鬼人のヒーローアカデミア   作:黝 証呂

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どうも証呂です。
昔もヒロアカ書いたんですが削除したんですよね。
ですが宣言します。今回は削除しません。
書かなくなったとしても、削除しません!

それはさておき第3話、グダグダっとどうぞ!


3.鬼の対人戦闘訓練

 入学式と言う名の個性把握テストがあった翌日。

 意外な事に、そこでは普通の授業が行われていた。

 英語の担当の先生がプレゼントマイクで、終始テンションが高かったのはあるが、授業内容は驚くほどに普通だった。

 

 そしてその授業も普通のまま終わりを迎えた。

 

「ふぅ…やっと終えはった」

 

「お疲れ様だ。酒井君!」

 

 隣の席に座る真面目な生徒…飯田(いいだ) 天哉(てんや)が立ち上がって話かけてくる。

 彼の個性は"エンジン"で、車やバイクと同じマフラーが脹脛にある。夜々は話を聞きつつも、ついそっちに目がいってしまう。

 

「時に酒井君! この後緑谷君と麗日君と食べる予定なんだが、良かったら一緒にどうだい?」

 

「うちも夜々ちゃんと話したい!」

 

 飯田の後ろの席に座っている麗日は、そう言って話に入ってくる。どうやらこの二人に緑谷を加えた三人がいつものメンバーらしい。

 高校生活二日目でありながらイツメンができるのは、少し早い気もするが。

 

「あら〜嬉しいお誘いやわ〜」

 

 嬉しそうに両手を合わせる夜々を連れ、最後に緑谷を迎え入れて食堂へ向かった。

 

 雄英高校の食堂を経営するのは、クックヒーロー ランチラッシュ。ここを入学した者は皆 彼の料理を食べたいのだろう。既に食堂は混みつつあった。

 

 彼女ら四人が昼食を手にして席に付けたのは、この混み具合を考慮して広く作られた食事スペースのおかげだろう。

 

「夜々ちゃん、デク君と幼馴染なんやろ?」

 

「そや〜。引っ越して離れ離れなぁてしもうたけど、しばらくの間は手紙でやり取りしてたわ。一緒にヒーロー目指すんや〜って手紙のやり取りで互いに励ましあったりな。急にパタリと途絶えてもうたけどな?」

 

「うっ…」

 

 始まった雑談の中で痛いとこを突かれたのか、緑谷は苦い顔をする。

 

「あ、あの時は自分が無個性だと思ってたからで…それが凄くショックだったから………」

 

「そういう時こそ相談して欲しかったわぁ〜」

 

「そうだぞ緑谷君! 友達なのだから今後は是非、俺たちも頼ってくれ‼︎」

 

「う、うん。ありがとう」

 

「でも今は個性あるんやな。使いこなせてへんけど………誰かさんに貰いでもしたん?」

 

「ブッ⁉︎ ご、ゴボッ…そ、そそそんなわけないじゃないか‼︎」

 

「冗談や冗談。落ち着きぃ、水飲みぃ」

 

 あまりに咳き込む力が強かったからか、少し罪悪感を感じながら水を差し出す。

 

「…で、なんで使いこなせてへんの?」

 

「と、突然変異みたいな………そうゆう…アレです…」

 

「ふーん。でも良くそんなんで雄英受かったなぁ」

 

「それはオー…師匠が鍛えてくれたのもあるんだけど、半分はかっちゃんのおかげかな」

 

「爆豪君が?」

 

 緑谷が口にした事の中に意外な言葉があり、麗日は疑問文で返す。

 

「まぁ………色々あってね」

 

「あのかっちゃんが? うちが見る限り、今のかっちゃんはそんな人には見えへんけどなぁ」

 

 意外そうに目を丸めながらも、食事の手を止めない夜々。あとの二人も黙り、緑谷の話に耳を傾ける。

 

「今も当たりが強いやん。アレが二人の間では平常運転なん? うちには出久を心底妬んでるように見えるんやけど? うちが居ない間、二人はずっとあんな感じだったん?」

 

「………違うよ…少なくとも、中学2年のころは…」

 

「ふーん。まぁ大丈夫やろ」

 

 端切れが途端に悪くなった緑谷の話を、夜々はそう両断して食事を続けた。

 

「夜々ちゃん、サバサバしとるなー」

 

「それより早よ食べぇ。午後の授業間に合わへんで?」

 

「午後の授業…それもそうだな!」

 

 その会話を最後にした四人は箸を進める。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 午前はいったって普通の授業だったが午後は一味違う。

 

 その授業とはずばり"()()()()()()()"! 

