『イチイバル、圧倒していますッ!!』
『コレなら……!!』
「アンタの神はバカンス中……南無阿弥陀仏も
One、Two、Three……跪け……ッ!!」
「━━━━貸し借りは
故に、甲板を足場に再び宙へと踊り出す動作は最小限のもの。
「だから行かせろ……!!」
どんな理屈に依ってかは知らねぇが、宙を滑るように飛ぶあの子のギア。その進路を妨害し、どうにかこうにか空母の上へと誘導する。
だが……やりづれぇ!!助ける為とはいえ、あの子はあたしの恩人だッ!!
何度も、何度も、あの子に弾丸が当たった。その度に、心が痛む。
フィーネに捨てられ、雨に濡れるあたしを救ってくれたのは間違いなくあの子なのに。
そんな恩人に、鉛玉の返礼しか渡してやれないなんて……ッ!!
あの子が空母へと降り立ったのを見届け、あたしはこのふざけた戦いに終止符を打つ為に叫びを挙げる。
「━━━━Hyaha!! Go to hell!!
さぁ、スーパー弾丸タイムッ!!硝煙薫る薬莢レイン、サーカスを踊れェッ!!」
引き出すミサイルは、かつてのあの夕焼けにぶっ放したのと同じモノ。
それを、あの子は空を飛んで逃れようとする。素人の筈のあの子が初めてギアを纏うというのにその動きに迷いは無く、恐らくはプログラムされた物なんだろう。
「Hyaha!! Go to hell!! この教わった愛……銃に込めたなら、深呼吸……解き放て……!!」
━━━━だから、こうして後から鉛玉を追加してやるだけで、ギアは身動きが取れずにミサイルの霰の中へと落ちていく。
「……あとは、コイツを外しちまえば……」
……そして、爆炎の中で倒れるあの子の痛ましい姿。それを目の前に揺れそうな心を堅く縫い留めて、あたしはそのギアに手を……
「ッ!!ダメ!!その子はギアを脳とリンクさせられてる!!脆さの由縁はそれ故にッ!!」
「━━━━んだとッ!?」
急ごしらえの装者にプログラムを打ち込む為に、脳ミソまで弄繰り回したってのか!?
あまりの非道外道に驚愕するあたしを前に、あの子は痛みなど感じていないかのように動き出す。
「━━━━避けろ、雪音ッ!!」
後ろから響くあの人の声に言われるまでも無く、目の前の紫のギアが、鏡に写したあたしをロックしているのが肌で感じ取れる……ッ!!
「ッ!!とォッ!?なんだ、そのちょせぇのッ!!」
閃光のような数多のビームを撒き散らすあの子から距離を取る。散発程度に当たりゃしないが、それでも空いたこの距離は、始めと同じ構図に逆戻りしちまった事を示している……
そして、あの子もその距離を認識させられているのだろう。アームドギアを仕舞いこみ、ギア全体を円形の鏡のように変形させ始める。
「大技か……ッ!!だが……!!」
チラ、と垣間見るのは、ちょうどあたしの後ろに座り込む少女。先ほどあの子から紫のギアを引き剥がしてしまう所だったあたしに忠告をくれた彼女。
その身に纏う桃色のギアは、アカツキを牽制するあの人に渡したままだ。
━━━━なら、あたしが護んなきゃいけねぇだろう……ッ!!
「━━━━閃光……始マル世界
━━━━漆黒……終ワル世界」
輝きが集う。やはり大技ッ!!根こそぎ巻き込む規模のッ!!
「調ェェェェ!!」
「殲滅……帰ル場所ヲ、陽ダマル場所ヲ……
流星……アノ日ハ遠ク、追憶……総テガ遠ク……」
「━━━━だったらァァァァッ!!」
正面から、このあたしがッ!!何度でも受け止めてやるッ!!
強制的に止められないってんなら終わるまで付き合ってやらぁ!!
「返シテ……返シテ……残響ガ温モル歌……」
「リフレクターでッ!!」
先ほどの散発とはワケが違う熱量ッ!!身体を覆い尽くす程の巨大なビームッ!!
だが、それがビームだってんなら、あたしのギアには秘策があるッ!!
