音撃戦士二〇一四   作:三澤未命

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一之巻『果てなき戦い』

<Aパート>

 

○森の中

 

 ツチグモと戦う一人の鬼。

 その全身は、響鬼と似た感じのパープルマジョーラを基調に太鼓戦士の装飾で象られているが、目元や腕先のカラーリングは濃いオレンジとなっている。

 鬼の名は暁鬼(あかつき)。

 音撃棒・陽火(ようか)を構え、木々をなぎ倒しながら動き回るツチグモを追う。

暁鬼「速いな」

 暁鬼がムンと一つ気合いを入れると、その両足が光って走力アップ!

 ツチグモの前まで走り出て、陽火でツチグモの足を数本たたっ切る。

 バランスを失い、その場にズドンと倒れるツチグモ。

暁鬼「よし!」

 暁鬼、素早い動きでツチグモの胴体へ飛び乗り、音撃鼓・陽光鼓(ひこうつづみ)をその肉塊に埋め込む。

 大きく広がる陽光鼓。

 暁鬼、陽火を振り下ろし、リズミカルに鼓を打ち始める。

暁鬼「ヤア! ヤアーーー!!」

 音撃の波紋が、次第にツチグモの全身に広がっていく。

 と、ふいに背後に大きな影が現れ、その風圧でツチグモの胴体から吹き飛ばされてしまう暁鬼。

暁鬼「うわあーーーーっ!!」

 上空には、巨大なイッタンモメンが旋回していた。

暁鬼「……イッタンモメン? どうして森の中に!」

 と、上空を旋回するイッタンモメンの身体に、数発の鬼石が撃ち込まれる。

 そこへ現れたのは、専用バイク・月影(つきかげ)を運転しながら銃撃モードの音撃管を構えたもう一人の鬼。

 その風貌は威吹鬼と似た感じの管戦士装飾だが、目元や腕先のカラーリングはクリーム色。

 名を天月鬼(あまつき)という。

天月鬼「暁鬼君ごめんなさい! 怪我はありませんか!?」

暁鬼「天月鬼さん! うん、大丈夫。しかし、イッタンモメンが森の中まで飛んでくるなんて……」

天月鬼「(上空のイッタンモメンを見ながらバイクを降りて)そうなんです。最近出てきた奇種体の一つかもしれません」

暁鬼「ん……。とにかく、アイツは任せたよ!」

 暁鬼、そう言って再びツチグモに飛び乗る。

天月鬼「分かりました」

 天月鬼は、さらに二、三発の鬼石をイッタンモメンに撃ち込み、音撃管・疾風(しっぷう)に音撃鳴・鳴風(なるかぜ)を取り付ける。

 ツチグモの上では、暁鬼が再び鼓を打ち始める。

 そして、天月鬼はイッタンモメンに向けて疾風を吹き始める。

 森の中に響き渡る、太鼓とトランペットの音色。

 ツチグモとイッタンモメンそれぞれの全身に、音撃の波紋が広がっていく。

 そして……、爆発!!

   *  *  *  *

 爆煙が徐々に止んでいく中、互いに歩み寄る暁鬼と天月鬼。

 二人ほぼ同時に、顔だけ変身解除する。

 その人間体は、ともに二十四歳に成長した明日夢(=アカツキ)とあきら(=アマツキ)であった。

アマツキ「お疲れ様です」

アカツキ「お疲れさん!」

 にっこりと笑いかけてきたアマツキに対し、サムズアップで応えるアカツキ。

 

○オープニング曲

 

○サブタイトル

 一之巻『果てなき戦い、そして苦悩』

 

○たちばな・地下作戦室

 壁に設えたレーダーモニターを見つめるホウキ。

ホウキ「八溝山のツチグモと奥久慈のイッタンモメン、殲滅です! 八溝山でアカツキ君とアマツキさんが合流したみたいですね」

 室内の中央では、勢地郎と香須実が机上の大きな地図にマーキング。

勢地郎「了解。浅間山の方は?」

ホウキ「……えっと、そっちはバンキさんがそろそろ着いてるはずですわ」

 レーダーを指差しながら話すホウキ。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『ホウキ 鬼名:縫鬼 三十四歳 作戦室通信担当』

