「━━━━二つ結びの
空中から、展開したアームパーツの中の丸鋸達を解き放ち、
「
「たァッ!!」
逆方向からは切ちゃんの刃が飛び込み、アルカ・ノイズ達を切り刻む。
「未成熟な
行き場の無い、
「━━━━悪くないデスッ!!」
歌と共に上がるフォニックゲインで構成された大鋸を振り回し、切ちゃんと二人、背を預け合う。
━━━━そんな私達の隙を突こうと、突撃してくるアルカ・ノイズ達。
「ハァッ!!」
けれど、横並びに跳んできた彼等の解剖器官。各々が持つその必殺の間にわずかに存在する一線の隙間を、
『シュルシャガナとイガリマ、ガングニールと共に交戦を始めましたッ!!』
『━━━━お前達ッ!?何をやってるのか分かっているのかッ!?』
通信から聴こえる司令の叫び。そこに宿る怒りの感情が、私達を心配しての事だと分かるからこそ……
「勿論デスともッ!!」
けれど、私達だって止まれない理由がある……ッ!!
「今のうちに、強化型シンフォギアの完成をお願いします。」
「その間の護りは━━━━任せなッ!!」
『クッ……!!
終わったら特大の説教をくれてやるッ!!だから……ッ!!』
━━━━その言葉は、つまり。私達への『必ず帰って来い』のメッセージ。
「━━━━強く……なりたぁいッ!!護られるだけだと……!!」
だから、その言葉に応えたいッ!!強くなって、その信頼に応えたい……ッ!!
私の想いに応えるように、アルカ・ノイズを切り裂きながら伸ばすこの手に戻り収まるのは、シュルシャガナの新たな
「━━━━胸にある……」
━━━━指先で糸を操り、
その後隙を狙ったのか、解剖器官を伸ばして来るアルカ・ノイズ。
それを、私はスピンジャンプの要領で即死半径の内側に潜り込みながら飛び越えるッ!!
「想い、果たしきれやしない……ッ!!」
跳び上がりながらの横目に見えるのは、共に戦う皆の姿……
「━━━━当たらなければァァァァ!!」
切ちゃんは遠隔攻撃を避けながら砲撃型を真っ二つにし、
「皆さんは下がって同士討ちしないように一列になって射撃してくださいッ!!
前衛は私達が務めますッ!!」
セレナは特異災害対策機動部の人達に攻撃するアルカ・ノイズ達を優先して攻撃しながら、意外にも堂に入った指示を出し、
「オラァッ!!
消えたい奴から掛かって来いやァ!!」
奏さんはその前衛として、隻腕に握るアームドギアで大暴れする。
「太陽の輝きに……近づけるかな?」
あちらは二人に任せて問題無い。となれば優先的に対処すべきは━━━━
脚部のローラーを回し、《はぐれ》となって別の場所を……恐らくは基幹プログラムに従って周囲の脅威度を探っている段階のアルカ・ノイズ達の小集団の中へと滑り込む。
即座に切り込みはせず、中央へと回り込みながら一回転。
周囲のアルカ・ノイズ達の解剖器官の位置を探り、最適な斬撃の
「━━━━
スカートアーマーを翻し、丸鋸へと変えて……切り裂くッ!!
一撃でも当たれば、死ぬ。
だから気を抜く事なんて出来ない。それは分かっている。
━━━━それでも、戦える……ッ!!無力に
◆◆◆◆◆◆◆
『…………気づいてすら居ない……いや、眼を逸らしているだけか。
然も在りなん、か……』
━━━━ゆらり、ゆらゆら。
意識が揺れる。
想い出の中の
━━━━気付いていないって、なに?
だって、私……あんなに傷ついて……
━━━━良い事ばかりだったワケじゃない。むしろ、
生き残ったのが悪いって、
お父さんだって……
「━━━━私、皆でまた暮らせるようにリハビリだって頑張ったのに……」
━━━━あぁ、その
「━━━━お兄、ちゃん……」
━━━━伸ばしたこの左手の先。いつも居てくれた筈の誰かの姿は、幻とすり抜けていって……
「……ん……」
━━━━そして、意識が浮上する。
見上げたその天井は、最早見慣れてしまった、SONG本部の医務室の物で……でも、いつもと違って暗い?
