鬼人のヒーローアカデミア   作:黝 証呂

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爆豪vs黒羽で、一話書く予定だったのにな………


18.少年は敗北を知り、少年は成長を知る

「………婆さんや」

 

 とある屋敷………何故かその屋敷は半壊しており、今まさに修繕リフォームの真っ最中。

 屋敷を囲う様に鉄棒を組まれ、それを足場にリフォーム会社の作業員がせっせと働いている。

 そんな屋敷の座室には4人の人影があった。

 そのうちの一人の老人が、隣に座っていた女性に向けて口を開く。

 

「なんだ?」

 

「何処まで教えたんじゃ?」

 

 話かけられた女性は湯呑みに満たされた茶を啜りながら、テレビを睨みつけて口を開く。

 

「基礎中の基礎…あとはひたすら実践だ」

 

 とても婆さんと呼ばれる見た目ではないが、女性は特にツッコミもせずに返答した。

 だがその口調は少し恨めしそうにも聞こえた。

 

「突かれたくないところを突きまくって虐めたつもりが、あの餓鬼全部経験にしやがった。いけすかねぇ男だよ爆豪 勝己テメェ」

 

「爆の字……侮れんのぅ」

 

 テレビに映っているのは生放送の雄英体育祭。

 今まさにその爆豪が、黒羽を相手に前線している所だった。

 

「……天狗連中には悪い事したか?」

 

 蚊帳の外だった残りの二人に女性は話を振る。

 振られたのは二人の男性。一人は老人でもう一人は初老…どちらも大人だが歳の差はありそうだ。

 

「…いえ、むしろ感謝したい」

 

 老人は黙ったままで、代わりに初老が口角を釣り上げて答えた。

 

「あの愚息には、いい薬になるでしょう」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

『爆豪の蹴りがまたもやヒット!! なんだアイツ! そっちもいけんのか!?』

 

『両手は爆破に使い、それを利用した足技…全身を惜しみなく使っているな』

 

 そんな実況を聞かなくとも、誰もが見て判断をつけれるだろう。

 

 黒羽が劣勢だ。

 

「ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるな! 僕は大天狗だぞ!!」

 

 今まで距離を詰められる事はなかった。

 模擬戦ではいつも距離を取ったまま、一方的な攻撃ができた。

 だからこそここまで接近された時に対処できない…それを補う努力を、黒羽は怠っていた。

 

「認めない! 認めないぞ!!」

 

 風を掴み加速。そして蹴り……に見せかけたその足が、鳥のそれに変化して爆豪に喉輪を決めようとする。

 

「遅ぇ!!」

 

 両手を爆ぜさせ、爆速で仰け反り回避…からの蹴り上げ。

 それは今し方差し出した黒羽の足を打ち上げる様に蹴り払った。

 

 黒羽は空中で何度かバク転をする羽目になりながら体勢を直す。

 逆に爆豪は爆速で前転し、空中で振り上げたままの足を勢いよく振り下ろした。

 

「ウグッ!」

 

 両腕をクロスして防ぐが勢いに負け、黒羽は場外に叩きつけられそうになる。

 辛うじて地面スレスレで体勢を戻して飛ぶ事で敗北は逃れた。

 

「………嘘だ…嘘だ嘘だ!!」

 

「テメェは周りを見下し過ぎなんだよ!!!」

 

「く、来るなァーーーッ!!」

 

 追撃に迫る爆豪に落雷を落とすが、それは爆豪の上には落ちない。

 連続で落とすが、それは激しい閃光を見せつけるだけで攻撃手段として成立しなかった。

 

 ブレたその精度で、爆速で動く彼を捕らえることなど無理な話だったのだ。

 

「ッ!! だったら!」

 

 突如見舞われる猛吹雪の竜巻。

 自信を中心にそれを展開して防護壁を築き上げる。

 

 一度落ち着きを取り戻そうと黒羽は思うが、それは深呼吸をする間も無く打ち消された。

 

榴弾砲(ハウザー)着弾(インパクト)!!!」

 

 両手を使い爆発を連続発生させ、その反動で錐揉み回転。

 その勢いを乗せて叩き込まれた特大火力の爆発は、容易く黒羽の防護壁を吹き飛ばした。

 

『ナンッツーーー威力ッ!! まるで人間手榴弾だぜッ!!?』

 

「クッ!」

 

「逃げんなやッ!!」

 

 飛んで逃げようとする黒羽を追い、首根っこを掴んで引き寄せ両の脚で胴体をホールドする。

 

「離せ! 離せ離せ離せ!!!」

 

「戦略的撤退…大いに結構だがよ……」

 

 脚で組みついたまま、黒羽の胸に両手を重ねる爆豪。

 それを見て何が起きるか察したのか、黒羽の顔色がみるみるうちに青くなる。

 

「ま、待て!」

 

「逃げ癖の付いたテメェに…夜々はやらねぇッ!!! 