「━━━━指をすり抜ける、キミの左手……私だってキミを、護りたいんだ……!!」
聴こえる歌は、いつのまにやら吐露するように切実な歌詞へとその色を変えていて。
「くっ……ううゥ……ッ!!」
その切実に答えるかのように、ビームの圧力は強く、重い。
「━━━━調ッ!!今のうちに逃げるデスッ!!
その輝きに消しさられる前にッ!!」
「ッ!?どういう事だ!?」
━━━━外野がふざけた事を抜かしやがる。
イチイバルのリフレクターは月を穿つ一撃をも偏光出来るッ!!
ソイツがどんな聖遺物から作られたシンフォギアかは知らねぇが、今更そんなのブッ込まれたって……
「━━━━あの懐かしのメモリア、二人を
私は絶対譲らない。もう遠くには行かせない……!!」
「━━━━って、なんで押されてんだよ!?」
「無垢にして苛烈。魔を退ける輝く力の奔流……コレが、
「こんなに好きだよ……ねぇ、大好きだよ……!!」
目の前に広がる現実は、けれど予想とはまったく異なる結末を迎えていて。
「リフレクターが分解されていく……ッ!?」
月をも穿つカ・ディンギルの砲光すら逸らし、退ける程のイチイバルの偏光リフレクターが、真正面からの押し合いで押し負けて、分解されている……ッ!!
コレは……出力の問題じゃねぇ!!ギア自体の特性かッ!?
「くっ……ぐぬぬぬぬ……!!」
ダメだ……!!耐えきれねぇ……!!
リフレクターを分解しきった光が、あたしの視界を埋め尽くして……
━━━━その瞬間、空から剣が降って来た。
◆◆◆◆◆◆◆
「━━━━呆けない!!」
雪音のギアインナーの背を引っ掴み、天ノ逆鱗を間に挟んだ事で産まれた一瞬の隙を逃さず、月読という少女をを小脇に抱えながら
……だが、角度が悪い……!!二人の距離が離れていた為真っ直ぐに掻っ攫う事が出来なかった事。
それが故に、バーニアを噴かす加速の方向は
二つ、三つと続けざまに後背へと打ち下ろした天ノ逆鱗が、しかし一瞬で熔け落ちるのを肌で感じながら前へ前へと加速し続ける。
横に躱そうとすれば、その減速の瞬間に喰らい付かれる。しかし、このまま進み続けて空母の端から飛び出したとて、落下に移る際の減速に喰らい付かれる……!!
「━━━━翼ちゃん!!手を!!」
━━━━逡巡のその一瞬に上から聴こえる声。ちらと視線を向ければそこに見えるのは何故か少女を抱えながら空から落ち来て、
熔け落ちながらも甲板に突き立ち続ける天ノ逆鱗に糸を掛けてスイング軌道で私達と併走せんとする共鳴の姿。
「何故ゆえは総て後か……ッ!!共鳴!!上げてくれッ!!」
後方に立てる一本と同時、甲板の端にも天ノ逆鱗を打ち込み、共鳴が私の腰へと回してくる糸を受け入れる。
「ドン詰まりを……浮き上がりにッ!?」
「喋っていると舌を噛むッ!!」
━━━━共鳴が糸を縮めた事で急激に浮かび上がるベクトルとなった加速をそのまま、突き立つ逆鱗を駆け上がり、間一髪に光条から逃れ飛ぶ。
「━━━━お前ッ!!何やってたんだよ!?っつーかソイツはなんなんだ!?」
ひとまずの決死圏を抜けた直後だと言うのに、語気を荒げて雪音は共鳴へと言い募る。
「って、美舟!?美舟がなんで此処に居るんデス!?
━━━━まさか、自力で脱出を!?」
『━━━━えぇ。その通りですよ……!!してやってくれましたね、天坂美舟……そして、天津共鳴……ッ!!
