━━━━弾丸と、白刃が
「━━━━オラオラオラオラァッ!!」
「━━━━ハーッ!!」
「くっ……ヌヌヌ……ッ!!」
「……ッ!!」
━━━━それが、不意に途切れる。あたしの手の中に握った双銃の弾丸が切れる事で。
「弾切れッ!!貰ったァァァァ!!」
「そうは……させんッ!!」
その瞬間を狙って動かされる、巨大ノイズ複数……ッ!!
━━━━けれど、問題はない。
言葉を交わすまでも無く、
巨大化を果たしたその手の剣で……ッ!!
……この拳銃形態は、そもそもがあたしのアームドギアを近接戦闘に寄せる為の取り回し重視。確かに装弾数ではガトリングに劣るが、リロードに掛かる時間も一瞬。
使い果たした弾倉をパージし、スカートアーマーから引き出したサブアームで蛇腹状に積み重なった新たな弾倉を銃の塚尻に叩き込む。
「お返しだァァァァッ!!」
その流れのまま、更にスカートアーマーの中から引きずり出すのは、ミサイルの詰め合わせ。
発射、そして、爆散。
あたしを狙い、そしてあの人に迎撃された巨大ノイズ達に真っ赤な爆炎の華を咲かせて砕き散らす。
「ぐぬぬぬぬ……ッ!!」
その光景に、地団駄を踏む男が一人。
「━━━━ハッ!!いい加減諦めたらどうだ!!
砕かれちまったんだろう?ご自慢の別動隊とやらもッ!!」
「誰がァッ!?ふざけるなよシンフォギアッ!!
無尽の軍団はまだまだ尽きちゃ……居ねぇんですよッ!!」
━━━━瞬間、あたし達の視界を埋め尽くす程に広がる翠の輝き。
ドクターと、そして彼女の姿すら見えなくなる程に大量に召喚される、数多のノイズ達……
「……いよいや、ソロモンの杖の最大稼働ってワケか。」
「あぁ……だが、負けるワケにはいかない……ッ!!」
気炎万丈、ソロモンの杖の最大稼働を前にしてもあたし達の姿勢に揺らぎは無い。
無尽蔵にノイズが召喚されるというのなら、叩くべきはその頭。
幸いにも、最後の一瞬に見えたドクターは
「場所は覚えてる……いつでもイケるぜ、コッチは。」
「あい分かった……では……往くぞッ!!雪音ッ!!」
━━━━故に、大攻勢に出来る一瞬の隙を、あたし達は見逃さない。
刀を巨大な剣と変えた彼女の峰に足を掛け……
「━━━━ヤェェェェッ!!」
━━━━空へと、駆け上がる。
◆◆◆◆◆◆◆
━━━━あぁ、
ドクターにこの命を人質と取られて……フロンティアを起動させる事も結局出来なかったボクの無力。
そして、今も尚、ボクは誰かの足を引きずったまま……
目の前に広がるノイズの群れに、紅と蒼の二人が呑まれて行くのを、ボクはウェル博士に腕を引かれながらも茫然と見つめるしかない。
━━━━そう、思って居たのに。
「━━━━ヤェェェェッ!!」
━━━━蒼の少女の裂帛の一声と共に、空へと跳ね上がるのは紅の色。
その手に長大な銃を構えた、シンフォギアの少女の姿だった。
「━━━━護る、ためにィィィィッ!!」
「なん……だと……ッ!?
空中狙撃ッ!?まさか、見越していたのかッ!?この展開をッ!?」
回転、反転、天地を逆にした一瞬の停滞。その瞬間に、銃口は突然の逆撃に狼狽えるドクターへと向かい……
━━━━放たれる弾丸、一直線に。狼狽えたままのドクターへと向かい……
「━━━━ヘッ!!なーんちゃってェ~!!!!」
━━━━ドクターの基へ届く前に弾かれる。
それを成したのは、巨大な黄金のノイズ……あの時、空母甲板に召喚されたのと同じ型……ッ!!
「ッ!!抜きやがったか、砲撃型ッ!!」
「一発逆転狙いなんて読めてるんですよォッ!!
