仮面ライダーエグゼイド Fatal Death Game SAO(停止中)   作:パラドファン

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ユナイタルリングの表紙公開されましたね。アリスはシルフ当たりかな~って思っていたからケットシーの猫耳見た瞬間めっちゃ良いやん!ってなってしまいました。猫好きだから超歓喜!!(アリスケットシーだったら良いな~って思っていたから!)


PARA-DXのボス戦

七十六層にたどり着き十数日――

 様々なアクシデントに見舞われつつも、プレイヤーの攻略への思いは尽きることなく遂にフロアボスとの戦いが始まろうとしていた。

 

「皆さん! 今日……遂にフロアボスとの決戦です。絶対に生きて、勝ちましょう!」

 

 攻略指揮であるアスナの声に、攻略組全員が叫びで応じる。

 

「遂にフロアボスとのバトルか……心が躍る」

 

 パラドもその一人、生来の本能には抗えずに控える戦いに高揚を隠せていない。

 ただ唯一の懸念は、現在並行して行われている《ホロウ・エリア》の調査にエムが赴いているために共に戦うことができない点か。

 

「では、皆さんそれぞれパーティーを組んでください」

 

 喧騒が落ち着いた頃合いを見計らって、アスナが手を叩く。

 最序盤を除いて、今までのボス攻略での最小の戦闘単位は《ギルド》であったが、見舞われたバグの影響とラスボスがトップギルドの団長であったこともあり、正直といったところギルドという単位に拘って限りあるリソースを奪い合うという状態が馬鹿らしくなったというのが攻略組の総意で、全体のバランスを見てパーティーを組む方がいいだろうという案が採用されたのはそんな事情があってのことだったりする。

 

「ねぇねぇ、よかったら私と組まない?」

 

 誰と組むか……そんな風にパラドが悩んでいると、背後から甘やかな声がかかる。

 振り返るとそこにいたのは、先日キリトとエムに絡んできた少女――ストレアだった。

 

「お前は、ストレアだったな」

 

「そうだよ~、よく知ってるね。アタシのこと」

 

「お前のことは見てたからな、エムの中で……」

 

「ふぅん、エムの中……。そっか~、キミがパラドなんだね」

 

 その名を呼ばれたことに、パラドは驚く。

 目の前の少女への疑念は尽きない。さらに強まるばかりだ。

 

「なんで知ってる? 攻略組の人間くらいしか俺のことは知らないはずだぞ」

 

「知っているよ! だって、今までずっと見てきたんだから!」

 

「……見てきた?」

 

 どういうことだ――見てきた、ずっと?

 

「キリトとエムは特別だもん! アタシたちみーんな、二人のことはずっと見てたんだよ?」

 

 空恐ろしくなる――アタシ、たち?

 自分のことをも認知する監視者らの存在は、パラドに恐怖を抱かせるには十分だった。

 

「どういうことだ?」

 

「おしえな~い」

 

 凄んでみるもはぐらかされるばかりで、要領を得ない。

 

「お~い?組まないの?」

 

 当の本人であるストレアは、パラドの警戒心など何の苑だ。

 

「……ああ、よろしくな」

 

 こうなれば、監視者を監視してやる。

 そう意気込んだパラドは、ストレアの伸ばしてきた手を取った。

 

「こちらこそ、よろしくね!」

 

 そんなパラドの思惑をよそに、ストレアは無邪気に笑む。

 

 転移門広場から次々と迷宮区への攻略組のメンバーたち。パーティーを組んだパラドとストレアもその後を追う。

 

 そして迷宮区の最深部までを行く道中で、パラドはリーダーであるアスナに声を掛けた。

 

「なあ、アスナ」

 

「どうしたんですか、パラドさん?」

 

「偵察隊、今回も一応出したんだろ? どんな感じだったんだ?」

 

「スカル・リーパーの前例があるので、部屋の外からしか確認してないから詳しいボスの戦い方とかはわからなかったんですけど――」

 

 アスナからの情報纏めると、ボスは巨大な目に無数の触腕持ちのアンデット属性のモンスターらしい。

 詳しい攻撃方法や配下のモンスターの有無等の情報は部屋の外からは観測できずに情報はないが、一応の作戦は主な攻撃手段であろう触腕を斬り落とすことに専念。以上は敵の攻撃手段によってはアドリブで変更する可能性大の――要は行き当たりばったりだ、

