でロボインフェルノを無力化ーーーッ‼︎』
轟は無力化したアーチ状で静止したロボの下を潜る。すぐさま夜々もその後を追うが、頭上から嫌な音が聞こえる。
「そこはやめとけ。崩れやすくなってる」
「なんやて⁉︎」
氷結具合を制御したのか、轟が通った後でロボが崩れ始める。それを見て夜々は右手を引いて、タイミングを合わせて振り上げる。
「あぁんにゃろぉぉお!」
ー ドオォン‼︎ ー
振り上げた拳が鈍い音と共に、ロボが一瞬身体を浮かびあがらせる。夜々はその隙に前へと飛び、下敷きになることを免れた。
もっとも、夜々の後続の者たちはそうはいかなかったようだが。
「俺の前を行くんじゃねぇーーーッ‼︎」
そこへ追いついてきたのは、ロボの上を通ってきた爆豪だった。
彼は爆破の推進力で上を通ったようだが、他にもテープて自分を引き上げる瀬呂や、
「ちんたらしてられんな」
夜々には50mを3秒37で走る脚力がある。
しかし強化合宿で20kgの重りをつけて飛んでいた爆豪は、そんな夜々を置いて前へ進んでいく。
「マジか………いや、焦るな。言うてまだ3位や」
『おぉーっとここで酒井ガール順位が下がっていくーーーッ⁉︎』
「………マイクはん、煽らんといて」
『一方その頃先頭を行く轟! もう第二関門か⁉︎第一がそんなにぬるかったか? ならこれはどうだ‼︎奈落に落ちたら即アウト‼︎"ザ・フオォォォーーール"‼︎』
轟が第二関門に着いたのを見計らって、マイクがそう言って場を盛り上げる。
そしてマイクが言った通りそこにあるのは巨大な底の見えない穴で、点々とある足場にロープがかけられているだけだ。
要は綱渡りをしろと言う事だろう。
しかし轟は氷で安定した足場を作り難無くクリアする。もちろんその氷は、後続が使えないように数秒で溶けて崩れた。
「待てやゴラァァァ‼︎」
爆豪は元々の移動手段が空中移動だ。もちろん難無くクリア。
だが次に来た夜々は、最初のような燃費の悪い行動を取らなければ飛べない。しかし彼女も、強化合宿で数時間だが森を駆け巡っている。
『酒井ガール跳んだーーーッ‼︎またレーザーで空飛ぶつもりか⁉︎』
『おい、他も映せよ』
相澤に指摘され、マイクは咳払いしてから先頭との距離を詰める爆豪の実況に移った。
そして飛び降りた夜々はというと、岸から岸に伸びているロープを落下中に掴み、腕力にモノを言わせて振り子の容量で更に跳ぶ。
前の2人程では無いが、夜々も数分かけて難無く突破する。
「よし! 前が見えてきた!」
「なっ、出久⁉︎」
一度振り向くと、さっきまで居た岸に緑谷が立っていた。
しかも何故か、第一関門のロボの装甲をロープで縛り担いでいる。
「いかんいかん。前向かんと………」
緑谷まで追いついてきた事実に、夜々は驚くと同時に少し嬉しく思っていた。強化合宿を通して力になれた事に対してだ。
だがそれも一瞬で、すぐ切り替えて先頭を追いかける。
『止まって正解だ‼︎そこは最終関門の地雷原、"怒りのアフガン"だ‼︎地雷は目凝らせば見えるし、威力もそこまで高くねぇから安心して爆ぜろ‼︎』
『爆ぜたらダメだろ』
夜々からは確認できないが、先頭はもう最終関門に辿り着いたようだ。そして夜々が到着したのはその実況を聴き終えた頃… 夜々は実況通りの内容が目の前に広がっているのを確認しながら、一切減速せずに前へと進む。
地雷を避けて進む轟に爆豪が追い付き、互いに妨害しながら進んだ結果減速しているようだった。
「最終関門だけあって地雷原が広いやん。ちまちま進んでられへんな‼︎」
ー ボゴォン ー
