━━━━ゴトゴトと、轟々と、鳴り響く音に、意識が浮上する。
そこは、機械と機構で組み上げられた玉座だった。
大小の歯車で組み上げられた機構達。まるで、世界の総てを記す時計の中に放り込まれたような錯覚する巨大な空間、そこに玉座はあり……
「━━━━あぁ。遂に……」
━━━━此処まで、来てしまったのだな。
「━━━━観測データの総てが、空間……いえ、時空跳躍を示しています。
━━━━時空跳躍。そう、時空論を越えた先に座する、先史文明の遺産。
その証明を携えて闇の中より現れる
「……そうか。
「はァい、それはもう!!
マスターと彼……幾百年の時を越えて
今や、計画も佳境に入っていますよォ。」
━━━━悪巧み。そう悪巧みと言うべきモノだ、コレは。
「フッ……未来を知り、その情報を元手に先物取引とはな。
全くもって、蓋を開けてみれば単純な仕掛けだ……」
━━━━幾百年の過去。あの日、空から落ちて来た男。ソイツこそが天津共鳴。
……命を燃やし、届かぬ筈の手を伸ばし続ける事で妹分を救いながらも、自らの消滅を招いた大馬鹿者。
その大馬鹿の生きた証こそが、オレが混迷続く欧州で戦い抜けた理由の一つなのだ。
「━━━━そーいえばァ、ガリィちゃん的にちょーっと疑問な所があるんですよねェ?」
「なんだ?今さらになって計画が理解出来ないなどと抜かしだすなよ?」
「アヒャハハハ!!流石のガリィちゃんでもそんなお粗末なネタは披露しやしませんよォ。
……疑問ってのはもっと根本的な話です。
今のこの状況は確かにある程度は意図してマスターやアタシ達が組み上げたモノではありますけどォ……それでも、
「━━━━あぁ、そうだな。七彩騎士の乱入には流石に肝が冷えた。アイツの記憶ではスカイタワー攻防戦で
それに……
「━━━━この場合、
━━━━言葉足らずにも程があるガリィの物言いは、しかしコイツなりにオレが一番答えやすいように気を回したのだろう。
つまり、
「━━━━時空論は残念ながらオレとて専門外だが……そうだな、先に立つとすれば、やはり因である
「でもォ、マスターの主観としては果である筈の
そう言い募る人形の弁舌の鋭さは、一体全体どこの誰に似たのか……溜息が出そうになるのを抑え、オレなりに考えた答えを返す。
「そうだ。オレの主観による観測だけを考えれば因果が逆転して見える……だが、こと時空論において観測者の主観というのは論じてもあまり意味が無いモノでな。
━━━━なにせ、主観視点による観測で因果を立証しようにも、オレ達は未だ時空を掌握するに至っていないのだからな……故に、有力な仮説は建てられても、それを証明する事は不可能に近い。
ならば、考えるべきは
……ま、要するに並行世界仮説だがな。」
━━━━つまり、世界は帯のように続くのではなく、その帯が些細な違いから分岐し続ける樹木のような物であるという仮説。
「んー……だとしても色々辻褄が合わない気がしますけどォ……」
「……ま、そうだろうな。オレとしても、あまりにも未知が多い領域で……だからこそ腹立たしい。忌々しい。」
万象を読み解く錬金術師であるこのオレにすら見通せぬモノ。
並行なる世界に横たわる紗幕の闇。そのヴェールを剥ぐには、今のオレにとってもなお不確定要素があまりにも多すぎる。
そう独り言ちる中で、ふと思いついたのは荒唐無稽な思いつき。
「……或いは、
「……はい?」
人形が首を
「……そもそも、強制転移が
━━━━なにせ、
……で、あれば。
……なるほど。数多の並行世界の中で
━━━━時空の
ケプラーが惑星の運行軌道をそれまでの積み重ねから証明したように!!
