音撃戦士二〇一四   作:三澤未命

2 / 2
二之巻『甦る雷、そして新たなる謎』

Aパート

 

○三浦半島

 バケガニの大群と戦う蛮鬼と縫鬼。

蛮鬼「音撃斬・冥府魔道!」

 バケガニに突き刺した音撃弦・刀弦響を高速の指使いで奏でる蛮鬼。

 音撃の波紋がバケガニ全身に伝道していき……爆発!!

 一方、走りながらバケガニ数匹に手首のブレスレットから鬼針を発射して撃ち込んでいく縫鬼。

 蛮鬼の方は、その間にも別のバケガニへと音撃攻撃を仕掛けていく!

 縫鬼、ピタッと立ち止まって三味線型音撃弦・風月(ふうげつ)をかき鳴らす。

縫鬼「音撃節・絡繰無常(からくりむじょう)!」

 風月から流れる三味線の音色が、バケガニに撃ち込んだ鬼針に反応する!

 広がる音撃波紋、そして……爆発!!

蛮鬼「……もう少しです! 気を抜かないように!!」

縫鬼「ハイ!!」

 

○秩父山中

 疾風の射撃でバケガニを威嚇しつつ、旋風刃のキックでバケガニの足を斬り落としていく天月鬼。

 そして、威吹鬼は地面に体を落とすバケガニに音撃弦を突き刺し、次々と音撃斬を食らわせ四散させていく!

 一方、吹雪鬼は小型で動きの速いバケガニたちに対して、音撃管・烈雪(れっせつ)で鬼針を吹き矢の如く撃ち込んでいく。

吹雪鬼「チョコマカと……」

 そのまま烈雪を横に持ち替え、フルート音撃を奏でる吹雪鬼。

 小型バケガニに伝道する音撃波紋、そして……、爆発!!

 と、少し離れた木の陰に二つの人影が。

吹雪鬼「……ムッ?」

 さらに走り回る威吹鬼と天月鬼。

威吹鬼「……あと少しだ! 頑張れ、天月鬼!!」

天月鬼「はい! 威吹鬼さん!!」

 と、突如大きく地面が揺れ、割れた地表から真っ黒な巨大バケガニが出現!

威吹鬼「……何!?」

 

○国道

 自家用車でかっ飛ばすトドロキ。

 その表情には、鬼気迫るものが……。

 

○オープニング曲

 

○サブタイトル

 二之巻『甦る雷、そして新たなる謎』

 

○大洗・海岸沿い

 音撃弦をバケガニに突き刺し、独自の音撃斬を奏でていく響鬼。

 その周りでは、暁鬼が音撃棒・陽火でバケガニの足を斬り落としていく。

 順次、バケガニを四散させていく響鬼。

 しかし、時折リズムに乗れず、音撃の最中に別のバケガニに襲われて振り落とされてしまったりも。

響鬼「うわっ……と!」

 その光景を見て、ゴクリと生唾を飲むザンキ。

ザンキ「響鬼……」

 と、そこへトドロキの車が到着し、烈雷を手にトドロキが勇んで飛び出してくる。

ザンキ「……トドロキ!」

響鬼「……え?」

暁鬼「トドロキさん!!」

 瞬時に現場の状況を見て取ったトドロキ、烈雷を地面に突き刺し、手首の音錠を鳴らす。

 一瞬発光する音錠。

 しかし、やはり変身のエネルギーとなる稲妻は発生しない。

トドロキ「……くそっ!! 何で!!」

 ガクッと膝を落とすトドロキ、地面を叩いて憤る。

 それを見たザンキ、ゆっくりとトドロキの左腕を掴み、手首の音錠ブレスレットを外す。

トドロキ「……ザ、ザンキさん!?」

ザンキ「貸せ! 俺がやる」

 そう言いながら、自分の左手首に音錠ブレスレットを付けるザンキ。

トドロキ「無茶ですよ!! 引退してもう七年も経ってるんですよ!?」

ザンキ「フヌケのお前よりマシだ」

 ザンキ、左手首を上げ、右指でカチッと音錠ブレスレットの蓋を開ける。

暁鬼「ザンキさん、ダメです!! 今の身体で変身のエネルギーを発動させたら……!!」

 暁鬼が走り寄ってザンキを止めようとする。

 と、その前を左手で遮り、無言で止める響鬼。

暁鬼「……響鬼さん」

 ザンキ、一瞬目を瞑った後、カッと目を見開いて音錠を鳴らす!

