━━━━七つの惑星、七つの音階。
それは、世界を構成する調和の理論。
かつて、真の叡智を求めた数多の錬金術師達が、世界の根幹の《一》を探し求める中で辿り着いたモノ。
━━━━それは、
「━━━━そして、フィーネですら手に入れる事の
「イヤですねェマスタァ?そんなの当然に決まってるじゃないですかァ。
幾らフィーネがシンフォギアを造り上げたからってェ、
それこそ
━━━━零れた声に応えるのは、いつも通りの減らず口。
オレの
「だろうな……だからこそ、オレの
「約一名は相も変わらず好き勝手してるようですけどねェ。」
「フン……最初から
「アヒャハハハァ!!マスタァってば、相も変わらず行き当たりばったりな所ありますよねェ!!
ガリィちゃんとしてはその方が楽しいのでいいんですけどォ……」
「ぐっ……人が気にしている事をズケズケと……」
━━━━確かに、オレの
故に、耳に痛くとも、
「……だが、そうだな。未だ条件はクリアされていない。
だからこそ、仕掛けるならば此処しかないとも言える。
江戸の過去から
此処で人類に星を捨て去られてしまっては計画の達成に支障をきたす。
━━━━ならば、七つの音階を以て奴の思惑を覆すしか道はあるまい?」
此方が持つ最大のアドバンテージ。
それは、
フィーネが日米の間で蝙蝠しながら造り上げるも、神獣鏡を起動するに足る七人目の適合者を見つけられ無かったが故に放置した
その使い手を確保していた事こそが……
「━━━━はい、了解しましたマスタァ。
では、
「━━━━あぁ……此方も、かぼちゃの馬車を用意させるとしよう。」
◆◆◆◆◆◆◆
━━━━フロンティアの地下、アンチリンカーが充満しようとしている洞窟内。
実際に逢った事は無いが、顔写真は見せられた事があるその男……米国の秘密部隊、
「用意してあるだと?」
「あぁ、その子に合わせて調整されたモデルMのLinkerだ……ついでに言えば、彼女を収容できるようにFISのエアキャリアをハッキングして此方に回して貰ってもいる。」
「……信用出来ねぇ!!
アンタは米国所属でッ!!FISが陣取ったアジトを襲撃してッ!!フロンティアに乗り込む直前にも共鳴の奴を襲ってこの子を殺そうとしたんだろうがッ!!」
旨すぎる話だ。だから、信じられない。あのバカ二人じゃあるまいし、銃を向けて来た相手が掌返して救いに来たなんて言って来ても信じられるもんか。
「……確かに。さらに言えば、今さっき崩落したばかりの此処に迷わず飛び降りた事からして……先の崩落、もしかせずとも貴方の仕業だろう?
狙いはこの娘の殺害か?それとも、このソロモンの杖の横取りか?」
あたしの隣に立つ先輩も同じ考えなのだろう。横抱きに少女を抱えるあたしの前に立ちながら、いつでも仕掛けられるようにと身構えているのだから。
「……あー……確かに、そう見える……か。
参ったな……崩落させちまう気はなかったんだが……」
「崩落させる気はなかった……という事は、やはりあの横槍は……ッ!!
先ほどから本部と連絡が付かぬのも同じくかッ!?」
頭を掻きながら弁明する男の言葉は、けれどあたし達にとってはこんがらがっていた事実の確認にもなっていて……
「……あー、うん。そうだな……横槍を入れたのも、通信が途絶してるのも俺の仕業だ。だが、一つだけ言わせてくれ。
━━━━俺は、少年と約束した。あの子が戻ってくるまで、その嬢ちゃんを見守る……ってな。」
━━━━けれど、その不信を払うように、真摯に男は言葉を重ねる。
「……はぁ……共鳴くんと来たら、本当に敵味方関わらず……」
その中身は、要するに
「……分かった。あのバカに免じてひとまずは信用する。
けど、信頼したワケじゃねぇ。それは忘れるなよな?」
「あぁ、それでいい……天津の一族じゃねぇんだ。敵同士の距離感ならコレくらいがちょうどいいさ。」
Linkerの入った無針注射器を放りながらの物言いは苦笑交じりの物。
……それを見ただけで、なんとなく警戒心が緩んでしまうのは、あたしも丸くなったって証だろうか……?
