数え役満☆姉妹の一人として、全国各地を講演の旅に出ている。
言わずと知れた張角三姉妹の長女、太平道とは関係がない。治術も使えない。
言ってしまえば、ただいま売れっ子の歌い手である。
▼馬元義:
太平道創設メンバーの一人、実質的に太平道を纏めている人物。
一見すると細身であるが全身を筋肉を纏っている、所謂、細マッチョと呼ばれる肉体をしている。身長も高めで男性に引けを取らない。
波才とは一回りくらい歳上。
▼裴元紹:
太平道黎明期に加入した人物、義侠の出身で裏世界に通じる。
太平道の主要メンバーで最も体格が良く、力比べであれば馬元義に引けを取らない。
寝癖が酷くて稀に馬元義に捕まって整えられたりする、年齢は馬元義と波才の真ん中辺り。
▼波才:
太平道創設メンバーの一人。太平道の巫女、黄巾党会長、大賢良師と様々な肩書きを持つ。
道教の秘術を扱える存在で、元気になれ、と病魔を退治することができる。
数え役満☆姉妹の熱烈なファン、巫女装束の少女。
大草原、幾人もの人物が踏み均してできた道を私、
肌に感じるのは涼やかな風、耳に聞こえるのは草木が擦れる音、耳を澄ませば自然の音楽が奏でられる。
つい口遊むのは自前の曲であったり、幼い頃に聞いた童謡であったり、日によって姿を変える移り気の自然のように、気分が赴くままに歌いたいものを口にする。時には空を飛ぶ鳥を空想して、時には水を泳ぐ魚を思い起こして、その瞳に映る光景を瞼の裏に投影する。
自分の目に映るものだけが世界ではない、この世に生きる全ての生物が見る光景こそが世界なのだと私は思っている。同じ景色でも見るものによって姿を変える。例えば今、私が見ている光景は私だけのものであり、私が心に想い描く色模様もきっと私だけが持てるものだ。
形式や格式で凝り固まったものは退屈だ。それでも表現者はありきたりな表現の中にも想いを詰め込んでいる。
例えば、絵であれば一本の線の強弱に印象を描いて、文章であれば句読点の間の取り方に想いを詰め込み、歌であれば息継ぎにすらも感情を注ぎ込んでみせる。芸術性の話をしているつもりはない。それが表現というものなのだ。誰かが誰かと同じ歌を歌ったとしても、そこに詰め込まれる心が違っている限り、それは決して同じものにはならない。声質の話をしているわけではない、もっと根本的で、もっと根源的な話をしている。
私が歌って躍るのは、そうすると、きっときっと楽しいからだ。そこに複雑な過程はあっても、複雑な思想はない。何時だって私達は根源的な単純で簡潔な想いを心に抱いて行動している。
きっと楽しいと想う心が大切なんだって、私はそう思っている。
「なんだか忙しくなったよねー」
そうぼやくのは隣にいる妹の
「そうね、ここまで人気が伸びるのは予想外。四六時中、馬に揺られるのは流石に疲れるわ」
憂鬱げに呟くのは末女の
「まあ確かに最近は忙しくなったねー」
馬に揺られながら私も妹達に同調するように口を開いた。
もう馬に乗っての移動も慣れたものだ。それ程までに東奔西走と公演続きの日々を送っており、公演の度に喉を枯らす程に全力で歌を歌った。それができるのも私達の護衛に就いている黄巾を頭に巻いた者達のおかげだった。確か黄巾党と言っていたか、やってることは後援会と同じようなもので、食事の用意から旅路の護衛、宿屋の手配に舞台の準備。正に致せり尽せりといった待遇を受けている。
そのおかげで私達は歌を歌うことだけに専念できる、歌を歌った後には喉に良いからと蜂蜜飴も用意してくれる。
「でもまあ、あの時は誰も私達の歌を聴いてくれなかったけどさ。こんなに私達の調子が良いのって天和姉さんがあの子を拾ってきてからじゃないの? 本当に大陸狙えちゃうかもね」
なんだかんだで歌うのが好きで、歌を聴いてもらうのが好きな私達だから忙しい今に不安はない。
強いてあげるとすれば、嬉しい悲鳴というものだ。
「あの子って、
立直とは豫州の町で見つけた少女のことだ。