 

 ゼロ距離で放たれた爆撃は、黒羽を撃ち落とし地面に叩きつけた。

 加減こそされたが、その威力を受け止める事はできなかったようだ。現に黒羽は…白目を向き、墜落した場から動かず倒れていた。

 

「黒羽くん戦闘不能! よって勝者、爆豪くん!!」

 

 勝利宣言を聞き終え、湧き上がる歓声を無視して爆豪は退場した。

 

「これならクソデクの方がまだマシだ」

 

 そう呟いた声は、誰にも届かなかった。

 

『ーーー夜々はやらねぇッ!!!』

 

「ッ!?」

 

『Fooo!! 青春っていいな!!』

 

 ただ決めた時のセリフは聞こえていたのか、プレゼントマイクが下手な声真似をしてリピートする。

 そして再び歓声が湧くが、どことなく黄色い声援だった気がした。

 

 この後、激昂した爆豪が実況席に殴り込み掛けたが、事前に相澤がマイクを締め落とす事で場は収束した。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「カッカッカッ! クソ烏ザマァないなぁ!」

 

 愉快そうに観客席で笑う夜々だが、それとは対照的に暗い顔をして考え込む緑谷の姿が隣にあった。

 

「うーん。かっちゃんが強いのはわかってるけど、それでも黒羽くんは………その………言っちゃ悪いんだけど」

 

「拍子抜け………やろ?」

 

 言い淀む緑谷の言葉を紡ぎ、夜々はニカッと笑いタンカで運ばれる黒羽を尻目に言葉を続ける。

 

「認めたくないんやけど、才能は勝己と大差ないよ。ただ性格に難あってな」

 

「難があるのは爆豪もだろ」

 

「……轟はん。オブラートに包もうな」

 

 告白騒動の誤解の解けた轟も近くに座っており、その会話に口を挟む。

 

「…八咫烏流滑空術。黒羽家に伝わる、接近戦を有利に働かせる体術や」

 

 ボソッと夜々が呟く。

 

「それを使えば、勝己も危なかったかもなぁ」

 

「八咫烏滑空……って! もしかしてそれ……!」

 

 八咫烏流滑空術。

 

 飛ぶ力を持つ者なら是非とも身に付けるべき。

 そう判断させる程に、そっちの界隈では有名な体術だった。

 ヒーローランキング三位の"ホークス"でさえ、真っ先に身につけた技でもある。

 

 それをヒーローオタクとして聞いたことがあったのか、緑谷は驚愕の眼差しで夜々に目を向ける。

 

「黒羽くんの一家が発祥だったのか………でもなんでそれを使わなかったんだろう」

 

「ちゃうで出久……使えないんや」

 

 それは天狗の一族に代々受け継がれる飛んで行う体術である。

 彼ら天狗は遠距離攻撃を得意とするが、接近戦は不得手…それを補う為に当時の当主が考案した技であった。

 八咫烏とはその当時の当主…黒羽 八咫烏の名から取ったものである。

 

 しかし………黒羽 礼文はそれを体得していなかった。

 

「糞烏の性格………プライドが高く、自分が最強だと思ってるナルシスト」

 

 タンカで運ばれた先の通路を、夜々は顎で指し示して言う。

 

「勝己の性格………プライドが高く、自分が最強だと思ってる下水煮込み」

 

 そう言って今度は振り向き、観客席席に戻ってきた爆豪の方を向く。

 戻ってきたのはちょうど今で、切島や上鳴が彼を出迎えていた。

 だが轟は「オブラート……とは?」と夜々を見て首を傾げる。

 そんな二人を無視して、夜々は座り直して背漏れに体重を預けけ告げた。

 

「でも驕らん! 才能に胡座をかかずに努力を惜しまん! 例えそれが苦手な項目でもな。それがアイツとの差や」

 

 今まで彼に近付ける相手はいなかった。

 その事実に気を良くした黒羽は、遠距離ばかり伸ばしていたのだ。

 威力が上がれば精密な操作ができないという弱点も、敵が動けなければ問題ない………自分の風を受けて動ける物は居ないという思い込みが強かった故のサボりだった。

 それを説明したのちに「それが一番ムカつくわ」と小声で愚痴る。

 

「親御さんも手ぇ焼いてたらしいし、これが良薬になりゃ少しは真面目なるやろな」

 