 発光する音錠、そして稲妻エネルギーが天空から発生してザンキの身体を貫く!

 白煙の中、苦悶の表情のザンキ。

 そして、やはり途中で身体が耐え切れず、衣服が半分ほど焼け焦げた状態でバッタリと倒れ込むザンキ。

トドロキ「ザンキさん! ザンキさん!!」

 全身大ダメージのザンキが、身体を震わせながら口を開く。

ザンキ「……クッ! やはり無理だったか。もう……、俺もここまでかな、グッ!!」

トドロキ「ちょっ、何言ってんスか、ザンキさん!! 早く、早く病院へ……」

ザンキ「バカヤロー!! お前、今の状況が分からねーのか!! ……バ、バケガニを、早く何とかしないと!」

トドロキ「でも……、でも!」

 うろたえるトドロキ。

ザンキ「(何とか身体を起こし、トドロキの両腕を掴みながら)……トドロキよ、人はな、誰でもいつかは死ぬんだ。早いか遅いかの違いはあるが……、どんな末路であれ……、それは、この地上での役割を終えたということになるんだ、グッ! ……そ、そして、他人の死を受け入れることで、人は自分の死を自覚を持って背負う。じ……、自分の死を背負って初めて、人は真に生きる意味を知る、グアッ!!」

トドロキ「ザンキさん!!」

ザンキ「(息を切らしながら)……お前が、日菜佳ちゃんの死を受け入れられないのは、人として当然の弱さだ。……しかし、それを乗り越えて自分の死を背負っていくのもまた、人の使命なんだ!! ……人を守る鬼には……、鬼には……、その強靭な精神力がなければ、絶対に変われん!!」

 手の力が弱まり、バタリとその場に倒れ込むザンキ。

トドロキ「……ザンキさん!」

ザンキ「(頭を地面に突き刺したような姿勢のまま)……トドロキ、お前は……、お前は……、俺の弟子だったんだろーーーが!!」

 ザンキの心の叫びにハッと我に返ったようなトドロキ、ゆっくりと空を見上げる。

 と、宙空に浮かぶ日菜佳の笑顔。

   *  *  *  *

日菜佳「がんばれ~~~!! ト・ド・ロ・キーーー!!」

 トドロキの脳裏に、夏の鍛えの際に電話でエールを送ってくれた日菜佳の姿が甦る。

   *  *  *  *

トドロキ「フヌッ!!]

 トドロキ、涙を流しながらも精悍な顔つきとなり、落ちていた音錠ブレスレットを拾って立ち上がる。

 そして、ブレスレットを左手首に装着し、右指で勢い良く音錠を鳴らす!

 ビカビカッと発光する音錠!

 そして稲妻エネルギーが天空から発生し、トドロキの全身を貫く!!

 ……白煙が止み、轟鬼参上!!

 轟鬼、烈雷を手に取り、ゆっくりと前へと歩み始める。

轟鬼「……俺は、甘かった。俺は、何も分かっちゃいなかった。ただ自分のことしか、考えてなかったんだ……!!」

 轟鬼、走り出し、烈雷でバケガニたちの足を次々と斬り落とす!

 傍らでは、響鬼が暁鬼に無言でサインを送る。

 暁鬼、一つ頷いてザンキのもとへと走る。

轟鬼「俺は戦う!! 鬼として! ……そして、生ある人間として!!」

 気合いのジャンプでバケガニの背中に飛び乗るトドロキ。

響鬼「……へっ」

 響鬼、変身体ではあるが鼻の辺りを指でチョンとはじき、再びバケガニの群れへと走る!

 轟鬼と響鬼が、バケガニたちに対して音撃を再開!

轟鬼「音撃斬・雷電激震!!」

 轟鬼、二年ぶりの音撃斬は激しくも美しく、日菜佳への鎮魂歌の如くその場に響き渡る!

 そして……、爆発!!

