兎を怒らせるな   作:キルネンコ

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兎を怒らせるな

 アンタッチャブル。触れてはならぬ禁忌の存在。

 

「………………」

 

 キュッキュッキュッキュッ、と暗い部屋のなかに断続的に響く何かを拭く音。

 ランプの明かりを反射して輝くのは、一本の銀ナイフ。

 

 ナイフを磨いているのは一人の少年であった。

 

 赤みがかったピンク色の髪をしており、その髪が不自然にも兎の耳のように跳ねているのだ。因みに左側が半ばで前に折れている。

 そんなうさみみの彼の顔は、鉄面皮とも言えるほどに無表情。更に、左目周辺を区切るような縫合痕がより一層の強面さを強調していた。

 

 身に纏うのは、灰色のタンクトップ、赤い繋服といった出で立ちであり、上は脱いで腰に袖を巻いて固定している。

 

 彼がいるのは薄暗い地下牢だ。黴臭く、隅にネズミが走るほどに不潔な場所。

 

「………………フッ」

 

 磨きあげられた銀ナイフ。彼はそれを、慎重に傍らのカトラリーケースへと収めた。

 次に取り出したのは、銀の匙。

 

 再び拭きだす少年。この場にある彼の私物は、このカトラリーセットとそれらを手入れするための布のみ。

 

「………………」

 

 静かだ。カトラリーが拭かれる音と、時折ネズミが走る音ぐらいしかこの場には聞こえることはない。

 曜日感覚どころか、年代、日付け、あらゆる時間的概念から取り残されたような、そんな錯覚を覚える牢獄。

 

 これから彼の寿命がつきるその時までこのまま、何て事にはならない。

 ガチャガチャと上の階層が荒れたかと思えば、今度は牢へと通じる一本道を複数の人物が歩くような音がし始めたのだ。

 

 少年は気付いているのか、いないのか。ただ、ひたすらにカトラリーを磨き続けている。

 

「囚人番号004番。出ろ、枢機卿の方々がお呼びだ」

 

 現れたのは、数人の聖職衣を纏った兵士だ。

 その先頭に立った神経質そうな眼鏡は、ブリッジを押し上げ苛立たしげに腕を組んでいる。

 

 典型的なエリートである彼は、このようなジメジメとした黴臭い場所へと使いっパシりに使われていることが我慢ならない。

 何より、自分を一瞥することすらない目の前の少年が、本気で気に入らなかった。

 

「聞いているのか004番!!貴様!この私を無視すると良い度胸だな!!」

 

 男の堪忍袋は小さかった。アッサリと尾が切れて、牢の中へと踏み込むと少年の手より銀の匙を弾き飛ばしたのだ。

 カツーン、と軽い音をたてて床に転がる銀の匙。呆然とそれを見る、少年。

 

 後ろの兵達が狼狽えているが、彼には知ったことではない。

 カソックの内ポケットより拳銃を取り出すと、容赦なく少年へと突きつけていた。

 

「さっさと立て!貴様ごときに私の時間を―――――――あ?」

 

 責め立てるように叫んでいた男は、しかし不意に視界が真っ暗になり妙な声をあげた。

 同時に、耳に風をゴウゴウと切る音が響き、次の瞬間衝撃が襲う。

 

「…………………」

 

 先程まで男が立っていた場所には、少年が立っていた。

 左拳を無造作に振り抜いた体勢だ。

 

 そう、男は殴り飛ばされていた。弾丸のように、通路をまっすぐに飛んでいき、入り口へとぶつかり突き破ったのだ。

 

 焦ったのは、護衛を任されたもの達。だが、動けない。

 

 何故なら、とっくの間に終っているから。

 

「フッ……………」

 

 銀の匙を拾い直し、再び拭き始める少年。

 その周りでは、人の形に穴が開いた石造りの床や壁、天井がそこかしこに出来上がっていた。

 

 

 ※

 

 