 そして最後に「どの道嫌いやけど」と付け足した。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 爆豪は実況席に乗り込んだその足で観客席に戻った。

 すると戻るや否や、切島と上鳴が出迎える。

 

「おう! 爆豪お疲れ。漢らしかったぜ!!!」

 

「夜々はやらねぇ! ……クゥー! 俺も言ってみてででで!? いだいいだい! ごめんなざい!!」

 

「………」

 

「無言やめて爆豪! 余計怖いから!!」

 

 多少頭が冷えたが突かれたくない所なのだろう。

 爆豪は上鳴の関節を極めてたったまま押さえ込む。形の近い技を挙げるならアームロック。

 

 涙目で悲鳴を上げる上鳴を見て、揶揄おうとした瀬呂は息を潜めて前を向いた。

 

「イダダダダ! 折れちゃう! 折れちゃう助けて!!」

 

 離す気配の無い光景を見て、ふと上鳴の視線と夜々の視線が交わる。

 その瞬間、上鳴は「助けて!」と全力で目で訴え始めた。

 

 しかし夜々もその話題は恥ずかしいのかソッと目を逸らす。

 

「ねぇねぇ夜々ちゃん! やっぱ夜々ちゃんも爆豪くんのこと好きなの!?」

 

「ふぇっ!? あ、いや……その………秘密」

 

「おい透明女! 変な勘違いしてんじゃねぇ!!」

 

 話題の矛先が夜々に向き始めたところで爆豪が葉隠を咎めるように怒鳴る。

 

「いやいや爆豪…流石に無理があるって……」

 

「雄英のマイクってここまで音拾うんだな…って感心するくらいハッキリ聞こえてたもんな……」

 

 切島は呆れ笑を浮かべ、ようやく解放された上鳴は涙目で関節を摩りながら言う。

 

「俺はんな事言ってねぇ!!」

 

「だから無理があるって」

 

「言ってねぇ!!」

 

 そこから水掛け論が始まるが、それは夜々が口を挟む事で止まった。

 

「良え加減にせえよ。本人も否定してるし、うちも聞こえなかったよ。みんなの聞き間違いやないかな」

 

「……?」

 

 ヘラヘラと出された助け舟に、爆豪は怪訝な表情で夜々を見る。

 そして直感で、この顔はおちょくる時の顔だと判断した。

 その直感は正しかった。

 

「それにそもそも勝己に()()()()()()()()()()。あそこまで否定するんやから間違いない。な、勝己?」

 

「………………」

 

 その言葉に乗っかると、夜々に好意は抱いていないとついでに公言する事になる。

 だがそれを否定すれば「え? じゃあ本当にうちの事好きなん?」と返されるのは目に見えていた。

 かと言って、「言ってないけど夜々は好き」などと爆豪が言うわけがない。だが爆豪は必死に隠しているだけで夜々に好意を抱いている。そのため明確に否定はしたくない………

 

「……………」

 

「………へ?」

 

 そして爆豪は、夜々に近付いて手を伸ばし行動で答えた。

 動揺する夜々を他所に、爆豪は彼女の手を握る………

 

「……か、勝己?」

 

 その場にいた一同が息を呑み、爆豪の行動を目に焼き付けようと刮目する。

 女性陣の何人かはキャーキャーと騒いでいるが、その声は二人の耳には届かない。

 

 そんな注目を浴びる中で爆豪は………

 

「いっぺん死ねぇぇぇえ‼︎」

 

 夜々にアームロックをかけた。

 

「イダダダダ!!!!??」

 

「あぁーーー……そこは違うでしょ爆豪くん……」

 

「いや、爆豪ならこうなるって予想できただろ」

 

 ギブアップの意を伝えるために爆豪を何度も叩くが、爆豪は一切手を緩めようとしない。

 それを見て期待していた女子達は項垂れて意を唱える。

 だが爆豪にピンクで甘い展開を求める事自体間違ってると上鳴は良い、瀬呂は腹を抱え指差しして爆笑していた。

 

「ギブゆうてるやろうがっ!!」

 

「ウグッ!?」

 

「おぉ! あの体勢から逆に関節決めた! スゲェ!!」

 

「………おい、そろそろ止めねぇか?」

 

 ずっと傍観していた轟の一言でようやく場は収まった。

 事の元凶である二人もおとなしくなり、いつもの調子に戻ったように見える。

 

「はぁー、あのタイミング逃すなよー。告れよ爆豪ー」

 

「誰が告るかッ!」

 

 芦戸が口を尖らせて言うと、短く怒鳴りつける爆豪。

 それに続き、夜々はさも当然のように口を開いた。

 

