「ふふふ……あのもりくぼは森久保の中でも最弱なんですけど……」 作:べれしーと
お仕事が休みでも、もりくぼは学生です。その日が平日であれば出校しなくてはなりません。今日はその平日で、今はお昼、自分が所属している204クラスにいます。
(解りますよ。皆さんの懸念事項が幾つかある事はきちんと把握してますよ。)
先ず一つめに、アイドルやってるってバレてないの?という事ですよね。
(バレてないです。)
まだまだ知名度が低いのでバレてません。関係して、性別を偽ってる事も知られていません。
二つめに、見た目とか声とか完全に女じゃん。なんか言われんの?という事。
(言われます……女扱いされます……結構傷付きます……)
見た目はアイドルの時と差別化させていて、ピアスはつけておらず(耳に挟むタイプのものなので穴は開いてません。心配は無用です)、髪型はストレートにして(肩にかかりますが先生方には何も言われていないのでセーフです)、勿論女性専用の装飾は施さず(例えば化粧とかブラとか)、男用の制服に身を通しているのでどう考えても男に見える筈なんですが……おかしいですよね。
この前なんて学校の劇で女役やらされましたし……それが上手くいってしまったせいで今度の学校イベントで女装する事になってしまいましたし……メイドカフェなんてむぅーりぃー……
というかそもそも中学校でメイドカフェやるって、どういうことなの……?
「なあ……吉木、あれ見ろ。ほら。あれ。乃々だよ。」
「うん……外を物憂げに見る姿……いつも通り美しいな……そういうことだろ吉川?」
「そういうことだ。まるで男装女子だぜ。」
「分かる。ストレートのあの髪型とか良いよな。先生達も絶対可愛いって思ってるから何も言わないんだろうよ。」
「実際そうらしいぞ。」
「それどこ情報なん?」
「生徒指導の城ヶ崎先生本人。」
「ええ……(困惑)」
声は別に中学生ですから声変わりを理由になんとかなります。もうすぐ低くなりますよ、とか。男とはいってもまだ14歳ですし、とか。
「…………そういえばさ、みーやん。」
「ん?どしたの曰比谷さん?あとみーやん止めて。せめて成宮って呼んで。」
「のーちゃんの性別って女だったりする?委員長だし、そういうの分かるよね?」
「のーちゃん?ああ森久保さんの事。男よ。れっきとしたね。なんで?」
「これ聴いてみ。声楽のテストのやつ。」ピッ
「ん。」
『~♪』
「……まあ、言いたい事は分かるわ曰比谷さん。」
「これ、ソプラノだよ?テナーじゃないよ?」
「へ、変声期前だし。あり得るんじゃない?」
「課題曲じゃなくて、+評価を狙った挑戦曲なんだよねこれ。のーちゃん、家の事情かなんかで学校休みがちだからこういうところで点数稼がないといけないし。」
「それで?」
「最高音域知ってる?hihiAだよ?しかもすっごいキレイに出してくるし。……あ、今のこれ。この部分。」
「うっわ……すっげ……」
「委員長、口調口調。」
「ごほんっ……マジレスいい?」
「うん。」
「男でも出せる人は出せる。」
「分かるけどさあ……四分間続けて高音、加えてhihi域をキレイに出されると女である自分がもしかして男なのではと疑問に思えてくるようになってしまってな。」
三つめに、友達はいるの?ねえねえ?いるの?ということ。……なんですかこの質問者。聞き方がウザいですね。
(…………いません。)
自分から誰かに話しかける勇気がないもりくぼを赦して。
(それに誰かから話しかけられることもないですし。はい。いいえ?別に、ひねくれてなんかないんですけど?)