「……大切な物を壊してばかりの私……でも未来は、そんな
━━━━そして、未来だけじゃない。声が、聴こえたんだ。
忘れさられても尚、忘れる事なんて出来ない声が……
「だから……未来の気持ちに応えなきゃ……あ……」
ギュッ、と胸元を握り締めて、ガングニールの重さを再確認しようとして、気付く。
「……そうだ……砕かれちゃったんだ……」
受け継いだ筈のガングニール。でもそれは、あの二人の人形に砕かれてしまった。
「……うぅ……」
━━━━未熟を恥じる心と、切なさと、心細さと。
「━━━━行こう。」
━━━━だって、きっと、誰かが。
この心細さを圧して、戦っている筈なのだから。
◆◆◆◆◆◆◆
「シュルシャガナとイガリマ……装者二人のバイタル安定……ッ!?
ギアからのバックファイアが低く抑えられていますッ!!」
司令部内に響く友里の声。その示す事はつまり、適合係数の
「い、いったい、どういう事なんだ……ッ!?」
「やられましたね……そういう事でしたか。」
端的な緒川の言葉に、
「あぁ……あいつ等、メディカルルームからLiNKERを余計に持ち出しやがった……ッ!!」
「まさか、Model_Kを……ッ!?」
「個々人に合わせた最適化や使用後の除去考慮がされていないとはいえ、了子さんの遺した実物から複製したLiNKER・Model_Kなら……
確かに適合係数を一時的にブーストし、彼女達のギアからのバックファイアを低減する事が出来る……
でも、それは諸刃の剣。だから私達は、彼女達にLiNKERの使用を許可する気はなかったのよ……」
━━━━LiNKERとは、とどのつまりは薬物注射だ。しかも大天才たる櫻井了子やドクター・ウェルが好き勝手に作り上げた芸術品のようなシロモノ……
どの成分が肉体のどの部分に作用して効き目を出しているのか……そんな部分に関する研究は未だ発展途上であるし、我々よりも進んでいた筈のFISもデータの総てを
「あの子達は奏ちゃんよりも身体が小さいし、肉体的にも未発達……そんな状態でLiNKERを常用し続けた時に何が起きるかが
「だから、あいつ等が戦わずに済む状況に持ち込めればそれが最善だった……だが……」
『━━━━ギアの改修が終わるまでッ!!』
『発電所は護って見せるデスッ!!』
『誰も死なせたりなんて……しませんッ!!だからッ!!』
『後は任せるって事さッ!!』
━━━━決意と覚悟を握って立つ少女達の本気。
それを前にしては、俺達保護者の《護られていて欲しい》なんて我儘は霞んでしまうのだ。
◆◆◆◆◆◆◆
━━━━時を同じくして。
「━━━━対象・派手に破壊完了。」
「まるで積み木のお城ォ……レイアちゃんの妹に手伝ってもらうまでも無いわね。」
「━━━━該当エリアのエネルギー総量低下中。
まもなく
『……レイラインの開放は任せる。
オレは最後の仕上げに取り掛かろう……』
「いよいよ、始まるのですね。」
「いよいよ、終わるのだ。
━━━━そして万象は、追想の歌へ書き換わる。」
都市部用ギガソーラーシステムだけで無く、周辺各所の発電・送電施設を襲う影があった。
━━━━その正体は、言うまでも無い。
ヒトガタに宿りしモノ、
その三騎。
「くそッ……!!」
「各地の部隊も壊滅状態です……ッ!!奴等、コッチを
「自走式の地雷源かッ!!厄介なッ!!
……残った奴等を全員横須賀に回せッ!!」
「ですがッ!!それでは此処の護りが……ッ!!」
「━━━━履き違えるなッ!!」
「ッ!?」
「……
━━━━だが、
「……迷惑な《特機部二》でしたけど、必ずやり遂げてくれる連中でしたね。そういえば。」
「あぁ……だから行け。此処は━━━━俺が引き受けた……ッ!!」
アルカ・ノイズを放たれるまでも無い。
携行兵器をも圧倒する火力。防御力。そして何より、ヒトを模したその高度演算機構が齎す圧倒的な状況対応力。
それを前にして、特異災害対策機動部の部隊は千々に敗れ去っていた。
だがそれでも。人々は諦めない。
━━━━希望は、確かにそこにあるのだと信じて。
◆◆◆◆◆◆◆
「━━━━撃て撃てッ!!撃ちまくれッ!!」
━━━━激化する戦場。その中で
「ったくよッ!!キリがねぇぜコレじゃあッ!!」
「あぁ……これだけのアルカ・ノイズ、保管スペースはともかく、どうやって製造資金を捻出していたのか……」
「今考える事か!?」
「今すぐでなくともいつかは考えなければならない事だぞ?
