「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」 作:べれしーと
こんにちは。姓は森久保、名は乃々でお馴染みの森久保乃々です。いきなりですがクイズ。私は今プロダクションの何処にいるでしょうか。
…
……
………
…………
(正解は、)
「もりくぼは男だから男子トイレに……でも女の子としてアイドルをしているんだから女子トイレに……あうぅ……」ウロウロ
(トイレの前でした。)
もう何百回以上悩んだこの問題。トイレはどちらに行けば良いのかというぷろぶれむ。
「正解がないなんてまるで哲学なんですけど……」
(も、漏れる……どうしよう……えっと……)アセアセ
女子トイレに、入りましょう……!
×
(この気持ちになんて名前をつければ良いのでしょうか。怒り、戸惑い、罪悪感、敗北感。全部合ってる様で、全部違う気がします。)
個室トイレで用を足し、そこで佇むもりくぼ。
(男なのに……男なのに……)
これ軽犯罪なんですよ……!何で女子トイレに入ってるんですか……!馬鹿なんですか!変態なんですか!うあああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!
(なんてのももう何百回目なんでしょうかね。)
「してないです……興奮なんて、してないです……うう……もりくぼは土に埋まるべき……(涙」
バレるかもしれないスリルとか、自分の知らない皆さんを知れるかもしれない汚れた独占欲とか、そんなの全然ないです……本当です……信じて……
(はあ……誰もいない内に出ますか……)
そう思ったもりくぼは個室のドアノブに手を掛け、
(!!音!!誰かが入ってきた音!!)
手を離します。
(だ、誰……)
ドアを開き、閉め、鍵をかける音も続けてしました。
(…………い、今出るべき。)
そう。今出るべきなんです。
(なのに、足が、動かない。)
どうして。
(早く、早く出ないと。)
じゃないと、もりくぼは。
(大切ななにかを、失ってしまいます……!)
足が動かない。
(な、何で!早く!動いて!)
いやだ。
(聴いてしまったら、終わる。)
いやだ。
(出なきゃ。)
いやだ。
(なのに)
いやだ。
(どうして)
いやだ。
(こんなに)
……
(ドキドキしてるの……?)
(手を洗って、っと。)
「…………凛さん、でしたか。」
「あれ?どうしたの乃々。そんな暗い顔して。嫌な事でもあったの?」
「…………」ズーン
「……ねえ大丈夫、乃々?私はどんな時でも乃々の味方だから、嫌な事があったのなら相談していいんだよ?」
「……あ、あの。」ボソッ
「うん。どうしたの?」
「もりくぼを殺して下さい……!」
「え?」
「も、もりくぼは!もりくぼはァ!最低ですゥ!」
「な、何があったの?え?」オロオロ
「失ったんです!もりくぼは!大切ななにかを!」
「??(混乱」
「聴いてしまった……!傾聴してしまった……!」
「そ、そんな縮こまないで……」アセアセ
「逆なんですけどォ!大きくなったんですけどォ!(ブチギレ」
「????(理解不能」
「早く……早くもりくぼを殺して土に埋めてください……お願いです……」
「あ、あうう……」
×
結局、この小さい騒動はもりくぼが冷静になって何故か森久保化した凛さんを逆に宥めて収まりました。
(ごめんなさい凛さん。色々と。)
これから、目を合わせるのが困難になりそう……
×
次の日。私はまたトイレの前に立っています。
(前回の様になってはいけない。被害者を増やしてしまう。)
迷わず男子トイレに直行する女装男子の図。
と、そこには、
「人がっ……てなんだプロデューサーさん……ほっ。」
「うおっ!?こ、ここは男子トイレですよ!……って乃々か……よう。」
手を洗うプロデューサーさんがいました。
「え、えっと、」
「今は人いねぇから。いいよ。ほら。」
「か、感謝……!」ダッ
「…………誰も入らない様に監視でもしてるか。」
危なかった。漏れる所でした。ギリギリセーフ。
「ごめんなさい。ありがとうございます。」
「いや、いいけど……スカートで来られるとびっくりするわ。」
「ロングだからオッケー理論は通じますか?」
「通じません。」
「しょぼん。」
軽口を叩き合いながらもりくぼは手を洗い、そして一緒にトイレを出ます。
(この男友達感……良い……♪)ニコニコ
学校でも事務所でも味わえないこの新鮮さが嬉しくてつい顔が綻んでしまいます。えへ。
「どうしたニコニコして。間に合ったのがそんなに嬉しいのか?」
「まあ…………そうですね。はい。」ニコニコ
プロデューサーさんがいる時間に間に合いましたから、なんて。
「ったく、今回は別にもういいけどこれからはちゃんと女子トイレに行くんだぞ。バレちまう。」
「ごめんなさい……」
「すまないが、そうしてもらわなきゃこっちが困るからな……」
「分かってます。そう、します……」
「ああ、くそ、そんな顔すんなって……終末世界を見た様な顔すんなって……ごめん……」
「男が女子トイレに入るとどうなるか、分かりますよね。プロデューサーさんなら。」
「……本能と理性の葛藤が始まり、ギリギリで本能が勝ってしまう、だろ?」
「そうですよ……勝ってしまったんです本能が……悦びを覚えてしまったんです……」
「聴きたくないのに聴いてしまう。そうだな?」
「そうです。聴いてしまったら、友達を性的なモノとして捉えてしまう。そんなの嫌なのに。本能はそれを意ともしない。」
「辛いよな……とても、辛いよな森久保……解るぞ……っ!」ギュッ
彼は私を抱き締めます。
「はい……辛いです……悲しいです……」ギュッ
私も彼を抱き締め返します。
「男は、辛いよな…………」
「うぅ…………プロデューサーさん…………」
「ねえ、何してるの二人とも。」
「「!!」」バッ
手を離して、声の方に向き直ります。
「り、凛!?その、違う。違うんだ。」
「ふーん。そういうこと。乃々の悩みって、これだったんだ。」テクテク
「え?ど、どういう事?」
「り、凛さん!その、そうじゃな」
「安心して、乃々。貴女は私が守るから。」テクテク
「よく分からんけど、違う。違うぞ。凛は勘違いしてる。なあ、聞いてくれよ。なあ。」
「トイレ前の廊下で女子中学生を抱き締める成人男性。これが勘違い?」テク
「あ……あのですね、」
「弁明?どうぞ、ほら?」ガシッ
「…………乃々からとても優しい良い香りがしました。恐らく金木犀を使ったオーデコロンですね。素晴らっ」パキッ
プロデューサーさんが白目を剥いて倒れました……
「……変態。」
×
「優しい良い香り……べ、別に嬉しくなんか……ないんですけど……」
もりくぼのこの辛くとも幸せな日常はまだ終わらないのです。
優渋谷補助凛好き。厳渋谷怒凛嫌い。
一応言っとくけどホモはねえからな(急な語勢強化兄貴)