ソシュールが印欧祖語が
パラケルススが四大元素説を改め、エーテルなりし
━━━━時空跳躍が行われる前の世界では有り得ざる縁が!!時空跳躍という埒外によって覆されたが為に縁となったという事か!!
は、ハハ!!ハハハハハハ!!」
「……えぇ……?有り得るんですかそんな事ォ……?」
自らの立つ世界を疑い、在るかも知れない仮説によって
そんなオレの思いつきに、オレから別けられた
「ハハハハハハ!!さてな!!先ほども言った通り、オレ達は未だ並行世界のカタチすら観測出来ていないのだ!!証明など出来ないだろうさ!!
━━━━かの角笛!!世界の終わりを告げるという
━━━━で、あれば。で、あればだ。
オレの基へと奴が転移してきたのが偶然では無く逆算された物であったのだとしたら……
「……
精々命を燃やして……それでもと手を伸ばし続けろ。そうして燃え尽きた灰こそが、
━━━━玉座の上から、世界を見つめる。
要となっていた男を喪った奴等の動きが果たしてどうなるのか。此処からの未知を前にすれば、オレとて今まで通りの傍観者気取りでは居られない。
だが上等だ。それでいい。
「━━━━オレの計画通りに踊る連中を見るだけならともかく。
決まり切った未来など、オレの方からも御免被るからな。」
独り言ちる呟きは誰にも届く事は無く。玉座の間の闇に溶けて、消えた。
◆◆◆◆◆◆◆
『ダンナ!!トモが……トモが……ッ!!』
「空間転移の反応……!?
司令!!共鳴くんはアメノハゴロモにて空間跳躍したようです!!」
司令室に響く奏の悲鳴のような通信を聴きながら、
「━━━━落ち着け!!奏!!どうやら共鳴くんは空間跳躍を成したらしいッ!!友里くんッ!!関係各所に通達!!
レーダー同期の協力要請急げッ!!空間跳躍先がどこか分からない以上、数を増やして行先を探るしかあるまいッ!!」
「りょ、了解!!」
━━━━ヒカリが、海と空とを貫いて。
響くんと未来くんが神獣鏡の輝きに飛び込んだ事までは本部でも観測出来た。
……だが、その間隙を突くように差し向けられた高速飛行ノイズの一撃が、二人をアシストして消耗した共鳴くんを貫いたのだ。
「共鳴……ううん、違う。私は……私がやらなければならない事を。
━━━━奏ちゃん、まずは響ちゃんと未来ちゃんを連れて本部に帰還して頂戴。
脳とギアをリンクさせられていた未来ちゃんも、体表にまで融合が進行した響ちゃんも、神獣鏡による解呪が成功したとしても危険な状態かも知れない。
すぐに収容しなければ傷口から入った細菌で致命的な後遺症が遺ってしまうかも知れない。
……だから、奏ちゃん。貴方に……お願いしたいの。」
『鳴弥さん……でもッ……!!
……クッ!!分かった。二人を連れて帰還する……』
━━━━そんな中でも、己の責務を全うせんと決意を握る鳴弥くんの姿に、俺は自らの無力を胸中にて悔いる。
母親に、子の心配をさせてやる
「翼とクリスくんにも連絡を入れろッ!!響くんと未来くんを収容し、共鳴くんを捜索するぞッ!!」
━━━━まだ、戦いは終わっていない。ウェル博士があの瞬間を狙って共鳴くんを攻撃した理由。それは紛れもなく、月の落下から世界を救う為に月遺跡へとアクセスする共鳴くんの計画を阻止する為だ。
「……ギアを喪った二人を回収しなければならない以上、此方から今すぐに攻め込む事は不可能……だが、攻め込まなければウェル博士の専横を許すだけ、ということか……」
回天の機を探りながら、モニターに映る海を睨みつける。
フロンティア。海底に眠る巨大遺跡。月の落下に抗する為にFISが求めているというその機構に関する情報は、スカイタワーで見つかったデータに記されていた物だ。
恐らくは、共鳴くんへと説明する為に該当端末を使い、消去する間もなく撤退したが故の僥倖。
「逃す手はない、か……」
此処こそが大一番だ。失敗する訳にはいくまい。
◆◆◆◆◆◆
「━━━━一体何がッ!?」
護衛艦の上で
━━━━巨大。広大。雄大。
数百mの全長を誇る護衛艦をも容易く凌駕する極大構造物が、深淵の中から浮上している……ッ!?
