鬼人のヒーローアカデミア   作:黝 証呂

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夜々
「何か言うことは?」

証呂
「…あけお」

夜々
「出久〜かもーん」

証呂
「っていうネタは去年使ったからぁ!?そうだねぇ!!本音を言おうか!?就活が忙しくて書けてませんでした!!今回は気分転換で書いてたら、決めてたノルマの字数超えたので投稿しました!!

緑谷
「TRPG趣味であげてる癖に……」

証呂
「それが一番気分転換する力が強くてね?」

爆豪
「ッチ……作者がザコで悪りぃ」

証呂
「ごめんなさい!!謝ります!!でもまた長い間失踪します!!忘れた頃に帰ってきます!!14話グダグダっとどうぞ!!!」


14.鬼と騎馬戦(後半)

 抱えてるポイントを持って逃げ切る。

 それが最善策だが、このチームは合理的に生き残りたいわけではない。生き残りレースで勝ちたいのではなく、不合理でもトップ争いで勝利したいのだ。

 

「散れ! 人間風情共‼︎」

 

「踏ん張れ! 3人‼︎」

 

 ハチマキどころか、強い突風で騎馬ごと飛ばされかける。

 足の裏が地面から離れる寸前に騎手である夜々は"鬼圧"で自分の重量を上げて防いだが、踏ん張るだけで精一杯で身動きが取れずにいる。

 

「よっちゃん! 対象を僕にして!」

 

 言われて騎馬の先頭である緑谷に、自身にかけていた術の矛先を移す。

 すでに緑谷はフルカウル状態で、そのまま走り出すと後続の2人の足が浮く。

 

「えっ⁉︎」

 

 つまりこの騎馬を支えるのは緑谷ただ1人になる。

 そこに伸びていたツルが緑谷の足に絡まり、緑谷は移動手段を奪われる。

 

「気い抜いてんじゃねぇぞゴラァ‼︎」

 

「アチッ!」

 

 爆豪は片手を離して蔓に向けて手を爆破させる。

 その熱で緑谷は眉間に皺を寄せるが、ツルは足から剥がれて抜け出す事が出来た。

 

「黒羽さん! ()()()()で落雷はダメですからね⁉︎」

 

「ふぅー、わかっている。わかっているとも! クソッ‼︎」

 

 血走った目で緑谷を睨みつける黒羽と目が合い、緑谷は胃が痛くなるのを感じた。それを見た夜々は激情しているが故にコントロール出来ず、黒羽が落雷を落とせない事を察した。

 

「ただあの竜巻の中をどう突っ切るか………」

 

「………酒井、一種目みてぇに飛べねぇのか?」

 

「突っ切るだけならできるやもしれん。ただハチマキは取れんし、軌道修正して戻ってくることはできんよ?」

 

「チッ、マジで突っ切るだけか」

 

「残り時間は………で………きっと………そうなると………」ブツブツ

 

「………………」

 

「だから………それなら………うん、でも………そうか」ブツブツ

 

「ダァーウルセェ‼︎テメェのブツブツ聴くとサブイボ出んだよ‼︎」

 

「わ! ゴメン!」

 

 ブツブツと独り言を続けていた緑谷を爆豪が咎める。気がつかなかったが、黒羽と目があった後から独り言を始めていたようだ。

 

「…デクくん。もしかしてなんか作戦が………?」

 

「うん…3人とも聞いて」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

『残り時間は1分を切ったーーーッ‼︎陸の孤島の2チームは未だに拮抗状態ッ‼︎竜巻で近付けさせない黒羽チームと、塩崎ガールのツルから逃げる酒井チーム‼︎エンターテイナーからすれば、いい加減場面を変えてほしいぜ‼︎』

 

『黒羽は多少苛立ちが収まってるな。言われずともそろそろ動き出すだろう………酒井たちも何か企んでるみてぇだが

 

 音声が拾えないほどの小声で最後に付け足す。

 それを隣で聞いたマイクは気になったが、指摘すれば「言っちまったらフェアじゃねぇだろ」と言われるのが眼に浮かぶのでスルーして実況に戻った。

 