N「ホウキ。本名・幌宵蛍(ほろよい・ほたる)。猛士関東支部・作戦室通信担当。三年前、関西支部より異動。元々鬼として戦っていたこともあり、現場が手薄な時には弦の鬼として出向くことも」

   *  *  *  *

香須実「このイッタンモメン……、やっぱり奇種体なのかな」

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『立花香須実 三十二歳 支部長補佐兼サポート担当』

N「立花香須実(たちばな・かすみ)。猛士関東支部・支部長補佐並びにサポート担当。サポート役では、主に響鬼と行動を共にする」

   *  *  *  *

勢地郎「うむ……」

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『立花勢地郎 年齢不詳 関東支部・支部長』

N「立花勢地郎(たちばな・いちろう)。猛士関東支部・支部長。組織の中心的人物で、吉野本部への出張も多い」

   *  *  *  *

ホウキ「……バンキさんの方は、出現条件や動き方からして奇種体とはちゃうみたいですね。あーもう! データが揃いそうで揃わへんなあ!」

 多少イラついて、手元のメモをクシャッと丸めるホウキ。

 それを見て、勢地郎と香須実が目を見合わせて微笑する。

 

○浅間山・中腹

 巨大なヤマアラシが、背中の針を次々と発射していく。

 それを音撃弦・刀弦響(とうげんきょう)で巧みに避けながら、ヤマアラシの懐へと潜り込んでいく蛮鬼。

 そして、ヤマアラシの腹めがけて刀弦響を上向きに突き刺す!

蛮鬼「音撃斬・冥府魔道(めいふまどう)!」

 蛮鬼、しっかと大地を踏みしめ、上向きに刺した刀弦響を右指で器用にかき鳴らす!

 ヤマアラシの身体に伝道していく音撃の波紋。

 そして……、爆発!!

蛮鬼「ふう……」

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『バンキ 鬼名:蛮鬼 三十歳 弦の鬼』

N「バンキ。猛士関東支部・弦担当の鬼。現場を担当する傍らで、科学者として開発部門にも携わっている。現在、ある理由で働きづめとなっている」

 

○奥久慈・川辺(その他)

 アマツキのキャンプ。

 テーブルに入れ立てのコーヒーを置くアマツキ。

 そして、小さなカプセルを指でつまんで確認している。

 と、そこへアカツキが専用バイク・太陽(たいよう)に乗ってやってくる。

アカツキ「どう? うまく採集できた?」

 太陽から降りながら、アカツキが問いかける。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ

『アカツキ 鬼名:暁鬼 二十五歳 太鼓の鬼』

N「アカツキ。本名・安達明日夢(あだち・あすむ)。猛士関東支部・太鼓担当の鬼。六年前、ヒビキの弟子から鬼へと独り立ちし、現在は次期エース候補として活躍中」

   *  *  *  *

アマツキ「はい。鬼石に混ぜて発射していたカプセルに、わずかですが……」

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『アマツキ 鬼名:天月鬼 二十五歳 管の鬼』

N「アマツキ。本名・天美あきら(あまみ・あきら)。猛士関東支部・管担当の鬼。こちらも六年前、イブキの弟子から鬼へと独り立ち。変身検定合格同期のアカツキとは、常にいいコンビプレイを見せている」

   *  *  *  *

アカツキ「何とか、早く奇種体の正体を突き止めないとね」

アマツキ「そうですね。この種のおかげで最近かなり効率が落ちていますから……」

 そう言いながら、ギュッとカプセルを握り締めるアマツキ。

   *  *  *  *

N「この二人の若者が、現在、猛士関東支部の中心を担っている存在だ。では、ここで他の関東支部メンバーも紹介しておこう」

   *  *  *  *

 ウブメと戦う威吹鬼。

 音撃射・疾風一閃(しっぷういっせん)でウブメを四散させる。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『イブキ 鬼名:威吹鬼 二十九歳 管の鬼』

N「イブキ。猛士関東支部・管担当の鬼。現在、関東支部の事実上エースである。専門の管以外に太鼓、弦を使いこなす特別遊撃班としてのポストも、五年前にヒビキから受け継いでいる」

   *  *  *  *

 ヤマビコと戦う鋭鬼。

 音撃打・必殺必中(ひっさつひっちゅう)の型でヤマビコを四散させる。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『エイキ 鬼名:鋭鬼 三十七歳 太鼓の鬼』

