此処は荊州南陽郡、
私、
対面で将棋盤を睨みつけるのは家主の楊宏。身長は私よりも頭二つ分ほども高くて、黒色の髪は背中を覆い隠すほどに長い。普段は温厚そうな顔付きをしている彼女も今だけは眉間に皺を寄せて唸り声を上げている。そんな彼女が睨みつける盤上に、私も視線を落とす。状況は私の優勢、どうにか現状を覆してやろうとする楊宏は盤に穴が開きそうな程に盤上を見つめたまま微動だにしない、きっと今日まで積み重ねてきた黒星の数が彼女に安易な考えを許さないのだろう。
もう暫くかかりそうでしょうかー、と私は予測される次の手を一通り読みきった上で膝上に置いていた書籍に目を通した。
充実した毎日を過ごしていると思っている、退屈した毎日を送っていると思っている。
誰かと長閑な時間を過ごすというのは私が思っていた以上に心地良いもので、誰かの為に尽くすというのは私が思っていた以上に充実したものだった。しかし無為に時間を浪費している、という感覚も少なからず持っている。分不相応な生活、役不足、あえて傲慢なことを口にするならば、私は一介の平民として生を終えるには能力が高すぎた。国を支えるだけの能力を持っていると自負しておきながら何の責任も持たずに悠々自適な生活を送るのは、才能を無駄にしているのと同じことではないだろうか。そういう想いも抱いているが、一個人の人生が才能の有る無しによって定められるのは話が違っているような気がするし、私だけで国一つの命運が変わってしまうような勢力であれば遅かれ早かれ滅亡してしまうに違いない。
あれこれと言い訳がましく思い悩んでいるが、結局、私に足りないのは何かを成そうとする気概なのだろう。
そして今の私には何かを成し遂げたいという強い気持ちがなかった。
物足りなさはあるが、私は今の生活に少なからず満足している。
このまま歴史の片隅で静かに人生を過ごすのも悪くない、と思える程度には楊宏との暮らしに満足していた。
だが何時までも今の暮らしを続けられないことも分かっている。今の御時世、何もしなければ奪われるだけ、今の日常を守る為には自ら動かなければならない時が確実に来るだろう。大陸全土に出没する賊徒は漢王朝の求心力が低下しつつある証拠、その賊徒相手を討伐し切れないのは漢王朝が抱える軍事力の低下を示しており、そして各地方でまだ大きな被害が出ていないのは軍閥が力を付けている証になる。
つまり近い将来に大きな事件が起きる、その結末次第で大陸全土を巻き込む動乱の流れまでを予測する。最後に私の見知らぬ記憶が私の予測が正しいことを裏付けしてくれた。
急に頭が冷める感覚に溜息が溢れる――この記憶は、やはり面白くない。
これから先、打つ手の全てが未来視とも呼べる予見で裏付けされることを思えば酷く不快だった。
パチン、と打たれた一手。
これでどうだ、と言わんばかりの笑みを浮かべる楊宏の姿に、私は数秒だけ盤上を見つめる。そして予測した数ある中の一手であることを確認した私は涼しい顔で仕返しの一手を差した。一転して苦渋に顔を歪ませる楊宏、その姿に私は少なからずの充実感を得る。
やはり未来とは見えていない方が楽しいものだ。
どうにも私は見えている山の頂上からの景色よりも、まだ見ぬ地平の彼方にある景色の方が心が惹かれる性分にあるらしい。それがとある屋敷の裏側であったとしても、死角にある場所の光景に私は胸を踊らせる。今見えるものよりも今は見えないもの、その先にある風景を想像するだけでも胸が高鳴った。山は何処まで行っても山の頂上よりも上には登れない、そこから見る景色は絶景に違いないだろうが今見ているものを上から見るか、今立っている場所から見るかという違いしかない。そんな場所を目指すくらいならば空を飛んでみたいと思った。