 更にその担当はNo.1ヒーロー、オールマイト‼︎

 

 教室内には生徒しかいないが、楽しみに思うのは皆同じようだ。現に先生が居ないにも関わらず、自主的に席について前を向いている。

 

 そしてついにその先生が教室に来る。

 

「わーたーしーがーッ‼︎ 普通にドアから来た‼︎‼︎」

 

 ヒーロー活動時に現場に現れた彼は人々を安心させるために、毎回「私が来た‼︎」と胸を張り宣言している。いわばお約束だ。

 今のはそれのパロディギャグのようなものだろう。

 

 No.1ヒーローの登場で、教室の中は一気に盛り上がりを見せる。

 

「スゲェ‼︎本当にオールマイトだ‼︎」

銀時代(シルバーエイジ)のコスチュームだ……!」

「画風が違いすぎて鳥肌が……」

「画風ならうちの爺さんも負けてへんよ」

 

 皆が思い思いに興奮してる最中だが、いつまでも騒がしているわけにはいかずオールマイトは話し始める。

 

「ヒーロー基礎学‼︎ ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ。あ、単位多いから気をつけて。早速だが今日はコレ………戦闘訓練‼︎‼︎」

 

 そういって何処から出したのか、オールマイトは一枚のパネルを出して見せる。そのパネルには「BATTLE」と書かれている。

 

「そしてそいつに伴って………こちらッ‼︎」ポチッ

 

 これまたいつ手にしたのか、オールマイトは何かのボタンを押す。すると何の変哲も無い壁に隙間が生まれ、隠れていた収納スペースが姿を現わす。

 

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って作られた…戦闘服(コスチューム)ッ‼︎」

 

「うおぉぉぉぉぉーーーーーーッ‼︎‼︎」

 

 またも教室は歓声に包まれた。ヒーローを目指す者として皆が目を輝かせる。

 それは自分の為に作られた、自分だけの戦闘服(コスチューム)。それが今、ようやく自分の手元に来るのだから無理もない。

 

「着替えたら順次、グラウンド β(ベータ)に集合だ‼︎」

 

「はーい‼︎‼︎」

 

 オールマイトの言葉に全員が頷き返し、各々がコスチュームを持って更衣室へ向かった。

 無論、夜々も自分のコスチュームを手に更衣室へと向かい、早急に着替え始める。

 

「ケロ、夜々ちゃんのコスチューム素敵ね」

 

「ありがとぉ蛙吹はん」

 

「梅雨ちゃんと呼んで」

 

「梅雨はん」

 

 着替えている時に話しかけて来たのは、蛙の個性を持った蛙吹(あすい) 梅雨(つゆ)。彼女のコスチュームは個性に合わせ、蛙を彷彿とさせる緑色に黒のラインがはいったデザインをしていた。

 

 それに対して夜々は………

 

(……発育の暴力)

 

 一言で言えば"クノイチ"。

 そのコスチュームは時代劇などで目にするクノイチの姿に似ていた。

 動きやすさを重視し、自分の攻撃の余波で破けないよう通気性を良くした物だ。その要望に応えようとすれば、露出度が増えてしまうのも疑問ではない。

 

「ほな行こか」

 

 着替え終えた夜々は蛙吹と共にグラウンドβへ向かう。

 そして到着すると、案の定 男子生徒の視線が夜々に集まる。それだけで済まして目をそらす者もいるが、釘付けの者も何名かいた。

 

「「………………」」

 

「……出久、かっちゃん。前歩かれると歩きづらいわぁ」

(一緒に歩くなんて、やっぱ仲良いんちゃう?)

 

「ごめんよっちゃん、気にしないで?」

 

(クッ……オイラの居るところからじゃ、爆豪が邪魔で見えねぇ)

 

(セコムだ…)

 

「よし! 全員集まったね⁉︎さぁ有精卵共、戦闘訓練の時間だ‼︎そしてその内容は“屋内の対人戦闘”さ!」

 

 オールマイトが言うに、凶悪敵との出現率は屋内が高いとのこと。

 それらを想定して"ヒーロー組"と"ヴィラン組"に分かれた2対2の屋内戦が、今回の授業の演習内容だった。

 

 そしてこの屋内戦を行うにあたっての設定は、「核兵器を所有したヴィランとの屋内での接触」といったところだ。

 