「黒羽ァ‼︎いい加減頭冷ませ‼︎」

 

「わかっているよ! ったく、どいつもこいつも…僕は至って冷静だ‼︎」

 

(じゃあなんでキレてんだよ)

 

 徹鐡と黒羽の掛け合いを聞いて、心操は口にせずに心で呟く。

 

「ふぅーーー………3人とも、そろそろ仕掛けるからね?」

 

 大きく深呼吸を挟んでから、黒羽はそう宣言する。

 夜々たちは身構え、ある人物の指示を待つ。

 

「今度こそ………ハニーのポイントは僕が貰うからね⁉︎」

 

「だから3位じゃなく1000万を取れぇ‼︎」

 

 徹鐡の叫びに呼応するかのように、再び上空の雲行きが怪しくなる。

 セーブはしているが感情の昂りもあり、先程よりも短い時間で天候は変化した。

 またも落雷と誰しもが思い、夜々も十升モードを発動して天へ撃とうとする。

 だがそれよりも早く自然の猛威がその身に降り注いだ。

 

「雷…やない‼︎」

 

 それは雷ではなく、極寒の豪雪地帯を彷彿させる猛吹雪。天から地へと不自然にソレは垂直に吹雪いていた。それも最初だけで、上下左右前後へと風向きは変化を続ける。

 

「んのやろーッ!」

 

「待て酒井‼︎まだ撃つんじゃねぇ‼︎」

 

 爆豪の待ったで鬼砲を撃つのを躊躇う。

 すでに騎馬を保つのがやっとの状態………この吹雪の中で天気を変える程の火力を出せば、推進力で崩れるのは眼に見えていた。

 

「合図はまだかいな!」

 

「まだ!」

 

 黒羽チームの騎馬は未だに竜巻の中心に陣取っており、手出しが出せない状態。そもそも酒井チームと黒羽チームがいるのは、夜々が作り出した陸の孤島の上だ。

 他のチームも手を出すどころか、そっち側に行けずにいる。

 

「デクゥ‼︎」

 

「まだ………」

 

 やがて空が僅かに明るくなるが、それは陽の光ではなく迸る雷の光だ。

 

「まだ………」

 

「今度こそ………ポイントは僕の物だ‼︎」

 

 その時………陸の孤島の外側。

 観戦客たちは目を向けてなかったステージの一角で、何かが光った。

 

「今だ‼︎」

 

「おっしゃあ‼︎‼︎」

 

 指先を天に向け、朱色のレーザーが空へ伸びる。一瞬遅れて落雷が酒井チームの騎馬へ落ちるが、それはレーザーと拮抗し阻まれる。

 

「ふーん。防ぐんだ………なら巻き上げるだけのこと‼︎」

 

 吹雪+レーザーの反動によって騎馬のバランスが危うくなり、それを見越して黒羽は風力を強めようと操作する。

 

 しかし………

 

 ーーー BZZZZZZ‼︎‼︎ ーーー

 

「グギッ⁉︎」

「ッ‼︎」

 

 黒羽を支えていた3人は短く唸って動かなくなる。

 そしてそれは騎手の黒羽も同様で、強い痺れを感じながら天候操作を止める。

 

(この痺れは雷⁉︎…僕に限って操作をミスるわけ………)

 

 冷静さを欠けば精度は落ちるが、幼い頃から使ってきた"個性"である。制度のブレる範囲を黒羽はもちろん把握していた。

 

「テ…メェ………か!」

 

 辛うじて踏ん張りながら徹鐡が言う。その言葉を向けた先にいるのは、轟チームの騎馬の1人である上鳴 電気だった。

 

 ただ当の本人…および轟チームの表情は暗い。というよりは強い焦りが見えた。

 八百万の"個性"でゴム製の衣類を作って身に纏い、上鳴の"個性"による放電で黒羽チームを無力化する。ここまでは轟の作戦通りだ。

 唯一の違いは、黒羽の攻撃を酒井チームが()()()()()だった。

 