あの日、あの時、見つけた少女は飢えている様子もなく、衣服も小綺麗だったのに目が死んでいた。比喩ではなく、いや比喩ではあるが、あの時の彼女の目は本当に死んでいるように思えたし、子供と考えるには歪なやつれ方をしていた。今にも消えてしまいそうで、死に場所を探すように、まるで幽鬼のように、ふらりふらりと街中を一人で歩いていたから気になったのだ。
もしかしたら死ぬつもりじゃないかって、そう思うと見過ごすのはあまりにも後味が悪過ぎた。それで人通りが少なくなった場所で泣き崩れた時はどこか安心をしたし、そしてそこまで見届けてしまったからには放っておくこともできなかった。
握り締めた拳を痛みつけるように、自らを傷つけるように地面を殴り始めたのは飛び出すきっかけに過ぎない。
「そう、私達のファン第一号ッ!」
「今じゃ確か黄巾党の会長だったっけ? 私達が歌に集中できるのも彼女のおかげ、本当に姉さんは良い拾い物をしたわね」
確かにそうかもねー、と間延びした声を答える。
生気のない彼女に私達の歌を聴かせたのは、こういう人にこそ歌を聴かせてあげたいと思ったからだ。
私達にはご飯もお金もないけども、歌を歌うことができる。元気付けてあげたいと思って、目の前にいる独りの少女すらも助けられなくて、どうして歌で生きているのかと有りっ丈の気持ちを乗せて歌った。彼女一人のために、私の想い、私の全てを歌に乗せる。言葉じゃ伝わらないことを歌に乗せて、私という人格を表現した。
凄い、と呟いたのは誰だったか、気付けば妹二人は歌うのをやめて私だけが歌っていた。
「というか天和姉さん! あの子に真名を預けて貰ってるわけ!? うっそー、私まだ真名を交換してないよ!?」
「私もまだよ。私達の間に抜け駆けはなかったはずだけど?」
「抜け駆けってそんな、恋人の奪い合いじゃないんだし……」
二人に左右から言い寄られて、私は苦笑いで誤魔化す他にない。
真名だって交換したというよりも強引に預けられたものだ、というよりも「握手をしてください、サインをください。此処に真名で立直さんへって付けてください。ああもういっそ私のことを立直って呼んでください!」と言われてしまった時、はたして私がどのように対応をするのが最善だったのか誰か教えて欲しい。誰よりも熱心な私達のファンに押し切られて、つい私は真名を交換してしまったに過ぎなかった。
それ以後も立直は私のことを張角と呼んでいる。理由を聞けば、畏れ多いとのことだ。真名を預けてしまったのも気の迷いのようなものだった、と必死で弁解してきたのを今でも鮮明に思い出せる。なら私の方も普通に呼んだ方が良いかって問うと、ちゃんと真名で呼んでくれた方が嬉しいと気恥ずかしそうにしながら訴えるのだ。ファンというのは、なんとも面妖な性質を持った存在らしい。
つまるところ二人に真名を預けていないのも、畏れ多い、というのが理由ではないだろうか。
「公演を支援してくれるし、私達の宣伝もしてくれるし――良妻賢母とはこのことね」
「良妻って……ちょっと言い過ぎじゃないかなぁ」
流石に見た目、年下の少女に母性を感じたいとは思わない。
というよりも彼女のことをよく知っている私からすれば、彼女は暴走しがちな女の子であり、側にいると目を離せないのだ。
つい世話を焼いてしまうのもそのためで、手間のかかる妹が一人増えたような気分だった。
「いいや、天使だよ! 私達の女神と言ってもいいかもね! 天和姉さんも最近、なんかしっかりしてるしッ!」
「えー、そうかなー?」
昔からそこまで酷かった記憶はない。
ちょっと人よりも頭の回りが遅いだけで、考えることは考えてきたし、妹二人には苦労をかけないようにと思って生きてきた。
私達三人が食べて生きられるだけの稼ぎと考えれば、とても真っ当な生き方をできるとは思えない。だから治安の良いと聞いていた豫州を目指していたし、そこでも駄目そうならば洛陽に向かう予定もあった。
その計画が白紙に消えたのも、立直との出会いが全てだった。