 ヒーローと(ヴィラン)の2組に別れたのだから、もちろん勝敗が存在する。ルールは以下の通り……

 

 制限時間内に核兵器を確保、もしくは(ヴィラン)を全員を確保する事ができればヒーロー組の勝利。

 

 制限時間内まで核兵器を防衛する、もしくはヒーローを全員を確保することができればヴィラン組の勝利だ。

 

 場所は高校の敷地内にある訓練用のビルで行い、チーム決めとどちらの組に属するかは公平にくじ引きで決める事になった。

 

「"D"やな」

 

「………あぁ?」

 

「…! なんやー、かっちゃんと同じやないか。一緒に(ヴィラン)頑張ろな!」

 

「おい待て! なんで(ヴィラン)って決め付けんだ⁉︎」

 

「だってかっちゃん、(ヴィラン)顔やん?」

 

「殺すッ‼︎」Booom!!!

 

 夜々に煽られ、沸点を軽く越した爆豪は両手を爆破させる。しかし恐れず、むしろ楽しそうに夜々は逃げ回る。

 しかしそれも長くは続かず、オールマイトが最初の組み合わせをクジで決める。

 

「よし‼︎ 最初はAチームがヒーロー! Dチームが(ヴィラン)だ‼︎それ以外の皆はモニター室へ! Aチームはビルの前、Dチームはビル内の定位置へ向かってくれ‼︎」

 

「クックック! マジで(ヴィラン)なーてもうたやん‼︎」

 

「五月蝿え‼︎さっさと行くぞ‼︎」

 

「その前にAチーム誰なん?」

 

 モニター室へ皆が向かう為、残された者が必然的にAチームかDチームと言う事になる。

 そして夜々と爆豪を除いてその場に残ったのは、緑谷と麗日だった。

 

「デク………‼︎」

 

「………かっちゃん」

 

 親の仇を見るような目つきで緑色を睨む爆豪と、引き気味だがそれを見つめ返す緑谷………

 爆豪はそのまま目を向けたまま、ビルの中へと消えた。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 そして戦闘訓練は始まった。

 

 始まるや否や爆豪は飛び出し、守るべき核兵器(ハリボテ)のある場所には夜々が一人取り残されていた。

 

「………………」

 

 そこで一人、夜々は訓練スタート前の会話を思い出していた。

 

『…おい、デクは個性が()()んだな?』

 

『………? 昨日のテスト見てはったならわかるやろ』

 

『………クソナードが…‼︎』

 

 訓練が始まる直前の会話がそれだ。そして始まると即座に飛び出していった。

 爆豪が緑谷に対してやけに敵視しているのは夜々でなくともわかる。

 

「うちが居ない間もかっちゃんは居たやん…なんで知らんの?」ガリッ

 

  誰も居ないにもかかわらず、彼女は誰かに質問をした。そして答えも待たずに自身の親指を咥える。

 

「………プハァ………十升モード」

 

 ここで防衛戦をするつもりなのか、戦闘準備はそれだけにして部屋の壁に背をつけた。部屋の真ん中には核兵器があり、そのまま夜々はひたすら待った。

 

 同時刻のビル一階。

 

 ヒーロー組は窓から潜入し、クリアリングを徹底して進んでいた。

 

「かっちゃんが敵なら、まず僕を殴りに来ると思う。その時、麗日さんは先に行って」

 

「でも…デク君一人で大丈夫?」

 

「二人で足を止めるのは愚策だ。それに…()()()できないと僕らは勝てない!」

 

「誰が誰に勝つだってッ⁉︎」Boom!!

 

 曲がり角から飛び出してきたのはもちろん爆豪だった。直接攻撃を食らわせる事は出来なかったが、爆破の余熱が顔半分を焼く。

 

「デクこら避けてんじゃねぇよ」

 

「やっぱり………行って麗日さ…」

 

「余所見たぁ余裕だな! デェクッ‼︎」

 

 爆豪の右腕がまた攻撃に出るが、緑谷はそれを受け止めてから背負い投げのように爆豪を地面に叩きつけた。

 

「うぅ………ああ‼︎」ドッ‼︎

 

「ガハッ………‼︎」

 

 爆豪の最初の攻撃は高確率で右手の大振り。

 ヒーローオタクである緑谷は、()()()()()()()()()()の分析は全てノートに綴っている。その情報の中に爆豪の癖は記されていた。

 

 今の投げも、その知識で先読みできたおかげだろう。

 

「行って‼︎」

 

「ッ! うん‼︎」

 

 麗日は背を向け上を目指した。

 