   *  *  *  *

 全てのバケガニを退治し、茫然と立ち尽くす轟鬼。

 そこへ、響鬼が顔だけ変身解除しながら近付く。

 轟鬼、近付いてきたヒビキに気付き、自分も顔だけ変身解除する。

トドロキ「……ヒビキさん」

 ヒビキ、シュッのポーズでトドロキの戦いを労う。

トドロキ「……すいませんでした!!」

 ヒビキに対して、大きく頭を下げるトドロキ。

トドロキ「俺のせいで……、俺のせいで二年間も……!」

ヒビキ「(トドロキの肩にポンと手を置き)人の死を表面的に受け入れることは容易い。でもな、心から受け止めてやらなきゃ、本当の供養にはならないんじゃないか? お前に今必要なこと……、それは、日菜佳ちゃんを笑顔で送り出してやること、じゃないかな」

トドロキ「ヒビキさん……」

 トドロキ、涙をボロボロ流しながらも徐々に笑顔へと変わっていき、再び空を見上げる。

 それを、優しい眼差しで見つめるヒビキ。

ヒビキ「……あと、ザンキさんにもな」

トドロキ「(ギョッとして)そうだ!! ザンキさん!! ……まさか!?」

 振り返り、ザンキが倒れていた辺りまで走っていくトドロキ。

 しかし、既にザンキの姿はない。

トドロキ「……ちょ、ヒビキさん! ザンキさんは一体!? ……あれ!? 俺の車もない!?」

 ヒビキ、うろたえるトドロキを見てほくそ笑みながら歩き出す……。

 

<Bパート>

 

○三浦半島&たちばな地下作戦室

 バケガニ最後の数匹を、同時に四散させる蛮鬼と縫鬼。

 ……爆煙が止む中、互いに歩み寄りながら顔の変身を解く蛮鬼と縫鬼。

ホウキ「お疲れ様でした!」

バンキ「……いや、ホウキさんもありがとう。助かりました」

 各自の車両へと戻っていく二人。

 そして、ホウキが携帯電話で連絡。

ホウキ「……こちらホウキ! 三浦半島のバケガニ退治、完了しました!!」

   *  *  *  *

 電話を取る勢地郎。

勢地郎「ああ、そうかそうか。そいつはご苦労さん」

   *  *  *  *

ホウキ「他の場所はどないですか?」

   *  *  *  *

勢地郎「ああ。大洗の方もさっき片付いたそうだ。……トドロキ君の、復活でね」

   *  *  *  *

ホウキ「ええっ!? トドロキさん、戻ってきはったんですか!? ……良かった」

 ホウキの言葉を横で聞き、大きな溜め息とともに胸を撫で下ろすバンキ。

   *  *  *  *

勢地郎「ああ。……あとは秩父だけだが、こちらはもう少しかかりそうだね。……とりあえず、こっちへ戻ってきてくれるかな」

   *  *  *  *

ホウキ「……あ、ハイ! 分かりました!!」

 電話を切るホウキ。

ホウキ「聞きました? バンキさん!! トドロキさん復活しはったって!!」

バンキ「はい。……いやあ、ホントに良かった。これで、ちょっとは休み貰えるのかなあ?」

 大きく伸びをしながら、悪戯な目でホウキを見遣るバンキ。

ホウキ「へ? ももも……もっちろん! あ、いや……、多分……」

 少々焦り気味のホウキ……。

 

○秩父山中

 地表を割って現れた真っ黒な巨大バケガニが、大きな唸り声を上げる。

 他のバケガニ集団を一掃し、威吹鬼、吹雪鬼、天月鬼の三人がその目の前に歩み寄る。

威吹鬼「デカいけど、見た目は色の違いだけですかねぇ」

天月鬼「口元の感じがちょっと違うような気もしますが……」

吹雪鬼「フム……。天月鬼さん、出来るだけ記録をお願い」

天月鬼「分かりました」

威吹鬼「じゃあ、とりあえず正攻法で攻めてみましょうか。吹雪鬼さんは麻痺攻撃をよろしくお願いします」

吹雪鬼「了解」

 吹雪鬼、黒バケガニの左側へとジャンプ移動。

 天月鬼は右側へと移動し、疾風に記録用の特殊鬼石を込める。

 そして威吹鬼は、正面から音撃弦を携えて走る!

 吹雪鬼、烈雪で鬼針を黒バケガニに撃ち込んでいく。

 天月鬼は、疾風の射撃で鬼石を数弾、黒バケガニに撃ち込む。

 その間、威吹鬼は音撃弦で黒バケガニの足を斬り落としながら腹元へと接近!

 と、ここで黒バケガニが黒い泡を噴射!