ですが残ねェンッ!!バアルのコマンドはとっくのとうに入力済みッ!!」
「だったらァァァァッ!!」
「援護するぞッ!!雪音ッ!!」
だが、彼女達はそれに怯む事は無く。
降り注ぐ二種の力が彼女達を囲むノイズ達を蹴散らしていく。
「ヘヘェ……無駄、無駄、無駄ァ……!!」
━━━━その姿を見て、思う。
「お兄ちゃんなら……どうしていたのかな……?」
きっと、彼女達と同じように戦っていただろう。
ボクのように、ただ悲しみに涙を零すだけでは無く……
「なにか……出来る事がある筈……」
━━━━ふと、へたりこんだボクの左手が大地に触れる。
「━━━━左手……ネフィラの……?」
━━━━相も変わらずテンションを上げ続けるドクターの姿を見る。
正しくは、その左腕。
聖遺物を取り込み、自らと一体化させるネフィリムの特性を引き出し、聖遺物と同調する事で万能ハブへと変えた物……
「━━━━出来る、かもしれない……」
この左腕は、そのネフィリムから抽出、分割された《個》であるネフィラが憑り付いた物。
ならば、同じようにネフィラの暴食の特性を引き出せれば……!!
━━━━そうしようと、意識を左腕に集中させて。
「━━━━ひ、あああああああああああああ!?」
━━━━瞬間、意識、持っていかれそうになって。気づけば私は、叫びをあげながら地をのたうち回っていた。
生体型聖遺物、その意思。
ダメだ、コレは。壊れてしまう。ボクの今までの人生が、私の遺されたたった一つの想い出が。
「━━━━あァん?
なぁにやってんですかァ?今更ァ……」
「ひ、あ……」
左腕が蠢く。ボクを、私を喰らい尽くそうと。
「……ははぁん?なるほどなるほど……ボクのネフィリムの腕のように?そのネフィラの腕で聖遺物複合構造体でもあるこの舟の制御を奪ってやろうと?
━━━━浅はかですねぇ!!このボクがッ!!そんな初歩的なミスを犯すとでもォ?」
その異変を、遠巻きに見るだけで気づいたのだろうドクターは、ボクを嘲笑う。
「━━━━ボクのこの腕に使われたネフィリムはあくまでもただの一部。本質的に言えば、今も尚このフロンティアの動力部にみっともなくへばりついてるネフィリムの本体と同じ物です。
ですが、アナタのそのネフィラは、
━━━━言ってる事、よく分からない。痛みにのたうつボクの頭では理解が及ばない。
「……ですが、このまま放置しておいても面倒ですねぇ……この舟はもうボクの物ですしィ?
勝手をされちゃあ困りますし、此処等で一発、真っ赤な華でも咲かせちゃいましょうかァァァァ!!」
けれど、涙に滲む視界でもよく見えるのは、ドクターが懐から何かを取り出す姿。
……あぁ、起爆スイッチか。この首輪の。
『━━━━やめろォォォォッ!!』
━━━━遠くから、爆裂と一閃の音が聴こえる。一直線に、ドクターの基へと向かおうとする音が。
……羨ましいなぁ、なんて。暢気にも思ってしまう。死の恐怖が、喪失の恐怖がひたひたと迫る中で。
「……ごめんね、調……ボク、何も教えて上げられなかった……」
━━━━呟きと同時に、ドクターが、その指を……
◆◆◆◆◆◆
━━━━瞬間、その場に起こったのは複数の事象。
最も大きな一つは、ドクター・ウェルキンゲトリクスがギアスの起爆スイッチを押した事。
その一つに抗わんとしたのは、紅と蒼の一対……雪音クリスと風鳴翼。二人の攻撃で周囲のノイズが一掃された。
━━━━そして、その中に紛れた最後の一つ。
それは、地に撃ちつけ、大地外殻を穿ったモノ。
━━━━一発の弾丸が、混迷の戦場の中へと撃ち込まれ、地面を崩落させたのだ。
「ッ!?のわァァァァ!?」
「雪音ッ!?」
「なんですとォォォォ!?」
「う……」
四者四様に、落ちていく者達。
━━━━その、遥か遠く。
━━━━小高い丘の上に、男が一人陣取っていた。
《
━━━━銃?はたして、それは銃と呼んでいい物なのか?