 そして場面は上階、夜々の待つ部屋に戻る。

 

「………………」

 

 夜々は変わらず待っていた。

 広い部屋に4本の支柱。それ以外は何もなく、部屋のど真ん中にターゲットの核…それを見つめる夜々は変わらず、壁に背をつけて待機している。

 

(かっちゃんは出久を狙うやろな。昨日の今日で全ては知らんけど、優勢なのはかっちゃんやろ………せやのに)

 

 それを素直に喜べない自分がいた。勝ち負け以前に気になる事があるからだ。

 

(確かに昔から、出久とかっちゃんが仲よかったわけやない。うちを挟んで二人が居たからなぁ……仲良くして欲しいもんやわ)

 

「………デク君あった! 核!」

 

『場所は⁉︎』

 

「5階の真ん中フロア!」

 

 夜々からは見えない死角の影に麗日はいた。身を乗り出して状況を確認するとまた潜め、無線を使ってパートナーの緑谷に情報を伝達させる。

 

(………堪忍してな)

 

「え…?」

 

 夜々から見えないという事は、麗日からも見えていないという事。身を乗り出し続けていれば話は違うが、身を潜めて連絡するうちに夜々は背後に忍び寄っていた。

 背後といっても、麗日が背にして身を潜めている壁の反対側だ。

 

 ーーー ボゴォン‼︎ ーーー

 

「ッ‼︎」

 

 そしてその壁を、夜々は素手で殴り砕いて攻撃する。

 その拳が麗日に届く事は無いが、咄嗟に避けようとする彼女に瓦礫が倒れ込む。

 

「危なッ!」

 

「うちを前にして密談やて? それは甘いとちゃいます〜」

 

 ニタァと笑みを浮かべた夜々は、瓦礫から這い上がろうとする彼女に人差し指を向ける。

 

「加減はするでんな…"鬼砲(きほう)"」

 

「ちょっ⁉︎」

 

 そう言って指先から放たれたレーザーは、麗日を飲み込む…かのように見えた。

 

「自分も浮かせられるんやね」

 

「負担の大きい超必です!」

 

 自らを無重力状態にしてレーザーを躱し、夜々の上を飛び越える麗日。いいタイミングで解除して、そのまま核兵器目掛けて飛びつこうとする。

 

「甘いで………」

 

「な……グッ‼︎」

 

 避けたはずのレーザーは支柱の一本を軸にするように曲がり、気が付けば麗日を真横から襲ってきていた。それはそのまま麗日を飲み込み、着地地点はズレて硬い床の上に投げ出される。

 

「クゥッ………」

 

「さっきも()うたけど、加減はしたで」

 

 夜々の言う通り加減はしたらしく、コスチュームに傷こそできるが破けてすらいない。しかしダメージが無いわけではなく、怯んでいるうちに追い討ちをかける。

 

「"鬼火"」

 

「本物のクノイチ⁉︎」

 

「忍術やない…()()や」

 

 夜々の周囲に浮遊する火の玉が現れ、次々と麗日を襲い始めた。

 初めのうちは避けれていたが、次第に数が増えて追い込まれてしまう。最終的に麗日は支柱を背に、鬼火に囲まれていた。

 

「うぅ………」

 

「これで確保した事でにはならんのよなぁ…えっとどこにしまったか………あ、"確保テープ"あった!」

 

 鬼火に囲まれて麗日が動けなくなったのを確認して、悠々と確保テープを取り出す。

 確保テープとはこの訓練で使われる協力な拘束アイテムで、これを相手に巻き付ける事で捕らえた証明になる。

 

「ほな堪忍して………なんや? 諦めとらんの?」

 

 余裕の表情では無いにしろ、麗日の目は諦めていなかった。

 それと同時に麗日の持つ無線から、夜々にも聞こえる声量で緑谷の声が聞こえた。

 

『麗日さん行くぞ‼︎』

 

「出久………何するつもりやヒーロー‼︎」

 

 核兵器を背にして身構える夜々は、冷静に状況を整理する。

 今 麗日は支柱を背に"鬼火"の檻に囲まれていて、個性を発動させる対象となる物はその中にない。今麗日が触れれる物といえば、訓練開始時に渡された無線、建物の見取り図、確保テープ…それから麗日自身くらいだ。

 

「はい‼︎」ピタッ

 

「………?」

 