 鬼砲を撃って抵抗すれば、黒羽が風を使って詰めに入るのは予測していた。緑谷や爆豪も同じように予測したはずだと、轟は思っていた。

 "撃てば負ける"………それを踏まえれば一か八か避けようとする。それが轟 焦凍の予想した酒井チームの動き。

 

「何故100%負ける方を選んだ⁉︎」

 

「轟くんたちなら、絶対にこのタイミングを逃さないと思ったよ!」

 

 彼の存在は、緑谷が更に先を見据えていた事だ。

 緑谷は轟ならここまで予測しているだろうと予測し、ここで漁夫の利に出ると判断。黒羽チームと酒井チームの両チームを電撃で奇襲し、飯田の機動力で両方を奪い取る事ができる。

 それを緑谷は知っていた。

 

「やるやん! あとはクソ烏の掻っ払って終いや!」

 

 轟が黒羽の"個性"を止めてくれるなら、酒井チームの騎馬はバランスを気にせず鬼砲が撃てる。

 そしてその後で、逆に漁夫の利を得ればいい。それが緑谷の作戦であり、一種の賭けだった。

 

(俺の"個性"なら両チーム凍らせられた。だがそうすれば黒羽が飛んじまうから上鳴に"個性"を使わせた)

「今から間に合うか………いや、間に合わせる‼︎」

 

 "個性"を使い陸の孤島へと橋をかけ、そのまま酒井チームを捉えようとする。

 騎馬の足元に氷の道が伸びるが、それも予測していたのか難無く避けられてしまう。

 

「当たるかボケェ‼︎」

 

 いつのまにか騎馬の先頭が爆豪に切り替わっており、例の手段で空を飛ぶ。

 そのまま硬直したままの黒羽チームへと迫り、夜々はその手をハチマキへと伸ばす。

 

 だが緑谷たちが予測したのはここまでだった。

 

「それで良い轟君、間に合った! ………皆、最後の攻撃を仕掛ける。この後、俺は使えなくなるが、頼んだぞ」

 

 その言葉は轟チームの皆には聞こえたが、他の者には聞こえていなかった。

 

「行くぞ轟君! トルクオーバー…レシプロバースト‼︎」

 

「ッ!」

 

 飯田の"個性"…「エンジン」のトルクと回転数を無理矢理上げ、10秒ほど爆発的な推進力を生み出す裏技である。ただ使用後は反動でエンストしてしまうというリスクをもつ切り札………こちらもまた賭けだった。

 

 ー Booom! ー

 

 驚異のスピードで迫る轟チームへ反応できたのは、地の反射力が優れていた爆豪だけだった。

 夜々の両足を乗せている自身の両手を爆破させ、打ち出すように彼女飛ばす。

 

「うわっ⁉︎」

 

 騎手を失った騎馬の前を、飯田が牽引する轟チームが通り過ぎる。同時に夜々が先ほどまでいた場所を、轟の右手が通過した。

 爆豪の行動がなければハチマキは取られたかもしれない。

 

「な、な? …なんやねん⁉︎」

 

 身体が反応しただけで打ち出されたことに今気付いた夜々本人はというと、今ちょうど黒羽の頭上を通り過ぎるところだった。

 ワタワタと四肢を振り回して、危なからず黒羽のハチマキに指を引っ掛ける。

 

『ここで轟チームが爆進‼︎だが惜しくも避けられ、酒井ガールが宙を舞うーーーッ‼︎』

 

『もはや見慣れた光景だな』

 

 実況席からそんな事を言われるが、ほぼ偶然だが黒羽のハチマキを空中で奪った夜々はホッと一息をつく。

 

 奪ったことで油断してしまったのだ。

 

『しかしここからどうする⁉︎陸の孤島を飛び出した鳥がハゲタカ共に狩られるぜ⁉︎』

 

「げっ⁉︎」

 

 それを聞いて気付いた夜々は、すでに十升モードは切れており鬼砲による軌道修正などはできない。

 現在夜々は麗日の"個性"で無重力状態…側から見れば、高得点をぶら下げた風船が宙に浮かんでいる状態である。

 