━━━━だが、まぁ今はそれよりも目の前の敵か……よし、では対アルカ・ノイズ戦術草案を起動していく。
前線の連中は巻き込まれないよう気を付けてくれ!!」
そう言ってマーティンの奴が周囲の倉庫から呼び出したのは……
「ロボット?」
武骨な二足歩行の鉄塊。銃を括りつけただけの木偶人形のような……としか言いようがないシロモノだった。
「あぁ。FIS……もとい、ロスアラモスの表向きの実験成果を利用した特殊戦闘用ロボット・《MobileBot》だ。」
「
「ま、要するに《一機を操作して残りの連中を統合制御して面制圧しよう》なんて、同士討ちも乱戦も考えてない机上の空論だったんだが……こういう状況なら、使えるかもしれないだろう?」
「なるほどねぇ……一機だけがホストBotで、残りはその動きに追従すると……すっとアレか?足場の認識とかその程度の事だけを子機は行うってワケか?」
「正解だ。ホスト機を人間が操作し、子機はその挙動に追従する……地味に高度なシステムなんだぞ?」
概念としては魚の群れが近いだろうか?
周囲の子機同士が認識し合う事で一定の距離を保ち、攻撃行動の是非などの意思決定のみを上位アカウントに丸投げする。
実に合理的な思想だが……戦場において合理的に物事が終わるなんて事はまず有り得ない。
非合理や不合理な事象……イレギュラーが飛び交うのが戦場なのだ。マーティンが言う通り、上位アカウントを操作する人間の誤認による同士討ちや、子機同士の間に敵が入り込んだ場合の対処など、ザッと考えただけでも問題が山積みだと分かる。
「っつってもなぁ……アルカ・ノイズ相手だと防御面が心配だが……」
「ま、それも含めての実験だ。無人兵器でアルカ・ノイズへの対処が出来るなら、シンフォギアの改修が終わったとしても装者達の負担を大幅に低減できるからな。」
「それもそうか。」
ガションガションと鉄の足音を鳴らして、モビルボットが駈ける。
此方の張る弾幕を気にもせず、ただ愚直なまでに走り抜ける。
「……なるほど?同士討ち対策はしてないっつっても装甲はガッツリしてんのね?」
気にもしない……だけではない。その装甲で後ろからの流れ弾を弾き飛ばし、姿勢を崩すことなく進んでいく姿を見て、このバカげたシステムを考えた奴の評価を二段階ほど上方修正する。
「あぁ、アサルトライフルなら同時に十発ほど着弾でもしない限りは即時停止もしない強固さがある。システムを出来るだけ雑にした結果だそうだが……」
━━━━そして、モビルボットの砲火が轟音を鳴らす。
信頼性の高い発射機構だからか、
「キルレートも良好……攻撃性能は問題無い、か……」
「そりゃあんだけの数で攻めりゃなぁ……」
見た所、ホストBot一機が二十機の子機を動かすのだ。単純な弾数計算で言えば、一人の兵士が撃つ場合の21倍だ。
勿論コレがそのまま戦力計算に適用出来るかと言えばそうでは無いのだが……
『━━━━あ。』
━━━━そして、今目の前で起きているように。
アルカ・ノイズの解剖器官でホストBotが破壊されたりなどしてしまった場合にはなお酷い。
周囲の子機達二十機も総て動かなくなり、アルカ・ノイズの攻撃に吞まれて赤い塵へと消えてゆく……
「うーん、流石にコレは信頼性低すぎるなぁ……」
「やはりシンフォギアの防御性能は偉大だな……」
いやホント。
あんなバリアフィールドを人型サイズに納めるとか、櫻井了子はどんだけのインチキを働いたんだか……
◆◆◆◆◆◆◆
「━━━━そぉりゃァ!!」
━━━━背後から迫って来たその影に
「ハッ━━━━!?
ぐ、ぬ……ぬぬぬ……ッ!!」
だって言うのに。
相手の片腕の押し込みに対して、キッチリ受け止めた筈のアタシが両腕で押し返そうとしてもなお……押し、切られる……ッ!!
「うりゃ!!」
『うああぁ!?』
━━━━だから、もう片方の手に握られた新しい杖……?を振り抜かれれば、近づいて攻撃の機を窺っていた調ごと吹き飛ばされてしまうのも当然の事だった。
『調ッ!?切歌ッ!?』
「月読さんッ!!暁さんッ!?」
「……あいったたた……」
「……簡単には、いかせてもらえない……」
「うっふふ。ジャリん子共ォ……」
━━━━乱入早々アタシ達をフッ飛ばした紅の人形が何をしているのかと見てみれば、やっているのは此方を嘗めているかのような、杖の上に乗ってのパフォーマンス。
……実際、嘗めているんだろう。アタシ達の適合係数は、どうやったって第一種適合者には見劣りするのだから。
「━━━━アタシは強いゾ?」
━━━━振り向きざまに不敵に笑うその顔が、対峙するアタシ達からはとても獰猛に、そして恐ろしく見える。
だけど━━━━
「子供だとバカにして━━━━ッ!!」
力及ばずと分かっていても、上から目線でジャリん子呼ばわりされて頭に来ないワケが無いのデスよ!!