地平の彼方は想像するしかない場所だ。あの山の裏側に何があるのか、此処から見ることは敵わない。あの地平の先にある景色を私は伝聞を耳にする程度、その伝聞の成否も実際に見てみないことには分からない。そこにある光景は望むことならば私の想像を超えてくれることを願っている。いつか路地裏で見た猫集会のように、私は私の想像を上回るものを常に期待している。
ああ、そうか、だから私は旅に出たのだ。まだ見知らぬ知見を求めて、旅に出て、そして旅の行く末を知っていたから足を止めてしまった。
パチン、と小気味良い音が響いた。
思考の沼に落ちかけていた頭が将棋盤に引き戻される、そしてチラリと見る楊宏は下唇を噛み締めていた。
再び視線を盤上に落とす。口元を飴で隠して、ついにやけてしまう頰を隠した。彼女の差した一手は私の予測の範疇から外れていた。無作為に打たれたものではない、自棄になったわけでもない。此処まで二人で積み上げてきた棋譜が崩れる限界ギリギリ、しかしまだ辛うじて勝ち筋は残すという崖っぷちだ。それは私の予測の穴を突いた見事な一手、私の為だけに差し出された一手であることがよく分かる。彼女は勝ち筋を求めた結果、合理を捨て、私だけを討ち取る一手を導き出した。
その一手から広がる光景は未知のものばかり、盤上に花が咲き乱れるのを錯覚する。
「……これは、下手な告白よりも強烈で、痛烈な一手ですねー。求愛と取られても仕方ありませんよ?」
誰かを愛するというのは、言葉で愛していると伝えることではない。
無論、体を重ねる事でもない。それらはあくまでも行為の一つに過ぎないのだ。
恋をするというのは誰かに自分のことを知って貰いたいという欲であり、誰かを愛するということは相手のことを知ろうとする意思である。そして、私は貴方を愛しています、と伝える為に相手の事を知り、好意を持って貰う為に人事を尽くすのが恋愛と呼ばれるものだ。
とはいえ合理から外れたギリギリの一手であることには違いない。この手が苦しいことは楊宏も理解しているようであり、額から汗を流しながら私のことを見つめている。油断はない、私の玉将を射止めようと限界まで踏み込んできた捨て身とも呼べる一手である。私のことを理解しようとして、ただ体を交えるよりも濃密に、愛を囁き合うよりも濃厚に、私のことだけを考えて考えて考え抜いた想いの丈が込められている。
そんな手を前にして嬉しくないはずがない、むしろ楽しくて仕方なかった。此処まで強烈な想いを受けて、心を揺さぶられない指し手はいない。今に限り、彼女は私一人だけを見つめてくれている。その健気さに胸の高鳴りを感じる。彼女の将棋の腕は弱くはないが、強いという程でもない。彼女が私相手に善戦できているのは、互いに手を知った仲であるためだ。ただ私を射止める為に昇華された彼女の将棋、その一手で将棋の盤面を私の知らない世界へと誘ってみせた。
それは未知との遭遇、未知を知ることは衝撃であり、好意的な衝撃は感動と呼ぶ。
「でも
貴方の想いは受け取りました、と想いを込めた次の一手は彼女に更なる難題を突きつけるものだ。
そんな私の考えを何処まで汲み取っているのか、楊宏はまた難題を解く為に将棋盤を睨んでいる。こうして私のことだけを想ってくれる彼女を満足げに眺めながら膝上に置き直していた書籍に目を落とす。
今の日常で満足している私がいる。そのことに物足りなさを感じていながら、この日常に埋もれることを良しとする私がいる。
だが先述したように今のままでは私が得た日常を維持することはできない。その原因は大陸全土を巻き込む動乱もそうだが、私の生活を保障してくれる家主の楊宏が袁術軍の重臣であるという点が大きい。楊宏は勿論、袁術と張勲を前にしても私の中にある記憶の宝石箱が開くことはなかった。それは即ち、前世で私との面識がなかったということであり、袁術軍は曹操軍の敵になる前に脱落したということに他ならない。
