霊帝の守護者 -漢王朝
私の名前は
宦官の一人で、皇帝に仕える近衛兵を統括する立場――ということになっているらしい。
此処、洛陽の宮中では賄賂を送らなければ出世できないと云う話は聞いていたので、資金繰りのできない私は最初から出世を期待していなかった。歳を取っても働き続けられるように健康的な日常生活を心掛けて、肉体の鍛錬を日課とする。そして知識を貪欲に取り込むことで己を高める。ぶっちゃけた話、宦官になったのは人並み以上の贅沢を求めてのことで、漢王朝に対する忠誠心も出世も人並み程度にしか興味はなかったりする。
そうしていると何時の間にか宮中勤めの宦官の中では頭一つ抜きん出た膂力を持つようになっており、厄介払いをするように近衛隊への編入が決まる。その近衛隊では歓迎会が開かれて、百人組手という催しが行われた。流石に達成するのは難しいと思ったのが、先輩方は手加減してくれたのか、あっさりと百人抜きを決めてしまった。また近衛隊では厳しい鍛錬が行われると聞いていたが、私が日課にしている鍛練と同じ程度しか行われず、私の教育係を務めていた者が汗だくになった顔で詫びを入れてきた。よく分からない。そして教育係が二人、三人と増えていくのは贔屓を受けているようで申し訳なくて、「他の者も見てやって欲しい」と告げると彼らは笑顔で「流石のお前もこれだけの人数がいると恐れるのか」と挑発して私のやる気を誘発させてくれるのだ。
これだけの期待を受けたならば、私も張り切らなければならないと五人の教育係を相手に鍛錬を始めた――何故か全員が泣いて詫びてきた。そうしている内に上官が次から次へと辞めていき、そして今、気付いた時には何故か私が近衛隊を纏めるようになっていた。私はあまり賢くもなかったので、とりあえず私と同じ量の鍛錬をさせている。
ある日、新しく執金吾に任じられたという張遼が私達の様子を見にきた。
「なんや、こいつら。下手な精鋭部隊よりも余程、屈強やで……本当に宦官か? 徐晃の部隊も強そうやったけど、それ以上やな。腐っても漢王朝っちゅーわけかいな」
そのようなことを張遼は言うが特別なことをしているつもりはなかった。
「凄いなあ、蹇碩殿。どうやったんや?」
「いえ、普通のことをやったまでです」
冗談と受け取ったのか張遼は大声で笑ってみせる。
後日、なぜか張遼が私との手合わせを願って近衛隊の屯所まで来ることが増えた。