「フロンティア……!!遂に浮上したデスか……ッ!!」
「おいッ!!一体全体何がどうなってやがる!?」
「アレが……フィーネが米国と組んで目覚めさせようとしていた……人類最後の
浮上の速度そのものはそこまでの速度はないのだろう。未だその全容は見えない。
━━━━だが、その質量があまりにも大きすぎる。直上に掛かる水の檻を跳ねのけながら浮上するフロンティア。
異端技術の力によってか、津波の如き水のうねりこそ起きていないものの……こうして足場としている護衛艦すらも揺らす程の流れを今もなお巻き起こす。
そんな中で集ってくるのは、力を握る者たち。雪音と、そして……七彩騎士のアゲート・ガウラードまでもが、先ほど共鳴が庇っていた少女を連れて。
「んなッ!?んで七彩騎士まで此処に居るデスか!?や、やるってんなら……」
「落ち着けェい……俺が来たのはこの子を一時預ける為だ。アイツと……共鳴の坊主と約束したからな。
━━━━だが覚えておけ。一時、預けるだけだ。
「はい!?美舟ぇ……一体全体何がどうなってるんデスか?それに、おにーさんは……?」
「お兄ちゃんは……お兄ちゃんは……」
そう言って、震える少女が指さしたのは━━━━遺跡が浮上するその前に、ヒカリの柱が立った場所。
あぁ。見間違いだと思いたかった。だが、証言があったとなれば最早否定する事すら出来ないだろう……
「……嘘、だろ……?
━━━━おいッ!!嘘だって言えよッ!!ノイズが突っ込んで……光の中に消えて!!戻ってきてないなんて……嘘だって言えよ!!おいッ!!」
━━━━血を吐くように食い掛る雪音の叫びと、それを否定しない、少女の姿。
「……落ち着け、雪音。最後の一瞬、光の中に見えたのは恐らく空間転移の反応……それに、共鳴は
突っ込んで来たノイズを叩き落としたのだ。空間転移したとて、必ず戻って来る筈だ……」
「う……あ……でも……でも……!!」
━━━━世界の理不尽を前に
「……おにーさん……」
戦うどころでは無いのは、お互いにとってそうなのだろう。共鳴に懐いていたらしい目の前の少女達もまた、雪音と同じようにショックを受けているのは明白だった。
『……翼。大丈夫か?』
「……はい。防人たる天津共鳴の刃、この程度で折れはしないと……そう、信じていますから。」
━━━━あの日、カ・ディンギルの光条の中に雪音と共に共鳴が消えた時と同じだ。
同じだと、そう言い聞かせているのに、胸中を過るイヤな予感は、どうしても消える事はなくて……
◆◆◆◆◆◆
「━━━━すみませんが、ギアペンダントは預からせていただいてますので。」
水面を走り抜ける忍者に捕まってしまった
「……わかった。」
捕虜にも一人部屋、しかもベッド付き。
「……それにしても……捕虜なのに、牢屋じゃなくて端末もある部屋を与えていいのかな……?」
思わず出てしまった言葉は、部屋の奥にある椅子付きの大型端末を見てのもの。セキュリティとか、大丈夫なのだろうか……?
━━━━本当に、相変わらず優しいんだから……
「……?」
まただ。自分が自分で無いような感覚。
「……美舟は無事かな……」
━━━━そうね。私としても
「……?