『マジで爆ぜたーーーッ⁉︎』
『お前が言ったんだろ』
音だけでなく煙も凄い。しかし確かに威力は低く、爆炎の中からは一切の減速を見られない夜々が腕を振って走って出てきた。
『YEAH‼︎この程度の威力は足止めにならねぇってか⁉︎酒井ガール爆進するのを止めない‼︎』
『脳筋過ぎんだろ』
だがしかし、その猛進する速度は馬鹿にできず、ついに先頭に追い付き3人でトップを奪い合う形になる。
「どけ爆豪!」
「テメェが退きやがれ‼︎」
「じゃあ間取って2人とも退いてや‼︎」
「どこが間だボケェ‼︎」
ーーー ボゴオォォォオン‼︎ ーーー
そして後続でまた爆発が起こる。後続も追い付きつつあり、爆音も度々なっている。しかし今のはそんな中でも群を抜く爆音だった。
思わず先頭の3人は一瞬気を後ろに向ける。
『また爆発ーーーッ‼︎でもって今日は良く人が飛ぶな⁉︎』
『地雷は目を凝らして見えるほど浅く埋まっている。それを掘り返して集め、あえて爆発させたな』
「デクッ⁉︎」
「緑谷‼︎」
緑谷は担いでいた装甲を盾に、爆風で空を飛んで一気に先頭に躍り出た。
「なんちゅー使い方しよんねん‼︎」
「この手は………絶対に離さない‼︎」
妨害しようと緑谷に伸びる3本の手。
しかし緑谷は盾に使った装甲に結ばれたロープを掴み、前転の勢いで間髪入れず装甲を地面に叩きつける。
「またっ⁉︎」
ー ボゴォン‼︎ ー
着地先の地雷が爆発し、盾にしていた装甲は爆風を面で受ける。それによって効率良く受けた爆風で前に吹っ飛び、緑谷は引っ張られ3人を引き離す。
「行かせへん!」
「行かせねぇ!」
続くのは爆風をもろともせずに進む夜々だった。その次が咄嗟に氷で防御した轟で、空中移動をしていた爆豪は2人よりも踏ん張りが利かず、一番の被害を受けていた。
「テメェもだ酒井!」
「んな! またそうやって!」
轟は氷の道を形成して夜々を足止めし、当の本人はその上を滑走して加速する。
「クッ、間に合うか⁉︎」
ー
ーー
ーーー
『ゴォォォーーール‼︎第一種目をトップでゴールしたのは、気付いたら前に現れたダークホース………緑谷ァ 出久ゥーーーッ‼︎』
「チッ………」
「ハァ………やられた………」
「クソガァァァア‼︎」
続いて後続がゴールするが、上位2〜4位の顔には不満の表情が見えていた。
(轟はんの妨害さえなければまだ………んや、言い訳やなコレ)
次々とゴールしていき、やがてミッドナイトが笛の代わりに鞭を振って音を鳴らす。
「そこまで‼︎さぁモニターを見て、これが第一種目を突破した者たちよ‼︎」
第一種目の結果、夜々は3位という記録を残した。ちなみに2位が轟で4位が爆豪だ。第二種目の参加券を手にしたのは上位42名。脱落したのは43位以降の生徒たちだ。
「落ちちゃった人もまだ見せ場はあるから安心しなさい! それよりもここからが本選よ! 第二種目は………」
「………チーム戦や」
第一種目はいわば予選。本戦とも言える第二種目は"騎馬戦"だった。
個人競技でない事に戸惑う者もいたが、ミッドナイトは説明を続ける。
「ルールを説明するわ。まず2~4人のチームで自由に組んでもらい騎馬を作ってもらいます。基本的なルールは騎馬戦と同じだけど、違う点といえば障害物競争の順位の結果が、各自に振り当てられたポイントになるということ! ポイントが高い人ほど狙われてしまう下克上サバイバルよ‼︎」
「なるほど。最初に動くと後が辛い………か」
そう緑谷は考察するが、ミッドナイトの次の説明で表情を固めさせる。