「ま、告られてもうちが困るんやけどな!」

 

 その言葉に肩を揺らす緑谷と爆豪。

 まさかと思い反射的に息を潜め、一言も逃さぬように耳を立てる。

 

「えぇ! そうなの!?」

 

「せや。昔な、ある友達と約束してん」

 

「約束?」

 

 必然的にまた、A組の面々が注目する中で夜々はその約束を打ち明ける事になった。

 

「No.1ヒーローになったらお嫁さんにしてくれるんやって。それまでうちは恋人作るつもりないんや」

 

「ほへ〜」

 

 間抜けな返事をする芦戸に、今度は夜々が肘で突き質問する。

 

「そういう芦戸はんは好きな人おるん?」

 

「いない!」

 

「いないんかい!」

 

 軽くだがスパァンといい音を立ててツッコミを入れる。

 この話題はそんな終わり方をし、そろそろ休憩も終わりだと誰かが呟く。

 そして自然と、次の選手二名が腰を上げた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 そして控え室に移動した緑谷。

 今は座り込み、時間が許す限りイメージトレーニングを重ねていた。

 遠距離技の鬼砲に目が行くが、彼女は生粋の近距離ファイター。それを再認識して自分との差の埋め方を模索する。

 

「体術は向こうに分がある…かと言って離れる訳にはいかない。掴まれたらアウトだろうな…それなら………」

 

私が……胃薬を飲んでから来た

 

「あわっ! …オ、オールマイト!?」

 

 突如として控え室のドアが開き、そこから顔色の優れない男が入室してきた。

 どれだけ青ざめていても、その人は間違いなくNo.1ヒーローのオールマイト…彼が入ってきた事で、緑谷は体勢を直して用件を聞く。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「まずは飯田少年との一戦…見事だったよ……うっ」

 

「あ、ありがとう…ございます?」

 

 これから次の試合だというのに、何故今それを言いにきたのか不審に思う。それはオールマイトの顔色が優れない事もあって、緑谷は褒められたことを手放しで喜べない。

 

「どうかしたんですか?」

 

「………緑谷少年。()()()()()一体誰から教わったんだ?」

 

「あの動き? ………あぁ! それはよっちゃんに誘われて参加した合宿で……」

 

「…救いはないのか」

 

「えぇ!?」

 

 説明を終えるより早く膝を降り、オールマイトは絶望を感じるように四つん這いになる。

 だがそれも束の間。すぐに立ち上がり、その場から離れようとする。

 

「いやすまない。それが確認したかっただけなんだ。体育祭は基本…君とはノータッチでいくつもりだったからね」

 

「オールマイト!? 震えが! 震えてますが大丈夫ですか!?」

 

「ハッハッハッ! 心配するほどじゃないさ。トラウマで吐きそうになってるだけだ」

 

「トラウマッ!?」

 

 控え室の扉に手を掛け、今度こそ退出した。

 ただ扉が閉まる寸前にオールマイトは小言を挟む。

 

「くれぐれも…怪我はしないでくれよ」

 

「………はい」

 

 しまった扉越しに、緑谷は数秒遅れて返事をした。

 それからすぐに時間は訪れ、打倒夜々を志してから戦場に赴いた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

『レディース! エンドゥ! ジェントルメンンン!! ついに始まるぜ! 準・決・勝ーーーッ!!! 早速登場してもらおうか! 入ーーー場ーーー!!!』

 

 準決勝ともなれば会場の雰囲気もまた変わる。

 雄英体育祭という祭典も終盤に差し掛かっているのだ。

 もう一位の座を奪い合う選手はたったの4人までに減っている。だからこそバトルの質も上がり、決勝に近づくに連れて熱気がどんどんと上がっていく。

 どうやらその熱気に上限はないらしい。

 

「………………」

 

 そんな熱気に包まれた会場の中央で2人は相対する。

 向かいからやってきた緑谷は僅かに震えて冷汗を流し、隠せていない不安が身体に出ていた。

 だがその表情は楽しみを覚えているようで、不格好な笑みが口元に出ている。

 

 対して夜々は知ってか知らずか、少し見下すようなアングルで緑谷を見た。その顔は悪戯っぽい笑みをまた浮かべていて、彼女もこれから起こる事を楽しみにしているようだった。

 

「出久…全力で来んと怒るで?」

 

「ハハ……手加減する余裕なんてないよ」

 

『さぁさぁ始まるぜ!! 待ちに待った準決勝!! ……やべ、決勝前に待ちに待ったとか強めのワード使っちまった。ま、いっか!! 俺っちもテンション上がってるからよ、少しは大目に見てくれぇ!!!』