◆◆◆◆◆◆
━━━━上昇するエレベーターの中で、
「クソッ!!クソッ!!クソォッ!!ソロモンの杖を手放すとは……ッ!!
こうなったら仕方ない……ッ!!マリアをぶつけている間にブロック毎切り離してフッ飛ばしてしまえば……ッ!!」
やりたくなかったァ……未来の国土となるこの舟の一部を放り投げるなんて手は……ッ!!
「━━━━無理よ!!私の歌で世界を救うなんてッ!!」
『━━━━マリア!!月の落下を食い止める最後のチャンスなのですよ!!』
━━━━そんな折に頭上のブリッジから漏れ聴こえてくる声に、ボクのテンションは怒髪天レッドゲージをブチ抜いた。
「ッ……ドクター……ッ!!」
━━━━あぁ、イライラする。
何も出来やしないクセに。何もしやしないクセに。
許せないとかなんだとか、薄っぺらい正義感に満ちたそんな眼でボクを見るんじゃあない……ッ!!
「━━━━邪魔だッ!!」
「あぁッ!!」
だから、振り払う手の一撃は全力の物。
……ま、シンフォギア纏ってんだ。死にゃしないだろう。
「……月が落ちなきゃ、好き勝手出来ないだろうがッ!!」
『マリア!!』
「……やっぱり、黒幕はアンタでしたかぁ、オバハン……」
『━━━━お聴きなさいッ!!ドクター・ウェルッ!!
フロンティアの機能を使って収束したフォニックゲインを月へ照射し、バラルの呪詛を司る遺跡を再起動出来れば月を元の軌道へ戻せるのですッ!!』
━━━━今さらそんな事を言われたって、ボクの心はピクリとも動きやしない。
だってそうだろう?
「━━━━そんなに遺跡を動かしたいなら、存分に動かして来いよッ!!
あんたが月に行く事でなァァァァッ!!」
ボクを好きにならない奴は邪魔なんだよッ!!どいつもこいつもッ!!
━━━━突き出した左腕でフロンティア中枢に
第二宇宙速度を越えた瞬間加速ッ!!コレでオバハンは月に行けてハッピー!!ボクは邪魔な奴が居なくなってハッピーってもんだッ!!
「マム!!」
「━━━━有史以来、数多の英雄達が人類支配を成し得なかったのは、人の数がその手に余るからだッ!!
だったら、
英雄に憧れるボクがッ!!人類史に名を刻むあらゆる英雄を越えていくゥ!!」
人類支配という大偉業を前にすれば、
ボクは人類史に人類支配を成し遂げた最大の英雄として名を刻み、永遠に語り継がれるんだァエヘヘェ!!