 囚人番号004番。他に囚人が存在している訳ではないが、彼はいつもそう呼ばれる。元々名前が有った気がしないでもないが、彼自身興味がないらしく、訂正することも指摘することも無い。

 ただ、ひたすらに暗い空間でランプの明かりをお供にカトラリーを磨くだけだ。

 

「ずいぶんと、風通しが良くなったな」

「……………」

 

 今日も来客。やって来たのは、老年の男性。老けてはいるが、未だに礼服に包まれた肉体からは強靭さを感じさせる教会の戦士だ。

 

「囚人番号004番。いや、ヴォールよ。出てはくれないか?お前に仕事を持ってきたんだ」

「………………」

「相も変わらず、興味は無し、か。ならば、話だけでも聞け。聖剣が盗み出された」

「………………」

「お前には、その聖剣を取り戻してほしい」

「………………」

「成功すれば、恩赦が出る。お前も自由の身だ」

「………………」

「報酬も、お前が望むものを用意しよう」

 

 老人がそう言うと、漸く少年は顔を上げた。

 だが、その顔には興味の色はなく、無表情のままだ。

 

「……………」

「これが、今回の相手だ。一応、お前には監視をつけるが、基本方針はお前の好きに動いてくれて構わない」

「……………………」

「これは前金代わりに置いていく」

 

 置かれたのは、大きめのケース。見た目はボロボロなアタッシュケースだ。

 

「お前の荷物だろう?中身は弄っていない」

「……………」

 

 ケースを受け取った彼は、無言で机に置くと躊躇い無しに押し開ける。

 中身は、明らかに容量以上の荷物と、収納スペースが広がっていた。

 

 その一角に、カトラリーケースがはめ込まれる。

 そして、ケースが閉じられ、少年は立ち上がった。

 

「行ってくれるか」

「……………」

 

 彼は答えない。

 いつでも出られたであろう檻をねじ曲げて、彼の背中は闇へと紛れるのであった。

 

 

 ※

 

 

「ゼノヴィアー、待ち合わせってここで良かったんだよね?」

「ああ、その筈だ。目立つ相手らしいから、直ぐにでも分かると思ったんだが………………」

 

 ヴァチカンにある、とある教会。規模もそこそこであるが、ステンドグラスの作りが良く、観光客が多く訪れる名所だ。

 といっても、今は夜。観光客が訪れるはずもない。何より開放されていない。

 

「でもさー、囚人を解放するって、何となく気に入らないなぁ、なんて」

「仕方がないのではないか?私も、イリナも堕天使幹部を相手取るには力が足りん。相手は、聖書にも記される存在だからな」

「だからって囚人だなんて………………」

 

 ふたり、紫藤イリナとゼノヴィア・クァルタの二人は教会にて今後についての会話を行っている。

 彼女等の関心は、二人が監視役、もとい世話役を務めることになった囚人に関して。

 

「というか、何したんだっけ?その囚人って。確か、唯一の地下牢封印を受けた罪人よね?」

「ふむ………………この資料によると、窃盗だな」

「窃盗?強盗じゃなくて?」

「ああ。盗まれたのは、各教会が保有する、シルバー?だそうだ」

「シルバー……………あ、カトラリーの事じゃない?」

「カトラリー……………成る程、銀食器か」

「でも、盗んだだけなのよね?まさか売ったりしたの?」

「いいや、全て自分で持っていたらしい。問題は、窃盗の方法と、牢の問題だな」

「どういうこと?」

 

 複数枚を重ね合わせた資料を捲り、ゼノヴィアは眉値を寄せた。

 

「………………壁や術式、その他攻撃。あらゆる防備を身一つで突き破ったらしい」

「………………ふぇ?」

「牢に入れても、カトラリーが欲しくなると壁を突き破って脱走してしまったようだな」

「………………………………人間?」

「種族は、そうらしい」

 