威吹鬼「うわっ!!」

 転がり避ける威吹鬼。

 しかし、若干浴びてしまった右肩の辺りが瞬時に溶解していく。

威吹鬼「凄い威力だ」

吹雪鬼「威吹鬼君、一旦離れて! ……音撃射・流麗縛身!」

 吹雪鬼、烈雪を横に構えてフルート音撃を奏でる。

 黒バケガニに撃ち込んだ鬼針が反応し、次第にその動きが鈍ってくる。

 グラつき、バタリと倒れ込む黒バケガニ。

 しかし、全身が麻痺しきってはいない様子。

吹雪鬼「完全には効いてないわね」

威吹鬼「でも、これならいけそうです! ハッ!!」

 ジャンプして、黒バケガニの背中に飛び乗る威吹鬼。

天月鬼「威吹鬼さん! 泡の噴射口に気を付けて下さい!」

 天月鬼、そう言いながら逆サイドへも回り込んで記録用鬼石を黒バケガニに撃ち込んでいく。

威吹鬼「了解。……この辺かな」

 威吹鬼、周囲に泡の噴射口がないことを確認して音撃弦を突き刺す。

 と、なんと斬り落としていた右足付根の部分から黒い泡が吹き出し、傍にいた天月鬼の足元を襲った!

天月鬼「キャッ!!」

威吹鬼「……天月鬼!!」

天月鬼「だ、大丈夫です、威吹鬼さん! 早く音撃を!!」

威吹鬼「……よし!」

 威吹鬼、音撃弦をかき鳴らし、黒バケガニに音撃波紋を伝道させていく。

天月鬼「……つ!」

 右足に多量の泡を浴びてしまった天月鬼、みるみる内に人工皮膚が溶解していく。

 と、そこへ吹雪鬼が瞬時に移動、天月鬼を抱えてジャンプ!

 威吹鬼の方は、懸命に音撃斬攻撃!

 何とか黒バケガニの全身に音撃波紋が行き渡り、そして……爆発!!

 少し離れた木の陰から覗いていた二つの人影が息を呑む。

 その姿は、若い和装の男女。

 男女は互いに頷き合い、その場からスッと消えた。

   *  *  *  *

 顔の変身を解き、天月鬼のもとへと走るイブキ。

イブキ「アマツキ!!」

 イブキが駆け寄ると、顔の変身を解いたフブキが応急処置用のディスクを音笛で操作して、同じく顔だけ変身解除したアマツキの右足を治療している。

フブキ「……これでひとまず溶解は止まったわ。でも、急いで本治療に入らないと!」

イブキ「フブキさん! アマツキを頼みます。……僕は、採集カプセルを回収してから戻りますんで」

フブキ「分かったわ」

 フブキ、アマツキを背負って専用バン・結晶(けっしょう)へと運び込む。

イブキ「……アマツキ。……いっ!!」

 イブキ、僅かに解けた右肩の痛みを堪えつつ、アマツキの撃ち込んだデータ採集用記録鬼石のカプセルをいくつか拾い集めていく……。

 

○たちばな・店前

 ヒビキは凱火で、トドロキはアカツキの専用バイク・太陽で戻ってきた。

 二台のバイクがたちばな前に停車。

 

○同・店内

 勢い良く扉が開き、トドロキが姿を現す。

トドロキ「ザンキさん!! ザンキさんは……!?」

 我を忘れたように店内に叫び入るトドロキ。

 数組の客が同時に注目。

香須実「ちょ……、トドロキさん!」

トドロキ「あ、すいません……。でもあの……」

 香須実、指でクイクイッとトドロキに奥へ入るよう合図。

 それを見て、そそくさと奥へと走っていくトドロキ。

香須実「……全く」

 と、ヒビキが静かに入っていくる。

ヒビキ「ただいま~」

香須実「あ、お帰りなさい!」

 香須実、ヒビキに近寄って耳打ち。

香須実「ねぇ、トドロキさん、ホントに大丈夫だったの?」

ヒビキ「ヘヘッ。大丈夫だったから、あの調子なんじゃないの?」

香須実「……あ、なるほど」

 納得する香須実。

ヒビキ「他のみんなは?」

香須実「ああ。バンキ君とホウキさんは下に戻ってる。イブキ君たちはまだみたい」

ヒビキ「そっか。分かった」

 ヒビキ、そのまま奥へと入っていく。

お客「すいません」

香須実「あ、は~い!」

 接客に入っていく香須実。

 