 

「情報がないってのは、やっぱきついな……」

 

「ええ、バグの影響と結晶が使用できないことで無闇に偵察戦が行えないので……」

 

 七十五層からボス戦の場は結晶アイテムが使用不能なのは変わらずで、それが大小様々と影響をきたしている。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ボス部屋手前の空間へと辿りついた攻略組。

 装備の最終確認として準備を始めた面々。それらが終わる頃を見計らってアスナが声を掛ける。

 

「では、これより乗り込みます。生きて、次の層へ進みましょう!」

 

「「「「「おお!!」」」」」

 

 攻略組の士気は高い。これならば死者の出る戦いとはならないだろう。

 皆の叫びに、こくりとひと頷きしたアスナはボス部屋の扉に手をかけた。

 

「扉が開いたら、一斉に飛び込んでパーティーごとに散開を!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 地鳴りとともに開いていく石扉。

 同時に点灯していく部屋の灯りとともに浮かび上がるボスの姿。

 

「きめェ……」

 

 ボスの外観に対してそんな感想を漏らした声は、クラインの物だろうか。

 情報では目玉に触腕の異形とのことだったが、炎に浮かぶ姿はパラドの想像の数倍は醜悪だ。

 

「うわぁ……気持ちわる~い」

 

 隣に立つストレアも軽い口調ながらも嫌悪を口にする。

 が、別にそんなことはパラドにとってはどうでもいい。戦えればそれでいいのだ。

 

「心が躍る……っ!」

 

 ストレージからドライバーとガシャットを取り出す。

 

「マックス大変身!」

 

 ガシャットをドライバーのスロットに装填し、レバーを開く。

 

『赤い拳強さ! 青いパズル連鎖! 赤と青の交差! パーフェクトノックアウト!!』

 

 パラドは赤と青の戦士、パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99に変身した。

 

「おお、すごいね~」

 

 その姿を見て、ストレアが歓喜の声を漏らす。

 ようやく扉が開き切る、そのタイミングをじっと待つ。そして――

 

「総員、突撃!」

 

 アスナの号令で攻略組全員がボス部屋内部へ突撃していく。

 皆の目にボスの名前が映る《The Ghastlygaze》――恐ろしい視線、そんな名の通りにぎょろりとした巨大な目を中心とし、そこから先端に口を模した器官を持つ無数の触腕を伸ばすおぞましい姿だ。

 

「うへえ、やっぱきめェ」

 

「好ましい見た目じゃねえな、ありゃあ……」

 

 クライン、エギルがボスの見た目に顔をしかめるが、態度とは裏腹に警戒は解いていない。

 と、その時だ。ボスが突如と力を貯めるように目を細めた。

 

「来るぞ! 避けろ!!」

 

 誰の叫びだろうか、言われずもがな七十五層と突破してきた攻略組の面々は急ぎボスの正面から飛び退く。

 そこをボスの目から放たれた極太の光線が薙ぐ。

 

「距離をとったらヤバそうだな……」

 

 パラドがそう漏らすと、隣にいるアスナが叫ぶ。

 

「皆、一気に踏み込んで!」

 

 距離を取ったら不利。そう結論付けたのだろう、一斉攻撃の指示を出した。

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 皆指示に従い、ボスとの距離を詰める。

 無論、距離を詰めればボスの触腕での反撃がくるが、メインの攻撃は目からの光線なのか密度は薄い。

 

「タンク、受けて!」

 

 素早くアスナによる指示が行われる。

 対し、同じく素早く応じたタンク部隊が前に出る。

 

「ぐっ……まだ何とか受けられる!」

 

 エギルが叫ぶ。

 バグの影響による能力低下は大小問わず全員に見られたが、一先ずとボスに一撃を取られるといったことが無いことに安心する。

 

「続いて攻撃隊、各部位に対し攻撃を! 反応があった場合は即座にわたしに!」

 

 出番だ。パラドはパラブレイガンを構えると、即座にボスの目玉――正面の危険地帯へ踏み込む。

 

「ハアッ!!」

 

 一振り、ボスの目玉へ攻撃を加えると――ボスは絶叫のような、不快な声を発した。

 それに合わせ、触腕もうねるように不定形な動きから地団太踏むような感情的なものに変わる。

 

「成る程、弱点はあの目玉か」

 

 この反応ならば、伝えることなくともアスナには伝わるだろう。

 