「目にもの見せてやるデスよッ!!」
調と二人構えるのは、撃ち込んだ分とは別に持ち出して来ていた無針注射器。
━━━━その中身は、勿論……
◆◆◆◆◆◆◆
「あぁッ……!!更にLiNKERをッ!?」
小日向未来が悲鳴を挙げるのも無理は無い。
神獣鏡を纏う為に
……そして、そんな状況に追い込まれた原因は紛れもなく……
「━━━━二人を連れ戻せッ!!これ以上は命に関わるッ!!」
追いLiNKERなんて無謀を前にして、司令が止めないワケが無い。だけど……
「━━━━やらせてあげてください。」
拳を強く握り込む。
けれど、だからこそ。私は此処で叫ばねばならないのだッ!!
「これは、あの日道に迷った
「臆病者達の、償い……?」
「えぇ……
━━━━悪意があまりにもありふれていて、忘れてしまっていた事。
手を伸ばしてくれる人は、出逢えなかっただけでこの世には必ず居るという事。
━━━━そして、世界にただ一人になったとしても、手を伸ばし続けてくれるような
「だから、エルフナインがシンフォギアを蘇らせてくれると信じて戦う事こそ、私達の償いなんですッ!!
━━━━そしてそれは同時に、誓いでもある。」
一つでも歯車が欠けていたら、私には何も残って居なかっただろう。
悪意に抗おうと足掻き、藻掻き、それでも悪を貫き徹す事すら出来ず……セレナも、マムも。いいや、もっともっと多くの人の命をッ!!喪ってしまっていた筈なのだ……ッ!!
「救われた筈なのに、私達が忘れてしまった《誰か》。
━━━━その借りと、恩をッ!!手の届く総て、護り切る事で果たすと誓ったから、あの子達はきっと……ッ!!」
「……バイタルチェックを密にした上で、回収班を待機させる。それが最大限の譲歩だ。」
重い沈黙を破って、司令は判断を下す。
その内容は、私達の行動の認可……
「━━━━だが、安心しろ。
手の届く限りに立ち向かうのは、何も《彼》だけの専売特許じゃない……ッ!!」
そして、それ以上を齎す、希望の光だった。
◆◆◆◆◆◆◆
手を繋ぐ。指が絡まる。
それを、眼だけでなく五感の総てで確かめ合う。
「へぇえ?」
相も変わらず余裕を隠さない紅の人形。見逃しているのだって、此方が追いLiNKERしても叩き潰せると予測しているからなのだろう。
でも構わない。だって……
「━━━━貴方みたいのはそうやって、見下してばかりだから勝機を逃す……」
ですよね、翼さん。
「……LiNKERの追加投与。一人なら絶対に取らない策……でも、二人でなら。」
「━━━━怖くないデスッ!!」
━━━━そして、私達は同時に、
━━━━ドクン、と。心臓が強く高鳴る。胸の内側がざわざわする。
「ん……!!」
四肢に漲る意志が、身体を無理矢理にギアへと適合させて……
「あ……」
垂れて来る感覚。粘膜の薄い所が血圧の増加に耐えきれなかったのか、抑える手を見れば溢れ出た鼻血と、小刻みに震える指先がある。
「
「……鼻血がなんぼのもんかデスッ!!」
━━━━私達が想った事は、きっと同じ。
あの日、マムやマリアを助ける為に血塗れになったというセレナ……今もアルカ・ノイズの群れから人々を護る為に立ち回り続ける彼女の背中。
「━━━━行こう、切ちゃん。一緒に……ッ!!」
あの日、伸ばせなかったこの手を。今は、私達がッ!!
「━━━━切り刻む
そう言い放つ切ちゃんのアームドギアは、両手に握る二振り一対。
対鎌を一つの大鎌となす、イガリマの新たな
私も、それに応えるように
「お?面白くしてくれるの……かァッ!?」
バランスを取った状態から空中、跳び上がりながらという最悪の足場から、此方に向かってその両手の結晶塊を投げつけてくる。
「うぇい!!」
だけど、だけども。
今の私達の適合係数なら……ッ!!