ですが、コレで終わりでは……ありませんよッ!!掛かる災禍へ抗うには足りぬ程に無力なれど……我々が保有するアドバンテージはもう一つあるのですからッ!!』
「ッ!?ソロモンの杖をッ!?」
『━━━━開け!!バビロニアの宝物庫よッ!!』
━━━━そして、地獄の蓋が開く。
「ノイズを放ったかッ!!」
「クソッタレが……!!鴨撃ちならあたしの得意分野だッ!!」
空へ飛び上がり、雪音は全方位へと鉄火をバラ撒く。
「……仔細は後程聴かせてもらうぞ、共鳴。まずはあの子を……」
『━━━━そうは問屋が卸さないって言ってんでしょうッ!!』
━━━━そうして合流し、小日向を止める為動き出そうとする私達。
その眼前に立ちはだかるのは、ドクター・ウェルがソロモンの杖にて撒き散らす地獄の具現。
「大型ノイズ……ッ!!それも、立花達が交戦したというノイズ砲台型かッ!!」
浮遊する小日向の後ろに聳え立つ黄金の砦は、かつてのルナアタック事件の際に私の復帰ライブの最中現れたという巨大ノイズと同種の物。
「マズい……!!ギアを纏わぬ調ちゃんを諸共に人質と取る気か……ッ!!」
『その通りッ!!だから抜かせないでくださいよォ!!この砲弾をォッ!!』
だから、小日向が何処かへと飛び去って行くのを私達はみすみす見過ごすしかない。
『━━━━周囲のノイズの殲滅はクリスくんに任せろ!!共鳴くんと翼はまず大型ノイズの対処に当たってくれ!!』
司令の指示は簡潔で正確な物。だが……言うは易くとも、行うは難し。
背にギアを纏えぬ少女二人を背負うとなれば、高速で飛行型ノイズを撃ち出すというこのノイズを相手とするのは……
━━━━そんな思考を切り裂き、水面に上がる水柱。
その技前は、紛れもなく水遁忍法による物……!!
「ッ!?緒川さん!!」
「あの時のスーツの人が……水中から飛び出して来たデス!?いったいなんなんデスかこの状況は!?」
「人命救助はボク達が引き受けますッ!!そちらの女の子も……」
「━━━━すいません、緒川さん。それが出来ないんですよ。
二課がこの子を保護してしまえば、ウェル博士も流石になりふり構わずに彼女に掛けられた首輪型爆弾を炸裂させるでしょうから。」
━━━━緒川さんの要請を静かに断る共鳴と、その言葉に顔を陰らせるFISの少女三人。
……それだけで、その言葉が真実だと如実に分かった。
「ッ……!!分かりました。」
そう言い残し、月読を連れて緒川さんは後方の二課本部へ向けて走り去る。
『━━━━二度も言わせないでくださいよッ!!そうは問屋がァ!!』
「━━━━卸させるッ!!」
━━━━その背に狙いを付ける巨大ノイズが撃ち放った砲弾を空中にて弾き飛ばし、撃ち返すのはレゾナンスギアの一閃。
返された砲弾は、砲身の近くへ着弾し、爆発と共に巨大な黄金をもたじろがせる。
『なにィ!?』
「……ふむ。共鳴、おおよその事情はあい分かった。
であれば、そのまま共鳴は彼女を護っていてくれ。
━━━━暁、だったな。今だけでいい。彼女を護る為に力を貸して欲しい。
あの黄金のノイズを、まずは此処から引き剥がすッ!!」
「……分かった。必ず、護ってみせる。」
「……あのノイズを吹っ飛ばすまでだけデスよ!!」
「ならば、斬り込むは私が受け持とうッ!!」
立ちはだかるは巨大にして堅牢なる砦、されど、これを越えねば小日向の追跡は不可能。
故に、必要なのは質量と加速だ。
両の手に刀の形態としたアメノハバキリを構え、左の一を投擲する。
「カタパルトをッ!!」
そして、右の二をねじ込んで無理矢理に起動するのは、空母甲板に据え付けられた戦闘機を射出する為の
加速する視界の中で念じるは、一なる剣の
刀から蒼ノ一閃、そして、天ノ逆鱗へ。拡大した剣はしかし、その大質量を支え切れる程の出力を持たず、本来であれば横方向へ放つには向かぬ
━━━━だからこそ、カタパルトによる加速が必要だったのだ。
飛び出した速度をそのままに姿勢を整えて蹴り込むは、天ノ逆鱗の柄尻。
「はァァァァッ!!」
投げ飛ばした天ノ逆鱗の速度に、カタパルトと脚部バーニアの二段加速を加え、黄金のノイズへと叩き込む……!!
「あのデカブツがッ!?」
「本当に……吹っ飛んだ……!!」
「てぃやァァァァッ!!」
バーニアの出力を最大限に叩き込む事で黄金のノイズの重量級の質量をも押し出し、甲板を越え、その先の洋上へと……!!