 並んで資料に目を落とし始める二人。その内容は、あまりにも現実離れしたものであった。

 そんな異常な内容を読んでいれば、不意に妙な音が彼女等の耳に届く。

 キュッキュッキュッキュッ、と何かを拭くような音だ。

 

 気付けば、教会の長椅子の一つに一人の少年が座っていた。

 

「………………イリナ、気付いたか?」

「ぜ、全然気付かなかった………………私達、入り口の前に居たんだけど?」

「私も気付かなかったな。すり抜けた、のか?」

 

 ゼノヴィアは自分でそう言いながらも、内心では否定していた。

 年若くとも二人は、教会の戦士だ。

 そんな二人が、あそこまで派手な男を見逃すとは考えづらい。

 髪は、ピンクであり、灰色のタンクトップに赤い繋服など、見逃すはずもない。

 

「………………とりあえず、接触といこうか」

「………………そうね」

 

 

 ※

 

 

 日本、駒王町。表では比較的普通な地方都市。

 しかしこの場所は、悪魔の拠点の一つでもあった。

 

「……………………」

 

 高層マンションのワンフロアを丸々借りきった少年は、その一室でカトラリーのセットを傍らに備え付けのL字ソファに陣取って銀食器を磨いていた。

 

「004番、少し良いだろうか」

 

 そこにやって来たのは、ゼノヴィアだ。

 ワンフロアを貸しきったこのマンションの一室の一つに彼女は拠点を据えていた。イリナもそれは同じくだ。

 因みに家賃や敷金などは、全て彼のポケットマネーより支払われていたりする。

 軽く数億は飛んでいたりもするが、彼の財産は二桁以上輪廻転生を繰り返してもお釣りが来るため大した痛手では無い。

 

「悪魔とのすり合わせだ。何も話していなければ今回の一件には支障が出てしまうからな」

「………………」

「報酬にも、恐らく影響が出る。手早く済ませるならば必要なことだ」

「………………」

 

 少年は、磨いていたカトラリーをケースへと収める。

 そして、ゼノヴィアを一瞥することもなく立ち上がると、そのまま部屋を出ていった。

 

 彼女にも戦士としての矜持はある。しかしそれも、少年の前には無駄であった。

 一度だけ、イリナと共に彼に対して斬りかかってしまったことがあったのだ。その際に、現実をまざまざと直視させられた。

 彼女達もまさか、聖剣の刃が素肌に弾かれるなど考えもしない。

 それどころか、打ち付けた聖剣が逆に折れそうになる始末だ。

 何より、剣を向けられても彼のカトラリーを拭く手を止めるには至らなかったという事実。

 

 少年にとっては、耳元を飛び回る蚊の方がよっぽど脅威と言えるほどに強かった。そして、強すぎた。

 

 故に二人は理解した。自分達は監視役ではあるが、それはお茶汲みなどの雑用を行うメイドにすぎないということを。

 

 

 ※

 

 

 駒王学園旧校舎。ここに、悪魔の拠点の一つとも言える、オカルト研究部の部室はあった。

 室内には、沈黙が、いや、不機嫌な空気が満ちている。

 その理由の一つが、件の少年にある。

 

「…………………」

 

 どこから取り出したのか、彼はずっと懐中時計を磨いているのだ。

 

「話は、分かったわ。けど、彼は本当に仕事ができるのかしら?」

 

 ある程度の情報交換が終わったところで、リアス・グレモリーは問うた。

 彼女だけではない。彼女の眷属達も少なからず懐疑的な目を、少年へと向けている。

 見た目は奇抜であるが、どうにも強さを感じないからである。

 

「問題ないだろう。少なくとも、お前達が束になって挑んでも道端の石と変わらないだろうからな」

 

 だが、彼の強さを知る者達、即ちゼノヴィアからすれば彼らの強さは自分と同じか、相性によっては劣る程度。つまりはお話になら無い。

 しかしそれが相手側からすれば我慢なら無い発言であった。

 

「なら、僕が彼に勝てば聖剣の破壊は任せてもらえるのかな?」

 