え……?」
誰に聴かせるワケでも無く、ポツリと放ったその言葉。
それを受け止めてくれたのは、自分の中の知らない
━━━━ちょっと身体、借りるわね?
そんな風に思考を過らせ、私の身体は何故か部屋の奥にある端末の前へと歩み出す。
「……何をするの?」
━━━━ちょっ~と待ってちょうだいね……やっぱり。前の二課本部から移設したとは言っても、ギア本体と通話する為の通信プロトコルは変わっていない……コレならギア経由で通信の傍受くらいは可能ね。
……どうも、私の中の誰かは二課の内情にも詳しいらしく……
手枷を嵌められた状態である事も意に介さず、慣れた手つきで端末を操作していく。
━━━━さてさて、今の状況はどうなってるのかしら……?
◆◆◆◆◆◆
「━━━━映像、回します!!」
━━━━二課仮設本部、司令室内部にて。
響くん達を回収し、一旦浮上し続けるフロンティアからの距離を取った
「スカイタワーに残っていた情報と、生き残った空母マイケル・ウィルソンとその護衛艦とのレーダー・ソナーの同期によってフロンティアの詳細なデータが造り上げられました。
━━━━海面に出ているのは、全体から見てごく一部のみ……フロンティアと呼称するだけの事はありますね。」
━━━━巨大。広大。雄大。
全長にして30000m、全幅にして14000m、全高にして5000m。
……現代の人類が造り上げる事すら叶わぬ
それこそが、FISが求めるフロンティアの正体だった。
「━━━━ッ!!新たな米国所属艦艇の接近を検知!!空母ジェームズ・ジョンソンを中心とした船団です!!」
「第二陣か……第一陣の救出……だけでは無いのだろうな。」
『ずる……まさか
事態の説明の為、通信を繋いでいた斯波田事務次官の言葉に被せるように、俺は相互の推測を掛け合わせる。
「━━━━落下する月を避ける為の、
『はぁ……アンクル・サムも必死になって隠す筈だぜこりゃあ……』
「……えぇ。」
━━━━確かに、先史文明が遺した巨大遺跡ならば、月の落下という極大災害から逃れる事は出来るだろう。
だが、目の前にある広大な新天地は、しかし
内部にどれほどのスペースがあるかは分からないが……宇宙へと飛び出し、別の惑星を探すとなれば数万人が暮らすのが収容限界だろう。
━━━━つまり、それは。
「━━━━七十億を切り捨て、たった数万のヒトだけが人類種となる大量絶滅に他ならない……ッ!!」
『ノアの箱舟でも気取ろうってんだろうが、そうは問屋が卸さねぇってもんだ。』
「我々も急行し、対処します。
……ですが……」
言い淀むのは、欠けたファクターである彼についての事。
『……共鳴の坊主は相変わらず行方知れずかい?』
「はい……彼の、そして彼の持つアメノハゴロモが無ければ月軌道の修正は現状不可能です。
米国側の主張を認めるワケではありませんが……」
認めるワケでは無い。認められる物では無い。
だが、それでも月の落下という甚大特異災害を前に取れる手段は、あまりにも少ない。
『━━━━選ばなきゃならん時は、来るかも知れんって事かい。
だがな。奇跡が一生懸命の報酬だっつーんなら、それは誰もに等しく与えられるべきモンだ。
それを……一部の高官やら、金持ちやらが先んじて逃げ出す?