◆◆◆◆◆◆◆
「━━━━切歌ちゃん!!」
「わ、分かったデス!!
━━━━美舟の命を握るだけじゃなくて、ギアを取られた調までノイズで狙うだなんて……そんなのド許せんデスよ!!マースト、ダーイッ!!」
切歌ちゃんが黄金のノイズに向かって飛び掛かり、肩のバーニアから生成した鎖にて黄金のノイズを処刑台に捕らえるのを、半壊を越えた傷痕の残る空母の甲板から遠目に見る。
そして、処刑台にギロチンの音が鳴り響く。
……コレで、十分だろう。シンフォギア装者達はそれぞれがこの空母の上から飛び去って行った。
「━━━━そろそろ出てきたらどうですか?」
「……お兄ちゃん?もう、この空母に戦える人なんて……?」
「いいや、居たんだよ。俺達が降りてくるよりも前から、既に。」
━━━━それに気づけたのは偶然の事。俺達が降り来た事で混乱した場が、彼の存在を際立たせてくれたのだ。
「━━━━参ったねェ。あのビームには正直心底ビビっちまったとはいえ、
そう言いながら、構造物の影から出てくる人影は、たった二日前にも相対した恐るべき戦士の姿。
━━━━七彩騎士、アゲート・ガウラード。
「よく言いますよ……気づかなかったら、美舟ちゃんを容赦なく撃ち抜いていたでしょうに。」
要らぬ混乱を招かぬように美舟ちゃん、と呼んだことを疑問に思ってか、手を強く握る美坂ちゃんの手を握り返しつつ、俺はアゲートさんへと問いを返す。
「……ま、それが俺のぉ……任務だからな。FISの問題を終息させる為に必要ならなぁんでもやっちまって構わねぇとよ……
現地判断で、最速の問題解決を。それが上の決定だ。」
「━━━━たとえ、それが罪も無い少女を殺す事になっても、ですか?」
世界への脅迫を行い、完全なるゲリラと化したFIS脱走者達。彼等を一網打尽とする事は、米国の秘密拠点を逆用した襲撃に失敗した時点で最早不可能だった。
それ故に、米国はFIS側から尻尾を出すタイミングを探っていたのだろう。この空母と護衛艦も恐らくは。
ならば、それが何故美舟ちゃんを殺す事に繋がるのか?
その答えは……
「……死を以てギアスを解く事で、最も危険なウェル博士とソロモンの杖を自ら封じさせる為に。」
「ハッ!!そこまで分かってるのならぁ……話は早い。見たとこ、お前等も似たような感覚で飛び出して来たみたいじゃあねぇの。
━━━━ならぁ、
━━━━つまり、それは。
「美舟ちゃんの命を差し出して、FISを自縄自縛に追い込んで潰せと?
━━━━そんなの、死んでも御免だ。」
「……生ぬるい、な。優しくとも。」
その通り、生ぬるい優しさだ。俺のその生ぬるい優しさがこの状況を招いたと言っても過言では無い。
けれど……
「……俺の任務は、
防人の裔たる天津の共鳴の任務は人々を
━━━━俺が
━━━━残酷な命の選択はいつも理不尽に降りかかって来て。
どうすればいいのか。どうしたいのかの答えはまだ見えない。
だけど、
命を懸けて教えてもらった、俺の握ったこの願いだけは、譲れない……ッ!!
「……ならば、貫き徹して見せろッ!!その生ぬるさをッ!!
この
そして、立てッ!!十二の号砲を受けてなおッ!!」
「━━━━望む、所だァァァァッ!!」
━━━━未だ手が届かぬ未来。彼女が飛び去った方向を一瞬だけ見やる。
意地を貫き、届かぬ其処までも手を伸ばし続ける為に。
◆◆◆◆◆◆◆
「未来ちゃんのギアから発せられたエネルギーには、聖遺物由来の力を分解する特性が見られますッ!!」
「これが……神獣鏡のシンフォギアの力……!!これじゃあ、ギアで防ぐ事は叶わない……ッ!!」
「この聖遺物殺し……味方ならば頼もしかろうが、敵に回れば如何にする……ッ!?」
━━━━未来が纏っている神獣鏡。私の命を救ってくれると了子さんが言っていたその力。
聖遺物を殺す輝き……そして、そこでふと思い至るのはさっき未来が放っていた極大のビーム。
……もしかして、
「━━━━師匠ッ!!」
「どうした!?」
「私に、いい考えがありますッ!!
