戦姫絶唱シンフォギア レゾナンス   作:重石塚 竜胆

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十万UA記念の特別短編ですが中身はキャラ崩壊一歩手前なギャグ祭りとなります。
そういった描写が苦手な方はご注意ください。

━━━━というワケでレゾナンス道場総集編第一期、はっじまっるよー!!


断章 抜粋のエンドレポート

                    ━━━━遭遇・第一回━━━━

 

 

━━━━気が付けば、其処は道場だった。

……え?道場?俺はライブ会場でノイズを相手にアメノツムギを振るう事で迎撃しようとしていたのでは?

 

「━━━━力が欲しいか?」

 

混乱する俺の後ろから掛けられる声。その聞き覚えのある声に思わず振り返った俺が見たモノ……

━━━━それは、天狗だった。2mを超える身の丈に、筋肉質な身体を持った隻腕の男が、何故か烏天狗のお面をかぶって其処に居た。

……というか、どう見ても父さんだった。

……だが、それはおかしい。父さんは死んだ筈だ。であれば、俺はもしや死んでしまったのか……?

 

「否!!我はオヤージ!!力の教導者!!」

 

━━━━はい?

 

「うぬが困惑を直接口に出す必要は無い!!此処は道場であるが故にうぬの思考を読む事も可能とする!!」

 

━━━━ちょっと待って欲しい。

 

「フハハハハハ!!出来ぬ!!何故なら尺の都合があるからな。如何に道場とて無制限に引き延ばせるワケでは無いのだ!!特に今回は記念短編だし……」

 

マジで待ってくださいお願いします。

マトモな思考をしている俺にも分かるように説明して欲しい。

 

「━━━━此処は正解に辿り着けずに道半ばで倒れ伏したうぬを叱咤激励するコーナー、その名も『オヤージ道場』!!

 今回のうぬは……うむ、『アメノツムギを剣と握って振り抜くも五体を倒した所で数に押し込まれる』か……」

 

……うっ。言ってる事は相変わらず分からないが……語られるそれは、まさに俺の記憶にある最期の光景だった。

 

「うむ……防人たらんと決意を握るその覚悟や良し!!しかし、今のうぬでは役者不足……いや、装備が足りておらぬわ!!具体的に言うと耐性装備無しで裏ボスに挑むが如きもの!!

 銃をも超える()()であるノイズを全て切り伏せよう等、人ならざる絶技でも無ければ不可能であると知れィ!!」

 

━━━━その言葉の意味は全く分からなかったが、その言葉の意図は理解出来る。

つまり、俺はまだ弱いのだ。

 

「━━━━だが、それを悲観する必要は無い。人は常に、己が持つ力の中で最善を求めて生きるのだからな。

 故に、うぬが考えるべきは弱さでは無くその活用ッ!!具体的にはアメノツムギを剣では無く()と使うがよかろうッ!!」

 

━━━━盾?アメノツムギは糸状であるのだから盾と使う事など……いや、もしかすると、出来るかも知れない……ッ!!

 

「ふふふ……良い眼になりおったわ。さぁ行け!!うぬを待っている者があの会場には居るのだから!!」

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

                    ━━━━模索・第二回━━━━

 

 

━━━━気が付けば、俺は再びこの道場を訪れてしまっていた。

 

「ふむ……アメノツムギを盾と構えたのは良い。しっかり学んでおるな。しかし、全員を護ろうと己の身を盾に立ち続けたのはよろしくない。

 ━━━━それ故に、此度のうぬは死んだのだから。」

 

━━━━父さん、いや、オヤージを名乗る不審者の言葉は容赦がない。だが、それが事実を表しているが故に、俺に言える事は何も無い。

 

「確かに、防人であれば人々を護る為盾となる事も覚悟すべきだ。

 ━━━━だが、今のお前はそうではない。命を賭すべき局面を選ぶべき存在だ。

 ……第一、ノイズの一群をうぬがその身で受け止めた所で、次弾はどうする?その次は?」

 

━━━━全く以て、その通りだ。

父さんに言われた事がある。防人は命の選択をしなければならない事がある、と。

俺を意固地にしたその遺言の意味が今、無様にも後悔を遺してしまった俺に深く突き刺さるのだ。

 

「━━━━辛いか?だが、それを悲観する暇はうぬには無い。」

 

オヤージさんが言わんとする言葉を聴くのは二度目だが、語られるまでも無くすぐに分かった。

━━━━人は常に、己が持つ力の中で最善を求めて生きていくのだから……ッ!!