 彼女には成すすべはなく「あかん。やっちまった」と脳内で呟くだけだった。

 

「デエェェェェク‼︎‼︎」

 

 しかし男どもは違った。

 

 騎馬は解体され、緑谷は自分に向けてドロップキックを放とうとする爆豪に面食らう。

 しかし爆豪の視線が夜々から外れていないことに気付き腰を落とし構える。

 

「フルカウル…8%じゃ足りない…けど単純な話だったんだ。()()使()()()()()

 

 その構えはバレーボールのレシーブのようだった。しかしボールの代わりにその両手に飛び込んできたのは爆豪の両足だった。

 

16%(8+8)…ツイン・スマッシュ‼︎」

 

「爆速ターボ‼︎」

 

 緑谷の振り上げるその両手に合わせて、爆豪は"爆破"の個性で更に加速する。進路にいるのは宙に浮かんだ夜々と、空に向けて捕縛系の個性を伸ばす他チームたちだ。

 

「歯ぁくいしばれや‼︎」

 

「ひゃっ…」

 

 風を切りながら鬼の形相で突っ込んでくる幼馴染を見て、思わず目を瞑る夜々。その次に来るであろう衝撃に備えるが、想像してた衝撃とは違い優しくそれはやってきた。

 

 俗に言うお姫様抱っこ。

 空中でその体勢を爆豪は作ると、器用に手首を捻って掌を爆破。軌道修正と同時に、他チームがハチマキを奪うために伸ばしていたテープや長い舌を払いのける。

 やがてその他チームの頭上をも越えて地面に着地する。

 

『………ピピ カシャッ………ここで時間一杯! 試合終了〜〜〜ッ‼︎』

 

「写真撮った! 今マイクはん写真撮った‼︎」

 

『気のせいだぜ。早速、結果発表だ‼︎一位は見てわかる通り、酒井チーム! Foo!』

 

「「「「「Fooooo‼︎」」」」」

 

「いっそ殺せ………」

 

 マイクの茶々に続き、観客席から黄色い声援が夜々たちに送られる。

 

『この空を舞ったジュリエットと颯爽と駆け付けたロミオに盛大な拍手をーーーッ‼︎』

 

「やめい! んでお前はいい加減離さんかい!」

 

「グッ」

 

 顔を殴れば、ようやく腕から地面に降ろされる。降ろされた本人はそのまま両手で顔を隠すがそれも当然の心境だろう。なんせ雄英体育祭は生でテレビ中継されているのだから。

 更に赤くなる顔を隠すが、恥じらいのせいかツノまで真っ赤になる。それは両手の隙間から飛び出ていて隠せてはいなかった。

 

 その姿はアップで画面に映される。

 それを見て"2ちゃんねる"に彼女の話題が上がり、そのスレでファンクラブ設立の議題が上がるのは知る由もない。

 

『2位は序盤に他チームのポイントを狩りまくった黒羽チーム! 3位は逆に守り抜いた轟チーム! 4位は………悪い全然見てなかった、瀬呂チーム! この4チームが決勝トーナメント進出だーーーッ‼︎』

 

「そんなーーー! 見といてよ‼︎」

 

「結構頑張ったんスけどね?」

 

「不覚………」

 

「決勝で挽回しようぜ」

 

 そう抗議の声などを挙げるのは、芦戸 三菜、瀬呂 範太、常闇 踏陰、切島 鋭児郎のA組の4名だった。

 テープの"個性"を持った瀬呂を騎手にしてハチマキを奪い、芦戸の酸を撒いて牽制し常闇の影で攻撃を防ぐ。先頭はタフネスに定評のある切島で、目立たなかったのは残念だが割とバランスの良いチームだった。

 

 ともあれこれで騎馬戦は終わり、昼食を挟んで決勝トーナメントが始まるのだった。

 

「………………フッ」

 

「………………は?」

 

 そして何故か勝ち誇った笑みを浮かべた爆豪と、珍しく青筋を浮かべてメンチを切る緑谷の存在は、同チームの麗日のみが知ることとなる。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「………チッ」

 