━━━━神獣鏡の輝きがシンフォギアを散らすって言うのなら、その力を逆に利用してやればいいんですッ!!」
━━━━相手の力を利用する柔の拳と同じ事ッ!!神獣鏡がギアを脱がすって言うのなら、私だけじゃなくて未来も一緒に脱がしちゃえばいいッ!!
「神獣鏡の輝きを逆に利用して……だとォッ!?」
「はい!!私と未来のギアを一気に解除しちゃえばいいんですッ!!」
「ぬ……確かに、当初の予定ではキミの融合症例はそうして解除する予定だった。だが、この土壇場でそれに賭けるのは危険過ぎるッ!!」
私の思いつきを告げられた師匠は、けどその思いつきの危うさを指摘してくれる。
でも……!!
「未来だけを解除したら神獣鏡のシンフォギアは無くなっちゃいます!!私だけ解除しても、今度は未来を止められる人が居なくなっちゃいますッ!!
━━━━だから、死んでも未来を連れて帰りますッ!!」
「死ぬのは許さんッ!!」
「じゃあッ!!死んでも生きて帰ってきますッ!!それは……絶対に、絶対ですッ!!」
「ぬぅ……!!」
師匠は、私の決意を聴いても寄せた眉の皺を解く事は無くて。
「……過去のデータと現在の融合深度から響さんの限界活動時間を試算しました。
━━━━三分です。」
「たとえ微力でも、私達が支えます!!」
「━━━━面白そうな話してるじゃ無いか。だったら、アタシも混ぜろよな?」
「ガングニールの二振り目は此方にもある事、お忘れじゃないかしら?」
「藤尭さん……友里さん……奏さん……!!」
そんな中で私の無理筋の背を押してくれたのは、オペレーターの皆と、そして、鳴弥さんに車椅子を押されて現れた奏さん。
「……オーバーヒートまでの時間はごく限られている。勝算はあるのかッ!!」
「━━━━思いつきを数字で語れる物かよッ!!」
だから、背を押されて堂々と言い切るのは、デュランダル護送の時に師匠が言っていた事。
思いつきだから、成功するかどうかは分からない。けど、賭けるとしたらコレしか無い……!!
「ぬぅ……!!」
「へへっ……!!」
「……分かったッ!!これより二課本部は全力で響くんを支援するッ!!総員、腹ァ括れよッ!!」
『はいッ!!』
━━━━待ってて、未来!!今助けに行くから……!!
◆◆◆◆◆◆◆
鴨撃ちならあたしの得意分野だ。
……っつっても、あっという間にお片付けが完了するワケじゃねぇ。
……だから、この結果は分かっていた事だ。
だというのに。あがった息とは違う理由で、肩が竦む。
━━━━ノイズ犠牲者の残骸が、それでもしっかりと握りしめた家族の肖像を見るだけで。
「……分かってる。コレが、あたしが背負わなきゃならない十字架だって事は……」
━━━━だけど、あたたかな想い出はしっかとあたしの胸の中に根を張っていて。
「……ソロモンの杖。」
━━━━けど、だからこそ……あたしは、あたしの罪の十字架と向き合わなきゃならねぇ。
「幸せになって欲しいなんて言われたって、アレがのさばったまんまじゃあたしの気が済まねぇんだよ……!!」
◆◆◆◆◆◆◆
━━━━進路を塞ぐようにに現れた二課の潜水艦。その上に立つ彼女の姿を見て、私は船の上に降り立つ。
「……一緒に帰ろう、未来。」
━━━━立花響。わたしのお陽様。
……命を燃やして、八千八声、啼いて血を吐きながらも歌い続ける少女。
「帰れないよ。
━━━━だって、私にはやらなきゃならない事があるもの。
……だから、響は其処で待っていて。」
「やらなきゃいけない事……?」
そう、やらなきゃいけない事。
「このギアが放つ輝きはね、新しい世界を映しだすんだって。
どうしようもない月の落下を逃れる為の唯一にして絶対の手段。
其処には争いも諍いも無い。誰もが穏やかに……笑って居られる世界なんだって。」
「争いの、無い世界……」