 一か八か確保テープでも投げるのかと思ったが、麗日は背にしていた()()に抱きついた。

 だが支柱はビルの一部であり、ビルはもちろん地上にちゃんとした基盤を築いて建てられている。地上からビルを切り離さなければ、ビルを無重力状態にしたとて意味はない。

 

 もっとも、()()()()()()()()()()()()()話は別だが。

 

「………ってまさか‼︎」

 

 ーーー ボゴオォ‼︎ ーーー

 

「しまッ………⁉︎」

 

 突如として二人のいる階層の床が崩壊した。まるで下から高火力な攻撃を受けたかのように。

 

 足場を崩された夜々は下へと落ちて行くが、麗日は自身と今しがた折れた支柱を無重力状態にしているのか浮遊している。

 

「夜々ちゃん! ごめんね即興必殺! …彗星ホームラン‼︎」

 

「ホームランやないやないかいッ‼︎」

 

 更に支柱をバットのように振るい、床()()()瓦礫片が夜々に降り注ぐ。そして麗日はそのうちに、核兵器へ向かって飛び出した。

 

(鬼砲撃つか? 否、本気ならまだしも、あの程度の威力や止めれへん………なら)

 

 ポンッという音と共に、夜々の右手から鬼火が現れてそれが麗日へと直進する。

 

「悪足掻きや、間に合ってや‼︎」

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「ヒーローチーム、WIIIIIIN(ウィーーーン)‼︎‼︎」

 

 結局、麗日はあのままへばりつくように核兵器という設定のハリボテに抱きつき、ルール上ヒーローチームの勝利で終わった。

 

 最後の床の崩落の為に打った攻撃は、緑谷の腕を犠牲にした超パワーで間違いなかった。それが原因で緑谷は保健室に搬送され、それ以外の皆がモニター室に集まり講評の時間になった。

 

「まぁつっても…今戦のベストは酒井少女だけどな‼︎」

 

「そりゃ嬉しゅうなぁ」

 

 オールマイトの言葉に驚愕する者の中で、蛙吹がその疑問を声にする。

 

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

 

「何故だろうなあ〜〜〜〜? わかる人ッ‼︎」

 

「ハイ、オールマイト先生」

 

 生徒に考えさせようと言ったオールマイトの言葉に、八百万が手を挙げて答える。

 

「それはおそらく爆豪さんが戦闘を見る限り私怨丸出しの独断、そして屋内での大規模攻撃という愚策。緑谷さんも同様の理由。麗日さんは最後の攻撃が乱暴すぎたこと。ハリボテを核として扱っていたら、あんな危険な行為出来ません。ゆえの消去法でしょうか? ですがそれは酒井さんにも言える話だと思うのですが、何故彼女がベストなのでしょう?」

 

 八百万は疑問視しながらも自分の思った事を言う。

 彼女の言う夜々の乱暴な攻撃とは、最後の鬼火の事だろう。何を隠そう、あの攻撃は麗日に当たるどころか核を想定したハリボテに当たったのだ。

 

「八百万少女はそう言っているぞ、酒井少女⁉︎」

 

「…最後のはただの悪足掻きや。あのまま当てるの自体は間に合うけど、当てても核を取られてしもう。せやから核にうちは()()()()()

 

「………つまりワザと当てたと?」

 

「それはダメだぞ酒井君! いくら負けそうだからとは言って、それを投げ出していい理由にはならない‼︎」

 

 夜々の答えにまた疑問を浮かべる八百万と、それは間違いだと意を唱える飯田………それを前に夜々もまた、「何がおかしい?」と言いたげに首をかしげる。

 

「せやて………うち敵チームやで? それもアジトに核兵器を保有するようなヴィランや…そんな二人でできる事やろか。うちは多分組織ぐるみやと思うんよ、今回の敵チーム…うちらが下っ端かなんかで二人で守ってる………せやたら捨て駒かもしれへんやん? だったら"負けるくらいなら道連れする"って考える思うんよ。最後のはそれの意思表示の悪足掻きや」

 

「成る程! 設定をより深く理解しての行動…流石だ酒井君‼︎」

 

「なるほど…そういう事なのですね? オールマイト先生」

 

(思ってたより言われたッ‼︎)

「ま、まぁそれでも指摘する点はあった訳だが………まぁ正解だよ。くぅ………」

 

 想定以上の回答だったのか、オールマイトは震えながら脂汗を滲ませる。

 

 その後、場所を変えて訓練は続いた。

 

 (とどろき)焦凍(しょうと)と言う名のクラスメイトが、開始と同時同時にビルごと凍らせて圧勝するというレベルの違いを見せつけたりしたが、緑谷のような負傷者は現れずに授業は無事終了した。