N「エイキ。猛士関東支部・太鼓担当の鬼。年齢的にピークは過ぎているが、その実力は折り紙付きだ。当然、駄洒落も健在」

   *  *  *  *

 オオアリと戦う剛鬼。

 音撃打・爆裂乱打(ばくれつらんだ)の型でオオアリを四散させる。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『ゴウキ 鬼名:剛鬼 三十七歳 太鼓の鬼』

N「ゴウキ。猛士関東支部・太鼓担当の鬼。エイキ同様、年齢的な衰えは隠せないが、太鼓陣営としてはここが正念場」

   *  *  *  *

 アミキリと戦う吹雪鬼。

 音撃射・流麗縛身(るれいばくしん)でアミキリの身体を麻痺させる。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『フブキ 鬼名:吹雪鬼 四十一歳 管の鬼』

N「フブキ。本名・不動明芙美(ふどうみょう・ふみ)。猛士関東支部・管担当の鬼。そのサポート的な能力から、全国支部への補助支援に廻ることが多い。同世代の鬼が次々と引退していく中、何故かまずます冴えた戦闘能力を誇る事実は、猛士七不思議の一つでもある」

   *  *  *  *

 バケネコの大群と戦う丑蜜時鬼(うしみつどき)。

 その姿形は、灰色を基調としてシンプルな管戦士装飾が施されている。

 青白く光る手刀で、バケネコを次々と斬り裂いていく丑蜜時鬼。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『ウシミツドキ 鬼名:丑蜜時鬼 三十四歳 管の鬼』

N「ウシミツドキ。本名・薄葉右京(うすば・うきょう)。猛士関東支部・管担当の鬼。七年前、ザンキの呪術弟子として猛士入りしたが、今年になって変身検定にも合格し、鬼となる。実力はまだまだ未知数といったところ」

   *  *  *  *

 専用バン・雷神(らいじん)を運転するザンキ。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『ザンキ 四十一歳 呪術師兼サポート担当』

N「ザンキ。猛士関東支部・呪術師並びにサポート担当。八年前に鬼を引退して以来、トドロキのサポーター、そしてウシミツドキの呪術師匠として活躍。怨念魔化魍を呪術で浄化できる数少ない戦士でもある」

   *  *  *  *

 開発室内で武器調整に勤しむみどり。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『滝澤みどり 四十歳 開発部・部長』

N「滝澤みどり(たきざわ・みどり)。猛士関東支部・開発部の部長として、この分野では現在組織ナンバーワンの技量と言われている。美人だが、生来のガサツさが災いしてか未だ独身」

   *  *  *  *

 ツチグモと戦う響鬼。

 音撃打・猛火怒涛(もうかどとう)の型でツチグモを四散させる。

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『ヒビキ 鬼名:響鬼 四十歳 太鼓の鬼』

N「ヒビキ。猛士関東支部・太鼓担当の鬼。長く関東支部の中心人物として特別遊撃班の役割を担ってきたが、今はその座をイブキに譲っている。年齢的に、今までのような戦いに無理が出てきているのは事実である」

 画面、再び動き出し、響鬼が顔だけ変身解除してキャンプ地へと戻っていく。

N「この他、かつて関東支部で活躍していた弾鬼(ダンキ)と勝鬼(ショウキ)は関西支部へと異動になり、闘鬼(トウキ)は引退と同時に九州支部へ弟子の息子と共に異動し、現在はコーチ業に就いている。自分の辞書には引退の文字はないと豪語していた裁鬼(サバキ)も、今は身を引き、浅草でラーメン屋を営んでいる。……そして今一人、悩みの中にいる男が……」

 

○林の中

 青ざめた表情で、一人立ち尽くしているトドロキ。

 手首の音錠をジッと見つめ、しばらく目を瞑ったかと思うと、徐に音錠を鳴らしてサッと腕を上空に向かって挙げる。

 しかし、一瞬音錠の周りに蒸気が発するだけで、変身に必要な稲妻のエネルギーは発生しない。

トドロキ「……くそっ!! くそうーーー!! 日菜佳さん、俺は……」

 ここで画面ストップし、下部にテロップ。

『トドロキ 鬼名:轟鬼 三十五歳 弦の鬼』

N「トドロキ。猛士関東支部・弦担当の鬼。ザンキの弟子から独立し、弦の鬼として頭角を現してきたところ、あることにより激しい精神的ショックを受け、現在変身能力を失っている」