「目玉……皆! 可能なら目玉を狙って!」

 

 再度のアスナの指示。

 狂乱するボスの攻撃をタンクが捌き、攻撃部隊が目へと攻撃を集中させる。

 

「いっくよ~」

 

 気の抜ける掛け声とともに、強烈な一撃をストレアがボスに叩き込む。

 その一撃はボスに怯みを与えるには十分で、またその隙に皆が追撃を入れる。

 

「へッ! 意外と楽勝じゃねーか」

 

 クラインがそう叫ぶように、ボスのHPは徐々に徐々に減っていく。

 とは言え、流石膨大なボスのHPだ。攻略組の総力によるここまでの攻撃でも二割を削るのがやっとだった。――と、その時だ。

 

「GUGYAAAAAAAAAAA!!」

 

 ボスがさらなる奇怪な叫び声を上げた。

 と、同時オーラのようなものがボスの目玉から噴出する。

 

「なんだ!?」

 

 突然の事態に、パラドは驚きの声を漏らす。

 が、すぐに状況を理解する――身体が、動かなかったのだ。

 

「……っ!? 麻痺か!」

 

 状態異常への対策手段は少ない。

 現在、バグの影響はアイテムにまで影響を及ぼしており、品物として買えるアイテムの中には時間のかかる状態異常回復作用しかないポーションと、バカ高い上に毒消作用しかない解毒結晶のみだ。

 更に麻痺とは最上位の状態異常だ。効果時間は他と比べて短いなれど、効果は驚異であらゆる行動が阻害される。

 

「ぐっ……」

 

 どうにかとパラドが目を配る。

 他の皆も麻痺状態に陥っていては死人が出てもおかしくない。が、見渡した限りでは麻痺に陥ったものは少ない。どうやらランダム効果で各状態異常が付与されたようだ。

 

「これなら……」

 

 どうにか戦える、かは微妙だが少なくとも負けが込むということはない筈だ。

 とはいえ、付与される状態異常について適宜把握しなければ負けは必至だろう。

 

「……面倒だな」 

 

 そんなぼやきが、パラドの口から洩れた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ボス戦開始から数十分――幸運にも、これまでの戦いの中でHPをレッドゾーンにまで減らしたものはいない。

 だが、麻痺、出血、毒と様々の状態異常攻撃でじわじわと削られているため、回復アイテムの底が見え始め徐々に不利な展開となりつつある。

 

「こうなったら……」

 

 これ以上戦いを長引かせるわけにはいかない。

 周囲に散らばっているエナジーアイテムを確認し、最適な効果を探す。

 やがて目当ての物を見つけると、パラドは叫んだ。

 

「よし、全員一旦離れろ!」

 

 それを聞きつけたアスナも声を張る。

 

「皆、後退を!」

 

 指示に際し、ボスの周囲に張り付くプレイヤーは急ぎ飛び退く。

 そこへパラドが突っ込みエナジーアイテムを自身に引き当てる。

 

『停止』

 

 アイテムの効果で己以外、周囲の時間を止める。

 能力はクロノスの《ポーズ》に準ずるが、効果時間が十秒と定められているために早急に決めなければならない。

 パラドはベルトを手早く操作すると、構える。

 

『ウラワザ! KNOCK OUT CRITICAL SMASH!』

 

 炎を宿した拳でパラドはボスの目玉を殴り飛ばす。

 同時、停止の効果が切れ、ボスは認知することの叶わない強烈な一撃にダウン状態となる。

 そして、その隙を逃すアスナではない。

 

「今よ! 一斉攻撃!」

 

 指示の元、皆最大火力のソードスキルを発動させ、一気に突撃する。

 凄まじい攻撃の数々に、ボスは残HPの半分を減らす。

 

「次で決めるっ!」

 

 と、ベルトに手をかけるパラド。

 その背後から、ストレアが軽い声で応じてくる。

 

「オッケー! 任せてよ、パラド!」

 

「うおっ! いつの間に!?」

 

 気配なく現れた声に思わず驚きを口にするパラドだが、当のストレアは気にしたげもない。

 

「そんなの良いから決めるよ~!」

 

 そう無邪気に笑いながら両手剣を構えるストレアに苦笑しつつも、パラドは再びエナジーアイテムを自身に引き寄せる。

 

『マッスル化 マッスル化』

 

 二つの効果を受けたパラドは、即座にベルトを操作する。

 