◆◆◆◆◆◆
「……どうだい?調ちゃん。」
「じー……うん。フィーネの魂?意識?とにかく、そういう物がある感じはしない。
━━━━私自身の記憶に関しても、問題はないと思う。」
━━━━その言葉に深く安堵して、
「はー……緊張した……」
「……それで、その……ありがとう。イガリマを前に身を差し出すしか無かった私を助けてくれて……」
「ふふっ、どういたしまして。でも、ありがとうを言うのはコッチもだよ。
調ちゃんが手を伸ばす事を諦めずに二課の皆と協力してくれたから、俺はこうして間に合う事が出来たんだから。」
「━━━━調ェェェェ!!」
「おっと……」
そんな風に俺と話している調ちゃんの姿に感極まったのか、切歌ちゃんが調ちゃんに飛びついて涙を零す。
━━━━あぁ、良かった。と胸をなでおろす。
その涙が、悲しみの物では無いと分かるから。
「……ね、切ちゃん?私、皆に助けられて此処に居るの。だから……切ちゃんも力を貸して?皆で一緒にマリア達を救おう?」
「うん……今度こそ、調も、おにーさんも皆一緒に……」
━━━━けれど、そんな彼女達の麗しい会話にふと居た堪れなくなってしまうのは、アレである。
「……そういえば、共鳴さんの方が切ちゃんよりも一人で無茶してる……」
「……そうデスね……そもそもあたしが一人でやらなきゃって思ったのも、おにーさんが突っ走って居なくなっちゃったからデスし……」
『じー……』
━━━━うん、つまり……今までの自分が大分やらかしてた自覚があるからなのである。
「えーっと……その……」
『━━━━おい、契約者よ。』
━━━━だが、謝罪の言葉を紡ごうとした次の瞬間に脳裏に浮かぶのは、ヴァールハイトが座す玉座……
『念話ッ!?何故このタイミングでッ!?』
『何故も何も無い。オレにとって必要な事だからやるだけだ。
まずは、あの光の中から戻って来た事を褒めてやろう……そこで、
相も変わらず、ヴァールハイトの言葉は一方的な物で……けれど、だからこそ其処に違和感が滲み出る。
『……ちょっと待て、ヴァールハイト。何故俺が戻ってくる事を知っていた?
俺が此処に戻ってこれたのは偶然の産物で……』
━━━━なによりも、この状況自体が様々な思惑の果てに落ち窪んだ物。其処に必要なプレゼントなど、用意しておける物なのか……?
『ハッ!!どうでもよかろう、そんな事。
この局面に置いて大事な事はただ一つ。
お前が、
━━━━上を見てみろ。』
「上……?」
「上……?」
「上に何かあるデスか?」
念話に釣られて、じーっと俺の事を見つめる二人が映る視界に意識を集中し、上空を見上げる。
━━━━遠くの空に、なにかが飛んでいる?
「鳥デスか……?」
「でも、此処は太平洋の真ん中だよ、切ちゃん。飛行機……にしては、動きがヘン……?」
「いや、アレは……ッ!?」
『━━━━お姫様が舞踏会に間に合うように気張れよ、
━━━━ヴァールハイトの笑いをこらえるような念話と共に気付く。
「女の子ッ!?空から落ちて来てるッ!?
━━━━ゴメン、二人共ッ!!俺はあの子を助けに行くからッ!!」
言葉と同時に、地を蹴って飛び出す。
贈り物って……
「あんな小さな子を空に放り出すのは絶対贈り物とは言わねェェェェ!?」
◆◆◆◆◆◆
「━━━━きゃあああああああああ!?」
━━━━ふわり、ふわり、ぐいん。浮遊感?落下感?
ギュッと手元に
◆◆◆◆◆◆
「━━━━マリア姉さん達が!?」
「あぁ、そうだ。このままでは月は落下し……生き残るのはさて、何千人か……」
━━━━玉座の間で、キャロルさんから聞かされたのは、衝撃的な事実。
「そんな……どうして……」
「……さて、な。フィーネが月を穿った事がそもそもの発端である事を考えれば、誰が悪いと言い切る事も難しかろう。
だが、言える事が一つある。今この瞬間戦わねば、未来は無いという事だ。」
月の落下を防ぐ為の争いの激化が、月の落下を速めてしまったのだと。
「……どうして、どうして……私に、それを……?」
「あぁ、そもそもオレが貴様を助けた理由、それこそがこういった人類存続の危機に対処する為だからな。」
「危機に……?私が……?それって、もしかして……!!」
━━━━私の持つ力、人類存続の危機だというこんな局面に対処出来るなんて言ったら、それは一つしか浮かばない。
「あぁ……
ダメ押しとしてそれを振るってもらう。」
「━━━━分かりました。私が、マリア姉さんを護れるのなら。」
迷いはない。眠りに着く前のあの焔の日と同じ事。
━━━━誰かの為のヒカリになれるのなら。
諦めない強さで、ミライを掴みたい……ッ!!