 切り出したのは、木場祐斗。

 剣呑な目をした彼が見つめるのは、ゼノヴィアが携えた聖剣の内の一振り。

 

「…………無理だな。お前では、004番には傷ひとつ付けられないだろう」

「それは、どうかな!!」

 

 祐斗は自身の神器『魔剣創造』によって一振りの魔剣を造り出すと、未だにカトラリーを磨く少年の首へと振るった。

 最速の一撃。それを止められるものは、この場にはいなかった。吸い込まれるように、刃は彼の首へと向かい―――――――ガラス細工のように砕け散ってしまっていた。

 

 まさかの光景に悪魔陣営は声もでない。そして、教会陣営としては確定事項であった為に反応しない。

 天界と冥界の火種にもなりそうな事であったが、そもそも少年を傷付ける術がこの場にはない。であるならば、こうして力の差を示すのは間違っていないだろう。

 

「気は、済んだか?言っておくがどれだけ紛い物の魔剣を造り出そうとも、彼を害すことは出来ないぞ」

「っ!まだだ!」

 

 ゼノヴィアの言葉によって、呆けていた祐斗は更なる魔剣を造り出し、少年へと斬りかかった。

 だが、やはり通じない。属性の魔剣も、切れ味重視の魔剣も、その他様々な攻撃が、髪の一房も斬ることが出来ない。

 

「……………………」

「はぁ……………!はぁ…………………!」

 

 一分と掛からずに十数振りが砕かれた所で、少年は漸くカトラリーから顔を上げた。

 その瞳は、ぼんやりとしており何も見てはいない。

 ただジッと、その空虚な目を祐斗に向けるのみだ。

 ダメージどころの話ではない。存在すらも、彼には認識の外。興味の有無以前の問題である。

 

「その程度では、話にならないな。大人しくしておけよ」

 

 ゼノヴィアはそれだけ言うと、隣で紅茶を楽しんでいたイリナを促し、席をたった。

 それに合わせて、少年も席を立つと率先して部室を出ていく。

 途中で、その退席を拒むように分厚い強固な結界が張られていたのだが、彼は、まるで何もないかのようにアッサリと突っ切ってしまう一幕があったりする。

 

 これに驚いたのがリアスだ。彼女は、自身の女王である姫島朱乃に最も強い結界を張るように命じていたからだ。

 でありながら、その結界は欠片も意味をなさない。

 

「本当に、何者なの………彼は………」

 

 リアスの呟きは、誰にも答えられること無く、虚空へと溶けて消えた。

 

 

 ※

 

 

 それから時間は、大きく飛んだ。情報収集は基本的に、戦士二人の役目であり、少年はのんびりとカトラリーを磨くのみであった。

 

 そして、その時は、来た。

 

「………………」

 

 カトラリーを拭く手が止まり、少年は顔を上げた。

 見るのは、駒王学園の方角。時刻は夜だ。

 

 カチャリとカトラリーを置くと、彼は定位置となっていたソファより立ち上がった。

 そして、消える。

 

 その行き先、駒王学園には巨大な結界が張られていた。

 中では、死闘が行われている。

 いや、いた、と言うべきか

 

「この程度か、小僧共。所詮は、子供か」

 

 立つのは、十枚の黒翼を持つ堕天使コカビエル。

 彼の前には、リアス達グレモリー眷属とゼノヴィア、そして匙元士郎であった

 

 この場には、赤龍帝の籠手を筆頭に世界でも有数の破壊力を秘めたモノが存在する。

 しかし、使い手が未熟ならば格上の実力者には意味がない。

 

「冥土の土産だ。貴様らに面白い話を聞かせてやろう」

 

 コカビエルはそう言うと、一振りの光の槍をその手に呼び出した。

 

「過去の大戦によって、三大勢力が疲弊したことは知っているだろう?俺の同僚も何人も消えたからな」

 

 芝居がかった口調で彼は続ける。

 