○同・地下作戦室

 階段を駆け下りてくるトドロキ。

トドロキ「事務局長! ザンキさんは!? ザンキさんは無事なんですか!?」

 室内では、勢地郎、バンキ、ホウキ、みどりが机を囲んでいた。

勢地郎「やあトドロキ君、ご苦労さんだったねぇ」

トドロキ「あの、ザンキさんの具合は……!?」

勢地郎「……あ、聞いてないのか。そうか……。いや、ザンキ君はね……、もう……」

 机に手をつき、うつむく勢地郎。

トドロキ「え!? ええっ!? まさかそんな……!!」

 バンキ、ホウキ、みどりも悲しげな表情で見つめ合ってうつむく。

 トドロキ、愕然とした表情で立ち尽くす。

勢地郎「……なんてね。大丈夫。重傷は重傷だけど、命に別状はないよ。さっき、君の車で病院に連れて行ってくれたアカツキ君から連絡があった。まあ、しばらくは入院だろうけどね」

トドロキ「……ああ、良かった! 良かった~! ……もう! みんな、ヒドいですよ~」

 情けない表情で皆を見回すトドロキ。

みどり「(笑顔に戻って)トドロキ君には、あのくらい言っとかないとダメだって、ザンキさんが」

ホウキ「それに、トドロキさんには今までバンキさんが頑張ってくれてた分、取り返してもらわなあきませんからね~」

 ニヤッと笑みを浮かべるバンキ。

トドロキ「(ハッとして)す、すいませんでした! バンキさん!! ……俺、これから毎日、バンバン働きますから!!」

バンキ「じゃあ、俺はちょっと海外旅行にでも行かせてもらおうかなあ~」

みどり「……バンキ君」

 ジロリとバンキを睨むみどり。

バンキ「や、冗談ですよ冗談! ……おーこわ」

 クスクスと笑うみどりとホウキ。

 と、作戦室の電話が鳴り、ホウキが素早く取る。

ホウキ「ハイたちばな! ……あ、イブキさん!? ……そうですか、お疲れ様です! ……え? ええっ!? ホンマですか!?」

 ホウキ、勢地郎と電話を代わる。

勢地郎「どうした? ……うん、アマツキ君が? ……そうか、そいつは大変だったねぇ。で、そっちはフブキ君がついててくれてるんだね? ……分かりました。待ってます。……はい」

 電話を切る勢地郎。

勢地郎「アマツキ君も足を負傷したらしい。今、フブキ君が病院へ連れて行ってくれてるそうだ」

みどり「……大丈夫かな、アマツキ君」

勢地郎「まあ、フブキ君がいるなら大丈夫だろう。……で、イブキ君は奇種体だった黒バケガニの記録を持って、もうすぐこっちへ戻ってくるようだ」

みどり「そっか。こないだアマツキ君が採集したイッタンモメンのデータと合わせて、分析を急がないとね」

 真剣な面持ちとなる全員。

 と、ヒビキが階段の途中からトドロキに声をかける。

ヒビキ「おい、トドロキ」

 トドロキを手招きするヒビキ。

 トドロキ、皆の方をチラッと見た後、階段を上っていく。

トドロキ「……何ですか? ヒビキさん」

ヒビキ「何ですかじゃねーだろ」

 真剣な表情なヒビキ。

トドロキ「……あっ!」

 ヒビキの意を察したトドロキ、同じく真剣な表情となり、二人で和室の方へと向かっていく。

 

○同・和室

 和室に入るヒビキとトドロキ。

 その奥には小さな仏壇があり、中には日菜佳の黒塗り位牌が。

 トドロキ、仏壇の前に正座し、お鈴を鳴らして手を合わせる。

トロドキ「……日菜佳さん、すみませんでした。俺、ホントに自分のことばっかだったみたいで……。でも、もう迷いません。あなたの分までしっかりと生き抜いてみせますんで、見てて下さい!!」

 トドロキの力強い言葉に、後方で微笑みかけるヒビキ……。

 

○都内・某所

 町外れ、寺院を改装したかのような独特のテイストを持つ建物。

 そこへ、和装の男女が入っていく。

 建物の外塀には『御多福会』の文字。

   *  *  *  *

女性の声「お帰りなさいませ」

男性の声「もうお集まりですか?」

女性の声「はい。間もなく儀式を……」

男性の声「分かった」

   *  *  *  *

 異様な空気を醸し出す寺院風の建物。

 そこから、念仏のような声が繰り返し繰り返し聞こえてくる

声「鬼はぁ~そと。福はぁ~うち。……鬼はぁ~~~そと。……福はぁ~~~うちぃ……」

 

○二之巻・完

 

〇エンディング曲


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。