「ねえ、よっしー。今日も話しかけないの?」
「無理だ……高嶺の花すぎる……俺には無理だ……」
「吉川は?」
「ムリムリ。可愛過ぎて過呼吸になるわ。ってか何で俺だけあだ名無し?」
「みーやんが最後の希望です!」
「いやいいよ。遠くから眺めてるのが一番良い。」
「無視しないでくれよ。」
「ていうか曰比谷さん知ってるでしょ。森久保さんに彼女がいること。」
「「は?((憤怒))」」
「うっわ、みーやん委員長パネェっすね。」
「え?なにが」
「おい成宮ァ!教えろそいつの事ォ!」
「その男にだらしの無いヴァカ女を俺らでぶっとばしにいくぞォ!」
「ホモなの君達!?」
「「ホモではない。ただの害虫駆除だ。」」
「ええ……(困惑)」
「こいつらのーちゃんの事崇拝してっからね。彼女とか言ったら般若化するんよ。教えとくべきだったね。」
「ええ……(困惑)」
「そりゃー、ねー?」
「男の娘とか、最高やん。ねー?」
「全然分からん。」
「そんなんいいからワイらにその彼女とやらの事をとっとと教えろや。」
「えー……っと。」チラッ
「はあ……分かったよ。二人とも、帰り校門前で待ってて。」
「どういうことだ曰比谷?」
「詳しく教えないと焼き討ちにするぞ?」
「覚えたばっかの単語で遊ぶなテメェら。下の爪楊枝へし折るぞ?」
「「すいませんっした姉貴!!」」
「兎に角帰りに全部説明するから待ってろ。OK?」
「「OK!」」ズドンッ
「ふった私も悪いけどコマンドーネタはみーやんが反応出来ないから止めたげて。」
「「さーせんした!」」
「???」
×
16:30、校門前。一人の少年をこっそりとつけ回す四人の少年少女ら。彼らのつけ回し方はさながら変態だ。顔付きが凄い。男二人はニヤニヤしすぎで顔がとろけそうだし、女二人はその様子を見て引いている。
道行く人達はこう思ったであろう。
(なんやこの厨パァ!?)
『もー、こう』いうのは見たくない、なーんて。ふふっ。
帰りますよ楓さん。
残念ね。瑞樹よ。
分かるわけないわ。帰りますよ。
駄洒落を言ったのは私ですけどね。
やっぱり楓さんじゃないか!!じゃあ瑞樹さんは何を……
なんやこの厨パァ!?
そこかよ!!
「ねえ、今なにか聞こえなかった?」
「さあ?凄い美人二人とそこそこイケメンの男性なら隣歩いていったけど。みーやん幻聴?」
「ひでぇこと(発言)しやがる……」
「みーやんプレデターネタは知ってんのね……」
「うるさい黙れェ!!」
「黙れェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!!!」
「てめえらはシュワルツェネッガーの面汚しだよ。静かにのーちゃん見てろ。」
「いや、その……ねえ?」
「無許可のストーカーは犯罪だぞ!もしばれたりしたら……」
「いつも平気でやってる事だろうが!今更御託を並べるな!」
「「で、でも」」
「やるんだ。」
「「うっす。」」
「あ、おい、あそこ!乃々が女の人と会ってる!うっわ、すっげぇ美人だな。」
「…………(唖然)」
「よ、吉木?どうした?」
「おー、あれしぶりんじゃん。」
「え誰?」
「吉川と委員長は知らないんだ。もしかしてアイドル事情とか疎い方?」
「「うん。」」
「オーイェイェイェイェふざけんなこんなのありかよ、マジで契約違反だ。」
「落ち着けよっしー。えっとね、今……うおおまじか。えっと、まあ、抱き合ってる、じゃん。あの人が渋谷凛っていうアイドルなの。」
「え?皆のアイドルと俺らのアイドルが抱き合ってるってこと?」
「別に私達のじゃないけど、そういうことになるのかなあ。」
「へー……」
「そんで、って、のーちゃん頭撫でられてる……嬉しそうに微笑んで……まあ彼女がしぶりんならそうなるのも無理ないか。いや、そうじゃなくて。」
「しぶりんはテレビにもよく出てるすげぇ人なんだわ。アイドルランクってのがあってな、一番上からS,A,B…ってなってんだけどしぶりんはA。」
「それ凄くない?」
「ああ。すげえよ。もっと言うとそんなすげえ人と抱き合ってる乃々もすげえよ。羨ましい。二人とも。」
「欲望を抑えろ、よっしー。な?」
「ああ……いいなあ乃々……しぶりんのアレに包まれちゃってよぉ……一体どこまでいってんだあいつら……」
「おい、ド下ネタ止めろ。」
「いやだって!!」
「だってじゃねえよ。」
「しぶりんのおっぱいが!!」
「おいここ公共の場だぞ。そんなでかい声出したらだ」
「…………聞こえてるんだけど?」
(あーあ。顔を真っ赤に染めたしぶりん?さんが睨んでるよ……こっち来たし……ったく吉木の奴は。そりゃ怒られるわ。あんな事大声で)ガシッ
「え?俺?」
「アンタ、そんな堂々と色々言ってくれるのは嬉しいけど、流石に弁えようか?」グリグリ
(……あれ?何で皆さんがここに?)