━━━━国を捨て、新たな大地に根差す事で、人は救世の英雄の基に集い、遍く争いを捨てる。
そんな世界なら……
「私は響にも、お兄ちゃんにも戦って欲しくない。
━━━━だから、誰もが戦わなくて済む世界を創るの。」
「……ううん。未来、それは間違ってるよ。」
━━━━けれど、響はその真理を首を振って否定する。
「……ッ!?どうして?」
「……了子さん、言ってたんだ。愛する人に振りむいてもらう為に、想いを伝える為に……カ・ディンギルを建てたって。
だけど、私はそうじゃないって思うんだ。
━━━━だって、こんな風に血を流して、誰かの涙の上に立つ
……だから、
━━━━真っ直ぐな、ひたすら真っ直ぐな言葉は起こすのは、平行線の異論の擦過。
相対しているのに、
「……平行線、だね。」
「……うん。こういう時、私達ってお互い頑固だもんね。」
知っている。私は知っている。頑と握ったその想いを、立花響は曲げないのだと。
だけど、だからこそ私は願う。そんな立花響が愛おしいからこそ……
「━━━━響。私は
「━━━━未来。私は
「━━━━私は、響を戦わせたくない!!」
「……ありがとう。だけど、私……戦うよ。
━━━━
━━━━聴こえる。歌が、聴こえる。
響の命を燃やす歌が。
「そんな物、脱いじゃえ……!!」
この輝きが唯一にして絶対。侵蝕された響を救う魔を祓う聖なる光!!
だから、この輝きで響の未来を切り開く……ッ!!
「━━━━幾億の……歴史を越えて。
この胸の、問い掛けに。答えよ
「━━━━屈折……壊レタ愛。
━━━━慟哭……傷ンダ愛。
━━━━終焉……Lalala歌ヲ……Lalalala……歌ヲ……!!」
私のギアはイオノクラフト……電気式浮遊装置によって空中を飛ぶ事が出来る。
だから、空と海の狭間に飛翔するこのギアの優位は、響との経験の差を補って余りある物。
「━━━━焔より……熱き想いよッ!!
鋼鉄の、雷で、ブッ飛ばせッ!!
「━━━━混沌……失クシタ夢。
━━━━煉獄……笑顔ノ夢。
━━━━如何シテ……如何シテ……?何処ヲ間違エタノ……ッ?」
だというのに、それでも足場を奪われている筈の響は、姿勢制御による回転軌道で此方の黒鞭に追い縋ってくる……!!
仕切り直し、潜水艦の上に着地する私と響。
━━━━バトルパターンを修正。空戦パターンBから陸戦パターンFへ移行。
「━━━━何度でも……ッ!!立ち上がれる、さッ!?」
上段の飛び蹴りを受け止め、アームドギアにて対空迎撃。
そして……突くッ!!
◆◆◆◆◆◆◆
突き出された未来のアームドギアの勢いに、本部の壁に叩きつけられる。
「━━━━どう思われようと、関係無い……!!
キミ一人だけには、背負わせたくない……ッ!!」
━━━━そして、追撃の黒鞭と共に雪崩れ込むのは、未来の胸の歌。
……未来に、辛い想いをさせてしまったんだな。今さらながらに気付くのは、そんな当たり前の事。
だけど。だけれども。
「━━━━ちょっとだけ、来た道をッ!!見てごらん……ッ!!
こんなにも……輝いている。積み上げた、その中に……嘘は何も無いッ!!」
返す言葉もまた胸の歌。私が想う、輝きの全部ッ!!
『胸に抱えた時限爆弾は本物だッ!!作戦超過、その代償が確実な
だから、司令の釘刺しにも私は竦まない。死ぬのは怖い。お兄ちゃんに慰められた通り、私は死を恐れずに立つ事なんて出来やしない。
でも。
「━━━━死ねるかァァァァ!!」
━━━━この空に、歌が響く限りは。私は死ねないッ!!
━━━━輝きと輝き、意地と意地。
ぶつけ合う異なる戦端は一つと収束し、少女達は不和の呪いを乗り越える。
━━━━だが、悪辣なる作為の横槍はこの土壇場にも差し込まれ、辿り着くのは円環の終端。
━━━━そう、これこそが……暁光の中に完結した、かつての誰かの物語。