抱え込むという表現も正しくはないだろう。
大質量の弾頭を、増設された
大規模な配備では無く、個人である七彩騎士がたった数発撃ち放つ為だけに造られた、異形の槍。
━━━━そして、そのマッハ13.3にも及ぶ超絶初速加速で彼が撃ち放ったのは、これもまた特殊な弾頭である。
特殊外装に付けられたブリューナクの名も、この弾丸を撃ち放つ事から付けられたのだから。
高速射出された弾頭の特殊金属が摩擦、着弾の衝撃で弾ける事で
情報処理、通信、遠隔制御。その他多数の『個では処理しきれぬ情報量』を捌く為のネットワーク通信。それを引き裂き、穿つ為の弾頭。
邪眼のバロールを穿ったとされる長腕のルーの投石器と、その弾丸。
それに
━━━━その弾丸を以て、彼は
「━━━━さぁ、後は頼んだぜ、シンフォギア。コレでキッチリ十二発。
同時多発の暴発で使わず終わった最後の一発、ソイツをブッ放した今じゃあ俺の手札はほぼカラッケツだからな……」
『とか言って、様子を見に行くつもり満々なクセに~』
「うっせ!!」
特殊外装をその場に放棄して、男は走り出す。
自らが撃ち放った弾丸のその先へ━━━━
◆◆◆◆◆◆
「━━━━誇りッ!!とッ!!契れーーーーーッ!!」
━━━━大きく手を広げて、世界へと
……だが、ヒカリは、齎されない。
「ハァ……ハァ……!!」
世界各地への同時中継。歌に宿る力を求めた一手は、しかし……
『……月の遺跡は依然、沈黙……』
届かない。届かない。伸ばした腕が、届かない……
「私の歌は……誰の命も救えないの……?セレナ……貴女が生きる、世界をも……?」
━━━━涙が零れる。私は、いつだって手遅れになってからしか……
「う……あぁ……!!」
◆◆◆◆◆◆
「━━━━あの人、ビッキー達と同じだね。」
創世の言葉に、
「うん……」
「誰かを救う為に、歌を歌う人……」
「でも、この状況じゃ~……」
━━━━あまあま先輩の言葉と共に見渡せば、眼に入るのは、画面を見上げる人達の茫然とした顔の群れ。
スマホで画面を撮影している人や、もう興味が無いとばかりに歩き出してしまう人。
「歌には力が有るって、分かってるのに……」
「実際に見た事があるワケじゃないんだから、信じがたいのも分かるけどさ……」
「コレでは、あの方が可哀想ですわ……」
「……待ちましょう。こんな状況を、あの人達が放っておくワケが無いでしょう~?
最後は皆で応援して~、サヨナラ満塁逆転ホームラン、ってね~?」
「そう……ですね!!応援上映はライト振ってナンボ!!まだまだ諦めるワケにはいかないッ!!よね!!」
カラ元気かも知れない。けれど……アタシだって、信じているのだ。彼女達の歌の力を……
◆◆◆◆◆◆
「ん……」
その腕の中には、咄嗟に手を伸ばした少女の姿。
その胸が上下に揺れる姿を見て、あたしはホッと息を吐く。
この高さから落ちれば、シンフォギア装者でも無ければよほどの幸運が無い限り無事では済まないだろう……
「う……なんなんですか全く……シンフォギア装者はボクが統制する未来には不要だからと叩き潰しに来ただけなのに……
足下を掬われるなんざ、このボクには似合わないって言うのに……」
━━━━だが、どうやらアイツはよほどの幸運を持っているらしい……
「よう、ドクター。誰が不要だって?」
「ひっ!?う、動くな!!起爆するぞ!!ソイツの首輪を!!」
人の顔を見て即座に狼狽える失礼はともかく、即座にスイッチを構える対応の速さはいっそ清々しい程の物。
「さっきテメェで爆破しようとしやがっただろうが。
今さらだ……それにな、」
「この距離ならシンフォギアのバリアフィールドと言えど……あ?」
カチッ、カチッ、とスイッチを押し込むドクター。だが、手の内のこの娘の首輪は爆発なんてしやしない。
「━━━━壊れてんだよ。さっきの一瞬、崩れる中であの人が首輪をぶっ壊してくれた。
だから、あたしはこの娘を助ける為に全力で飛び込めたんだ。」
最早残骸でしか無い首輪を引き千切り、ドクターへと一歩近づく。
「んな……ッ!?神業ァッ!?」
━━━━けれど、奴がその左手に握るのはソロモンの杖。四方八方に召喚しやがるのは、ノイズの姿。
「今さらノイズッ……!?」
「アンチリンカーは……忘れた頃にやってくる……!!うひ、へへへへへ……!!」
目覚めてすぐにアンチリンカーを撒き散らしてやがったのか……!!周到なッ!!