 

 

 

━━━━だから、俺は最善へと到る為に決意を握ったのだ。

……その果てに、最善ですら救えぬ犠牲があったとしても。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

                   ━━━━幕間・第七回━━━━

 

「━━━━おぉ、回数が飛んでいるのは気にするな!!なにせあのライブ会場だけで共鳴の運命は幾たびも潰えている。その総てを網羅するとちょっと文量がエグい事になったのでカットしたのだ。」

 

━━━━此処は道場。死後に主人公が辿り着く場所だったりするのかも知れない。

断言出来ないのは何故かと言えば、私自身よく分かっていないからだ。

私は物語から退場したが故にこうして好き勝手出来てはいるが、逆に物語に関わる事は出来ない。

それが、とても歯がゆい。

 

━━━━今回のデッドエンドの原因は、アメノツムギの固有振動数を二課に伝えなかった事で共鳴の誘拐が防がれなかった事にある。

誘拐された共鳴はFISにて人体実験の対象となり、それでも希望を捨てずに戦い続けるのだが……

 

行き止まり(デッドエンド)だから、それが観測される事は無い、か……」

 

━━━━それでは、世界は救えない。だから、お話はここでお終いだ。

 

()()なら其処等辺の調整も効くんだろうけど……あいにく今のこの世界は角笛が()()()()()()カタチになっているからなぁ……」

 

やれやれと、道場の床で眠る……催眠ガスを嗅がされた共鳴の頭を撫でながら思う。残酷な世界の在り方について。

それについて語ろうとするとオヤージとしてでは無い素の口調が出てしまうのは仕方ない事だろう。

━━━━なにせ、愛する息子に辛い使命を背負わせてしまうなんて、父親失格な自分を恥じるからこそのオヤージの仮面なのだから。

 

「共鳴が、いや……天津が居たからこそこの世界は基幹世界から外れ、しかし、天津が居たが故に滅びを迎える。

 ……だから、俺達は世界を防人(さきも)る必要があるんだ。共鳴。」

 

━━━━まだ幼さを残す顔、後ろだけ結ぶ形で伸ばしているらしい後ろ髪、しかし警護の為に目に掛からぬように整えられた前髪。

 

「……目の形は俺に似てキリッとしてるって、鳴弥は言ってくれたっけな。

 逆に、眉尻が下がってるのは鳴弥に似たんだが……」

 

……大きくなったなぁ。こうやって寝ている共鳴を見ると、産まれた時の事を思い出す。

結局俺はこの子に何もしてあげられなかったが……俺は、この子の父親として憧れられる男で居られたのだろうか━━━━?

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

                   ━━━━異聞・第十二回━━━━

 

 

「パパー!!」

 

━━━━少女が、言葉と共に駆けてくる。

 

「おー!!鳴美(なるみ)!!元気にしてたかー?」

 

「うん!!あのね!!私ね!!パパのお名前書けるようになったんだよ!!」

 

「ハハハ!!それは嬉しいなぁ!!」

 

「━━━━おかえりなさい、アナタ。」

 

鳴美に続いて此方に歩いて来る愛しい妻の腕の中には、小さな小さな新たな命が抱えられていた。

 

「あぁ、ただいま。

 ━━━━竜子、それに竜弥(たつや)。」

 

━━━━彼女の名は、()()()()。そして、彼女が抱える赤子は竜弥。俺の息子だ。

そう、俺は彼女と結ばれた。あの日、手を繋いだ事は決して無駄では無かったのだ……

 

「……なにか、浮かない顔をしていない?」

 

「そうかな?……いや、そうかも知れない。幸福過ぎて、なんだか怖いな……」

 

━━━━世界は救われた。それ故にシンフォギアはその役目の大半を終え、レゾナンスギアもまた元々のアメノツムギへと姿を戻す事となった。

それに応じて、俺もまたSONGを脱退して天津家としてガーディアンの仕事へと戻ったのだ。

 