   *  *  *  *

 涙に暮れ、その場に崩れ落ちるトドロキ……。

 

<Bパート>

 

○たちばな

 甘味処店内、香須実とホウキがテーブルを拭いている。

 と、そこへヒビキが帰ってくる。

ヒビキ「たっだいま~」

香須実「あ、ヒビキさん。お帰りなさい!」

ホウキ「……おかえりなさーーーい」

 少々ダレた様子のホウキ。

ヒビキ「何だホウキ? ダラけてるぞ!」

ホウキ「だって暑過ぎですよ最近! まだ六月やっちゅーのに!」

ヒビキ「ん? そういや店内の温度も高いような気がするな」

香須実「ああ。節電でね、エアコンつけても二十八度って決められてんの」

 香須実の額にも、うっすら汗が浮かんでいる。

ヒビキ「……まあ、しょうがないよなあ。このご時勢だから」

 と、今度はザンキが入口から入ってくる。

ザンキ「こんにちは」

香須実「ザンキさん! お久しぶりです!」

ザンキ「おう」

 軽く手を挙げて、空いた店内の椅子に腰を下ろすザンキ。

 つられて、ヒビキも近くの椅子に座る。

ヒビキ「しばらくでしたね。……どうです? ウッシーは」

ザンキ「ああ、まだ何とも言えんな。素質を生かし切れるかどうかは、やはりココの問題だからな」

 そう言いながら、ザンキは自分の胸をポンポンと叩く。

 と、香須実が神妙な面持ちとなり、ザンキの隣に座る。

香須実「……そう言えば、トドロキさん、どうしてます?」

ザンキ「相変わらずだな。闇雲に身体動かしてどうにかしようとはしてるが、あの様子じゃ鬼の力はまだ戻らんだろう」

香須実「トドロキさんが変身できなくなって、もう二年近く経つもんねぇ……」

ヒビキ「……そうか。日菜佳ちゃん……、もう二年になるんだ……」

 一瞬、沈黙する一同。

 と、奥から勢地郎が現れる。

勢地郎「……そうだな。我々も現実をしっかりと受け止めなければいけない。そろそろ、明るく弔ってあげる時期かもしれないね」

香須実「うん……」

 寂しげながらも、ほんの少し口角を上げて天井を見上げる香須実。

 ヒビキ、そんな香須実を見て優しく微笑み、大きく伸びをする。

ヒビキ「あ~~~っと! やっぱ、暑い時には団子が一番だな! おいホウキ、夏季限定・スペシャルアイス団子とかないのか!?」

ホウキ「何ですのんソレ!? ……ん~、でもいいかも。いっちょ作りましょ!」

 パパンと手を叩いたホウキ、調理場の方へといそいそと下がっていく。

 勢地郎、香須実、サンキ、そしてヒビキと、皆にこやかにその後ろ姿を見送る……。

 

○三浦半島・海岸

 砂浜の数ヶ所が徐々に膨らんでいく。

 そして、そこから赤い球体が顔を出す。

 球体はさらに膨らみを増し、直径五メートル程の大きさになった。

 と、いきなりバン!と破裂し、中からバケガニが出現!

 

○大洗・川辺

 こちらでも、赤い球体が地面から湧き出し、やはり五メートル程に膨らんだところで破裂してバケガニが出現!

 

○秩父・山岳地帯

 一方、水場から離れた秩父山地でも、いくつもの赤い球体が地を割って出現!

 同様に大きさを増していき、若干ドス黒いバケガニが生まれ出る!

 

○たちばな・調理場

 アイス団子を懸命に作っているホウキ。

 と、作務衣のポケットに入れていた警報装置が鳴り出す。

ホウキ「ナヌッ!?」

 