 そう舌打ちをして通路を歩いているのは、騎馬戦で3位に食い込んだ轟だった。

 真ん中から右は白髪、左は赤髪。それに加えてオッドアイという左右非対称な容姿が特徴の彼だが、クラスで群を抜くイケメンの部類である。

 しかし今はその顔を、勿体無いことに歪めて苛立ちを露わにしていた。

 

 そんな彼を待ち伏せしていたのか、一人の男が曲がり角から姿をあらわす。

 ガタイが良く、眉毛や髭が燃えている事から炎系の"個性"である事は間違いないだろう。

 

「情けない。焦凍、何故左を使わん」

 

「………………」

 

 轟はその男を睨むと、何も言わずに横を通り過ぎる。

 それに対し、男は轟を目で追いもせず背中越しに話し続けた。

 

「いい加減子供染みた反抗は止めろ。お前にはオールマイトを超えるという義務がある」

 

「………………!」

 

「聞いているのか! 焦凍!」

 

「聞こえておらん思うよ?」

 

「ッ! 誰だ!?」

 

 第三者の声に男が振り向くと、眼前にいたのは一人の少女。

 その少女は150もいかない身長で、轟の耳に手を伸ばし塞いでいた。

 その小さな身体は着物を羽織り、下駄を履いた足で僅かに背伸びをしている。

 

「???」

 

 両耳を初対面の少女…または幼女に抑えられた本人は、父親への憎悪を「(ハテナ)」で上書きしていく。

 

「久しいなぁ、エンデヴァーはん」

 

「酒姫! 何のようだ!」

 

 耳を押さえていた両手を離し、片手で口元を隠してクスクスと笑う。

 

「別に用件なんてあらへんよー? えらいイケメンさんおるから摘み食いしに来たんやでぇー」

 

「は?」

 

 相変わらず脳内には疑問を表す記号が増殖し、そんな時にようやく捻り出した言葉はその一音だけ。

 

「ふざけるのも大概にしろ」

 

「いやーすまへんな。あんさんピリピリし過ぎて、無理してでもふざけてないと緊張してしまうねん」

 

 顔を覆う炎の火力が強まるのを見て、酒姫と呼ばれた幼女はヘラヘラと距離を取る。

 

「酒姫って……酒井の」

 

「あ、知っとるん? 儂の娘と仲良くしてくれてありがとな〜」

 

「いや俺はむしろ嫌われてて……」

 

「え、そうなん? こんなイケメンを蔑ろに………あとでとっちめちゃる」

 

「酒姫ッ!!」

 

 轟と面と向かって話し始めた辺りで、エンデヴァーが怒気を強めて幼女のヒーローネームを呼ぶ。

 

「はぁ………そんなカッカしてたら、嫁さんに嫌われるで?」

 

「貴様には関係ない」

 

「関係無くとも面倒ごとに首突っ込むのがヒーローやねん。ういんく⭐︎」

 

 そう言ってウィンクを飛ばす酒姫に、エンデヴァーはプルプルと震えながら若干天井を仰ぐ。よく見れば白目を向いていて青筋も立っている。

 やがてそれが収まると、デカイ溜め息を吐いて歩き出した。

 

「貴様の相手はやってられん」

 

「………」

 

 残された轟は酒姫を見て待つが、それ以降何も言わず何の進展もない。

 

「………結局何しに来たんですか?」

 

「んやー娘か顔馴染みを探してるねん。やけど見つからんくてな…そんな時にあんたら見つけたけん」

 

 そう言って懐から飴か何かの袋を取り出して、一つ摘むと口の中へと放り込む。

 

「イケメンさん。名前は?」

 

「…轟 焦凍」

 

「焦凍はん…あんた、自分の父親を許せる?」

 

 唐突に突きつけられたデリケートな質問に、轟の眉間がわかりやすく反応する。

 

「あんたには関係無いです」

 

「………なんで夜々が嫌うか、なんとなくわかったわ」

 

 袋から二つ目を取り出して頬張って、納得したように肯く酒姫。

 

「きっと夜々が言いたがってる事を儂が言うのも違うやろうし…儂はそろそろ退散するさかい」

 