響は未来と一緒にSONG職員として災害派遣を今も続けている。

翼ちゃんとマリアと奏さんは歌で世界を救う為に今もアイドルとして活躍。

クリスちゃんもまた同じく。歌で世界を救う為、NPO団体と共に今なお火種の燻ぶる紛争地帯での支援の最前線に立っている。

調ちゃんと切歌ちゃんは大学卒業後に異端技術研究者の道へ進んだ。ナスターシャ教授の遺志を継ぎたいと言っていた事は記憶に新しい。

……切歌ちゃんが研究を上手くやれるのかどうかで少々もめたらしいが、まぁ今となっては昔の話だろう。

 

皆が居て、誰かが居なくて、誰かが居て……そんな中で俺は竜子と結婚し、そして幸せな家族になれた。

それが嬉しいだけに……何故か怖いと感じてしまう感情が不思議なのだ。

 

「━━━━私は、恐くないわ。だって、アナタが此処に居てくれるのだもの……」

 

けれど、彼女のその言葉を聞くと、俺の抱く恐怖は薄れていく。そうだ、俺は手を繋げたのだから……

 

 

 

 

━━━━コレは、夢想の結末。

訣別の鎮魂歌は流れず、手を繋ぎ、少女と少年が共に歩んだ……決して有り得ぬ未来の一頁。

この世界は救われない。この結末は訪れない。とうに基幹より外れた歴史に生じた歪みは限界を越え、矛盾を許容する筈の世界にすら不協和の音色を響かせる。

 

━━━━それでも、アナタは思い描くのでしょう。

どうか、未来に幸あれと。()()()()()()()()()()()、と。

その道行きに月の光が差す事を、私は祈っています。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

                   ━━━━転機・第十八回━━━━

 

「━━━━うぬ。なんだか久しぶりな気がするな!!お馴染みオヤージ道場の時間である!!」

 

それはそうである。なにせこの二年間で此処に来たことは数える程しか無かったのだから。

というか、やはりレゾナンスギアの有る無しで死亡率がダンチだったな……

今さらながらにオヤージが以前言っていた耐性装備云々の話が理解出来たような気がする。

 

「うむす。理解出来たようで何より。さぁて今回のデェッドエェンドの理由はー……『ネフシュタンの少女にノイズを大量召喚されて圧殺される』と……

 あー、コレはちょっと……一人じゃ対処のしようが無いな。」

 

━━━━そうなのだ。ネフシュタンの少女が握っていた、謎の『ノイズを操る』聖遺物。そこから召喚された数百にのぼるノイズ達。

……イチバチに翼ちゃんとの合流を図った俺の奮戦虚しく、数百のノイズの猛攻に耐えきれずにレゾナンスギアは機能を停止。俺を葬り去る事に成功したというワケだ。

 

「ふむ……何故、うぬは真っ先にノイズの群れを掻き分けようとした?」

 

━━━━決まっている。響があの捕獲用ノイズに囚われてしまった以上、俺が翼ちゃんと合流して立ち向かわなければ勝利の目は無いと判断したからだ。

 

「━━━━だが、それは賭けであっただろう。レゾナンスギアが如何にシンフォギアが放つフォニックゲインとの共振にてその力を励起させるとはいえ……

 それが機械的な増幅である以上、そこには駆動限界が存在する。その限界を押し測れぬうぬではあるまい?」

 

……うっ。

言葉に詰まる。そう、自分でも分かっていた事だが、コレはイチバチの賭けだったのだ。

レゾナンスギアが限界を迎えるのが先か、翼ちゃんと合流出来るのが先かという二択を俺は天秤に掛け、そして……賭けに負けた。

 

戦場(いくさば)に立つのはうぬ一人では無い。故に信じる事だ、うぬと共に立つ戦士の力を。

 ……そして、彼女が握る覚悟の強さを。」

 

━━━━もしかしたら、イチバチの賭けに出なくても予想通りに擂り潰されてしまって俺はどちらにしろお終いなのかも知れない。

一瞬だけ脳裏を(よぎ)ったそんな想いを、オヤージは払ってくれる。その希望が、俺の握る拳に力をくれる。

そうだ。俺はまだ諦めるワケにはいかない。たとえ、この道が未来に繋がっていないとしても。

その先にて最善の未来を掴む為に、何度でも立ち上がるのだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

                   ━━━━蒸発・第二十三回━━━━

 

 

「ハハハハハハ!!」

 