「悪魔陣営は、魔王が死んだ。ならば天界陣営は何を失ったと思う?」

「「…………………」」

「察しただろう?そう、貴様らの言う聖書の神というものは、既に死んでいる。貴様らの信仰心も全ては、神が残し天使共が辛うじて維持しているシステムの結果にすぎん」

 

 それは、神を信奉する者達にとっては晴天の霹靂。

 ゼノヴィア、並びにアーシア・アルジェントはショックを受けたように、精神の均衡を失ってしまっている。

 それは、周りもだ。多かれ少なかれ、ダメージを負っていた。

 

 コカビエルは、望んだ結果にほくそ笑む。

 光の槍を掲げ――――――

 

「なんだ?」

 

 彼が見るのは、少し離れた結界。

 ガラスの砕けるような音と共に一人の少年が、そこに現れていた。

 

 少年は、キョロキョロと辺りを見渡すと、あるものに気付いたらしくそこへと向かう。

 その先にあったのは、折れた聖剣エクスカリバー。

 七振りに別れた後、三振りが統合されたものだ。

 彼は、折れた聖剣を拾い上げ、破片も回収すると、明らかに容量のおかしい繋ぎのポケットへとそれらを捩じ込んだ。

 普通ならば、服の繊維が触れた瞬間にズタズタに切り裂かれるところなのだが、特殊素材なのか聖剣はスッポリとポケットへと収まった。表にも中に聖剣など入っているようには見えない。

 更に彼は、辺りを見渡して、今度はゼノヴィアの元へと歩み寄った。

 

「―――――ふんっ」

 

 が、そこでコカビエルが光の槍を彼へと投擲していた。

 爆発が起きて、その先に彼は消えた。

 

「何者かは知らんが、貴様のような下等生物が来る場ではない」

 

 コカビエルは鼻を鳴らすと、再び倒れた者達へと槍を向け――――――

 

「…………gurrrrr」

 

 獣の唸り声が聞こえた。

 その出所は、煙の中からだ。

 

「な……………無傷、だと……………!」

 

 煙が晴れると、現れる少年。首が左に傾いており、どうやら側頭部に槍を受けたらしいのだが、傷一つ無い。

 そして、彼の眉間にはシワがよっている。

 

「くっ、死ねぇ!」

 

 再び放たれた光の槍。

 今度は彼の顔面へとぶち当たった。

 

 大きく仰け反る少年。しかし、倒れない。

 起き上がった彼の額は、少し赤くなっているがそれだけだ。

 

「く、くそ!死ねぇ!」

 

 流石に焦ったのか、コカビエルは何発もの光の槍を出現させ少年へと連射していく。が、その度に鋼と鋼がぶつかるような音が響いた。

 

 ブチリ

 

 そんな音がした。

 

「……………!」

「な、速――――――――!?」

 

 瞬間、コカビエルは視界が闇に包まれ、その直後に全身に凄まじい衝撃を受けて意識が飛んだ。

 

 何が起きたのか。簡単だ。

 少年が、この場の誰にも視認されない速度で駆け抜け、コカビエルの顔面を鷲掴みにして地面へと叩きつけたのだ。

 その一発で、コカビエルは沈黙した。体の八割が地面へと埋まり飛び出た両腕と足の先、羽が無惨さを際立たせている。

 

「004番……………」

「………………」

 

 コカビエルを物理的に黙らせた少年は、先程全身から立ち上らせた覇気を霧散させると、倒れるゼノヴィアへと歩み寄った。

 そして、彼女を俵担ぎするとリアス達には一瞬も目を向けること無く、入ってきた場所から結界を抜けてしまった。

 

 

 ※

 

 

 鼻をくすぐる黴の臭い。耳を障るネズミの走る音。

 

「……………」

 

 そして、キュッキュッキュッキュッ、と響く何かを拭く音。

 ランプに輝くのは、シルバーの光り。

 

「…………………終わり」

 

 カチャリ、とカトラリーは収められランプの火は落とされた。


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