けど、それならあたしが取るべき手段は決まっている。
腕の中の少女を足元に横たえさせ、あたしは叫ぶ。
「━━━━なら、纏めて吹っ飛びやがれッ!!
アーマーパージだッ!!!!」
━━━━フォニックゲインで形成された装甲を、アームドギアを火砲に変える要領で弾丸と化し、
「ひぃッ!?」
全てのノイズを潰そうとは思わない。それよりも、狙うべきは……
「……」
「━━━━ちぇいさーッ!!」
「ぬわぁっ!?」
━━━━奴がその手に担うソロモンの杖ッ!!
だが、無理矢理に引っぺがしたせいで本来ならフォニックゲインによって保存される筈の服が戻っていないッ!!ペンダントもだッ!!
それでも!!奴に……ドクターに杖を担わせたままなんかじゃ居られないッ……!!
「━━━━杖をッ!!」
「ひッ!?ひィィィィ!!
なんて馬鹿をするんだ、お前ッ!?この状況で杖を手放させたら、ノイズは基幹プログラムに応じて近くの生命体を……ボク達を襲うんだぞォォォォ!?」
そんな事は分かっている。ギアは戻って来ていないし、杖だってこの手には無い。
でも……問題はない。だって、あたしの背には……
「━━━━後は頼んだ。先輩ッ!!」
━━━━瞬間、空から降り注ぐのは蒼の剣。あたし達の周囲のノイズを殲滅して……
「なぁッ!?そのギアはッ!?バカな……!!アンチリンカーの負荷を抑える為、敢えてフォニックゲインを高めず出力の低いギアを纏う、だとッ!?
出来るのかッ!?そんな事がぁッ!?」
その中心に立つのは、三か月ほど前まであの人が纏っていた蒼のギア。脚部のバーニアが、まだ展開刃だった頃のその姿。
「━━━━出来んだよ。そういう先輩だ。」
……きっと、アンチリンカーの性質を聴いた時から修行していたのだろう。
あたし達に心配を掛けなくていい様にと。
「━━━━
麗しきは、千の花……宵に煌めいた残月……哀しみよ浄土に還り、な……さいッ!!」
だから、あたしはその邪魔にならないよう、横たえた少女の身を引き寄せて……
「う……あぁ……ッ!!が……ああああッ!!」
その、異変に気付いた。
左腕を侵蝕するネフィリムのような部位が、徐々にその領域を広げているのだ。
「まさか……!!アンチリンカーの効果が効いてるってのか!?
マズい……早くアンチリンカーが撒かれてない場所に連れて行かねぇと……!!」
「付き合ってられるか……!!ボクはブリッジに戻るぞ!!ふざけやがって!!」
「あ、コラ逃げるな!!Linker置いてけ!!」
「━━━━嗚呼、絆に総てを賭した閃光の……
ドクターが逃げるが、それでもあたし達を囲うノイズ達は消えていない。
それ故、先輩も此方を優先して処理に掛からざるを得ない……最後まであのトンチキは余計な事を……ッ!!