━━━━そいつ等が持ってるモンを保証してんのは現行の法秩序だってのにか?』
「……はい。」
『……だから、頼むぜ。この星の
「━━━━はいッ!!」
気合いを入れ直し、前を見据える。
━━━━そうだ。俺の胸には……
《━━━━この結末は、私の選択の結果よ。後悔なんて無いし、これからも一切しないわ。
……けれど、そうね。もしも……もしも、この世界が明日に繋がって行くのなら……千年後の今日に、また逢いましょう?》
「━━━━千年後の今日まで、明日を繋げて未来と変えねばならないのだからな。」
━━━━交わした約束が、今もまだ宿っているのだから。
◆◆◆◆◆◆
━━━━二課本部のメディカルルーム、そのベッドの上で
「━━━━未来ッ!!」
そんな折に、飛び込んで、飛びついて来るのは私の親友。立花響。
「あっ……」
━━━━そのあたたかさに、緊張していた身体のこわばりが解けていくのが分かる。
「小日向の容体は?」
「Linkerの洗浄も完了してるし……ギアの強制装着の後遺症も見られないわ。
細かい事は本土に戻ってから改めての検査になるけれど……えぇ、未来ちゃんは間違いなく元気よ。」
「良かった……」
「あぁ……ホントに……良かった……」
その後ろから入って来た鳴弥さんと翼さんの会話に、安堵の息を零すのは目の前の響と……
「なぁに?クリスも心配してくれたの?ふふっ、ありがとう。」
「当たり前だッ!!お前は、あたしの……あぁ、いや……なんでもねぇ……」
━━━━入室してきてからずっと私の手を握って離さない、クリスの二人。
そうして皆と再会出来た喜びを改めて噛み締めて……そこで、やっぱり気づいてしまう。
「……でも、私は響を、皆を……」
響の顔、ガーゼだらけで。
クリスだってそうだ。見えない所かも知れないけど、私がギアで何度も攻撃して……
思い出すと、涙が溢れて止まらない。
護りたいと願った筈の想いは、いつの間にか総てを焼き尽くすヒカリになってしまって。
「━━━━へいき、へっちゃらだよ。それに……私がこうして帰ってこれたのは未来のおかげ。」
「……あ。」
《━━━━そう。キミこそが神獣鏡のシンフォギアの適合者ッ!!
この
思い出すのは、魔法使いの誘惑。
「響の……融合症例……」
「えぇ。響ちゃんの体内のガングニールは、神獣鏡のギアと共に一掃された……響ちゃんの命は、もう侵されないで済むの。」
「未来が、私を救ってくれたんだよ?」
「━━━━小日向の強い想いが、死の淵に落ち込む立花を引きずり上げたのだ。」
「このバカだけじゃなくお前自身の命だって、救われたのはお前の強い想いがギアのポテンシャルを引きずり出したからだ。
……そんなに、悲観するモンでもねぇよ。」
「えへへ……だからありがとう、未来。
私の陽だまりは、やっぱりあったかいや……」
「私が……そっか……私、響を護れたんだ……」
「うん。えへへ……」
━━━━でも、そのせいで……私は響から戦う力を、護る為の力を奪ってしまった。
響のガングニールは、繋ぐ為の掌だったのに……
「でも、FIS側も求めていたフロンティアの浮上を成し遂げてしまった……最後の戦いはまだ終わっていないという事ね……」
「だが安心してくれ、小日向。掛かる危難は
「あぁ、だからお前は此処でゆっくり休んで……」
━━━━その言葉に、感じる違和感。翼さんの言い分では、まるで……
「━━━━お兄ちゃんは?」
━━━━そうだ。お兄ちゃんが駆けつけない筈が無い。そういう所で過保護なのは良く知ってる。なのに……此処に、お兄ちゃんは居ない。
「……ッ!!