「おぉ!!ならコレは……どうなんだゾッ?」
「危険信号点滅……ッ!!地ッ獄極ゥ楽どっちがいい
三発の号砲。先ほどまでならこちらを吹き飛ばして余りあっただろう猛威。
━━━━それでも、バーニアを吹かして突き進む今の切ちゃんには通じない……ッ!!
「真っ二つにされたけりゃAttention……ッ!!」
弾き飛ばし、肉薄した切ちゃんの一撃を、紅い人形は右手に持つ杖で受け止め……しかし、今度は、耐えきれないッ!!
「おォ!!」
「
「未成熟な
ぶつけた敵対心ッ!!」
だけど、紅い人形の基礎出力は未だあらゆるシンフォギアを上回っている。だから、狙うべきは正面からの殴り合いでは無く……削り合いッ!!
切り下がる切ちゃんの後ろから
「アハハハハハ!!メーン!!メーン!!だゾォ!!」
だが、やはり投擲では攻撃力が足りないのだろう。物理法則を無視して掌から現れる新たな杖で、巨刃二つは打ち落とされる。
「━━━━行き場の無い、
しかして、それもまた計算通り……ッ!!
迎撃の間に後方一回転。脚を起点に描くのは丸い丸い満月の刃……ッ!!
『
大質量の突撃、機軸の定まったこの一撃なら……ッ!!
「ッとォ!?
凄い凄いんだゾ!!」
『
━━━━
目論み通りに杖を打ち砕き、紅い人形を後退させる。
「切ちゃんッ!!」
「合点デスッ!!」
とにかく、本部に攻撃させない事が目的の一番。
だから、私達は目の前の紅い人形を本部近辺で戦う人達から遠ざけ、攻撃が当たっても問題が無い場所へと誘導を……
「ニヒッ☆
なら……面白い所で戦うんだゾッ!!」
「上……ッ!?」
そんな此方の想いを読み切ったのか、後退していた紅い人形は地を蹴り宙を舞って、ギガソーラーシステムの上へと飛び移る……ッ!!
「ギガソーラーシステムを
「さっきの強襲も其処からだったデスかッ!!
調ッ!!」
「リスクは高いけど……やるしかないよ、切ちゃんッ!!」
太陽光を効率よく受け止める為、空に向かって広がるギガソーラーシステムの葉の上から。
両掌をかっ開いて下へ向かって杖を乱射する紅い人形に有効打を与えるには、此方も向こうの土俵に乗るしかない……ッ!!
◆◆◆◆◆◆◆
「更なる適合係数の上昇で、ギアの出力も上がっていますッ!!」
「二人のユニゾンが、数値以上の効果を発揮していますッ!!」
司令部に鳴り響く、調ちゃんと切歌ちゃんの重なる歌。
それを聴きながら
「女神ザババの双刃という共通項を以て二人のギアを構成するフォニックゲインを共鳴、
二人の元々の適合係数こそは第一種適合者には及ばずとも、この輝きなら……ッ!!」
「━━━━だが……この輝きは時限式だ……ッ!!」
司令の零す言葉も、また事実。
LiNKERの追加投与による増強がいつまで保つかなんてデータ、被験者の身体への負担が高過ぎて考慮すらされていない為に揃っていないのだ。
だがそれでも一つ言えるとすれば……
「まず間違いなく、LiNKERの単独投与よりも増強の時間は短くなってしまう筈……」
LiNKERのどの部分が薬効成分として機能し、身体のどの部位へと作用しているのか。
そんな基本も基本の部分すら私達は理解出来ていない。
だがそれでも、人間の身体が化学反応によって燃焼その他の生命活動を行う以上、一つだけ確かに言える事がある。
過剰に摂取された成分は、如何に化学的に重要な物質だろうと機能しないままに排出されるという事だ。
過ぎたるは猶及ばざるが如し、コレは人間にも当然適用される事であり、オーバードーズで効果が向上しているのも、肉体負荷を抑える為の安全マージンを削っているからこそなのだ……
「━━━━それでも調と切歌なら、目の前の
そんな悲観を覆すように、マリアちゃんは真っ直ぐにモニターを見つめていた……
二人でなら怖くない。それは事実。
二人でも敵わない。これも現実。
心に宿った小さな火は、二つ重なって炎となって。
あの焔の日の背中を追う力となった。
━━━━それでも、暴虐の紅い焔には届かない。
だけど、だけど……番う一つを喪いたくない。
そう願う
━━━━疑われることを怖れずに、真っ直ぐ飛び込んできた者が居た。
そしてここには、信じることを怖れずに受け止める者たちが居る。