━━━━しかし、コレで一旦ノイズが打ち止めとなったのも事実。少女を寝かせて、あたしは弾き飛ばしたギアの欠片を呼び戻す……
「回収完了だな……よし、このまま彼女を連れて上がるぞ、雪音!!」
「あぁ!!しかし、この娘をアンチリンカーの影響を受けない所まで連れて行って……その後はどうすればいいんだ!?」
━━━━どうすればいいのだろうか?
あたし達は決して専門家では無い。だから、苦しむこの娘に何をしてやればいいのかが分からない……
「━━━━おう、こんなこともあろうかとな。用意してあるぜィ?」
━━━━そんな時だった。崩落した上の方からソイツが飛び降りて来たのは……
◆◆◆◆◆◆
「……それで?解決手段というのはなんなの?」
目の前の少女……調ちゃんに間借りしたフィーネさん━━━━ややこしいなぁ……が事情説明を求めてくる。
その眼は真剣で、誤魔化しや精神論で対処しようとしたら伐り刻むと言わんばかり。
「えーっと、ですね。色々有ったんで、信じてもらえるかも怪しいんですが……俺、あの極光の中で跳ばされた先で魔法を授かってきまして……」
だから、俺は誤魔化すこと無く正直に話す。
「……はぁ?」
「えぇっ!?おにーさんは魔法使いなんデスか!?」
うん、まぁ信じてもらえないよなー……と、半ば予想通りの反応に悲しくはなるが、落ち込みはしない。
というか、切歌ちゃんはもうちょっと他人を信用し過ぎではないだろうか?それともそれだけ俺が信頼されているという事なのか……?
「……切ちゃん、ちょっと静かにしててね。
━━━━それで?誰から、どういう術式を授かって来たって言うのよ?」
「アッハイデス。」
「はい……世界から弾き出された俺は、世界の外に座す玉座、フリズスキャルヴにてどこかの世界でオーディンの役目を果たす事無く逃げ出した方と出逢いました。
……その際に、ルーンの秘奥の一端を授けてもらったんです。」
「……ふーん……オーディン、フリズスキャルヴ……それにルーン魔術、ねぇ……ま、いいわ。信じましょう。」
「……いいんですか?」
自分で言うのもなんだが……世界の外まで行って来て、神話に名を遺す神様から力を授かって来ただなんて、あまりに荒唐無稽が過ぎると思う。
「あのねぇ……貴方がそこで態々嘘を吐くような性格してたら私だってこんな苦労してないわよ?
貴方が《有った》って言うんなら、信じがたいけど……何かしらの事実の欠片があるって事よ。
……それに、北欧神話の神々に関してはまぁ可能性として有り得るのだしね。」
「……可能性として有り得る……?」
「━━━━だって、私の知る限り
数千年もの間、人の歩みを見続けて来たのによ?なら、予言された神々の黄昏によって死の運命を迎えるとされる北欧神話の神が……正確には、神を自称出来る程に先史技術に精通した者が存在しても不思議では無いわ。」
━━━━その言葉の重みは、やはり数千年を生きる巫女の物で。
「……はい。ベルヴェルクを名乗った彼も、同じ事を言っていました。
ラグナロクはこれから来たる、と。」
「ふむ……そっちの詳細も研究者としては気になるけど……流石に今回のこの
「そうですね……シンフォギア装者にして今代のフィーネ。しかも身柄的には日本国内で誘拐された元アメリカ所属の違法研究の被験者……まで乗ってしまうと、些か……」
「年齢的にも厳しいわ。せめて、前の私みたいに20其処等だったら対話次第でアリだったのだけれどもねぇ……」
━━━━その言い草には正直思う所が色々とあるが、フィーネの知識が後々必要になるかも知れない事を考えるとあまり強くは言えない。
「……まぁ、調ちゃんに宿った後の事を考えるに信用しても問題無いでしょう。少なくとも今は言い分通りの動きをしているようですし……」
「えぇ。精々言葉半分くらいで信じて頂戴な。
……それで?何千年も生きて悪者をやって来た私をどうするつもり?今さら、正義のミカタでも気取れって言う気はないでしょう?」
「……そこを突かれるとちょっと困るんですよね……だって、俺は手の届く総てを救いたいと思って動いてますから。
その中に貴方が……フィーネが居て、しかも俺もお世話になってる司令の想い人だって言うんだからそりゃ猶更放ってはおけないと思っただけなので……」
「…………ホンットに……貴方も!!あの子も!!あの人も!!皆して馬鹿ばっかりなんじゃないの!?もうちょっと信頼する相手を選んだらどうなの!?」
「選んでますよ?選んだ上で、フィーネさんを信じたいって思うから、手を伸ばしてるんです。」
「……ッ!!」
俺の返答の何かに納得いかないようで、フィーネさんは地団駄を踏んで悔しがる。
「おぉ……調がなんだか前に見せてもらった古い映画みたいな地団駄アクションを……珍しい物が見られたデス……」
「━━━━切歌ちゃん、その言い方は多分フィーネさんが傷つくからやめてあげよう。」
「もう傷ついてるわよッ!!