「あの子は私達にとって必要よ。絶対に手放しちゃ駄目よ」
今でこそ彼女は私達の後援会の会長を務めているが、そういうことを彼女に求めていた訳ではないのだ。元気付けたい、歌を聴いて欲しい、それで少しでも救われてくれると嬉しい、そう思って歌を贈っただけに過ぎない。だから私達のファンになってくれるのは素直に嬉しかったけども、流石にここまで支援を受ける立場になると後ろめたさが出てくる。ましてや妹二人よりも年下の少女だ、騙している気がして仕方ない。しかし彼女の支援がなくては私達が公演を続けられないのも事実であり、立直の好意に甘える他に取れる手段なんてなかった。
そんな彼女を報いるには、彼女の信じてくれた歌を全力で歌い続ける他にない。
「でも本当に最近の私達は凄いよ、もしかしたら天下も獲れちゃうかもね。ここまで来たなら私達の歌で大陸を満たそうよ!」
地和の言葉に「そうね、私達ならいけるわ」と人和も乗り気のようだ。
調子が良い二人を見て、私は逆に上手く行き過ぎている、と根拠のない不安を抱えていた。まるで急流の川を滑り落ちるように、私達の意思とは無関係に、何処とも知れない場所へと向かっている。それは未知の絶景へと導いてくれるかもしれない、大海原まで向かっているのかもしれない。それとも滝壺へと叩き落されるかもしれない。
運命の歯車は回り続ける、私達を乗せた方舟は止まらない。
活発な妹に知的な妹、そして脳裏に思い浮かべる三人目の妹。三人と比べると頭の回転が遅い自分ではあるが、姉として妹を守り助けるのは当然だと思っている。
いざとなれば身を呈してでも、この身を捧げることになっても守ってみせる。
「天和姉さん、行くよ」
差し伸べられる地和の手に従って、馬を前へと向かわせる。
まるで生き急いでるような錯覚、だからといって立ち止まることはできない。
その段階は疾うの昔に超えてしまった。
◇
――蒼天已死...
◇
出会い茶屋で決意表明 をした
それとなしに黄巾党のまとめ役である
なによりも
決して子宝を得られない体になった宦官と血縁を大切にする外戚贔屓の儒教は相性が悪い。そのため儒教に不快感を示している者は多く、道教に興味を向ける者は一定数存在していた。洛陽の内側に味方を作り、革命の手引きをさせる。今や宮中の地図を手に入れて、一日の動きを事細かに把握するまでに至っている。
着実に革命の準備は進められている、太平道とは別に各地で革命の同調者も増えている。
あまりにも事が進み過ぎている、早過ぎる。
世の中には気運と呼ばれるものが確かに存在しているが、それは言ってしまえば大勢の人間による意思の大流である。この大波は乗って制御するものであり、決して飲み込まれてはならない。あまりに大き過ぎる意思の本流は、一手でも打ち間違えれば船から転げ落ちて溺死する可能性がある。
私、
時には急ぐことも必要だ、しかし地盤を固めないことには全てが水泡に帰することになりかねない。
「今しかない」
しかし起家は足を止めようとはしてくれなかった。何処までも突き進む、止まったら死ぬとでも言わんばかりに前のめりだった。
「兵は拙速を尊ぶ、ここまで来たらもう短期決戦しかない」
あまりにも異常すぎる黄巾党の拡大は、漢王朝から目を付けられる危険性を孕んでいた。
その大半は張角三姉妹の追っかけであるが、太平道の工作員、もしくは今の漢王朝に業を煮やした義侠の者達が黄巾党に紛れ込んでおり、中黄太乙を合言葉に暗躍をしている。今はまだ水面下での活動だが、私達の活動が表面化するのも時間の問題だ。
そうなれば黄巾党の解散は勿論、太平道も窮地に陥ることになりかねない。
「……それでも今は足場を固めるべきだ」
だが私達はまだ黄巾党を掌握しきれていなかった。
黄巾党に所属する大半は何の事情も知らない民衆だ、革命の気運を高めるにも時間がいる。いざという時に同調してくれなければ意味がないのだ。だからこそ私は黄巾党に太平道の考え方を浸透させて、まるっと太平道に帰化させてやろうと企てたのである。