「いててててて!!!!!!!!!!お!!俺じゃねえ!!!!!!!やめ、止めろォ!!!!!止めるんだゴリラァ!!!!!!!!!!!」バタバタ
「……ゴリラって言った?」ブチッ
「ああ!!言ったさ!!顔が可愛いだけのゴリラがってなァ!!!!」
「っ…………乃々、下がって。こいつヤバいよ。私が何とかするから。」
「あ、あの凛さん。か、彼らはその、」アタフタ
「やってやるよォ!このクソ女ァ!Aランクアイドルなぞ知ったことかァ!」
「お、おい。吉川。止めろって。事務所から何か言われたらど」
「心配すんなァ!このゴリラのせいで俺らが責められる事はねえよォ!だってゴリラだからなァ!人間ではない。」
「決めた。アンタボコる。」パキッポキッ
「男に勝てると思ってんのかァ!ハハハァ!」バキッボキッ
「」チーン
「R.I.P.吉川……アホだけど良い奴だった。」
「し、死んでねえよ……ゴホッ……」
「どさくさに紛れて胸触ってきたからお返しに私も胸触ってあげたけど、どうだった?」ニコニコ
「胸骨にヒビ入ってたら殺すぞ……」ビキィ
「そこは加減してあるよ。安心して。」ニコニコ
「くっそこいつ……っ」
「き、吉川さん、大丈夫ですか……?」
「の、乃々……こいつ危険だ……早く別れろ……代わりに俺が付き合うから……」
「いえ結構ですけど。」バッサリ
「グハッ」
「吉川……」
「成宮さん、別れろって何の事ですか?……というより四人とも何でここに?」
「知ってる人なの乃々?」
「えっと、中学校のクラスメイトです……はっ。」
(これ女のフリをしてアイドルやってる事がバレてしまうのでは。)
「……」ダラダラ
「へー、クラスメイト……って乃々?汗凄いよ?」
「あの、えっと、」
(そ、それに凛さんにもりくぼが男だという事がバレたら死ぬ!死んでしまいます!社会的に!ヤバくぼ!)
「おいゴリラァ!てめえも理解しろォ!別れろォ!」
「ふう……あのさぁ、そこらへんよく分かんないんだけど。別れろって何?それにコソコソしてたアレも。バレバレだったよ?」
「バレてたかぁ。まあそれはどうでもいいとして。」
「言葉通りの意味だよ……まだいてえ……あんた凛だっけ?俺らは乃々と凛が付き合ってるって聴いて心配だったからこっそりと付いていったんだよ。」
「???」
「(しぶりんの困惑顔が可愛過ぎて吉木昇天しそう。した。)」チーン
「よっしーまで……」
「その付き合ってるってのがよく分かんないんだけど。」
「男と女のアレですよアレ♪あ、因みに私曰比谷って言います。眼鏡の彼女が成宮さんで、背の高い彼が吉木くん。ボコしたのは吉川くんです。乃々くんと仲良くさせて頂いてます。どうぞ、宜しくお願いします。」
「うん。宜しく。私は渋谷凛です。一つ年上になるのかな?乃々と仲良くしてあげてね吉川以外。」
「いけすかねえ女だなおめぇよォ!」
「……というか、男と女?乃々くん?どういうこと?」
「え?」
「(ウワアァ!止めなきゃァ!)」
「ああ、ゴリラには分かんねえか。目が節穴だもんな。」
「あ?胸骨折るよ?」
「ひっ……ご、ごほん!乃々はなァ!この見た目で『男』なんだよォ!それも知らねえとかやっぱ付き合ってるってのは嘘だったみたいだなァ!(良かった……乃々が本当に誰かと付き合ってたら不登校児になってた……)」
「……?」ポカーン
「(帰ろ。うん。帰ろ。もりくぼ式下校術っ!)」
「待って乃々。」ガシッ
「あぅっ!」ガクン
「もし四人で私と乃々をからかってるなら怒るんだけど。」
「本当ですよ。これ見ますか?」
「これは何?」
「吉川とのーちゃんの会話です。」
「いつの間に撮った曰比谷ァ!?」
「猥談ですんで、気を付けて下せぇしぶりん姉貴。」
「「!?」」
「うわ乃々と吉川真っ青になってら。どうした?思い当たる節でもあるのか?」プププ
「いや、よっしーもいるよこれ?」
「!?」
×
「の、乃々?なに、これ?私の、その、そういう話なのは分かるけど、え?」カアアッ
「ごめんなさいぃ……騙しててごめんなさいぃ……」