……はい!!本題に入る!!どうやってこの
言っておくけど、私はまだそんな機能つけてないわよ?
あくまでも私は、《遺伝情報に刻まれた私との相似》からアウフヴァッヘン波形を調律機として元の自分の知識をアカシックレコードからダウンロードしているだけなのだから。
私自身がイガリマのような情報構造そのものへの攻撃を受けない限り、この
フィーネが言うのはつまり、パスワードが似ているのでクラウドサーバーから情報をちょろまかしやすいとか、そういった事なのだろう。と推理する。
完璧に理解出来ているとは言えないが……この形式なら、俺の手札でもどうにか出来る筈だ。
「はい。なので、それを逆手に取ります。」
「逆手に……?」
「ボルヴェルクから譲り受けたルーンを使って、調ちゃんの中から《フィーネの記憶》と《フィーネの人格データ》のみを再生不可能にします。
こうすれば、調ちゃんはフィーネとしての能力を使う事は出来ず……」
フィーネの側は主観的には消滅した形となる。
「ん。なるほどね。その形式なら……恐らくだけど、私という主観データは別のどこかでアウフヴァッヘン波形を受けてダウンロードが為されるまで眠りに着いている筈よ。
━━━━と言っても、アウフヴァッヘン波形をシンフォギア装者以外で浴びる事なんて極々稀なワケだから、恐らく一生の別れになるでしょうけどね。」
━━━━その言葉に、一抹の寂しさを感じてしまう。
確かに、彼女の存在にはどこまでも振り回されてはいたが……だからとて、一生の別れとあって悲しくなる程度には、触れ合いがあったのだから……
「━━━━そんな顔しないの。私はあくまでも過去の亡霊。何時かに遺った残響なんだから。
今の世界は、今を生きる貴方達が……貴方達自身の力でなんとかなさい。
いつか未来に人は繋がれると、明日を望んで歩んでいけると……そんな事は、亡霊が語るものでは無いのだから……ね?」
「…………はい。」
万感の想いを込めて、俺は返事を返す。
何時かの空に願いを込めた……けれど、今もまだ届く事の無い残響の少女に。
「調ちゃん、じゃあ……この方法を行ってもいいかな?キミに危険が及ばないように細心の注意を払うけれど……」
「……いいよ。貴方の事、フィーネも、切ちゃんも、あの子も、信じているから。
だから、私は……手を伸ばす貴方の事を、信じてみたい。」
「……あぁ。」
━━━━その信頼に応える為に、手を伸ばす。この右手。少女の頭に。
刻むのは、《忘却》のルーン。俺に刻まれた時と同じように、しかして少しずつ、確実に範囲を選定する。
もしもこの術式が失敗すれば、調ちゃんを救う事は絶対に出来なくなるのだから。
「━━━━だからこそ、俺は、必ずやり遂げる。」
━━━━決意と覚悟を握り締め、俺は……
━━━━
此処に七つの音階は揃い踏み、集う筈の無かった、あり得ざる筈の理論が結実する、と魔女は笑う。
……だが、人の想像の、その遥か上を行く者は往々にして存在する。
例えば、英雄とならんとする男だとか……
例えば、それを食い止める為に飛び出す男だとか……