 結局何しに来たのかもわからないまま立ち去ろうとする酒姫。

 それを数秒置いてから………すでにかなりの距離がある所で轟は振り返る。

 

「俺ってヒーローやめた方がいいんですか?」

 

 気が付けば口からそんな言葉が出ていた。

 彼自身ヒーローを諦める気は無い………にも関わらず、夜々の言った事が引っかかり、つい口走ってしまう。

 

「………夜々が言ったんか?」

 

「………………」

 

「…君の事を知らんから何も言えん………否、これくらいなら言ってもええじゃろ」

 

 困った表情を浮かべたまま頬を掻き、酒姫は轟を一瞥してか顔を背けた。

 

「君の名前は轟 焦凍じゃ」

 

 質問には答えずそんな事を言い、轟を見るその目は僅かに彼を哀れむようなものだった。

 そしてその目は、開会式前に見た夜々ととても似ていた。

 

「はぁー、イレイザー昼何食うよ」

 

「一緒に食うつもりか? お前の隣は騒がしくて嫌なんだが」

 

「あ! イレイザーはんやん!? おひさー!」

 

「うわっ、先輩」

 

「うわってなんやーーーッ!」

 

 酒姫はそのまま、逃げるようにイレイザーとマイクを追いかけていった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 裏で母とクラスメイトが会敵してるなど梅雨知らず、夜々はクラスの女子グループと昼食を済ませた。

 それが終われば午後の部が始まり、種目で敗退した者達が見せ場となる玉転がしや綱引きと言ったレクリエーションが始まる。

 

 何故か男子グループが騒いでいたので、夜々は幼馴染達とではなく女子グループと共に観戦………そして途中で敗退した葉隠や蛙吹はレクに参加するが、最終種目に向けて体を休めていた。

 

 そしてその時は来た。

 

『さぁさぁいよいよ最終種目。進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式! 一対一のガチバトルだ!』

 

 ブロック1

 第一試合:酒井 夜々 VS 鉄哲 徹鐵

 第二試合:轟 焦凍  VS 瀬呂 範太

 第三試合:緑谷 出久 VS 心操 人使

 第四試合:飯田 天哉 VS 塩崎 茨

 

 ブロック2

 第五試合:芦戸 三奈 VS 常闇 踏陰

 第六試合:八百万 百 VS 上鳴 電気

 第七試合:黒羽 礼文 VS 切島 鋭児郎

 第八試合:爆豪 勝己 VS 麗日 お茶子

 

 くじ引きでトーナメント分けされ、夜々は一気に鉄分ゼリーを飲み干す。

 

「開幕一番…派手に行きまっせ!」

 

 空のパックを咥え、夜々は背中に女子グループの激励を浴びながら控え室に向かった。




峰田
「………って言ってよ!女子共のチアリーダー姿を拝める寸法よ!!」

上鳴
「おぉ!それが出来たら眼福だな!!」

瀬呂
「そうだな……できたらな」

上鳴
「どうした投げやりに…そう言う事か。悪い峰田、俺ら降りるわ」

峰田
「はぁーーーッ!? ならいいさ!! オイラ一人でも作戦を実行し……」

爆豪
「ハアァァァイ…峰田ぁぁぁぁあ?」

緑谷
「アハハ。かっちゃん、それじゃペ〇ーワイズみたいだよ」

峰田、緑谷、爆豪は小一時間ほど姿を消した。
峰田を引きずる二人を止める勇者が現れなかったからだ。

夜々
「なんか男子グループ騒いどんな。どうしたんやろ?」

麗日
「よっちゃん!レクリエーション一緒に見よー!」

夜々
「お、そやな」

体育祭が終わった後、閑話で2チャンネルのスレみたいなのを書く予定です。

  • 緑谷「2チャンネルみたい」
  • 死柄木「ヴィランsideのIFを見せろ」
  • マイク『酒姫との過去編が見たいぜ!』
  • 峰田「イチャイチャを見せてくれーッ!」
  • 爆豪「時間かけてでも全部書けや!!」
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