 

 2人の会話を掻き消すように、実況席のマイクが吠えるようにトークを進める。

 そして会場の観客や選手を含め、全員に心の準備をさせてから何度目かの戦いの火蓋を斬ろうとした。

 もはやそのセリフは誰もが聞き慣れ、言い終えた瞬間にどちらかが仕掛けるのでは? と、誰に言われるまでもなく刮目した。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「緑谷には悪いけど……やっぱ酒井か?」

 

「緑谷君は強いが、機動力に難があるのが僕としての感想だ」

 

「対して酒井の動きは、結構余裕がありそうだったな。機動力に関して言うなら、アドバンテージ取ってるのは酒井だろ」

 

「実際に戦った飯田と轟が言うんだ。決まりだな」

 

 場所は移ってA組の観戦席。

 そこには私情を挟まず平等に見て、どちらが勝つかを予想するクラスメイトの面々がいた。

 

「でもパワーなら緑谷ちゃんに武があるわ。問題はそれが諸刃だと言う所だけど……」

 

「爆豪、お前はどう思う?」

 

「あぁん?」

 

 話を振られた爆豪は、ドスの効いた声で面倒臭そうに返事をする。そして突き放すような口調で一言。

 

「んなもん酒井一択だろ」

 

「大丈夫爆豪くん! 私情は挟んでない!?」

 

「あ゛?」

 

 ドスが深まるが、そんな爆豪に切島が宥めながら理由を聞く。

 

「………合宿で多少マシにはなったがクソデクはクソデクだ。酒井に接近戦で勝つには、アイツを上回るパワーをキープしなきゃなんねぇ」

 

「マジ? 緑谷のパワーでも、技術があれば差は埋められると思うんだけどな」

 

「それがクソデクにできねぇから言ってんだろ、バァーカ」

 

 上鳴の反論をバッサリ切り捨てると、中途半端に議論を終わらせるのは気持ち悪いのか爆豪が一言二言補足する。

 

「それでもクソデクが勝つには、酒井が反応できない速度で殴らなきゃなんねぇ。だがそれは、真面目眼鏡が言った通りカスレベルだ」

 

「俺は飯田だ! それとそこまでは言っていないぞ!!」

 

「飯田くん! 始まるよ!」

 

 立ち上がり抗議しようとする飯田だが、準決勝が始まると麗日に知らされ慌てて座り直す。

 そして他の観戦者同様に、戦いの火蓋が切られる瞬間を刮目した。

 

『レディ………スタァァァアトォォォオ!!!!』

 

「………は?」

 

 案の定…開幕同時に距離を詰め、放たれた拳が鳩尾に突き刺さる。

 拳は人体の急所の一つを的確に減り込み、食らった側は否が応でも呼吸困難に陥る。

 その隙に追撃を加え、連続で相手を畳み掛けようとする。

 

「………マジ……か」

 

 上鳴は呆然とし、無意識に語力の低いセリフを溢す。

 そんな彼の隣に座っていた爆豪は青筋を浮かべ、プルプルと震えていた。

 

「あ………んのクソデクッ! まだ隠してやがった!!!」

 

 酒井の反応できない速度で動く事は出来ない。

 それが出来ないから負けると断言された緑谷だが、もしそれが出来れば彼は本当に勝てるのだろうか? 

 

 きっと勝てるのではないだろうか。

 

 フィールド上にはそう思わせる姿が………先手を取って酒井を追い詰める緑谷が姿があった。

 体勢を戻そうとする夜々を動きを拒むように、その拳が顎を突き上げる。

 

「出し惜しみは無しだ!! 全力で君を倒す!!!」

 

 会場に備え付けられた集音マイクが、選手のそんな意気込みを拾った。




Q. 黒羽君は親族からの評価はどうなってますか?

回答者:黒羽 鷹綱(たかつね)
「愚息……礼文の父、鷹綱です。我々としては1人しかいない長男坊なので、あの性格を……そこまでが無理だとしても、周りを見下す傾向があるのは直して貰いたいですね。なので今回爆豪 勝己君に痛い目を見させてもらって、我々としては良かったと思っています。余談ですが、職業体験では"ベストジーニスト"さんのお世話になって貰いたいですね」

体育祭が終わった後、閑話で2チャンネルのスレみたいなのを書く予定です。

  • 緑谷「2チャンネルみたい」
  • 死柄木「ヴィランsideのIFを見せろ」
  • マイク『酒姫との過去編が見たいぜ!』
  • 峰田「イチャイチャを見せてくれーッ!」
  • 爆豪「時間かけてでも全部書けや!!」
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