 

 ただずっと見下していた相手…緑谷 出久に敗北した爆豪の顔は、授業が終了しようと晴れることはなかった。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

 放課後、リカバリーガールの元で処置を終えた緑谷は教室に戻った。しかしその腕は完治しておらず、分厚いギプスが巻かれている。

 だが一戦目で派手にやった彼を見て、教室の中にいた生徒達は皆集まってくる。

 それを掻き分けて夜々が出てきて、緑谷に尋ねる。

 

「またやりおって。相澤はんにも制御できるよう言われ………ん? 治ってへんやん」

 

「あ、いやこれ、僕の体力不足で完治できなくて………それよりかっちゃんは?」

 

「………みんな止めたんやけど、さっき帰ってもうた」

 

 暗い表情で言うと、緑谷はドアに折れてない方の手を掛ける。

 

「追うん?」

 

「うん! よっちゃんも来て! 話したい事があるんだ‼︎」

 

「お、なんや。告白かいな」

 

 振り向きざまに言うと、夜々は茶化すようにニヤニヤと笑う。しかし緑谷は一切笑わず、「大事な話なんだ」とだけ言って飛び出した。

 

「青春だーーーッ!」

 

「夜々ちゃん! 戻ったらどうなったか教えてね!」

 

「………嫌や」

 

 夜々は緑谷を追って走り出した。

 

「なんか本当に、大事な話みたいやから………」

 

 そう言い残して。

 

 ー

 ーー

 ーーー

 

「かっちゃん‼︎」

 

 爆豪はまだ校門を出ておらず、敷地内を一人歩いていた。

 緑谷の声に足を止めるが、その表情は相変わらず暗く重い。

 

「ああ?」

 

 唸るような返答…緑谷は一度考えたが、覚悟を決めて口を開いた。

 

「これだけは君に………言わないといけないと思って」

 

 そこで夜々も到着し、緑谷は続きを話し始めた。

 

()()()()()()()()()()

 

 それは母親にも言っていない秘密。

 

「誰からかは絶対に言えない! 言えない…でもコミックみたいな話しだけど本当で…! おまけにまだろくに扱えもしなくて………全然モノに出来てない状態の"借り物"で………

 

 だから…使わず君に勝とうとした! けど結局勝てなくてソレに頼った! 僕は………まだまだで………‼︎ だから………」

 

 

いつかちゃんと自分のモノにして

 "僕の力"で君を超えるよ

 

「………………」

 

 緑谷は「騙したわけではない」と伝えたかっただけなのだが、気がつけばそう口走っていた。

 

 それを聴き終え、爆豪は足の向きを変えてフラッと近寄る。

 

「……んだそりゃ。借り物? これ以上コケにしてどうするつもりだ………なぁ‼︎ だからなんだ⁉︎ 今日…俺はテメェに負けた‼︎ そんだけだろが………そんだけ………

 

 氷の奴見て敵わねえんじゃって思っちまった‼︎ ポニーテールの奴の言う事に納得しちまった‼︎ 」

 

「ポニテ………うちか?」

 

「違えェ‼︎ クソが‼︎ クッソ‼︎ なあ‼︎ テメェもだ…デク‼︎」

 

 爆豪は憤怒の形相に涙を浮かべ、宣言するように吠えた。

 

「こっからだ‼︎俺は‼︎こっから…‼︎いいか⁉︎ 俺はここで()()()()()()()()‼︎ 俺に勝つなんて二度とねぇからな‼︎ クソが‼︎」

 

 そこまで言って、爆豪はまた背を向けて帰路につく。

 そのタイミングでオールマイトが飛んで来たが、自尊心の高い彼のアフターケアをしようとしたらしい。

 一人ですでに立ち直っているため、完全に無駄骨だった。

 

「………テメェもだ酒井。テメェにも負けねえからな」

 

「上等………あと昔みたいに"よっちゃん"て呼んでくれへんの?」

 

 最後に夜々にも宣戦布告し、それ以上は何も言わずに彼は歩き去った。




証呂
「貴女、空気ぶち壊すの好きね」

夜々
「………?何のことや?」

妖術:鬼砲
実技試験で0ポイントに撃ったレーザー。
威力だけでなく操作性も優れている。
十升モードでないと撃てない。

妖術:鬼火
浮遊する火の玉を自在に操る技。
威力はそこまで無く、牽制や置き技として使う。
通常時でも使える。
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