「次にポイント。ポイントは下から5ずつ増えていくわ! だけど1位だけは1000万Pよ‼︎」
「………ん?」
下から5ポイント。つまり第一種目で42位だった者の持ちポイントは5ポイント、41位は10ポイントだ。
しかし一位だけは………
「1000万ポイントよ」
「えぇぇぇーーーッ⁉︎」
大事な事なので2回言ったのか、改めて言われて緑谷はあからさまに挙動不審になる。
ー
ーー
ーーー
緑谷が混乱しようとも説明は続いた。
要点をまとめると以下の通りだ。
・2~4人で1チームの騎馬を作る。
・ルールは基本的に通常と同じ騎馬戦。
・ハチマキを奪われる。騎馬を崩される。そのどちらになっても失格にはならない。
・悪質な崩しは一発退場。
・騎手は騎馬を含めた合計のPのハチマキを首から上に巻く。
・ポイントは下から5ポイント。1位だけ1000万ポイント。
・競技を行う制限時間は15分。
説明が終わると15分だけ、それぞれが自分の騎馬、自分のチームを築き上げる時間が設けられた。時間がたったところで再度ミッドナイトが呼びかけ確認する。
全チームが完成し、それぞれがグラウンドに散ってスタート位置につくとプレゼント・マイクに実況権が移った。
そして彼のスタートの合図で第二種目が始まる。
『さぁ始まっぞ‼︎まさに今、合戦がスタァァァーーート………ってなんだありゃ‼︎おいイレイザー‼︎
『有りだろ。誰が誰と組もうが自由だからな』
『いやでも流石にどうよアレ‼︎』
観客席も少しザワつき、ある騎馬に注目が集まる。
「うっしゃー、気張っ…あ、騎馬と気張るでダジャレになる……頑張るで‼︎」
その騎馬の騎手である夜々は、張り切った様子でそうチームを鼓舞している。
しかしその騎馬の両翼にいるクラスメイトの顔は暗かった。
「うっ………胃が痛い」
「奇遇だね麗日さん。僕もだよ」
右翼の麗日は顔色の悪いまま無理にでも笑みを作り自分を保ち、左翼の緑谷も彼女に同情しながらも苦笑いを浮かべる。
そして夜々を乗せ2人を引っ張るポジションである先頭はというと………
「………足引っ張ったら殺す」
「ヒッ………」
既に「血管が切れるんじゃないか」と、疑わせるほどに青筋を浮かび上がらせた爆豪がいた。
その様子に麗日は子鹿のように足を震わせる。
『どうやら酒井に丸め込まれたみたいだな』
『1位、3位、4位が同じチームって大丈夫かよ!盛り上がりに欠けたりしねぇ?』
『知らん』
「またそうやって君たちはボクのハニーを………」
そして人知れず1人の男子生徒は憤怒の形相を浮かべ、ターゲットを夜々たちに絞った。
Q.20の時に夜々ちゃんを産んだんですか?
回答者:酒井 姫
「せやで。高校卒業して、交際してたら"できちゃった婚"や。それがキッカケでヒーローの肩書きが"鬼嫁"ヒーローになったんじゃ。懐かしいのう」
Q.酒井 夜々のお父さんってどんな人ですか?
回答者:酒井
「第1話ぶりにセリフを今放ってます。夜々の父です。よく人からは優しいとか言われてまして、それ以外は特に特徴のないメガネ男子です。
"個性"は学習で、人の3倍くらいの速度で物事を覚えられます。サイドキックとして妻をバックアップする事もありますが、本職は小学校の先生。趣味は家庭菜園です」
体育祭が終わった後、閑話で2チャンネルのスレみたいなのを書く予定です。
-
緑谷「2チャンネルみたい」
-
死柄木「ヴィランsideのIFを見せろ」
-
マイク『酒姫との過去編が見たいぜ!』
-
峰田「イチャイチャを見せてくれーッ!」
-
爆豪「時間かけてでも全部書けや!!」