「フッ……愚問だったな。ならば、持っていくがいいッ!!この欠片をッ!!」
そう言って、立ち上がったキャロルさんが私にナニカを投げ渡す。
「コレは……ギアペンダントの欠片……?」
「あぁ。コールドスリープ装置の起動の為に貰っておいた物だ……だが、幾ら修復を施そうとコレだけでは足りん。
ペンダントの残りの半分と合わせねば、シンフォギアと纏う事は出来んだろう。」
「残りの半分……それは、どこに?」
「お前の姉が持っている。故に……お前も、そこまで向かわねばならない。
安心しろ。足は用意してある。」
その言葉に、私の胸がいっぱいになる。
それは、マリア姉さんが私を忘れずに居てくれた事の証だから。
「マリア姉さんが……嬉しい。持っててくれたんだ……
……って、アレ?足は用意してあるって……普段みたいにテレポートジェムでパッと行けばいいんじゃないですか?」
「ん?……あぁ、残念だがそれは不可能だ。テレポートジェムは確かにそういった場所を指定しない転送にも使えるが、その場合は低確率で指定した座標とは異なる座標に飛ばされる事があるからな。」
「異なる座標……?」
「あぁ、お前も宇宙空間に飛ばされたくはないだろう?」
「う、宇宙空間!?
流石にそれは……」
宇宙に投げ出されたりなんてしたら死んじゃいます……!!
「まぁ、そんなワケでな。現地へは別の方法で行ってもらう。」
「はァい、そういうワケでェ……一名様ご案内~」
ガシリ、と後ろから掴まれて、持ち上げられたのだと気づいたのは、彼女がスキップしながら歩きだしてから。
「え!?が、ガリィさん!?どうして私を持ち上げて運ぶんですか!?」
「そんなの決まってるじゃないですかァ?
━━━━自分の足で歩いたら逃げられちゃうでしョォ?」
「どうして逃げる事前提なんですかぁぁぁぁ!?」
◆◆◆◆◆◆
━━━━以上、走馬灯めいた回想でした。
「だからって、自由落下なんて聴いてませんよぉぉぉぉ!?」
足は用意してあるって言ってたけど、ホントに来るの!?こんな高い所に!?
足下に見える大きな大きな島……フロンティアと言うらしい。其処に段々と近づいている筈なのに、一向に近くなった気がしないのは何故なのだろうか?
「あ、そっか。フロンティアが大きすぎるから動きが分かりにくいんだ。
━━━━って、それだけ高い所から落ちてるって事じゃないですかぁぁぁぁ!?」
━━━━そんな風に、絶望にバクバクと鳴る心臓と、折れそうな心を叫び声で必死に抑えている私の下に、真っ直ぐに駆け上がってくるヒカリが、一つ。
「アレは……?」
━━━━それは、とても綺麗なヒカリだった。
最果てへと向かうように、その先へと手を伸ばすように。
金色のヒカリが、真っ直ぐにソラへと駆け上がって来る。
「綺麗……」
思わず、息を呑む。
そして……
「よっ……相対速度を合わせて……!!」
ヒカリの正体が見える所までやって来て、ようやく気付く。
「隻腕の、男の人……?」
━━━━それはまるで、キャロルさんが言っていた《空から落ちて来た男》と重なるようで。
「━━━━大丈夫か!?
ヴァールハイトの奴……こんな小さい女の子を放り出して何をしようって……」
「あ、はい!!大丈夫です!!
えっと……つかぬ事をお聴きするんですが……キャロルという人を、知っていますか?」
「キャロル?
……いや、すまないが聞いた事が無いな……キミは?」
……やっぱり、違うのだろうか。さっき呟いていた名前も、キャロルさんとは違うようだったし……
「私は……セレナ・カデンツァヴナ・イヴって言います。」
「カデンツァヴナ……?もしかして、マリアさんの家族?」
「マリア姉さんの事を知ってるんですか!?