○同・地下作戦室

 バタバタと階段を下りてくるホウキ。

 そして、レーダーモニターの前に座り、キーボードを操る。

 と、勢地郎、香須実、ヒビキ、ザンキも階段を駆け下り、作戦室に入ってくる。

勢地郎「何事だ!?」

ホウキ「(レーダーを睨みながら)えらいこってすわ! バケガニ奇種体の同時発生です! それも数がハンパやない……」

ヒビキ「何だって……!?」

 皆がレーダーの前に集まる。

ホウキ「三浦半島、大洗、あと秩父山中にも発生してます!」

ヒビキ「山だって!? 何で山にバケガニが……」

ザンキ「これが奇種体か……」

 顔をしかめるザンキ。

勢地郎「とにかく各地へ急行だ。三浦半島が一番多いようだから、バンキ君にはここに廻ってもらおう」

香須実「今の弦の陣容じゃ、バンキ君頼みだもんね……」

勢地郎「秩父のヤツは奇種体の中でも特に異質な匂いがするなあ。ここは特別遊撃班のイブキ君に。あと、アマツキ君とフブキ君をフォローに入れてくれ」

香須実「連絡します!」

 素早く携帯電話を手に取る香須実。

勢地郎「あとは大洗だが……。ヒビキ、頼めるか?」

ヒビキ「りょ~かい! ま、弦は正直キツくなってきてますけどね」

勢地郎「うん。コンビネーションに期待して、アカツキ君にも入ってもらおう」

ザンキ「じゃ、俺も行きます」

勢地郎「ザンキ君?」

ザンキ「大したことは出来んが、後ろでアドバイスくらい送れるだろう」

ヒビキ「助かります!」

 心からの笑顔をザンキに送るヒビキ。

ホウキ「……事務局長! 私も三浦半島へ行きます! この数やと、いくらバンキさんでも一人では……」

勢地郎「そうだな……、そうしてくれ!」

ヒビキ「よし! じゃ、行ってきます!!」

 ヒビキ、シュッのポーズを決めて階段を駆け上がっていく。

 そして、その後ろからザンキ、ホウキも続く。

 

○たちばな裏の駐車場

 雷神に乗り込むザンキとヒビキ。

 そして、支部の予備車両にホウキが乗り込む。

 発車する二台の車両。

 

○国道

 アカツキが専用バイク・太陽で走る。

 と、ハンドル横の通信装置が鳴る。

アカツキ「はい、こちらアカツキ。……ヒビキさん!? ……あ、はい! 分かりました! すぐ向かいます!!」

  アカツキ、一瞬嬉しそうな表情を見せるもすぐに真顔に戻り、太陽を方向転換させて大洗方面へと走る!

 

○別の国道

 疾走するイブキの専用バイク・竜巻(たつまき)。

 と、後ろから一台のバイクが追走してくるや、竜巻の横に並んで走る。

 アマツキのマシン・月影だ。

 イブキとアマツキ、互いに頷き合ったかと思うと、そのままスピードを上げて併走、秩父方面へと走る!

 

○三浦半島・海岸

 海岸は、既に十数匹のバケガニに占拠されている状況。

 その後方で、いち早く急行したバンキが音錠を鳴らして変身!

蛮鬼「……ッシャッ!」

 刀弦響を携え、バケガニの大群に向かって走る蛮鬼。

 と、そこへホウキが支部の予備車両で到着!

ホウキ「蛮鬼さん!」

蛮鬼「(バケガニの足を刀弦響の刃先で次々と斬り落としながら)……ホウキさん! 助かります!!」

ホウキ「(走りながら)ホンマすんません! 最近ろくに休めてへんのに……!」

蛮鬼「慣れてますって! それより、ちょっといつもと違う感じがするんで、気を付けて下さい!」

ホウキ「ハイ!!」

 快活な返事とともに、ホウキも音錠を鳴らして変身!

 音撃撥・艶花(えんか)でバケガニに斬りかかっていく縫鬼!

 

○秩父・山岳地帯

 イブキとアマツキがポイントに到着。

 そこでは、数匹のドス黒いバケガニが砂煙を上げながら暴れている。

イブキ「何とも不思議な光景だね。……行くよ、アマツキ!」

アマツキ「はい!!」

 イブキとアマツキ、互いに音笛を吹き、同時に変身!

 竜巻エネルギーに包まれ、鬼化する威吹鬼と天月鬼!