つまり今の日常を望むということは袁術軍を存続させるということに直結する、それは即ち私が表舞台に立つことと同義だった。
平穏な日常を望むだけであれば、袁術軍なんて放っておけば良い。それができない理由が生まれてしまった。
私は――風はきっと自分で想っている以上に今の生活が気に入っているようです、難儀なことに。
いっそのこと、
前世の歴史が当てにできなくなる程に掻き乱してやるのも良いかもしれない。
そういう考えが出てくる程度には今の生活を手放すのは名残惜しかった。
何時頃からか、私は楊宏が抱える政務に関心を持つようになった。
彼女が抱える仕事は多岐に渡るが、目新しく思うことは特にない。雑に云ってしまえば彼女のやっていることは典型的な中間管理職であり、各部署の進捗や意見、要望を纏めて、その都度、調整を施しながら管理するといったものである。時に各部署へ根回しや連携を促すことも多い為、袁術軍では最も顔の広い人物ではあるが新しい事業や政策に携わる立場ではなかった。むしろ政策を実行するための補佐や環境作りに腐心していると云える。
とはいえ傍目から見ても問題だらけの袁術軍である。
好き放題に要望を出して、好き勝手な行動ばかりを取る連中にはほとほと手を焼かされているようであり、楊宏一人では手が回らないというのが現状であるようだ。そして何よりも楊宏は謀略に理解を持っていても、その本質は善良、誠実さを美点とする彼女に謀略は荷が重すぎた。
あえて云うが楊宏は有能である。少なくとも張勲が側において、扱き使う程度には彼女は有能なのだ。まともな組織であれば楊宏の能力は十二分に発揮されるに違いないが、今の袁術軍では彼女の美点を殺してしまっている。
分かっている、彼女に必要なのは私だった。
「賭けをしよう」
今日、将棋盤を挟む前に楊宏の方から提案してきたことだった。
どうして急に、という想いもあったが相手の思惑を探る前に「構いませんよ」と私は二つ返事で受けていた。何故、私は賭けの内容も聞かずに受けてしまったのだろうか――それは生真面目な彼女に対する信頼感からきたものだと後付けしている。ただの戯れで賭け事を提案してこないことは分かっている。そして将棋盤を挟んで向き合った時、楊宏の隠す気もない真剣な眼差しを見て、私から何かを奪おうとしている事が分かった。
それは私が心の奥底で望んでいたことかもしれない。何故なら楊宏は度が過ぎた御人好しであるから、理由もなく誰かから何かを奪うことをしようとしない。彼女がこういった行動に出る時、それ相応の理由が必ずある。その点に関しては私は彼女に全幅の信頼を寄せている、それこそ真名を預けても良いほどに。
無論、やるからには負けてやるつもりはない。明確な思惑があれば尚更だ。
きっと彼女は私に勝つ為に勉強をしてきたのだろう。
絡め手、急襲と様々な奇手を用いて挑む彼女を打ちのめして四連勝、そして今、彼女が頭脳の限りを搾り尽くした死角の一手も私の玉将には今一歩及ばず、私の智謀を前に平伏して勝ち星を五つに増やす。
賭けと云うからには罰を与えなければならず、とりあえず今回は彼女の頭に犬耳の髪飾りを付けてみた。大した意味はない、ただ彼女には犬がよく似合うと思っただけだ。事実、恥辱と屈辱に塗れて、ぷるぷると震える彼女に犬耳はよく似合った。
さて、六戦目ともなると罰を考えるのも難しくなってくる。
どうせ犬耳を付けたのだから、このまま好き勝手に彼女を着飾ってみるのも良いかもしれない。数を増やせば、それだけで彼女にとって更なる恥辱と屈辱を味わわせることができる。それはそのまま彼女の覚悟と意志を推し量ることにも繋がる。そうと決まれば少し厳しく罰を与えてみようと思って、私は首輪を取り出してみせる。
それを見た楊宏は引き攣った笑みを浮かべていた。
「……構いません」
楊宏は目を伏せて深呼吸をすると、決意を固めた顔で私のことを見据えてきた。