しかし彼女、起家は何処までも突っ走ろうとする。
「大丈夫、私にいい考えがある」
なんとなしに不安感を煽る言葉を口にして「近々、私は此処を離れることになる」と付け足した。
「次は何処に行くつもりなんだ?」
「洛陽だ」
私を見つめていながら、私のことを見ていない。そんな目で彼女は答える。
「黒山軍の頭目である張牛角と渡りの船を付けることができた。留守はお前と宝牌《管亥》に任せる。もしかすると予定が早まる可能性もあるかもしれない、その時は各地の指揮を二人に任せたい」
決定事項とでも言わんばかりの言い草に、私は分かりやすく溜息を零すも彼女には見えていないようだった。
革命の時は刻一刻と迫っている。嫌な予感がする、今はまだ、その時ではない気がして仕方ない。あまりにも事が性急すぎる、本当に見落としはないか。考えても、考えても、答えには辿り着けない。何か致命的なものを見落としている気がして仕方ないのだ。
何故、こうも彼女はこうも生き急ぐのか。考えるにも時間が足りない、集められる情報にも限りがある。
この心配が杞憂であれば良いのに、と願わずにはいられなかった。
◇
――蒼天已死、黄天當立...
◇
儘ならぬ人生、官僚に搾取される日々、何のために生きているかも分からない。
そんな迷える子羊の一人である俺達に張角三姉妹の歌声が心の奥底にまで染み渡り、魂が震え上がった。言葉にはできない尊い感情、どうしても言葉にしなくてはならないとするならば、感動、ただ一言の想いが荒んだ世の中で乾ききった心を潤すのだ。
彼女たちの歌声を初めて耳にし、俺は涙を流していた。どうして泣いているのか分からなくて、困惑し、しかし彼女達の美しく透き通る歌声を聞いている内に理由なんていらないことに気付いた。そうだ、俺は感動しているのだ。彼女達の歌声に感動して涙が溢れて止まらない。
気付いた時には声を張り上げていた、張角ちゃん! と、張宝ちゃん! と、張梁ちゃん! と、彼女達の名前を呼んだ。
この胸に宿した想いを伝えたくて、しかし言葉にもできなくて、少しでも感動したっていうことを伝えたくて声を張り上げる。そして出た言葉は、ありがとう、その一言だった。もう心の内側は感謝で埋め尽くされていて、もっと言いたいことはいっぱいあったはずなのに、口から出るのは感謝の言葉ばかりだった。
生まれてきて良かったと、彼女達の歌声に救われたと、涙が溢れて止まらなくて、嬉しくて、幸せで心がいっぱいで、それが逆に辛くて、もう死んでも良いんじゃないかなって、必死に手を振って声を張り上げる。ありがとう、ありがとう、と何度も繰り返していると、ふと、その時、張角が俺の方を向いて微笑んでくれたんだ。
もう死んだ、と思った。絶対に死んだ、と思った。死んでも良い、と思った。
それは気のせいだったのかもしれない、でも気のせいでも構わない。その時に俺は確かに死んでしまって、そして肉体はそのままに魂が浄化されて生まれ変わった。そこには天国があった、彼女の笑顔に天国を見た。彼女達の姿を見ると胸が高鳴る、彼女達の歌を聴いていると心がときめく、嗚呼、なんと素晴らしき歌唱力、まさに聖歌の如く、俺にとっての国歌、彼女達の歌に俺の心が帰属する。
決して絶やさぬ笑顔は太陽の如し、この真っ青な空すらも太陽の輝きで黄金色に染めてしまえるに違いなかった。
蒼天は既に彼女を前にして死んでいる、正に黄金色の笑顔で天下を塗りつぶす時が来たのだ。
彼女達が笑う時、俺達も笑顔になれる。どんなに苦しくても、辛くても、悲しくても、彼女達の歌に励まされて、奮い立ち、再びわたし達は立ち上がることができるのだ。
正に張角三姉妹は動乱の世の中に舞い降りた女神と云える、その在り方は生きながらの神話であった。
だから、俺は思ったのだ。いや、決めたのだ。
何処までも彼女達に付いていこうと黄巾を頭に巻いた。
彼女達の歌と共に俺達は在る。
◇
――蒼天已死、黄天當立。歳在甲子...