 威吹鬼、自分専用の音撃弦を持ち、しっかと構える。

威吹鬼「援護、頼むよ」

 天月鬼に声をかけ、走り出す威吹鬼。

天月鬼「任せて下さい、威吹鬼さん!」

 天月鬼、銃撃モードにした音撃管・疾風を手にジャンプ移動。

 特別遊撃班を担っているとは言え、やはり本職でない弦攻撃についてはスピードが劣る威吹鬼。

 それを補うように、天月鬼がバケガニたちに次々と鬼石を撃ち込んで動きを止めていく。

 しかし、いかんせん天月鬼の鬼石では一瞬のダメージを与えるに過ぎない。

 順次音撃斬を繰り出す威吹鬼だが、スピードで追いつかず攻撃中に別のバケガニに攻撃される!

威吹鬼「うわっ!!」

天月鬼「威吹鬼さん!!」

 と、そのバケガニに向かって、上空から降ってきた鬼針が命中!

吹雪鬼「音撃射・流麗縛身!」

 近くの木の枝上のやって来ていた吹雪鬼が、フルート音撃管・烈雪(れっせつ)を奏でる。

 すると、鬼針の刺さったバケガニの身体がガクガクと震え出し、次第に全身が麻痺してその場に倒れ込む。

吹雪鬼「遅れてごめんなさい」

 一言詫びた吹雪鬼、ジャンプして別の木に移り、再度烈雪を吹き矢のように構える。

威吹鬼「すいません、吹雪鬼さん!」

 威吹鬼、そう言いながら音撃斬を奏で、バケガニを四散させる!

威吹鬼「……よし、次!!」

 

○大洗・川辺

 バケガニの群れの中、音撃棒・陽火で巧みにその足を斬り落としていく暁鬼。

 そして、一匹の腹へと音撃鼓・陽光鼓を取り付ける。

 ググッと広がる陽光鼓。

暁鬼「……よし!」

 と、その途端、陽光鼓を取り付けたバケガニが溶解性の泡を拭き出す!

暁鬼「うわっ!!」

 思わず転がり避ける暁鬼。

 と、そこへ雷神が到着。

ヒビキ「暁鬼! 大丈夫か!?」

 助手席から飛び出すヒビキ。

暁鬼「ヒビキさん! ……はい、大丈夫です!」

 運転席からは、ザンキがゆっくりと降りてくる。

ザンキ「(バックラックから音撃弦を取り出しながら)太鼓は即時ダメージを与えられないのでバケガニには不向きってことは、分かっているはずだぞ? 暁鬼」

暁鬼「ああ、はい……。ただ、奇種体だけに何か違った反応を見せるかもしれないと思いまして……」

ヒビキ「……ほう」

ザンキ「なるほど。さすが考え方が若いってとこか。俺たちの方が、既成概念に囚われ過ぎていたのかもしれんな」

ヒビキ「ま、とにかくまずは素直にやってみますか!」

 ヒビキ、音角を額に持っていき、炎に包まれ鬼に変身!

 ザンキから音撃弦を受け取り、バケガニの群れへと走る響鬼!

響鬼「暁鬼! 援護頼むぞ!!」

暁鬼「……は、はい!!」

 立ち上がり、暁鬼もバケガニの群れへと走る!

 

○たちばな・地下作戦室

 レーダーモニターを見つめる香須実。

 そして、中央机上で地図を広げる勢地郎。

勢地郎「まさか、こう来るとはなあ……」

香須実「一過性の現象ならいいけど、トドロキさんを戦力に数えられない今、こういうことが続くと……」

勢地郎「それは言っても仕方がないな」

香須実「あ、ゴメン……」

 自分の頭をコツンと叩く香須実。

 と、階段を降りかけたところでピタッと止まる足が一つ。

 トドロキだ。

トドロキ「……俺が……、俺のせいで……」

 踵を返し、階段を駆け上がっていくトドロキ。

 その物音に、勢地郎と香須実が階段の方を見遣る。

香須実「……今の、もしかして……」

勢地郎「(頷きながら)……乗り越えてくれよ」

 

○たちばな裏の駐車場

 自家用車に飛び乗るトドロキ。

 ふと、手首の音錠を見つめる。

トドロキ「……やらなきゃ!!」

 エンジンをかけ、車を走らせていくトドロキ。

   *  *  *  *

 走りゆくトドロキの車を中心に、画面がX状に四分割。

 蛮鬼&縫鬼、威吹鬼&天月鬼&吹雪鬼、そして響鬼&暁鬼の戦う姿を映し出し、同時にストップモーション!

 

○一之巻・完

 

○エンディング曲

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