不退転の覚悟と云うべきか、背水の陣と云うべきか、覚悟を決めた彼女の双眸に見つめられて少し胸が高鳴った。そんな顔で求められても困りますよ、と私は上機嫌に将棋を指して、難なく六勝目を勝ち取って彼女の首に首輪を付けてやった。それから七、八、九と勝ち進んで、付けられる物もなくなったので、今度は脱がせる方向に進んで十九戦目に突入する。私の対面に座る楊宏は薄絹一枚、頭には犬耳の髪飾り、四肢には犬を模した手袋と中靴を履いており、隠すものがないお尻からは尻尾を生やしていた。その表情は羞恥と屈辱で歪んでいる、顔を真っ赤にしながらポロポロと涙を零している。まるで小動物のように体を小刻みに震わせる姿を見ながら、やり過ぎたと思う気持ちが半分、賭け内容を反故することなく実行する彼女の律儀さに感心する気持ちが半分、そして、こんな目に遭わされても私にさせたい事は何なのかという疑問に頭を悩ませる。
それはそれとして、盤上では彼女のことを容赦なく攻め立てる。
耳まで顔を真っ赤に染めながら、ふぅ、ふぅ、と小刻みに息を吐きながら彼女は必死に頭を働かせている。お尻が気になるのか、何度も腰を浮かせて身を揺する彼女の姿を見ていると何かに目覚めそうになる。
勝負の前に彼女の覚悟を試すつもりで、どうします? と要求を釣り上げてきたが彼女は逡巡しながらも全てに承諾し、そして負けた時は約束を全て実行してきた結果、出来上がったのが今のワンワンである。正直なことを言えば、嫌がる彼女に罰を与えるのが少し楽しくなってきた。ついでに言えば楊宏の吐息に熱っぽいものが混じっており、これ以上となるとお互いに引き返せない領域になる。
なので十九戦目が終わった後、薄絹を脱がせて全裸になった彼女に次で最後だと前置きしてから条件を出した。
「次、負けた時はお姉さんの真名を奪いますね」
その言葉で楊宏が唾を飲み込むのが分かった。
真名を奪う――無論、真名を奪うと言うからには、私の真名を彼女に預けるつもりはない。
古来より奴隷には名が与えられなかった、故に飼い主が奴隷のことを呼ぶ時は真名で呼ぶことが通例となっている。このことを真名を奪うと呼ばれており、古くから続いている奴隷契約の一種として見做されている。
だから真名を奪うと言うのは、貴方という存在の全てが私のものであると言っているも同じだ。
これは一方的な略奪である。
そのことを彼女は承諾し、そして私に勝負を挑んだ。
きっと彼女にとって私から奪いたいものは自らの存在を賭けるに値することだったのだと思っている。
そして今、楊宏がまんま犬と同じ有様で私の足を舐めているのは必然のようなものだった。生真面目な彼女は理性を捨て切ることができず、今の状況を楽しむこともできず、自分の胸元ほどの身長の少女を前に跪くのは一体どれだけの屈辱だろうか。そのことを想像するだけでも胸が締め付けられて、ゾクゾクと光悦に身が震えた。決して欲望に身を委ねきれず、忠実でありながらも反抗的な彼女には加虐趣味を増長させる素質があることは間違いない。律儀な性格をしているせいだろうか、何も言わずとも指の間まで丁寧に舐めとる姿は彼女自身も被虐趣味があるのではないかと思わずにはいられない。本人は決して認めないだろうが、認めないからこそ興奮してしまうのだ。
鼻から熱いものが垂れそうになって、ああこれが
「
まだ預けられていない真名を彼女の尊厳を踏み躙るように呼ぶと、四ツ葉はビクリと身を強張らせた。
何かを堪えるように身を震わせた後、「わ、わん」と振り絞るように犬語を口にする。その哀れな姿にお腹の奥の方がキュンとなった。流石に彼女を実質的に奴隷にしてしまったことが公になっては袁術軍が瓦解し兼ねないので、首輪を付けている時だけ主従を逆転させると条件付けた上で、彼女には私の許可なしで人の振る舞いをすることを禁じている。