◇
私、
その中でも嬉しいのが皆が数え役満☆姉妹を認めてくれるようになったことだ。
黄巾党の会長しての業務も増えたけども、それだけ張角三姉妹が認知されるようになったということだと思えば苦痛なんかなかった。今では中原を中心に黄巾党の支部まで建つようになり、その勢いは止まることを知らない! 凄い! 太平道としての業務も兼任している身の上、民衆の病魔を退治することも考えれば、数え役満☆姉妹の公演に足を運ぶことが随分と減ったことが近頃の悩みである。
とはいえ、秘術を扱えるのは太平道では私だけだ。
今も病魔で苦しんでいる人がいると考えれば、とてもじゃないが休むことができない。
本当は彼女達が公演旅行に付いて行きたかった。
洛陽に向かったという
公演を見に行く暇もないはずだ。
だから羨ましいとか思わず、ここで彼女達のことを応援している。
太陽の方角に向かって、朝昼晩とお祈りも捧げている。暇があれば彼女達の歌を口遊んでいる。私は大丈夫だ、少し寂しいけども彼女達が帰ってくるのを待ち続ける。張角にも良い子にしてたら頭を撫でて貰える約束をした、だから頑張るのだ!
約束をしたから待っていられる、また彼女の歌を聴ける信じているから寂しくても耐えられる。何故ならば“あいはだってだって最強”だからっ! 愛を感じることができれば、多少の苦難は耐えられる、乗り越えられる。約束が私と張角を繋いでいる、遠く離れていても繋がっている。
そして出会った時は頭をたっぷりと撫でて貰うのだ。そのことを想うだけで幸せだ、幸せ者だ。こうやって待ち続けている時間も愛を育むためのもので――次に会った時、ちょっと抱き着いても構わないだろうか。迷惑だろうか、畏れ多くて尻込みしそうだ。でも、それを想像するだけで私は幸せ兎の妄想警報、幸福絶頂中で身悶えする。
何を考えていても、何をしていても今の私は幸せになれる気がする。
正に無敵、正に最強!
それもこれも太平要術の書のおかげだ。
私が願ったのはたった一つの小さな願い、少し背中を押しただけに過ぎない。
だから、ここまで数え役満☆姉妹が有名になったのは紛れもなく彼女達の力であり、その勢いは大陸全土を飲み込むほどだ。世界は歌で繋がれば良い、もっともーっと歌で皆が繋がれば、きっとそれは素敵なことに違いないのだ。
ああもう楽しい、本当に毎日が楽しくて、嬉しくて、思わずくるくるっと回っちゃう! 幸せいっぱいで夢いっぱいだ!
心がときめいている、世界はキラキラと輝いている!
窓からバンッ! と身を乗り出して、おはようございますって意味もなく叫びたい気分だ。
叫ぶのは流石に恥ずかしくってできなかったけど、勢いのまま窓を開けた時に偶然、木の枝に停まっていた小鳥に「おはよう」って控えめに手を振った。その時、なんとなしに外を眺めてみると――なにやら慌ただしい様子、そして見知った顔が私がいる屋敷に駆け込むところだった。
どたばた、と部屋に上がり込んでくる彼女、
「張角捕縛の勅が出された! 黄巾党が逆賊として討伐対象になったぞッ!!」
パサリと両手から太平要術の書が床に落ちる。
その時、私はどんな表情を浮かべていたのだろうか。
程なくして、黄巾を頭に巻いていない太平道の面子が次々と屋敷に乗り込んできた。
◇
――蒼天已死、黄天當立。歳在甲子、天下大吉。
◇
太平道の一拠点、
漢王朝が張角捕縛の勅を出したという報告を聞いた時、
それから頭をバリボリ掻き毟りながら目一杯の悪態を吐き捨てた。
「あの野郎、