だったら、連れて行ってくださいッ!!私、どうしてもマリア姉さんに逢わないといけないんですッ!!」
その人の返してくれた言葉で、私は一番大事な事を思い出す。
━━━━そうだ。まずはマリア姉さんを助けなくちゃ……ッ!!
「……分かった。俺は天津共鳴。じゃあ、キミをこのままフロンティアのブリッジへ連れて行くよ。」
「このままって……そういえば、さっきから落下が随分ゆっくりなような……?」
「あぁ……相対速度を合わせて少しずつ減速してたから気づかなかったのかな?
セレナちゃんはもう落ちてないよ。俺のこのアメノハゴロモは空を飛ぶ事が出来るんだ。」
「空を飛べるなんて……凄いです!!」
「あはは、ありがとう。じゃあ、速度を上げて向かうから、ちゃんと掴まっててね?
それと……保持の為に腕を回すけど、触られるのが嫌だったら言って欲しいかな。」
そう言って、ゆっくりと私の背中に右腕を回してくれる姿に、落下の恐怖でバクバクが収まらないままだった心臓が落ち着くのを感じる。
……そっか、ガリィさん達やキャロルさん以外の人の温もりを感じるのって久しぶりなんだ。
「……大丈夫です。だから━━━━マリア姉さんの所へ、よろしくお願いします。」
「━━━━分かった。じゃあ……ッ!?」
いよいよ飛び出そうとした出鼻をくじいたのは、下から飛び上がっていく━━━━
「遺跡ッ!?」
「アレは……ッ!!セレナちゃん、しっかり掴まってッ!!急がないといけないッ!!
俺の推測が正しければ……あの遺跡には……ッ!!」
「は、はいッ!!」
━━━━いったい、何が起こっているの?
◆◆◆◆◆◆
━━━━目の前が、真っ暗だ。
だからせめて、目の前に居る悪を……ドクターを……ッ!!
「よくも……マムをッ!!
それに、美舟はどうしたのッ!!」
「あぁん?死んだよ!!あの小娘はッ!!アンチリンカーで拒絶反応を起こしたネフィラに全身を食い散らかされてるだろうなァ今頃はぁッ!!」
━━━━その言葉に、心が固まる。
「手に掛けるのか?このボクをッ!!ボク以外に人類を救える奴は最早誰一人居ないッ!!
それでも━━━━」
「━━━━殺すッ!!」
この期に及んで、それでも貴様は死者を愚弄するのか……ッ!!
「えええええッ!?」
「━━━━ダメですッ!!」
だが、私の突撃に横合いから割って入る影が一つ。
「ッ!?
━━━━そこを退けッ!!融合症例第一号ッ!!」
それは、少女。リディアンの制服に身を包んだ、一人の少女。
「━━━━違うッ!!私の名前は立花響16歳ッ!!融合症例なんかじゃないッ!!
ただの立花響が、マリアさんとお話したくて此処に居るッ!!」
「お前と話す必要など無いッ!!マムも、美舟もッ!!そこの男に殺されたのだッ!!だから、私はそいつを殺すッ!!
━━━━同じように、お前もッ!!天津共鳴をそいつに殺されただろうがッ!!
もう私に、生きる意味なんて無いッ!!」
━━━━貫き徹す。その意思と共に少女の脇をすり抜ける軌道で突き出した槍は……
「はァァァァッ!!」
しかし、掴み取られる。真剣なこの槍を、白羽取りでッ!?
「ッ……!!」
だが、その手は、ただの少女の手だ。決して、ガングニールに包まれた物では無い。だから……零れ落ちる、赤。
「お前……」
「お兄ちゃんは……きっと、まだ死んでないです。美舟ちゃんだって、私の仲間が助けに行ってくれました……ナスターシャ教授だって、お兄ちゃんが生きていれば、助けられるかもしれません……
それに、生きる意味なんて後から探せばいいんです。皆で、一緒に……
━━━━だからッ!!生きるのを諦めないでッ!!」
「えっ……?」
━━━━美舟を、助けに行った?どうして?貴方達は敵だった筈でしょう?