『ウラワザ! PERFECTKNOCK OUT CRTICAL BOMBER!!』

 

 炎とパズルのエフェクトがパラドの身体を包む。

 機を見計らって、飛び上がるとそのままボスに向かいバフの乗ったキックを放つ。

 

「いっけェ――!!」

 

 無論、ボスとて必殺の一撃を甘受するわけはなく、抵抗として触腕を無数にパラドへ向けて伸ばしてくる。

 しかしその程度で死ぬほどの威力ではなく、一瞬にして触腕を引きちぎるように突破すると必殺のキックをボスの()()へと叩き込む。

 

『GREAT!』

 

 痛恨の一撃を示す音声とともに、パラドは着地する。

 が、そこへボスの触腕が襲い掛かる。

 

「なに!?」

 

 咄嗟のことに回避が遅れ、防御姿勢を取るも吹き飛ばされるパラド。

 

「浅かったか!!」

 

 ダメージに喘ぐ中で漏らす。

 どうやら、抵抗の末にキックの軌道をずらされ弱点部位の目玉を狙ったはずが外れていたようだ。

 

「でも、後一撃……っ!」

 

 流石に痛恨の一撃。ボスの残HPは表示上一ミリも残っていない。

 だが、すぐに動こうにも必殺技発動直後の無防備な瞬間を狙われ、軽度のスタンを起こしてしまっている。

 さらに死にかけとなったボスは最後の足掻きと残った触腕全てを遮二無二振り回しており、とても近づけたものではない。とそこへ――

 

「まっかせて~~!」

 

 ストレアがボスに向かい走る。

 

「待て!」

 

 引き留めるべくパラドは叫ぶも、ストレアは止まらない。

 無秩序に振るわれる触腕の攻撃の雨の中を、まるで予知しているかの如く躱し、とうとうボスの眼前にまで迫る。

 

「これで、トドメ~!」

 

 そう可愛らしく告げるのとは裏腹に、構える両手剣から放たれるソードスキルは《ライトニング》。

 両手剣の技としては数多い四連撃の重範囲ソードスキル。ただでさえ火力の高い両手剣スキルのそれらすべてをボスの目玉一点に叩き込むのだから、威力はオーバーキルものだろう。

 たちまち、ポリゴンの欠片となって砕け散っていくボス。

 同時に、周囲から安堵の――そして歓喜の声が上がる。バグの影響後初のボス戦にて死者ゼロで攻略を行えたことはそれほどの結果だ。

 

「ふう……」

 

 疲労のため息とともにパラドが変身を解除すると、そこへストレアが近付く。

 

「お疲れさま。パラド」

 

「ああ……お疲れ」

 

 笑みとともに手を振る少女には、悪意の類を感じない。

 だが、それ故にパラドの中でのストレアへの疑念が強まる。

 

(あれだけ強いのに、なんでここまでストレアの名を一度も聞かなかった? 少なからずあの目敏いヒースクリフが名を上げなかったというのは変だ)

 

 上手く考えが纏まらない。エムがいたなら、もう少し……わがままは言えない。

 とりあえずパラドは、上がる歓声の中をアクティベートの為に次の層への階段へと向かう。

 

「待ってよ~! パラド!」

 

 それを目敏くストレアは引き止める。

 

「……何だ?」

 

「んふふ~なんでもないよ。ちょっと待ってね!」

 

 できれば今はストレアとは絡みたくない。

 その意を込めながら言うが、ストレアは関係ないとばかりに無邪気に笑う。

 と、突然パラドの目の前にトレードウインドウが現れる。

 

「これは、何だ?」

 

「ボスのLAボーナスだよ~、アタシ要らないからあげる!」

 

 まさか、パラドは驚きトレードウインドウのアイテムを見る。

 LAボーナスは一つしかない物それを渡すとはどういう事か、問いただそうとウインドウから顔を上げると――

 

「……いない」

 

 もう既に、ストレアの姿はどこにもなかった。

 

「あいつ……いったい何なんだ? 何が目的だ?」

 

 パラドの疑問に応える者はいなかった。

 

 

 