━━━━アメノハゴロモが俺に齎した短距離転移という能力。

それを用いてフィーネとの決戦にて命を賭したクリスちゃんを救わんとした俺だが、その姿は空に輝くクリスちゃんの基では無く道場にあった。

 

「フハハハハハッ!!ハーッハッハッハ!!」

 

━━━━そう。カ・ディンギルの砲塔を超え、空に輝く光柱と並走した俺は追い縋るフィーネのネフシュタンの双鞭を短距離跳躍にて回避しようとして失敗したのだ。

その直前に切った啖呵も知っているだろうオヤージが笑うのも無理はない。カ・ディンギルの砲撃のド真ん中に転移して一瞬でジュッと焼き尽くされてしまったのだからもー笑うしかない。

 

「ククッ……うむ。失敗した原因は分かっておろうな?」

 

だが、オヤージも俺も最早死亡時のマヌケさだけに囚われるような段階には居ない。切り替えたオヤージの指摘に俺は、今回の結末を招いた問題点を思い浮かべる。

……要するに、ビビってしまったのだ。俺は。

 

「うむ!!致死を前にして臆するのは人間として当たり前の防衛本能だ。だが、時に人はその限界を越えて戦わねばならぬ時がある……

 かつてのうぬはそうでは無かった。命を我武者羅に使い潰す事は最善では無かった。

 だが、今のうぬは……護る者を見つけた。戦う理由を握った。その為の力を携えた。三拍子揃った立派な……防人だ。胸を張れ。」

 

━━━━オヤージが珍しくも優し気な声音で語るその言葉に、どうしても胸を突く想いがある。

……父さん。俺が一人前の防人と、ガーディアンとなる前に俺の前から居なくなってしまった人。

同一視してはいけないと分かっている。ここでの経験が現実に持ち込めない事も理解している。

━━━━だがそれでも。この想いは伝えなければならない。

 

「……ありがとうございます。父さん。俺は防人として、この二年で成長する事が出来た。

 それには、この場所での経験が少なからず帰依していると……俺は信じています。

 ━━━━だから、行ってきます。護る為に。そして、未来に彼女達の歌を繋げる為に。」

 

「━━━━あぁ。行ってきなさい。共鳴。」

 

━━━━その言葉をしっかりと口にして。その言葉をしっかりと受け止めて。

俺の意識は、浮上、する━━━━

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

                  ━━━━総括・第二十四回━━━━

 

 

「━━━━と思うじゃろ?もうちっとばかし続くんじゃ。」

 

━━━━なんでさーッ!?

 

「ハハハ。とはいえコレは特定の状況を指す道場では無い。元ネタの方でも最終決戦辺りともなると道場どころか選択肢自体減ってたからな!!」

 

しかもメタい!!いや、道場だからいつもの事と言えばそうなんだけども!!

 

「━━━━とはいえ、この二年間での二十三の終わり。見届けさせてもらったぞ、共鳴。」

 

━━━━二十三?俺が此処に来たのは二十一回では?

 

「━━━━おっと。間違えた。そうだな、()()()()()()()だったな。

 さて、ひとまず自体は終息し、世界はノイズの災禍を抱えながらも未来へと進んでいく。

 ━━━━だが、物語はコレで終わりでは無い。うぬの人生はこれからも続くし……何よりも、遺された謎や難題は数多くある筈だ。」

 

━━━━融合症例となった響の治療法。月の欠片の破砕による重力バランスの変化。そして何よりも……あまりに多くの謎を抱えたヴァールハイトの真意。

オヤージの言う通り、考えなければならない謎はまだまだ山のようにある。であれば……もしや此れからもオヤージは俺の生死の岐路に立ち続けるのだろうか?

 

「さぁて……それがどうなるかは、まだ未定だなぁ。そもそも、マトモな出番を貰わなければ我のキャラがすっかりコッチで定着してしまいそうだしな!!

 だが共鳴。お前が悩んでも、苦しんでも、諦めずに道を進む限り未来は切り拓かれる……それだけは忘れないでおいてくれ。」

 

━━━━死者からの不思議なエールはどこまでも、生者の道行を応援する物だった。




━━━━何故、彼の錬金術師はこの道場に現れなかったのか?
その答えはいずれ、交わる路の涯にて明かされるだろう。
九華絢爛、極彩の万華鏡が輝き、空に虹を掛けるその時に……

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