脳裏を埋め尽くす疑問符を前に、槍を掴んだままの少女は叫ぶ。
「
「聖詠ッ!?今さら、何のつもりの……ッ!?」
━━━━叫びに呼応するかのように、掴まれた槍が輝き、消える。
馬鹿なッ!?
「きゃっ!?」
しかし、輝きは収まらず、私の纏うギアすらも消し去っていく……!?
コレは……フォニックゲイン……ッ!?
◆◆◆◆◆◆
━━━━その瞬間を、世界中の誰もが見ていた。
フロンティアのブリッジより放たれる、そのヒカリを。
「あれは……あの子のヒカリ……?」
「じゃあ、マリアと出逢っちゃったって事デスか!?アタシ達も早く行かないと……!!」
肉眼であるか、全世界に中継された放送を通してかは違ったが、確かに。
「あのバカの仕業、か……」
「ああ。だけど、それでこそ立花らしい。」
「……ヒカ、リ……?あ……行かなきゃ……私……ボクは、あそこに……」
「おいおい、まだ喋れる状態じゃねぇぞ……?」
「━━━━ダメッ!!行かないといけないッ!!ドクターから、この舟を取り戻す為にッ!!」
「……わぁったよ。エアキャリアならひとっ飛びだしな。」
━━━━
「わぁ……綺麗……」
「輝いてますね、立花さん!!」
「いや、ヒカリで見えないからいいけど実質全裸なんだけど……?」
その輝きの中で、ガングニールの少女は叫ぶ。
「なにが……なにが起きているのッ!?こんな事ってあり得ないッ!!
融合者は、適合者では無い筈ッ!!
━━━━コレは貴方の歌ッ!?胸の歌がしてみせた事ッ!?
貴方の歌って何!?なんなのッ!?」
『いっちゃえ、響ッ!!ハートの全部でッ!!』
背中を押してくれる声が、聴こえた。
━━━━だから、少女は叫ぶ。腹の底から。希望の歌よ、世界に鳴り響き渡れとばかりに。
「━━━━撃槍・ガングニールだァァァァッ!!」
━━━━輝きと共に、少女の装いは変わっていた。
その両手には
輝くマフラー、たなびいて……
「ガングニールに適合、だと……ッ!?」
その姿もまた、世界に届いていた。
歌には力があると、胸の歌は此処に有るのだと。
━━━━輝きは、誰の胸にもあると、そう示すかのように。
「ビッキー……ッ!!」
「やっぱり、立花さんの……」
「人助けッ!!ラストはやっぱりこうじゃなきゃねッ!!」
「えぇ~。アニメみたいだけど、ハッピーエンドの方がきっと楽しいですもの~」
「━━━━頑張れー!!響ー!!」
「……?男の人の声?誰なんだろう……?」
「━━━━さぁ?誰でもいいんじゃない?あの子が紡いだ絆を、大切にしてくれた誰かって事なんだし!!」
━━━━擦れ違う筈だった想いは、此処に収束する。
見上げたヒカリに想いを馳せる人々の心は、徐々に一つへと向かい始めていた……
━━━━総てが、一つの流れへ向かおうとしていた。人の心が、地を伝い、天へと届く
そして、奪われたのでは無く、解き放たれたと知ったキミは遂に立つ。
倒すべき闇の潜まぬ闇を貫くのは、二つに別たれた純白の輝き。
始祖より受け継がれし意思の具現。
英雄でないキミだからこそ、その手に零さず掴める世界がある。
そして、それでも零れゆくモノがあるというのなら……その悲しみを拭い去る為に、少年は天へと飛ぶだろう。誰に唆されるでも無く、自らの意思で。