活動報告で短編アンケートとクマさんの後書きアンケート行っております。



 はいどうも、クマさんでございます。
 今回はなにをネタにしようかを五分くらい悩みましたが……場面の補完にSSでも


 ――場面は第四話「これまでのEvent」より、キリトがアスナに部屋に連れていかれたところからです


 階段を上り、廊下を渡り、一分にも満たないほどの短い時間だったがその間も俺たちは無言だった。
 アスナは決して俺に顔を見せようとせず、俺の方も負い目故に中々アスナに話しかけることが憚られる。
 とは言え、部屋へと辿りつき、既に五分近くが経とうという頃になってもその状態というのは居心地悪いというものではない。耐え切れず俺は擦れた声で話しかける。

「おい、アスナ。もう部屋に着いたし……」

 と、今までだんまりだったアスナが、ごく小さな声を発した。

「――った」

 声を聞き取れず、俺は尋ねる。

「アスナ……?」

 振り返るアスナ。その頬には涙が伝う。

「……怖かった」

 その涙を拭うべく、キリトは手を伸ばす。
 目尻に溜まっていく涙。それを軽く拭ってやると、震えた声でアスナは想いを吐露する。

「キリト君と連絡がつかなくなって、キリト君が死んじゃったんじゃないかって」

 伝えられた想いに、俺は衝撃を受けた。
 アスナを信じすぎていた。連絡が少し途切れたくらいで、アスナがここまで弱るとは思っていなかったのだ。

「……俺は死なないよ」

 言い訳、というわけではない。
 それは決意だ。アスナを残したまま死なない、揺らがぬ決意だった。

「嘘、あの時だって……キリト君、死ぬ気だった」

 その決意を、アスナは頭を振って否定する。
 あの時、とは七十五層でのヒースクリフとの一騎打ちの件だ。

「……あの時は、あいつが――ヒースクリフが茅場だって知って、許せなかった」

 今は、どうなのかもわからない。
 あいつへの怒りは本物だ。だが、同時にこの世界が無ければアスナと出会うこともなかったのだ。
 恨む気持ちもある。妬む気持ちもある。だが同時に、感謝の念も抱くのだ。
 この世界が無ければ、家族(リーファ)とも向き合おうとは思わなかったのだ。

「キリト君……」

 不安げに揺れるアスナの目。
 俺はその目を見つめ返すことができない。想いの吐露が、収まらない。

「だって、そうだろ? 攻略のために命を懸けて、直前にだって先遣隊が全滅してる。なのに、攻略組のリーダーがあいつで、馬鹿みたいじゃないか」

 全てはあいつが生み出した壮大なマッチポンプ。
 その上で転がされた想い、出会いすらも奴の掌の上だと思うと――今も怒りがこみ上げる。
 なのに、やはり俺はあいつを恨み切ることができない。感情をどこに持っていけばいいのかわからない。

「……ディアベルも黒猫団の皆も――いや、それどころかこの世界で死んだ人たちが全員馬鹿みたいじゃないか」

 ドロドロした感情が渦巻く、どうしてこうも俺は弱いのだ。
 強くあれたなら、こんな風に悩む必要もないのに。

「それがどうしても、俺には許せなかった」

 最後、そう締めくくると、暗い感情はすっと落ちていった。
 口に出したことが功を奏したのか、ただ空しさだけが心の中に残る。

「……キリト君」

 悲し気な、そして包み込むような甘やかな声だ。
 俺の中の弱いところも、醜いところも全部受け止めてくれるような。

「キリト君の気持ちは、わかるよ。……でも、わたしは前に言ったよ」

 暖かな感触が俺の頬を包む。
 アスナの目が俺の目を捉える。
 
「キリト君のいない世界なんて、意味がないよ」

 アスナの目には、もう悲しみはない。
 決意に満ちていた。強い、意思よる決意だ。

「だから、もう無茶は……しちゃうよね。キリト君、優しいから」

 苦い顔をみせるアスナ。でも、すぐに優しく微笑みかけてくれる。

「帰ってきて、わたしはキリト君が帰ってくるのを待ってるから」

 本当に、アスナには敵わない。

「……わかった。ちゃんと帰るよ、アスナのところに」

 新たな決意は、もう揺らがせない。
 飛び切りの笑顔が、俺を待っているのだから。

「うん」

 綺麗だ――これからも幾度と思うのだろう。

「なあ……アスナ?」

 ――微笑みを守ろう。

「なに? キリト君」

 ――喜びを守ろう。

「今日も……アスナと一緒に居たいな」

 ――アスナを守ろう。

「……うん、わたしも」

 とりあえず今日は、アスナと共に過ごそう。
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