少し調子に乗り過ぎた、と思わないこともない。しかし彼女があまりにも従順で愛おしかったから、彼女の忠誠心を試すつもりで色々と命令を出していたら、より一層に取り返しの付かないことになった。
怯えた顔で次の命令を待ち構える彼女の頭を優しく撫でてやると、少し安心したのか彼女は気持ち良さそうに目を細める。
もっと虐めたくなる想いを、ぐっと抑えていい加減に彼女から話を聞き出さなくてはならない。
「お姉さん……いえ、流石に今の姿では無理がありますでしょうかー。かといってお兄さんと呼ぶのも慣れないですしー、どうしましょうかねー?」
じとっと半目で私を見つめてくる彼女、もしくは彼の目からは諦めに似たものを感じる。
「ではまあ折角なので首輪が付いている時は
そう言うと彼女は身悶えした後に首を縦に振る。
いちいち反応が可愛いと思ってしまうのは、彼女に毒されてきている証拠だと思って自制する。深呼吸、今回のことはあくまでも私にとっては戯れの延長線上のことに過ぎないのだ。首輪を制限に加えたのもそれが理由、常日頃から彼女のことを奴隷として扱うつもりはない。彼女の弱みを握って彼女を揶揄うのは面白そうだったからとか、その程度の軽い気持ちに過ぎなかった。
それがちょっと行き過ぎただけである。
「それで今回の件、風に何をして欲しかったのでしょうかー?」
椅子に座りながら足の爪先で四ツ葉の顎を持ち上げる。悔しそうにする彼女の顔を見下すのは思いの外、気分が良い。
「……
彼女の口から他の女の名前が出た時、高揚していた気分が一気に冷めきった。
「近い内に私は城を離れるから……たぶん張勲による粛清が行われると思う、それで――」
「あーもう良いですよー。大体、事情は察しましたのでー」
「程立の生き方を曲げることになるから……だから、えっと……」
「もう喋らないでくださいね。喋るなら、わん、でお願いしますねー」
「わ、わふん……」
身を小さく縮こませて震える彼女の姿に今は何の感慨も抱かない。
成る程、成る程、あれだけ私のことを想ってくれていたと感じたのは錯覚で、頭の中では常に他の女のことを考えていたということらしい。なんだか記憶の宝石箱から何処ぞの種馬とも呼べる男の顔が脳裏によぎった。前世では好意を寄せていた相手なのだろう、今はその横っ面をぶん殴ってやりたくて仕方ない。
何処ぞの馬の骨はさておき、今は目の前の奴隷に躾けてやらなくてはならない。
やる時は徹底的に、謀略の基本である。
「効果的な拷問についての研究に付き合ってくれないでしょうかー?」
にっこりと満面の笑顔を心がける。
身の危険を察したのか四ツ葉は懸命に首を横に振って、わんわん、と鳴いてみせたが、それを私は泣く程に嬉しいのだと解釈した。きっと律儀で健気な彼女はご主人様の力になれて嬉しいに違いないのだ。完璧で幸福な奴隷を手に入れることができて私も幸せだ。
翌朝、布団の上から身動きの取れない彼女の
「まあ四ツ葉の存在を貰い受けた以上、貴方の抱える問題も私のものということですね」
起きているのかいないのか、俯せに倒れたままの四ツ葉の横にちょこんと座る。
今の生活を手放したくないと心から思っている、そのために私が動くのは吝かではない。ただ前世が云々と塞ぎ込んでいた手前、今更政治に関わるのも後ろめたい思いが残っている。理由が必要だった。私に足りないのは何かを成そうとする意思と覚悟、重い腰を上げるには相応の理由が必要だった。
それを昨晩、彼女は与えてくれた。少しばかり体を張り過ぎた、それも実に回りくどい方法で――仕方ありませんね、と私は独り言を零す。彼女の支払った代償に見合うかどうかは分からないが、これから先の未来について少しだけ頭を働かせてみる。
まだ引き摺る思いもあるが、今回は彼女の顔を立てようと思った。
目標、一週間以内。
ただいま恋姫二次を読み漁りの旅に出ています。
愛雛恋華伝、クッソ面白い。