……共鳴、は……」
「……共鳴は、未来ちゃん達のギアが解かれた瞬間、隙を突いたドクター・ウェルの攻撃で神獣鏡の輝きに呑まれて、咄嗟に空間転移をしたの。
━━━━今は、まだ行方不明のまま。」
━━━━鳴弥さんから告げられた言葉は、この世の残酷そのもののように、私の胸を貫いた。
◆◆◆◆◆◆
━━━━はいけい、みなさまへ えっと、なんといいますか……
冷たくなった手に、つなぐ場所をどーもデス☆^(○≧∀≦)○
ねがわくばこの世界ぜんぶ
ハッピッたらいつか……
ぽたり、ぽたりと。手紙を書く
「あ、あれ……?おかしいデスね……こんな……筈じゃ……」
ホントはもっと、明るく楽しく元気よく、アタシらしさを伝える為の手紙な筈なのデス。
なのに、どうして……
「━━━━どうして、こんなに辛くて苦しいのデスか……?」
くしゃり、と掴んだ手紙は歪んでしまって……もう、真っ直ぐには戻らない。
━━━━あぁ、まるで今のアタシの心みたいデス……なんて、柄にもなくポエットな思考に陥ってしまう。
「おにーさん……アタシ……アタシの答えは……」
《……それでも、犠牲は避けられるのなら避けるべきだと俺は思ってる。だって……喪われてしまったモノは、決して戻らないんだから。》
あの日、おにーさんにいつか伝えたいと思った、アタシの答え。
だけど、それをおにーさんに伝える事は、もう絶対に出来ないのデス。
けれど、けれども……心に決めた答えを貫く事は、まだ出来る事なのデス。
「だから……アタシ、戦うデス。
━━━━フィーネから託された未来を護る為に……!!」
ドクターの野郎の計画に乗るのはすっごくイヤな事だけど……もう、ドクターしか未来を護れる人は居ない。
「━━━━だから、天国で見守っていて欲しいのデス。アタシの、一世一代の頑張り物語を……」
━━━━涙を拭って、手紙の続きを書こう。アタシが居なくなったとしても、いつかきっと、その先に立つ花があると信じて……
◆◆◆◆◆◆
━━━━其処に、空は無かった。
翡翠の如き深緑が染め上げる高き玉座。それを内包するシェルターの如き構造物。
それだけが、この
「……来たか。少年よ。」
━━━━その玉座に深く腰掛ける老人が居た。
鍔の広い帽子を深々と被るが故に、その顔立ちは
煌々と灯るその
━━━━そして、その老人が声を掛けたのは、玉座の目の前に現れた少年。
唐突に、一瞬にして、魔法のように現れたその姿。そして、
「━━━━見ておったよ。キミの活躍は。流石は……
かつて……我が元を一度は去りしシグルドリーヴァ……ブリュンヒルデのようにして。
彼の神の埋め込みし宿業から逃れ、地へと逃げ延びた天女、《耀い姫》のその裔よ。」
━━━━老人は玉座から立つ事も無く、指を振るいて空間へと
「ぐっ……あぁ……!!」
だが、それだけで事は成る。少年の喪われた片腕から流れ出る血は何らかの力によって、腕の中へと留まり続ける。
「━━━━そして、知って居るとも。視って居るとも。
キミというファクターで、彼の世界の道行きが変わった事も。
キミの世界において起きているラグナロクが、並列なる世界の中でも一等特別な物である事も。
本来であれば、キミが強制と跳ぶ筈だったのは
……そして、時空から切り離され、世界へと干渉する事の出来ないこの
━━━━故に、私はこう言おう。」
老人の言葉は神託の如く玉座へと響き渡り、そして再び、静寂が戻った。
━━━━浮上せよ、浮上せよ、浮上せよ。
遥かなる歴史の彼方より。静かなる深淵の水底より。
加速する男の欲望は月をも掴み、世界は滅亡へのカウントダウンを走り始める。
希望は、最早存在しないのか?世界は、最早滅びゆくしかないのか?
━━━━否。否。否。
否定を押し込む欲望に、さらなる否やを叩きつける為、動き出す者達が居る。
分かり合う気の無い邪悪を食い止め、分かり合えるかも知れない誰かと手を繋ぐ為に。
━━━━だからこそ、輝きは此処に。胸に。この空に。
風は鳴り、
そして、独りきりの歌を止める為、逆しまにされし方舟を救う為、調べは強く響き渡る。