「そもそも乃々の制服見て性別分からんとかヤバいだろゴリラ。」
「うるさい変態…………足フェチ……」
「ええ……(困惑)」
「しぶりん可愛い!」
「君も静かにして……てゆーか君が胸の話してたんだね……ごめん吉川くん……」
「いや、それは別に気にしなくていいんですが。(柔らかき女子高生のアレを堪能出来ましたし。)」
「乃々が男だったなんて……嘘でしょ……あれ……私結構恥ずかしい事乃々にしてきてない……?う、うわぁぁぁ……///」
「「「「「可愛い。」」」」」
「可愛くない!」
「可愛いよ!」
「美人だね!」
「カッコいいです!」
「溌剌していて健康的!」
「エロい!」
「吉川ァ!」
「エロい!」
「いやちょ」
「エロい!特に足!好き!」
「あ、あの」
「てか滅茶苦茶可愛い!それにカッコいい!愛らしい!」
「う、あぅ。」
「その辺にしておけ吉川。」
「やったぜ。」
「(なんかこのまま自分がアイドルしてることは有耶無耶にできそうですね。)」
「り、凛さん。立ち直って下さい。そろそろ時間ですよ。」ボソボソ
「ふぇ……あ、ほんとだ……」
「(ふぇ、って……凛さん凄い可愛いんですけど。加虐心が擽られます。)」
「あれ?しぶりんさん用事ですか?」
「これから事務所に用事があるの。そろそろ時間になるから行こうかなって。」
「あ、すみません。もしかして迷惑かけちゃいましたか?」
「ううん。そんなことないよ。乃々が学校でも楽しそうに生活出来てる事知れて良かったし。……不本意なカタチだったけど。」チラ
「す、すみません……」ビクビク
「ごめんなさい。」
「男だからしょうがねえ!許せ!」
「……」ギロッ
「さ、さーせんした!」
「はあ……まあ、その、なんて言えばいいのかな。これからも乃々と仲良くしてあげてね。」
「……勿論。」
「仲良くさせて貰いますよ!」
「友達だしな!」
「任せて下さいよ!」
と、友達……
(向こうはもりくぼのこと友達って、思ってくれているんですね。)
嬉しい、です。えへへ。一方通行なんじゃないかって思ってました。
「……ふふっ。ありがと。」ニコッ
「っ。」ドキッ
「……?どしたん吉川……あー。これは。」
「そろそろ行かなきゃ。ごめんね。」
「あ、はい!それじゃ!」
「さようなら!」
「レ、レッスン頑張って下さい!」
「……」
「うん。じゃ。行こうか、乃々。……色々話もしたいしね?」
「……了解です。」ズーン
「行ってしまった……可愛かったな……しぶりん……」
「吉木くんずっとそれ言ってるね。上の空?」
「そうでしょ。もう一人も。」
「……」
「おーい。きっかー?聞いてるー?」
「……」
「やっぱこの人も上の空です。」
「だらしない男達だなあ……」
「本当だよ。凛さんに魅了されるのは解るけどこれは魅了されすぎでしょ。」
「彼女アイドルなんでしょ?そうなるのも無理ないんじゃない?私にはよく分かんないけど。」
「クソ真面目だもんね。」
「言っていい事と悪い事の判断は大事だよ。死にたくないならこの言葉、きちんと覚えておこうね。」
「すみませんでした殺さないで死にたくない。」
「よろしい。」
「よかった。」
「てか曰比谷さんはどうなの?凛さんがアイドルって知ってたのに貴女はあんまり変化ないけど。」
「私は慣れてるからね。理由は聴かないで?」
「おけおけ。」
「…………あれ?」
「どうしたの?」
「いや、のーちゃんが普通にしぶりんと一緒に事務所行ってる事を気付いただけ。」
「はあ。」
「…………のーちゃんって男だよね?」
「……お、男だよ。」
「女性アイドルしか受け付けない事務所なのに何でのーちゃんはそこへ向かうんすかね。」
「それ以上はいけない。いいね?」
「アッハイ。」
「取り敢えず男共の片付けを済まさせよう?」
「そうっすね。」
×
もりくぼのこの辛くとも幸せな日常は温かく続いていきます。
「それで乃々?今まで女の子のフリして私の身体を堪能してた感想は?」
「言い方が悪意満載なんですけどォ!」
ネタが尽きる事を知らない。それと散りばめられたシュワちゃんネタが濃すぎる。すまん。